FP2級実技(生保)解説-2021年1月・問10~15
X株式会社に勤務するAさんは、妻Bさん、長男Cさん、二男Dさんおよび三男Eさんとの5人家族である。Aさんは、2020年中に終身保険の解約返戻金150万円および一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金650万円を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(52歳)]
会社員
[妻Bさん(50歳)]
専業主婦。2020年中の収入はない。
[長男Cさん(20歳)]
大学生。2020年中に、アルバイトとして給与収入50万円を得ている。
[二男Dさん(1717歳)]
高校生。2020年中の収入はない。
[三男Eさん(15歳)]
中学生。2020年中の収入はない。
<Aさんの2020年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
900万円
[終身保険の解約返戻金]
契約年月:2007年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:150万円
正味払込保険料:180万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2011年8月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡給付金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:650万円
正味払込保険料:500万円
※ | 妻Bさん、長男Cさん、二男Dさんおよび三男Eさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2020年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「2020年分の所得税から、給与所得控除と基礎控除が改正されました。給与所得控除の控除額は、給与等の収入金額が850万円以下の者については従前と比較して一律で( ① )引き下げられ、給与等の収入金額が850万円を超える者については控除上限額である195万円となります。一方、基礎控除の控除額は引き上げられますが、合計所得金額が2,400万円を超える者については控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える者については基礎控除の適用を受けることができないこととされました」 |
Ⅱ | 「妻Bさんの合計所得金額は48万円以下となりますので、Aさんは配偶者控除の適用を受けることができます。Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は( ② )となります」 |
Ⅲ | 「2020年分の所得税から、所得金額調整控除が創設されました。Aさんのように給与等の収入金額が850万円を超え、23歳未満の扶養親族がいる場合、総所得金額の計算上、給与等の収入金額(1,000万円を超える場合は1,000万円)から850万円を控除した金額の( ③ )相当額を給与所得の金額から控除することができます」 |
イ.10万円 ロ.15万円 ハ.20万円
ニ.32万円 ホ.38万円 へ.48万円
ト.5% チ.8% リ. 10%
① | 2020年分の所得税から、給与所得控除の額は、給与等の収入金額が850万円以下の人については、従前と比較して一律10万円引き下げられました。 |
② | 合計所得金額が900万円以下の人が適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です。 |
③ | 給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、23歳未満の扶養親族を有する場合には、「{給与等の収入金額(1,000万円が限度)-850万円}×10%」を所得金額調整控除として、給与所得から控除することができます。 |
① | 「長男Cさんは特定扶養親族に該当しますので、Aさんが適用を受けることができる長男Cさんに係る扶養控除の控除額は63万円となります」 |
② | 「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から10年以内の解約のため、金融類似商品に該当し、源泉分離課税の対象となります」 |
③ | 「Aさんの場合、総所得金額に算入される一時所得の金額が20万円を超えるため、所得税の確定申告をしなければなりません」 |
① | 正しい記述です。19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族は、特定扶養親族として63万円の控除対象となります。 |
② | 一時払変額個人年金の解約返戻金は、契約から解約までの期間に関わらず、一時所得として所得税の課税対象となります。 |
③ | 正しい記述です。 Aさんの一時所得の額=(150万円+650万円)-(180万円+500万円)-50万円=70万円です。 一時所得の額は、その2分の1相当額が総所得金額に算入され、給与所得者が、総所得金額に算入される額が20万円を超える給与所得及び退職所得以外の所得を得ることになりますから、確定申告の義務が生じます。 |
給与所得の金額(所得金額調整控除の適用後の金額) | 7,000,000円 |
総所得金額に算入される一時所得の金額 | ( ① )円 |
(a)総所得金額 | □□□円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | 100,000円 |
地震保険料控除 | 330,000円 |
配偶者控除 | □□□円 |
扶養控除 | ( ② )円 |
基礎控除 | ( ③ )円 |
(b)所得控除の額の合計額 | 3,200,000円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | □□□円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ④ )円 |
<資料>所得税の速算表 | ||
課税される 所得金額 |
税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | - |
195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
① | Aさんの一時所得の額=(150万円+650万円)-(180万円+500万円)-50万円=70万円です。 一時所得の額は、その2分の1相当額が総所得金額に算入されますから、総所得金額への算入額は、70万円×1/2=350,000円となります。 |
② | 長男Cさんは、63万円の控除対象となります(問11の①で説明済み)。 二男Dさんは、16歳以上19歳未満の控除対象扶養親族ですから、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除対象となります。 三男Eさんは、16歳未満ですから、扶養控除の対象にはなりません。 よって、扶養控除の額=63万+38万円=1,010,000円となります。 |
③ | 合計所得金額が2,400万円以下の人は、48万円の基礎控除の適用を受けることができます。 |
④ | 総所得金額=7,000,000円+350,000=7,350,000円です。 また、所得控除の合計額=3,200,000円より、課税所得金額は、7,350,000円-3,200,000円=4,150,000円です。 したがって、所得税の算出税額は、4,150,000円×20%-427,500円=402,500円となります。 |
Aさんは、2020年12月28日に病気により75歳で死亡した。Aさんは、生前に自筆証書遺言を作成し、自筆証書遺言書保管制度により法務局(遺言書保管所)に保管しており、財産は妻Bさん(72歳)、長女Dさん(44歳)、孫Gさん(17歳)および孫Hさん(15歳)に取得させ、疎遠になっていた長男Cさん(47歳)には財産は取得させない内容となっている。Aさんの親族関係図や相続財産は、以下のとおりである。なお、二女Eさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
<Aさんの主な相続財産(相続税評価額)>
[現預金]
9,500万円
[自宅]
①敷地(440㎡):8,000万円(注)
②建物:600万円
[死亡保険金]
3,500万円(契約者(=保険料負担者)・被保険者:Aさん、死亡保険金受取人:妻Bさん)
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 「相続税の申告書の提出期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内です。申告書の提出先は、Aさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長になります」 |
② | 「孫Gさんおよび孫HさんはAさんの孫にあたりますが、二女Eさんの代襲相続人ですので、相続税額の2割加算の対象にはなりません」 |
③ | 「法務局(遺言書保管所)に保管されている自筆証書遺言は相続開始後、相続人が遅滞なく、家庭裁判所に提出して、その検認の請求をしなければなりません」 |
① | 相続税の申告期限は、原則として相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
② | 代襲相続人である孫は、2割加算の対象ではありません。 |
③ | 遺言保管制度を利用した自筆証書遺言は、改ざんの恐れがないため検認は不要です。 |
ⅰ) | 『遺留分』 「遺言により取得する財産がないとされた長男Cさんが遺留分侵害額請求権を行使する場合、長男Cさんの遺留分の額は、遺留分を算定するための財産の価額に( ① )を乗じた額となります」 |
ⅱ) | 『死亡保険金』 「妻Bさんが受け取る死亡保険金(3,500万円)のうち、相続税の課税価格に算入される金額は( ② )万円です」 |
ⅲ) | 『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』 「妻Bさんが自宅の敷地を相続により取得し、特定居住用宅地等として小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、その敷地のうち( ③ )㎡までを限度面積として、評価額の80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができます」 |
イ.200 ロ.330 ハ.400
ニ.500 ホ.1,000 ヘ.1,500
ト.6分の1
チ.8分の1 リ.12分の1
① | 相続人が直系尊属のみであるというケースに該当しないため、抽象的遺留分の額は、遺留分算定の基礎となる財産の2分の1相当額です。 よって、具体的遺留分の額=抽象的遺留分の額×法定相続分=遺留分算定の基礎となる財産×1/2×1/6=遺留分算定の基礎となる財産×1/12となります。 |
② | 法定相続人の数は5人ですから、相続人が受け取る相続税の課税対象となる死亡保険金は、500万円×5=2,500万円まで非課税となります。 よって、妻Bさんが受け取る死亡保険金のうち、相続税の課税価格に算入される金額は、3,500万円-2,500万円=1,000万円となります。 |
③ | 特定居住用宅地等は、330㎡までに係る相続税の課税価格が80%減額されます。 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | 1億5,000万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | ( ② )万円 |
長女Dさん | □□□万円 |
孫Gさん | ( ③ )万円 |
孫Hさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
60,000万円超 | 55% | 7,200万円 |
① | 遺産に係る基礎控除額=600万円×法定相続人の数+3,000万円=600万円×5+3,000万円=6,000万円です。 |
② |
課税遺産総額は、1億5,000万円-6,000万円=9,000万円より、各人の法定相続分に応ずる取得金額は、 よって、相続税の総額の基となる税額は、 |
③ | ②で説明済みです。 |
④ | ②より、相続税の総額=700万円+175万円+175万円+75万円+75万円=1,200万円となります。 |
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