FP2級実技(生保)解説-2024年9月・問1~9
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(48歳)は、妻Bさん(47歳)および長男Cさん(19歳)との3人暮らしである。Aさんは、65歳の定年までX社で働くつもりであり、今後の資金計画を検討するなかで、老後の生活資金等の準備をしておきたいと考えるようになった。また、長男Cさんが2024年12月に20歳となるため、国民年金の学生納付特例制度について確認しておきたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(1973年12月18日生まれ、会社員)] |
・ |
公的年金加入歴 |
: |
下図のとおり(65歳までの見込みを含む) |
・ |
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。 |
[妻Bさん(1976年6月25日生まれ、パートタイマー)]
・ |
公的年金加入歴 |
: |
高校卒業後の8年間(96月)は、厚生年金保険に加入。その後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。 |
・ |
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。 |
[長男Cさん(2004年11月10日生まれ、大学生)]
・ |
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。 |
※ |
妻Bさんおよび長女Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ |
Aさんとその家族は、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
【問1】
Aさんが、原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額(2024年度価額)を計算した次の〈計算の手順〉の空欄①~④に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。計算にあたっては、《設例》の〈Aさんとそ
の家族に関する資料〉および下記の〈資料〉に基づくこと。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
<計算の手順>
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入) |
( ① )円 |
2.老齢厚生年金の年金額 |
(1) |
報酬比例部分の額(円未満四捨五入) ( ② )円 |
(2) |
経過的加算額(円未満四捨五入) ( ③ )円 |
(3) |
基本年金額(上記「(1)+(2)」の額) □□□円 |
(4) |
加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること) |
(5) |
老齢厚生年金の年金額 ( ④ )円 |
<資料>
正解:816,000(円)、1,328,544(円)、48,080(円)、1,784,724(円)(各1点であると思われる)
① |
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などは、年金額に反映されます。
よって、老齢基礎年金の額=816,000円×(28+84+428-60)/480=816,000円となります。 |
② |
260,000円×7.125/1,000×84+500,000円×5.481/1,000×428=1,328,544円です。 |
③ |
厚生年金保険の被保険者期間は、84月+428月=512月より、定額部分の計算上の厚生年金保険の被保険者期間は480月となります。
よって、1,701円×480+816,000円×(84+428-60)/480=48,080円となります。 |
④ |
厚生年金保険の被保険者期間が20年(240月)以上であり、年下の配偶者がいる等の要件を満たしますから、加給年金が支給されます。
よって、老齢厚生年金の年金額は、1,328,544円+48,080円+408,100円=1,784,724円となります。 |
【問2】
Mさんは、Aさんに対して、公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① |
「Aさんおよび妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金の支給はありません。原則として、65歳から老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給することになります」 |
② |
「妻Bさんは、国民年金の付加保険料を納付することができます。仮に、付加保険料を140月納付し、65歳から老齢基礎年金を受給する場合、老齢基礎年金の額に付加年金として28,000円が上乗せされます」 |
③ |
「Aさんおよび妻Bさんが希望すれば、66歳以後、老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができます。仮に、Aさんが68歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、年金の増額率は18%となります」 |
正解:○、×、×(各1点であると思われる)
① |
正しい記述です。特別支給の老齢厚生年金は、男性は、1961年4月1日以前に生まれた人、女性は、1966年4月1日以前に生まれた人に支給されます。 |
② |
付加保険料は、国民年金保険料に上乗せして納付するものですから、国民年金の第1号被保険者、または、任意加入被保険者しか納めることができません(第2号、第3号被保険者は納付できません)。 |
③ |
老齢基礎年金の繰下げをした場合、増額率は、繰下げ1月あたり0.7%です。よって、68歳0カ月で支給の申出をした場合(36月繰下げた場合)、増額率は0.7%/月×36月=25.2%となります。 |
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、国民年金の学生納付特例制度(以下、「本制度」という)について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ |
「本制度は、国民年金の第1号被保険者で大学等の所定の学校に在籍する学生について、( ① )の前年所得が一定額以下の場合、所定の申請に基づき、国民年金の保険料の納付を猶予する制度です」 |
Ⅱ |
「本制度の適用を受けた期間の保険料は追納することができますが、追納できるのは、追納が承認された月の前( ② )年以内の期間に係るものに限られます。なお、本制度の適用を受けた期間の翌年度から起算して( ③ )年度目以降に保険料を追納する場合、適用を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます」 |
<語句群>
イ.2 ロ.3 ハ.4 ニ.5 ホ.7
ヘ.10 ト.世帯主 チ.学生本人
リ.学生本人およびその世帯主
正解:チ、ヘ、ロ(各1点であると思われる)
① |
国民年金の学生納付特例制度の適用を受けるためには、本人の前年の所得が一定金額以下である必要があります。ちなみに、保護者等の所得の要件はありません。 |
② |
学生納付特例など、国民年金保険料の免除や猶予を受けた期間については、最大で10年間遡って追納することができます。 |
③ |
免除や猶予を受けた期間について追納する場合において、保険料の免除・納付猶予の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(64歳、全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者)は、2024年11月に65歳となり定年を迎える。Aさんは、定年後は再就職せず、専業主婦の妻Bさん(64歳)と趣味を楽しみながら暮らす予定である。
Aさんは、現在、Y生命保険の〈資料1〉の生命保険に加入しているが、既に子どもが独立したこともあり、定年を機に保障内容を見直したいと考えている。また、先日、Z生命保険の営業担当者から〈資料2〉の生命保険を提案され、加入を検討している。 そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<資料1>Aさんが現在加入しているY生命保険の生命保険の契約内容
保険の種類 |
: |
定期保険特約付終身保険(75歳払込満了) |
<資料2>Aさんが提案を受けたZ生命保険の生命保険の内容
(注1) |
公的介護保険制度の要介護3以上と認定された場合、または保険会社所定の要介護状態になった場合に、終身年金が支払われる(終身年金の支払事由前に死亡したときは死亡保険金60万円が支払われる)。 |
(注2) |
公的介護保険制度の要介護2以上と認定された場合、または保険会社所定の要介護状態になった場合に支払われる(死亡保険金の支払はない)。 |
【問4】
Mさんは、Aさんに対して、生命保険の見直しについて説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① |
「Aさんが65歳になると、公的介護保険の第1号被保険者となります。第1号被保険者は、要介護状態または要支援状態となった原因が特定疾病によって生じたものでなければ、公的介護保険の保険給付は受けられませんので、民間の介護保険で備えておくことが重要です」 |
② |
「現在加入している生命保険の死亡保険金額を減額し、提案を受けた生命保険に加入することも検討事項の1つです。現時点でのAさんの必要保障額を算出し、適正な死亡保険金額を把握することから保障内容の見直しを始めることをお勧めします」 |
③ |
「現在加入している生命保険を契約転換して、転換後契約にY生命保険が取り扱っている介護保障を目的とした特約を付加する方法も考えられます。転換後契約の保険料は、転換前契約の加入時の年齢により算出されるため、新規に加入する場合と比較して、保険料負担を抑えることができます」 |
正解:×、○、×(各1点であると思われる)
① |
介護保険の第1号被保険者(65歳以上の人)は、要介護状態または要支援状態となった場合、その原因を問わず、公的介護保険の保険給付を受けることができます。 |
② |
適切な記述です。 |
③ |
転換後契約の保険料は、転換時の年齢により算出されます。 |
【問5】
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが提案を受けた生命保険の保障内容および課税関係について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① |
「公的介護保険の保険給付は、主に訪問介護や通所介護(デイサービス)などの現物給付による介護サービスであるため、自宅の改修費用などの多額の出費に備え、一定額を介護一時金で準備しておくことは検討に値します」 |
② |
「妻BさんがAさんに代わって介護一時金を受け取った場合、当該一時金は一時所得の収入金額として所得税の課税対象となります」 |
③ |
「介護年金終身保障保険には、Aさんだけでなく、妻Bさんが加入することも検討に値します。介護年金終身保障保険は、保険金額や保険料払込期間等、同じ内容で設計した場合、女性のほうが男性よりも毎回の保険料は割安になります」 |
正解:○、×、×(各1点であると思われる)
① |
適切な記述です。 |
② |
介護一時金のような、身体の疾病や傷害などによって受け取る保険金や給付金は、原則として、非課税で受け取ることができます。 |
③ |
介護年金終身保障保険や個人年金保険のような、被保険者が生きている事を条件として、年金が支払われるような保険契約は、被保険者の予定死亡率が高いほど、保険料が低くなります。
他の条件を同じとして、男女別の保険料を比較した場合、男性よりも女性の方が(平均寿命が長い=)予定死亡率が低いため、介護年金終身保障保険の保険料は、女性の方が男性よりも高くなります。 |
【問6】
Mさんは、Aさんに対して、AさんがX社を定年退職した後の公的医療保険制度の取扱いについて説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
「AさんがX社を定年退職し、その後再就職しない場合、公的医療保険については、全国健康保険協会管掌健康保険に任意継続被保険者として加入する、国民健康保険に加入するなどの方法があります。
任意継続被保険者となるためには、原則として、AさんがX社を退職した日の翌日から( ① )日以内に、Aさんの住所地を管轄する全国健康保険協会の都道府県支部に対して資格取得の申出を行う必要があります。
任意継続被保険者として健康保険に加入することができる期間は、最長( ② )年間です。任意継続被保険者の保険料は、原則として、退職時の標準報酬月額に所定の保険料率を乗じた額となり、その( ③ )が自己負担となります。ただし、2024年度において、退職時の標準報酬月額が30万円を超えていた場合は、30万円の標準報酬月額により算出した保険料となります。なお、Aさんが任意継続被保険者となり、妻BさんがAさんの健康保険の被扶養者となる場合、妻Bさんの保険料を( ④ )」
<語句群>
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.10
ホ.14 へ.20 ト.半額
チ.4分の3相当額
リ.全額
ヌ.負担する必要があります
ル.負担する必要はありません
正解:ヘ、ロ、リ、ル(各1点であると思われる)
① |
任意継続被保険者となるためには、資格喪失日から20日以内(20日目が営業日でない場合は翌営業日まで)に手続きを行う必要があります。 |
② |
任意継続被保険者として健康保険に加入することができる期間は、最長2年間です。 |
③ |
任意継続被保険者の保険料は、全額被保険者負担となります。 |
④ |
健康保険の被扶養者は、被保険者が任意継続被保険者である場合を含めて、保険料を負担する必要がありません。 |
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(70歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。X社は、売上金額・利益金額ともに増加傾向にあり、業績は順調に推移している。Aさんは、今期限りで専務取締役の長男Bさん(45歳)に社長の座を譲り、勇退することを決意している。Aさんは、先日、〈資料1〉の生命保険の解約に関して、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談したところ、長男Bさんを被保険者とする〈資料2〉の生命保険の提案を受けた。
<資料1>X社が現在加入している生命保険の契約内容 |
保険の種類 |
: |
長期平準定期保険(特約付加なし) |
※ |
保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。 |
<資料2>Mさんから提案を受けた生命保険の内容 |
保険の種類 |
: |
特定疾病保障定期保険(特約付加なし) |
※ |
死亡および所定の高度障害状態に該当した場合に加え、がん(悪性新生物)と診断確定された場合、または急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態に該当した場合に保険金が契約者に支払われる。 |
※ |
所定の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
【問7】
仮に、X社がAさんに役員退職金5,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金について、次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を30年2カ月とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
正解:1,570(万円)、1,715(万円)(①が1点、②が2点であると思われる)
① |
勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算されます。
また、退職所得控除額の計算上勤続年数の1年未満の端数は切り上げますから勤続年数は31年となります。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(31-20)=1,570万円となります。 |
② |
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(5,000万円-1,570万円)×1/2=1,715万円となります。 |
【問8】
〈資料1〉の生命保険を現時点で解約して、解約返戻金を受け取った場合のX社の経理処理(仕訳)について、下記の〈条件〉を基に、空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
〈条件〉 |
・ |
X社が解約時までに支払った保険料の総額は6,000万円である。 |
・ |
解約返戻金の金額は4,600万円である。 |
・ |
配当等、上記以外の条件は考慮しないものとする。 |
<解約返戻金受取時のX社の経理処理(仕訳)>
<語句群>
イ.1,000 ロ.1,400 ヘ.4,600
ト.6,000 ハ.1,600 ニ.2,200
ホ.3,000
チ.雑収入 リ.雑損失
ヌ.保険料積立金
正解:ヘ、ホ、チ、ハ(各1点であると思われる)
① |
借方には、増えた現金・預金の額を記入します。解約により受け取る現金・預金の額(解約返戻金の額)は、資料より、4,600万円です。 |
② |
<設例>の長期平準定期保険は、2019年7月7日以前に契約したものであり、保険料の払込み時にその2分の1相当額を資産計上しています。
現時点の払込保険料累計額は6,000万円であることから、現時点の資産計上額は6,000万円÷2=3,000万円であると推定されます。 |
③ |
資産計上額がある保険契約を解約して解約返戻金を受け取った場合、解約返戻金が資産計上額が多ければ、その差額を雑収入として処理し、解約返戻金が資産計上額が少なければ、その差額を雑損失して処理します。 |
④ |
仕訳の貸借の金額は必ず一致するので、雑収入の額は、4,600万円-3,000万円=1,600万円となります。 |
【問9】
Mさんは、Aさんに対して、〈資料2〉の生命保険について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① |
「X社が受け取る特定疾病保険金は、長男Bさんが、がん等の治療で長期間不在となった場合に会社を存続させるための事業資金として活用することができます」 |
② |
「X社が特定疾病保険金を受け取った場合、法人税法上、当該保険金は非課税所得となりますので、益金に計上する必要はありません」 |
③ |
「X社が資金を必要とした際には、契約者貸付制度を利用することにより、資金を調達することができます。X社が契約者貸付制度を利用し、契約者貸付金を受け取った場合、保険契約は継続しているため、経理処理は必要ありません」 |
正解:○、×、×(各1点であると思われる)
① |
適切な記述です。特定疾病保険金に、資金使途の制限はありません。 |
② |
法人が特定疾病保険金を受け取った場合、個人に適用されるような非課税措置は無く、全額が益金として計上されます。 |
③ |
法人は、貸借対照表や損益計算書に影響がある出来事があった時(資産・負債・純資産・収益・費用のいずれかが増減する出来事があった時)に、経理処理を行う必要がります。また、契約者貸付制度は、生命保険会社からお金を借りる制度です。
法人が契約者貸付制度を利用すると、現金(資産)が増え、借入金(負債)が増えますから、経理処理をする必要があります。 |