FP2級実技(生保)解説-2021年5月・問10~15
個人で小売店を営むAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんとの4人家族である。Aさんは、2020年中に一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金600万円を受け取っている。また、Aさんは2021年分の所得税から青色申告を行う予定である。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(51歳)]
個人事業主(白色申告者)
[妻Bさん(48歳)]
専業主婦。2020年中の収入はない。
[長女Cさん(20歳)]
大学生。2020年中に、塾講師のアルバイトにより給与収入50万円を得ている。
[二女Dさん(19歳)]
大学生。2020年中の収入はない。
<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
530万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2011年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:600万円
正味払込保険料:500万円
<Aさんが2020年中に支払った生命保険の保険料に関する資料>
[終身保険(特約付加なし)]
契約年月:2012年6月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
年間正味払込保険料:150,000円
[医療保険(死亡保障なし)]
契約年月:2012年6月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
年間正味払込保険料:70,000円
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することにより、最高□□□万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます。2020年分以後の所得税からはこれらの要件に加えて、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行うことで、最高( ① )万円の青色申告特別控除の適用を受けることができます。ただし、確定申告書を確定申告期限後に提出した場合、青色申告特別控除額は最高( ② )万円です」 |
Ⅱ | 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の( ③ )年間の繰越控除、純損失の繰戻還付、棚卸資産の評価について低価法を選択できることなどが挙げられます」 |
イ.3 ロ.5 ハ.7 ニ.10 ホ.20
へ.30 ト.55 チ.63 リ.65
① | 事業所得の計算上、青色申告特別控除額は、一定の電子申告要件等を満たすことにより、最高65万円になります。 |
② | 青色申告特別控除額は、期限後申告をした場合には最高10万円になります。 |
③ | 青色申告者は、純損失を最大3年間にわたって繰越控除することができます。 |
① | 「Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。また、仮に、将来妻BさんがAさんの青色事業専従者として給与の支払を受ける者となった場合でも、所定の要件を満たせば、妻Bさんは控除対象配偶者となります」 |
② | 「長女Cさんの合計所得金額が48万円を超えるため、Aさんは長女Cさんに係る扶養控除の適用を受けることはできません」 |
③ | 「Aさんが適用を受けることができる二女Dさんに係る扶養控除の控除額は、63万円です」 |
① | 青色事業専従者は、配偶者控除や配偶者特別控除、および、扶養控除の対象にはなりません。 |
② | 長女Cさんの給与収入は50万円であり、給与所得控除額は最低55万円が保証されていますから、長女Cさんの所得は0(つまり、48万円以下)となり、扶養控除の対象となります。 |
③ | 二女Dさんは、19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族ですから、特定扶養親族として63万円の扶養控除の対象となります。 |
事業所得の金額 | 5,300,000円 |
総所得金額に算入される一時所得の金額 | □□□円 |
(a)総所得金額 | ( ① )円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | ( ② )円 |
配偶者控除 | □□□円 |
扶養控除 | □□□円 |
基礎控除 | ( ③ )円 |
(b)所得控除の額の合計額 | 3,200,000円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | □□□円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ④ )円 |
<資料>所得税の速算表 | ||
課税される 所得金額 |
税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | - |
195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
<資料>所得税における生命保険料控除額(2012年1月1日以後に締結した契約) | ||
年間支払保険料 | 生命保険料控除額 | |
2万円以下 | 支払保険料の全額 | |
2万円超4万円以下 | 支払保険料×1/2+1万円 | |
4万円超8万円以下 | 支払保険料×1/4+2万円 | |
8万円超 | 4万円 |
① | 一時所得の金額=収入金額-収入を得るために要した支出-特別控除額(最高50万円)であり、この2分の1相当額が総所得金額に算入されます。 よって、一時所得の金額=600万円-500万円-50万円=50万円となり、50万円×1/2=25万円が総所得金額に算入されます。 したがって、総所得金額=530万円+25万円=555万円となります。 |
② | 終身保険の保険料は、一般の生命保険料控除の対象となり、医療保険の保険料は、介護医療保険料控除の対象となります。 よって、一般の生命保険料控除の額=40,000円、介護医療保険料控除の額=70,000円×1/4+20,000円=37,500円となります。 したがって、生命保険料控除の額=40,000円+37,500円=77,500円となります。 |
③ | 合計所得金額が2,400万円以下の人に係る基礎控除の額は、48万円です。 |
④ | ①より、課税総所得金額=5,550,000円- 3,200,000円=2,350,000円ですから、算出税額=2,350,000円×10%-97,500円=137,500円となります。 |
独身であるAさん(55歳)は、首都圏にあるX市の賃貸マンションに住んでいる。2021年4月2日、故郷Y市の自宅(実家)で1人暮らしをしていた父Dさんが死亡し、同日中に相続人全員がその相続開始の事実を知った。
父Dさんの相続に係る相続人は、Aさん、弟Bさん(52歳)および妹Cさん(50歳)の3人である。Aさんは、弟Bさんおよび妹Cさんと相談して、遺産分割を行う予定であるが、遺産分割の方法や相続税の申告等、わからないことが多い。
なお、Aさん、弟Bさんおよび妹Cさんは、自宅を所有していないが、Y市に戻る予定がないため、自宅(実家)については、売却を検討している。
<父Dさんの主な相続財産(相続税評価額)>
[預貯金]
2,000万円
[自宅(実家)]
敷地(410㎡):5,000万円(注)
建物(1978年築):200万円
[賃貸アパート(現在、全室賃貸中)]
敷地(300㎡):4,000万円(注)
②建物(6室):2,500万円
[死亡保険金]
2,000万円
契約者(=保険料負担者):父Dさん
被保険者:父Dさん
死亡保険金受取人:弟Bさん
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
Ⅰ | 「賃貸アパートを経営していた父Dさんが2021年分の所得税について確定申告書を提出しなければならない場合に該当するとき、相続人は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ① )カ月以内に準確定申告書を提出しなければなりません」 |
Ⅱ | 「相続税の申告書の提出期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ② )カ月以内です。申告書の提出先は、父Dさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長になります」 |
Ⅲ | 「弟Bさんが受け取る死亡保険金(2,000万円)のうち、相続税の課税価格に算入される金額は、( ③ )万円となります」 |
Ⅳ | 「自宅(実家)の敷地および建物をAさんが取得し、『被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例』の適用を受けた場合、譲渡所得の金額の計算上、最高( ④ )万円の特別控除の適用を受けることができます」 |
① | 準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。 |
② | 相続税の申告期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日 の翌日から10ヵ月以内です。 |
③ | 相続人が受け取る死亡保険金は、相続税の計算上、500万円×法定相続人の数まで非課税になります。よって、死亡保険金2,000万円のうち、500万円×3=1,500万円が非課税となり、500万円が相続税の課税価格に算入されます。 |
④ | 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用を受けた場合、譲渡所得の金額の計算上、最高3,000万円を控除することができます。 |
① | 「Aさんが自宅(実家)の敷地を相続し、特定居住用宅地等として本特例の適用を受けた場合、その敷地の400㎡までを限度面積として、評価額の80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができます」 |
② | 「Aさんが自宅(実家)の敷地を相続し、当該敷地を相続税の申告期限前に売却した場合であっても、本特例の適用を受けることができます」 |
③ | 「自宅(実家)の敷地と賃貸アパートの敷地について、本特例の適用を受けようとする場合、適用対象面積の調整はせず、それぞれの宅地等の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます」 |
① | 特定居住用宅地等に該当する宅地は、330㎡まで80%評価減されます。 |
② | 配偶者以外が自宅の土地を相続した場合、相続税の申告期限までに継続して保有しているなどの要件を満たさなければ、当該土地について小規模宅地等の評価減の特例を受けることはできません。 |
③ | 特定居住用宅地等と貸付事業用宅地等の両方について小規模宅地等の評価減の特例を受けようとする場合、適用対象面積の調整計算を行う必要があります。 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | 1億5,000万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
Aさん | ( ② )万円 |
弟Bさん | □□□万円 |
妹Cさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
① | 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。 |
② | 課税遺産総額は、1億5,000万円-4,800万円=1億200万円です。 相続人は、血族相続のみで3人ですから、Aさんの法定相続分は、1/3になります。 よって、Aさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億200万円×1/3=3,400万円となります。 したがって、Aさんの法定相続分対応する相続税額は、3,400万円×20%-200万円=480万円となります。 |
③ | 弟Bさんと妹Cさんの法定相続分は、それぞれ1/3です。 よって、弟Bさんと妹Cさんの法定相続分に応ずる取得金額はそれぞれ、1億200万円×1/3=3,400万円となります。 したがって、弟Bさんと妹Cさんの法定相続分対応する相続税額はそれぞれ、3,400万円×20%-200万円=480万円となります。 ゆえに、相続税の総額は、480万円+480万円+480万円=1,440万円となります。 |
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