FP2級実技(個人)解説-2018年5月・問1~9
X社に勤務するAさん(45歳)は、妻Bさん(42歳)および長男Cさん(14歳)との3人暮らしである。Aさんは、平成30年5月末日付でX社を早期退職し、6月からは、個人事業主として飲食業を開業する予定である。Aさんは、X社退職後に個人事業主となった場合における社会保険および老後資金の準備について詳しく知りたいと考えている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談する ことにした。
Aさんおよびその家族に関する資料は、以下のとおりである。
<Aさんおよびその家族に関する資料>
〔Aさん〕(会社員)
生年月日:昭和48年4月28日
厚生年金保険、全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
〔妻Bさん〕(専業主婦)
生年月日:昭和50年10月30日
短期大学卒業後からX社に勤務し、35歳で退職するまでは厚生年金保険に加入(被保険者期間は180月)していた。X社退職後は、第3号被保険者として国民年金に加入している。
〔長男Cさん〕(中学生)
生年月日:平成15年8月12日
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさん、妻Bさんおよび長男Cさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
・ | 「Aさんは、X社を退職後、国民年金に第1号被保険者として加入することになります。国民年金の種別変更の届出は、厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日から、原則として( ① )以内に住所地の市町村(特別区を含む)の窓口で行います」 |
・ | 「Aさんは、個人事業主となった後、収入の減少等により国民年金の保険料を納めることが経済的に難しくなった場合は、保険料の免除を申請することができます。免除された期間の保険料は追納することができますが、追納ができるのは、追納が承認された月の前( ② )以内の免除期間の保険料です。なお、追納がない場合、その保険料免除期間は、所定の割合で老齢基礎年金の年金額に反映されます。仮に、Aさんが、保険料の4分の1免除を受け、残り4分の3の保険料を納付し、その期間に係る保険料の追納や国民年金への任意加入を行わなかった場合、その保険料免除期間の月数の( ③ )に相当する月数が、老齢基礎年金の年金額に反映されます」 |
イ.10日 ロ.14日 ハ.20日
ニ.5年 ホ.10年 へ.15年
ト.2分の1 チ.8分の5
リ.4分の3 ヌ.8分の7
① | 国民年金の種別変更の届出は、厚生年金保険の被保険者資格を喪失した日から、原則として14日以内に手続きをする必要があります。 |
② | 国民年金保険料の納付免除や猶予を受けた場合、10年間遡って追納する事ができます。 |
③ | 平成21年4月以降の保険料について4分の1免除を受け、追納をしなかった場合、受給金額に反映されるのは、(満額)納付済月数と比較して、国庫負担分8分の4と保険料納付分4分の3の合計8分の7相当です。 |
<計算の手順> | |
1. | 報酬比例部分の額(円未満四捨五入) ( ① )円 |
2. | 経過的加算額(円未満四捨五入) ( ② )円 |
3. | 基本年金額(上記「1+2」の額) □□□円 |
4. | 加給年金額(解答用紙の「される/されない」のいずれかを○で囲むこと) Aさんの場合、加給年金額は加算( ③ )。 |
5. | 老齢厚生年金の年金額 ( ④ )円 |
① | a=30万円×7.125/1,000×132=282,150円 b=45万円×5.481/1,000×182=448,893.9円より、 282,150円+448,894円=731,044円です。 |
② | 資料より、Aさんは平成4年4月1日時点で18歳で、生年月日が4月28日ですから、厚生年金保険の被保険者期間のうち、平成4年4月から平成5年3月までの12ヵ月間は20歳未満であったことが読み取れます。 したがって、厚生年金保険の被保険者期間(132ヵ月+182ヵ月=314ヵ月)のうち、20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間の月数は、302ヵ月であると分かります。 また、「加入可能年数×12」の部分は、昭和16年4月2日以降生まれであれば、40年(480ヵ月)となります。 ゆえに、経過的加算額=1,625円×314-779,300円×302/480=19,940.4…円となります。 |
③ | 厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人に、厚生年金保険の被保険者期間が20年未満の年下の配偶者が居ますから、加給年金が支給されます。 |
④ | 731,044円+19,940円+389,800円=1,140,784円です。 |
1. | 「 Aさんは、国民年金の定額保険料のほかに月額400円の付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが付加保険料を150月納付し、65歳から老齢基礎年金を受給する場合は、年額30,000円の付加年金を受給することができます」 |
2. | 「Aさんは、小規模企業共済制度に加入することができます。小規模企業共済制度は、一定規模以下である個人事業主または会社等の役員が加入することができる積立てによる退職金制度です。毎月の掛金は1,000円から50,000円までの範囲内(500円単位)で選択することができ、その全額が所得控除の対象となります」 |
3. | 「Aさんは、国民年金基金に加入することができます。国民年金基金の毎月の掛金は、加入時の年齢や選択する給付の型などによって異なりますが、掛金の拠出限度額は月額68,000円となります。ただし、小規模企業共済制度に加入している場合は、その掛金と合わせて月額68,000円が上限となります」 |
① | 正しい記述です。付加保険料は月額400円で、付加年金額は、200円×付加保険料納付済月数です。 |
② | 小規模企業共済制度の毎月の掛金の上限は7万円です。 |
③ | 国民年金基金の掛金の拠出額と小規模企業共済制度の掛け金の拠出額は別枠です。 なお、国民年金基金の掛金の拠出額と枠を共有するのは、個人型の確定拠出年金の掛金です。 |
Aさんは、これまで投資信託(特定口座の源泉徴収選択口座内にて取引)により資産を運用してきたが、上場株式による資産運用にも興味を持ち、同業種で同規模のX社またはY社の株式(以下、それぞれ「X社株式」「Y社株式」という)のいずれかの購入を検討している。
そこで、Aさんは、株式投資について、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
〔X社〕
株価:1,400円
当期純利益:80億円
純資産(=自己資本):2,000億円
総資産:4,500億円
発行済株式総数:2億株
1株当たり配当金額(年額):10円
〔Y社〕
株価:600円
当期純利益:150億円
純資産(=自己資本):3,600億円
総資産:6,000億円
発行済株式総数:5億株
1株当たり配当金額(年額):15円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「代表的な株価指標のうち、日経平均株価は、東京証券取引所市場第一部と市場第二部に上場している銘柄のうち代表的な225銘柄を対象とした修正平均型の株価指標です」 |
2. | 「上場株式の注文方法のうち、指値注文では、高い値段の買い注文が低い値段の買い注文に優先し、原則として、同じ値段の注文については、先に出された注文が後に出された注文に優先して売買が成立します」 |
3. | 「上場株式を証券取引所の普通取引で売買したときの受渡しは、原則として、約定日(売買成立日)から起算して3営業日目に行われます」(注)制度改正あり |
1. | 日経平均株価は、東証一部上場銘柄のうち225銘柄を対象とした指数です。 |
2. | 正しい記述です。価格優先の原則と時間優先の原則の説明です。 |
3. |
上場株式の受け渡し日は、約定日から起算して4営業日後です。 【改正後】上場株式の受け渡し日は、約定日から起算して3営業日後ですから、この肢は○です。 |
また、配当金額から株主への利益還元度合いを測る指標として、配当性向があります。Y社株式の配当性向を算出すると、( ④ )%となります」
イ.0.5 ロ.0.6 ハ.1.1 ニ.1.4
ホ.15 ヘ.25 ト.35
チ.40
リ.50 ヌ.60 ル.X社 ヲ.Y社
① | PER=株価÷1株当たり純利益で、1株当たり純利益=80億円÷2億株=40円ですから、PER=1,400円÷40円=35倍です。 |
② | PBR=株価÷1株当たり純資産で、1株当たり純資産=2,000億円÷2億株=1,000円ですから、PBR=1,400円÷1,000円=1.4倍です。 |
③ | Y社のPER=600円÷(150億円÷5億株)=20倍、PBR=600円÷(3,600億円÷5億株)≒0.83倍です。 同業種の会社のPERやPBRを比べた時、数値が低い方が割安であると言えます。 |
④ | 配当性向は、利益をどれだけ配当金として投資家に還元しているかという指標です。 Y社は、15円/株×5億株=75億円を配当しており、配当性向=75億円÷150億円=50%となります。 |
購入株数(売却株数):2,000株
購入時の株価:600円
売却時の株価:700円
1. | 譲渡所得の金額 ( ① )円 |
2. | 所得税および復興特別所得税と住民税の源泉徴収税額の合計額 ( ② )円 |
3. | 手取金額 ( ③ )円 |
① | 購入金額=600円/株×2,000株=120万円、売却価格=700円/株×2,000株=140万円より、譲渡所得の金額=140万円-120万円=20万円です。 |
② | 株式等に係る譲渡所得に対する、所得税および復興特別所得税と住民税の割合は、20.315%です。 したがって、所得税および復興特別所得税と住民税の源泉徴収税額の合計額=20万円×20.315%=40,630円です。 |
③ | 手取り金額=1,400,000円-40,630円=1,359,370円です。 |
会社員のAさん(60歳)は、妻Bさん(55歳)、長女Cさん(28歳)および母Dさん(84歳)との4人暮らしである。Aさんは、平成29年10月に、入社以来35年7カ月勤務していたX社を定年退職し、その後、再就職はしていない。また、Aさんは平成29年中に生命保険を解約し、解約返戻金を受け取っている。
Aさんの家族構成および平成29年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。
<Aさんの家族構成>
〔Aさん〕
35年7カ月勤務していたX社を平成29年10月に定年退職した。
〔妻Bさん〕
専業主婦。平成29年中の収入はない。
〔長女Cさん〕
会社員。平成29年中に給与収入500万円を得ている。
〔母Dさん〕
平成29年中に公的年金等の老齢給付として120万円を得ている。
<Aさんの平成29年分の収入等に関する資料>
〔X社からの給与収入の金額(1~10月分)〕
600万円
〔X社から支給を受けた退職金の額〕 2,500万円 |
|
※ | Aさんは、退職金の支給を受ける際に、X社に対して「退職所得の受給に関する申告書」を提出している。 |
〔賃貸アパート(居住用)の不動産所得に係る損失の金額〕 80万円 |
|
※ | 上記の損失の金額には、不動産所得を生ずべき土地等を取得するために要した負債の利子の額に相当する部分の金額20万円が含まれている。 |
〔解約した生命保険に関する資料〕
保険の種類:一時払変額個人年金保険(確定年金)
契約年月日:平成20年4月1日
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者 :Aさん
死亡給付金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:580万円
一時払保険料:500万円
1. | Aさんの平成29年分の所得税の計算において、賃貸アパートの経営による不動産所得に係る損失の金額80万円は、その全額が損益通算の対象となる。 |
2. | Aさんの平成29年分の所得税の計算において、総所得金額から所得控除額を控除しきれなかった場合、控除しきれなかった所得控除額は、退職所得の金額から控除することができる。 |
3. | 母Dさんの合計所得金額は38万円以下であるため、Aさんは、母Dさんを控除対象扶養親族とする58万円の扶養控除の適用を受けることができる。 |
1. | 不動産所得の計算上生じたマイナスのうち、土地等を取得するために要した負債の利子は、損益通算の対象外です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. |
正しい記述です。 <参考> |
1. | 退職所得控除額 ( ① )万円+□□□万円×{( ② )年-20年}=□□□万円 |
2. | 退職所得の金額 (2,500万円-□□□万円)×□□□=( ③ )万円 |
① | 勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、800万円+70万円×(勤続年数-20年)という式で計算されます。 |
② | 退職所得の計算上、勤続年数は、年未満の端数を切り上げます。 |
③ | 退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2です。 退職所得控除額=800万円+70万円×(36-20)=1,920万円より、 退職所得=(2,500万円-1,920万円) ×1/2=290万円です。 |
Aさんの平成29年分の各種所得の金額は、以下の表のとおりである。 | |
各種所得 | 各種所得の金額 |
給与所得の金額 | ( ① )万円 |
不動産所得の金額 | □□□万円 |
総所得金額に算入される一時所得の金額 | ( ② )万円 |
退職所得の金額 | □□□万円 |
以上から、Aさんの平成29年分の総所得金額は、( ③ )万円となる。
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40% (最低65万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+18万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+54万円 |
660万円超 1,000万円以下 |
収入金額×10%+120万円 |
1,000万円超 | 220万円 |
① |
給与収入が600万円より、給与所得=600万円-(600万円×20%+54万円)=426万円です。 <改正後> |
② | 変額個人年金を5年を超える期間を経過後に解約した場合、一時所得となります。 よって、一時所得=580万円-500万円-50万円=30万円となります。 一時所得は、その2分の1が総所得金額に算入されますから、総所得金額に算入される一時所得の金額は、15万円です。 |
③ | 不動産所得は、80万円のマイナスのうち、60万円を給与所得と損益通算する事ができます(問7選択肢1参照)。 また、退職所得は申告分離課税されて総所得金額には含まれませんから、Aさんの平成29年分の総所得金額は、426万円-60万円+15万円=381万円となります。 |
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