FP2級実技(生保)解説-2022年5月・問10~15
会社員のAさんは、妻Bさんおよび長女Cさんの3人で暮らしていたが、妻Bさんは、2021年7月に病気により45歳で他界した。また、Aさんは、2021年中に終身保険の解約返戻金および一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(49歳)]
会社員。2021年中に遺族基礎年金30万円を受け取っている。
[長女Cさん(16歳)]
高校生。2021年中の収入はない。
<Aさんの2021年分の収入等に関する資料>
[給与所得の金額]
440万円
[終身保険の解約返戻金]
契約年月:2003年6月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:350万円
正味払込保険料:380万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2013年10月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡給付金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:670万円
正味払込保険料:500万円
※ | 長女Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんと長女Cさんは、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんと長女Cさんの年齢は、いずれも2021年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 「遺族基礎年金は雑所得として総合課税の対象となりますが、Aさんの場合、その金額が60万円以下であるため、雑所得の金額は算出されません」 |
② | 「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から10年以内の解約のため、金融類似商品に該当し、源泉分離課税の対象となります」 |
③ | 「終身保険の解約により生じた損失の金額は、一時払変額個人年金保険の解約返戻金に係る一時所得の金額と内部通算することができます」 |
① | 遺族年金は非課税です。 |
② | 一時払変額保険の解約返戻金は、契約から5年を超えて受け取った場合には一時所得となります。 |
③ | 正しい記述です。 |
Ⅰ | 「Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の額は、( ① )万円です」 |
Ⅱ | 「ひとり親控除は、現に婚姻していない者が、総所得金額等が( ② )万円以下の生計を一にする子を有すること、納税者本人の合計所得金額が( ③ )万円以下であること、納税者本人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる一定の人がいないことの3つの要件を満たした場合に適用を受けることができます。Aさんが適用を受けることができるひとり親控除の額は、( ④ )万円です」 |
イ.26 ロ.35 ハ.38 ニ.48
ホ.58 へ.63 ト.500 チ.660
リ.850
ヌ.1,000
① | 扶養控除の計算上、16歳以上19歳未満の扶養親族は、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除対象になります。 |
② | ひとり親控除の適用を受けるためには、その年分の総所得金額等が48万円以下で、他の人の同一生計配偶者や扶養親族になっていない子がいることが条件の一つとされています。 |
③ | ひとり親控除を受けるための総所得金額等の要件は、500万円以下であることとされています。 |
④ | ひとり親控除の額は35万円です。 |
(a)総所得金額 | ( ① )円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | 120,000円 |
地震保険料控除 | 15,000円 |
ひとり親控除 | □□□円 |
配偶者控除 | □□□円 |
扶養控除 | □□□円 |
基礎控除 | ( ② )円 |
(b)所得控除の額の合計額 | 2,700,000円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | □□□円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ③ )円 |
<資料>所得税の速算表 | ||
課税される 所得金額 |
税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | - |
195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
① | 給与所得の440万円は、全額総所得金額に算入されます。 終身保険の解約返戻金と、契約から5年を超えて受け取った一時払変額保険の解約返戻金は、どちらも一時所得になりますから、一時所得の額は、(350万円+670万円)-(380万円+500万円)-50万円=90万円となります。 一時所得の額は、その2分の1相当額が総所得金額に算入されますから、総所得金額は、440万円+90万円×1/2=485万円となります。 |
② | 合計所得金額が2,400円以下の人に対する基礎控除額は、48万円です。 |
③ | 課税総所得金額=485万円-270万円=215万円です。 よって、課税総所得金額に対する所得税額は、215万円×10%-97,500円=117,500円となります。 |
個人で不動産賃貸業を営んでいるAさん(75歳)は、妻Bさん(72歳)および長女Cさん(45歳)と3人でX市内の自宅で暮らしている。Aさんの推定相続人は、妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさん(41歳)の3人である。
長女Cさんは、X市内の地元企業に勤務している。一方、二女Dさんは他県にある上場企業に勤務しており、X市に戻る意思はない。
Aさんは、自身の相続に関し、不動産賃貸業を手伝ってくれている長女Cさんに賃貸ビルを相続させたいと考えている。しかし、二女Dさんは長女Cさんと折り合いが悪く、Aさんは、遺産分割について長女Cさんと二女Dさんがもめてしまうのではないかと心配している。
<Aさんの推定相続人>
[妻Bさん]
Aさんと自宅で同居している。
[長女Cさん]
会社員。Aさん夫妻と同居している。
[二女Dさん]
会社員。夫と2人で戸建て住宅(持家)に住んでいる。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額、下記の生命保険を除く)> | ||
現預金 | : | 7,000万円 |
自宅(敷地400㎡) | : | 7,000万円(注) |
自宅(建物) | : | 2,000万円 |
賃貸ビル(敷地400㎡) | : | 7,000万円(注) |
賃貸ビル(建物) | : | 5,000万円 |
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
死亡保険金額:2,000万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「 仮に、Aさんの相続に係る遺留分を算定するための財産の価額を3億円とした場合、二女Dさんの遺留分の金額は、( ① )万円になります。Aさんの相続が開始し、長女Cさんが賃貸ビルなど相続財産の大部分を取得した場合、二女Dさんの遺留分を侵害する可能性があります。遺留分が侵害された場合、二女Dさんは、Aさんの相続の開始を知った時から( ② )年以内に遺留分侵害額請求権を行使することができます」 |
Ⅱ | 「相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合、相続税の申告時において、未分割の財産に対して『配偶者に対する相続税額の軽減』や『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができないというデメリットが生じます。その場合、相続税の申告の際に『申告期限後( ③ )年以内の分割見込書』を税務署に提出し、申告期限後( ③ )年以内に遺産分割協議が成立すれば、それらの特例の適用を受けるため、分割後4カ月以内に更正の請求を行うことができます」 |
Ⅲ | 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として遺言書の作成をお勧めします。公正証書遺言は、証人( ④ )人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成します」 |
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.4
ホ.5 ヘ.7 ト.10 チ.20
リ.3,750
ヌ.5,000 ル.7,500
① | 抽象的遺留分の金額は、相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分算定の基礎となる財産の2分の1相当額です。また、具体的遺留分は抽象的遺留分の金額に法定相続分をかけた金額ですから、二女Dさんの遺留分の金額は、3億円×1/2×1/4=3,750万円となります。 |
② | 遺留分侵害額請求権は、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年、または、相続開始の時から10年を経過したときに、時効によって消滅します。 |
③ | 相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合、相続税の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署に提出し、申告期限後3年以内に遺産分割が成立すれば、更正の手続きをすることにより、配偶者に対する相続税額の軽減や小規模宅地の評価減の特例の適用を受けることができます。 |
④ | 公正証書遺言を作成するためには、2人以上の証人が必要です。 |
① | 「 妻Bさんが自宅の敷地および建物を相続により取得した場合、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることで、自宅の敷地(相続税評価額7,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を1,400万円とすることができます」 |
② | 「妻Bさんが受け取る死亡保険金(2,000万円)は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることで、相続税の課税価格に算入される金額は、500万円となります」 |
③ | 「長女Cさんが、二女Dさんに対する代償交付金を準備する方法として、契約者および死亡保険金受取人を長女Cさん、被保険者をAさんとする終身保険に加入し、長女Cさんが負担する保険料相当額の現金をAさんが贈与することも検討事項の1つです」 |
① |
自宅の敷地は特定居住用宅地等として330㎡まで80%評価減されますから、相続税の課税価格に算入すべき金額は、7,000万円×330/400×(1-80%)+7,000万円×70/400=3,400万円となります。 <別解> |
② | 正しい記述です。相続人が受け取った相続税の課税対象となる死亡保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税になりますから、2,000万円のうち、500万円×3=1,500万円が非課税となり、500万円が相続税の課税価格に算入されます。 |
③ | 正しい記述です。 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | 3億円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長女Cさん | ( ② )万円 |
二女Dさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
① | 基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×3=4,800万円です。 |
② | 課税遺産総額は、3億円-4,800万円=2億5,200万円です。 よって、長女Cさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億5,200万円×1/4=6,300万円となります。 したがって、長女Cさんの法定相続分に対応する相続税額は、6,300万円×30%-700万円=1,190万円となります。 |
③ | 妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億5,200万円×1/2=1億2,600万円となります。 よって、妻Bさんの法定相続分に対応する相続税額は、1億2,600万円×40%-1,700万円=3,340万円となります。 また、長女Cさんと二女Dさんは、法定相続分が同じですから、法定相続分に対応する相続税額も同じになります。 したがって、相続税の総額は、3,340万円+1,190万円+1,190万円=5,720万円となります。 |
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