お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2024年1月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんとの4人家族である。Aさんは、住宅ローンを利用して2023年9月に新築マンションを取得し、同月中に入居した。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(40歳)]
会社員

[妻Bさん(38歳)]
パートタイマー。2023年中に給与収入100万円を得ている。

[長女Cさん(6歳)]
2023年中の収入はない。

[母Dさん(73歳)]
2023年中の収入は、公的年金の老齢給付のみであり、その収入金額は70万円である。

<Aさんの2023年分の収入に関する資料>
760万円
<Aさんが取得した新築マンションに関する資料>
取得価額 4,000万円
土地 40㎡(敷地利用権の割合相当の面積)
建物 70㎡(専有部分の床面積)
資金調達方法 自己資金1,500万円、銀行からの借入金2,500万円
住宅ローン 2023年12月末の借入金残高2,480万円、返済期間25年
(団体信用生命保険に加入)
留意点 当該マンションは、認定長期優良住宅に該当する。また、住宅借入金等特別控除の適用要件は、すべて満たしている。
妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2023年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
住宅借入金等特別控除(以下、「本控除」という)に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「住宅ローンを利用して新築住宅を取得等し、2023年中に居住した場合、所定の要件を満たせば、居住の用に供した年分以後、最大で( ① )年間、本控除の適用を受けることができます。控除額の計算上、住宅ローンの年末残高には、限度額が設けられています。Aさんのように認定長期優良住宅に該当する新築住宅を取得し、2023年中に居住した場合の年末残高の限度額は( ② )万円です。
Aさんの場合、住宅ローンの年末残高は( ② )万円よりも少ないため、住宅ローンの年末残高に控除率を乗じて得た金額を、所得税額から控除することができます。また、仮に、当該控除額がその年分の所得税額から控除しきれない場合は、その控除しきれない金額を、所得税の課税総所得金額等の合計額の( ③ )%相当額または97,500円のいずれか少ないほうの額を限度として、翌年度分の住民税の所得割額から控除することができます」
<数値群>
イ.5 ロ.10 ハ.13 ニ.15 ホ.20 
ヘ.3,000 ト.4,000 チ.5,000
正解:ハ、チ、イ
住宅ローン控除を受けることができる期間は、最長で13年間です。
認定長期優良住宅に該当する新築住宅を取得し、2023年中に居住した場合の、住宅ローン控除の限度額は、年末のローン残高の上限を5,000万円として計算します。
なお、2024年1月1日~2025年12月31日までに居住を開始した場合、上限は4,500万円になります。
所得税の計算上控除しきれない住宅ローン控除の額は、所得税の課税総所得金額等の合計額の5%相当額、または、97,500円のいずれか少ないほうの額を限度として、翌年度分の住民税の所得割額から
控除することができます。
【問11】
Aさんの2023年分の所得税の課税等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「母Dさんは老人扶養親族の同居老親等に該当しますので、Aさんが適用を受けることができる母Dさんに係る扶養控除の額は、58万円です」
「Aさんが住宅ローンの借入れの際に加入した団体信用生命保険の支払保険料は、一般の生命保険料控除の対象となります」
「Aさんが2023年分の所得税において住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、所得税の確定申告を行う必要がありますが、2024年分以後の所得税については、年末調整においてその適用を受けることができます」
正解:○、×、○
正しい記述です。母Dさんは、合計所得金額が48万円以下(公的年金の収入金額が公的年金等控除額以下であるため、合計所得金額は0円)ですから、扶養控除の対象となります。
また、70歳以上ですから、老人控除対象扶養親族に該当し、同居しているため、同居老親等として、58万円の控除を受けることができます。
団体信用生命保険の保険料は、生命保険料控除の対象外です。
正しい記述です。給与所得者が住宅ローン控除を受けようとする場合、1年目は確定申告が必要ですが、2年目以降は年末調整により適用を受けることができます。
【問12】
Aさんの2023年分の所得税額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)総所得金額 □□□円
社会保険料控除 □□□円
生命保険料控除 □□□円
地震保険料控除 □□□円
配偶者控除 ( ① )円
扶養控除 □□□円
基礎控除 ( ② )円
(b)所得控除の額の合計額 2,600,000円
(c)課税総所得金額((a)-(b)) □□□円
(d)算出税額((c)に対する所得税額) ( ③ )円
(e)税額控除(住宅借入金等特別控除) ( ④ )円
(f)差引所得税額 2,600,000円
(g)復興特別所得税額 2,600,000円
(h)所得税および復興特別所得税の額 2,600,000円
<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円 
(最低55万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円超
850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円
<資料>所得税の速算表表(一部抜粋)
課税される
所得金額
税率 控除額
195万円未満 5%
195万円以上
330万円未満
10% 97,500円
330万円以上
695万円未満
20% 427,500円
695万円以上
900万円未満
23% 636,000円
正解:380,000(円)、480,000(円)、216,500(円)、173,600(円)
妻Bさんの給与所得=100万円-55万円=45万円ですから、合計所得金額が48万円以下となり、妻Bさん(70歳未満)は、一般の控除対象配偶者として、配偶者控除の対象となります。
合計所得金額が900万円以下の人が適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です。
合計所得金額が2,400万円以下の人が適用を受けることができる基礎控除の額は、48万円です。
Aさんの総所得金額=給与所得の額=760万円-(760万円×10%+110万円)=574万円です。
よって、課税総所得金額=574万円-260万円=314万円となりますから、算出税額=314万円×10%-97,750円=216,500円となります。
住宅借入金等特別控除の額は、原則として、年末のローン残高の0.7%相当額です。
よって、2,480万円×0.7%=173,600となります。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(70歳)は、飲食店X屋を営む個人事業主(青色申告者)である。X屋は、Aさんが父親(既に他界)から承継したもので、地元住民だけでなく、遠方からの常連客も多い繁盛店である。
Aさんは、体力の衰えを感じており、長男Cさんに事業を承継させることを決意した。Aさんは、所有財産のうち、妻Bさんには自宅の建物およびその敷地を相続させ、長男CさんにはX屋の店舗およびその敷地を相続させたいと考えている。
なお、長男Cさんと長女Dさんは、日頃から折り合いが悪く、Aさんは自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと心配している。

<Aさんの推定相続人>
[妻Bさん(69歳)]
X屋勤務。Aさんと自宅で同居している。

[長男Cさん(45歳)]
X屋勤務。妻と子2人がおり、Aさん夫妻と同居している。

[長女Dさん(44歳)]
会社員。夫と子の3人で賃貸マンションに住んでいる。

<Aさんの主な所有財産(相続税評価額、下記の生命保険を除く)>
現預金 1億2,000万円
自宅敷地(300㎡) 9,000万円(注)
自宅建物 2,000万円
X屋店舗敷地(420㎡) 1億2,000万円(注)
X屋店舗建物 5,000万円
(注) 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額
<Aさんが現在加入している生命保険に関する資料>
保険の種類 一時払終身保険
契約者(=保険料負担者) Aさん
被保険者 Aさん
死亡保険金受取人 妻Bさん
死亡保険金額 2,000万円
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
現時点(2024年1月28日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は4億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)相続税の課税価格の合計額 4億円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ① )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
妻Bさん ( ② )万円
長男Cさん □□□万円
二男Dさん □□□万円
(c)相続税の総額 ( ③ )万円
<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
30,000万円超
60,000万円以下
50% 4,200万円
正解:4,800(万円)、5,340(万円)、9,220(万円)
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算されます。
よって、3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。
①より、課税遺産総額は、4億円-4,800万円=3億5,200万円ですから、妻Bさんの法定相続分に対応する取得金額は、3億5,200万円×1/2=1億7,600万円です。
これに対応する相続税額は、1億7,600万円×40%-1,700万円=5,340万円です。
長男Cさんと長女Dさんの法定相続分に対応する取得金額は、それぞれ、3億5,200万円×1/4=8,800万円です。
これに対応する相続税額は、8,800万円×30%-700万円=1,940万円です。
よって、相続税の総額は、5,340万円+1,940万円+1,940万円=9,220万円となります。
【問14】
Aさんの相続に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言書の作成をお勧めします。自筆証書遺言については、法務局における保管制度がありますが、当該制度を利用するためには証人2人以上の立会いが必要です」
「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額が4億円である場合、長女Dさんの遺留分の金額は1億円となります」
「妻Bさんが受け取る一時払終身保険の死亡保険金(2,000万円)は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることで、相続税の課税価格に算入される金額は、500万円となります」
正解:×、×、○
自筆証書遺言保管制度を利用するにあたり、証人は不要です。なお、公正証書遺言を作成するためには、2人以上の証人が必要です。
相続人が直系尊属のみである場合を除いて、具体的遺留分の金額は、遺留分の算定の基礎となる財産の価額×1/2×法定相続分です。
よって、長女Dさんの具体的遺留分は、4億円×1/2×1/4=5,000万円となります。
正しい記述です。法定相続人が受け取る相続税の課税対象となる死亡保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税となりますから、500万円×3=1,500万円まで非課税となります。よって、妻Bさんが受け取る一時払終身保険の死亡保険金については、2,000万円-1,500万円=500万円が相続税の課税価格に算入されます。
【問15】
X屋の事業承継に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「長男CさんがAさんの相続によりX屋店舗敷地を取得した場合、所定の要件を満たせば、当該敷地は特定事業用宅地等に該当し、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます。特定事業用宅地等に該当するX屋店舗敷地は、( ① )㎡までの部分について、その敷地の相続税評価額から80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができます」
「『個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例』の適用を受けた場合、後継者が先代事業者から贈与または相続等により取得した特定事業用資産に係る贈与税・相続税の( ② )の納税が猶予されます。本特例の適用を受けるためには、後継者は、個人事業承継計画を( ③ )に提出し、その確認を受ける等の所定の要件を満たす必要があります」
「『個人の事業用資産についての相続税の納税猶予および免除の特例』の適用を受けて相続等により取得した事業用の宅地は、特定事業用宅地等に係る『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の対象( ④ )」
<語句群>
イ.330 ロ.400 ハ.500 
ニ.60%相当額 ホ.80%相当額 
ヘ.全額 ト.経済産業大臣 
チ.所轄税務署長 リ.都道府県知事 
ヌ.となります ル.となりません
正解:ロ、ヘ、リ、ル
小規模宅地の特例の適用を受ける場合、特定事業用宅地等に該当する宅地は、その400㎡までの部分について、課税価格を減額することができます。
「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例」の適用を受けた場合、贈与税・相続税の全額の納税が猶予されます。
「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例」の適用を受けるためには、後継者は、個人事業承継計画を都道府県知事に提出する等の要件を満たす必要があります。
「個人の事業用資産についての贈与税・相続税の納税猶予および免除の特例」の適用を受けて相続等により取得した事業用の宅地は、特定事業用宅地等に係る「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の対象となりません。

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