FP2級実技(生保)解説-2020年9月・問1~9
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさんは、最近、老後の生活資金の準備を始めたいと考えており、その前提として、将来どのくらいの年金額を受給することができるのか、知りたいと思うようになった。
また、Aさんは、X社が実施している確定拠出年金の企業型年金(以下、「企業型年金」という)に加入しており、老後の収入を増やすために、企業型年金加入者掛金の拠出(以下、「マッチング拠出」という)の利用を検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(52歳)]
1968年7月12日生まれ
会社員
公的年金加入歴 : 下図のとおり(65歳でX社を退職するまでの見込みを含む)。20歳から大学生であった期間(33月)は国民年金に任意加入していない。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中。
[妻Bさん(47歳)]
1972年10月21日生まれ
専業主婦
18歳からAさんと結婚するまでの11年間(132月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の年金額 |
② | 原則として、Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の年金額 |
① | 国民年金の未加入期間は、老齢基礎年金の受給額の計算期間に含まれませんが、厚生年金保険の被保険者期間は、老齢基礎年金の受給額の計算期間に含まれます。 よって、老齢基礎年金の年金額=781,700円×447月/480月=727,958.125円≒727,958円となります。 |
② |
ⅰ)報酬比例部分の額 ⅱ)経過的加算額 ⅲ)加給年金額 |
<参考> | |
・ | 経過的加算額の計算上、定額部分の被保険者期間の月数は、1946年4月2日生まれ以降の人は、最大480ヵ月となります(試験対策上、誕生日の条件は気にせず、最大480ヵ月と思っても良いと思います)。 |
・ | 経過的加算額の計算上、447月の部分は、厚生年金保険の被保険者期間(264月+241月)から、60際以降65歳までの厚生年金保険の被保険者月数60月を引いて求めています。 |
① | 「老齢基礎年金の支給開始年齢は原則として65歳ですが、Aさんが66歳に達する前に老齢基礎年金の請求をしない場合、原則として、老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をすることができます」 |
② | 「老齢基礎年金の繰下げ支給の申出を行った場合、繰り下げた月数に応じて年金額が増額されます。仮に、Aさんが70歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出を行った場合、年金の増額率は42%となります」 |
③ | 「老齢基礎年金の繰下げ支給の申出は、老齢厚生年金の繰下げ支給の申出と同時に行わなければならず、どちらか一方のみを繰り下げることはできません」 |
① | 正しい記述です。 |
② | 正しい記述です。公的年金を繰り下げ受給する場合、繰り下げ1ヵ月当たり0.7%増額されて、最高で5年間(60ヵ月)繰り下げることができますから、増額率は最大42%となります。 |
③ | 公的年金の繰り下げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金で別々に行うことができます。 ちなみに、公的年金の繰り上げは、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰上げる必要があります。 |
① | 「マッチング拠出により、Aさんが拠出することのできる掛金の額は、事業主掛金の額にかかわらず、拠出限度額からAさんに係る事業主掛金の額を差し引いた額となります」 |
② | 「マッチング拠出により、Aさんが拠出する掛金は、その2分の1相当額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象となります」 |
③ | 「企業型年金は、将来の年金受取額が企業の指図に基づく運用実績により左右される年金制度であり、年金受取総額は最低保証されています」 |
① | マッチング拠出により加入者が拠出することができる掛金の額は、事業主掛金と合わせて限度額まで、かつ、事業主掛金以下です。 |
② | マッチング拠出により加入者が拠出した掛金の額は、その全額が小規模企業共済等掛金控除として所得控除の対象になります。 |
③ | 確定拠出年金は、個人型年金も企業型年金も、運用指図を行うのは加入者であり、年金受取総額に最低保証はありません。 |
会社員のAさん(女性・30歳)は、母Bさん(62歳)との2人暮らしである。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者から、がんに対する保障の準備として<資料1>の生命保険、資産形成の方法として<資料2>の生命保険の提案を受けた。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<資料1>
保険の種類:無配当終身がん保険(60歳払込満了)
月払保険料:6,700円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
指定代理請求人:母Bさん
(注) | がんの治療を目的とする所定の抗がん剤治療を受けた月ごとに支払われる。 |
<資料2>
保険の種類:5年ごと利差配当付個人年金保険
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
年金受取人:Aさん
死亡保険金受取人:母Bさん
保険料払込満了年齢:60歳
年金開始年齢:65歳(据置期間5年)
月払保険料:20,000円
払込保険料累計額(①):720万円(30年間)
年金の種類:10年確定年金
年金開始時の一括受取額:約753万円
基本年金額:76.4万円
年金受取累計額(②):764万円
年金受取率(②÷①):106.1%(小数点第2位以下切捨て)
特約:個人年金保険料税制適格特約付加
※ | 所定の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 「がんに罹患した場合、治療費や治療に伴う諸費用がかかることが想定されますので、がん診断給付金特約などで一時金を準備することは検討に値します。また、女性特有のがんに対する保障を手厚くした商品もありますのでご検討ください」 |
② | 「がんの治療(抗がん剤治療等)は、通院による治療で行われる場合も多くなっています。そのため、がんに対する保障を検討する場合は、入院日額やがん診断給付金額などに加え、退院後の通院保障について確認することが大切です」 |
③ | 「先進医療の治療を受けた場合、診察料、投薬料および技術料は全額自己負担になります。また、がんの治療において、技術料が高額となる重粒子線治療や陽子線治療などに備えて、がん先進医療特約の付加をお勧めします」 |
① | 正しい記述です。 |
② | 正しい記述です。 |
③ | 先進医療の治療を受けた場合、先進医療の技術料は全額自己負担となりますが、その他の診察料、検査料、投薬料、入院料などは公的医療保険が適用されます。 |
① | 「提案を受けている個人年金保険に加入後、年金受取開始前にAさんが亡くなった場合、死亡保険金受取人が契約時に定められた年金受取総額を死亡保険金として受け取ることができます」 |
② | 「提案を受けている個人年金保険に加入後、年金受取期間中にAさんが亡くなった場合、相続人等が既払込保険料相当額の死亡保険金を受け取ることができます」 |
③ | 「資産形成の方法として、提案を受けている生命保険以外にも、外貨建ての個人年金保険や終身保険等もありますので、複数の保険商品を比較したうえで加入をご検討ください。ただし、外貨建ての保険には、為替リスクなどがありますので、注意してください」 |
① | 個人年金保険の被保険者が年金受取開始前に死亡した場合、基本的に、既払込保険料相当額の死亡保険金を受け取ることになります。 |
② | 確定年金の被保険者が年金受取期間中に死亡した場合、遺族が、残りの年金支払期間に対応する年金または一時金を受け取ることができます。 |
③ | 正しい記述です。 |
Ⅰ | 「Aさんが支払うがん保険に係る保険料は介護医療保険料控除の対象となり、個人年金保険に係る保険料は個人年金保険料控除の対象となります。それぞれの控除の控除限度額は、所得税で( ① )円、住民税で( ② )円です」 |
Ⅱ | 「 Aさんが個人年金保険から確定年金として年金額を受け取る場合、その年金は( ③ )所得として総合課税の対象となります。他方、Aさんが年金受取開始時に年金額を一括して受け取った場合、その一時金は( ④ )所得として総合課税の対象となります」 |
イ.25,000 ロ.28,000 ハ.35,000
ニ.40,000 ホ.50,000
へ.一時
ト.配当 チ.利子 リ.雑 ヌ.退職
① | 生命保険料控除の計算において、介護医療保険料控除の額は、所得税では40,000円までです。 |
② | 生命保険料控除の計算において、介護医療保険料控除の額は、住民税では28,000円までです。 |
③ | 個人が個人年金保険の年金を受け取った場合は、雑所得になります。 |
④ | 個人年金保険の年金額を年金受取開始時に一括して受け取った場合、一時所得になります。 |
Aさん(40歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長である。Aさんは、現在、従業員および自身の退職金準備の方法について検討している。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談したところ、従業員の退職金準備として中小企業退職金共済制度を紹介された。また、自身の退職金準備を目的とした下記<資料>の終身保険の提案を受けた。
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
800万円+□□□万円×(( ① )年-20年)=( ② )万円
<退職所得の金額>
(8,000万円-( ② )万円)×□□□=( ③ )万円
① | 退職所得控除額の計算上、勤続年数が20年を超える部分については、1年あたり70万円の控除を受けることができます。 |
② | 退職所得控除額の計算上、勤続年数の端数は切り上げます。 また、勤続年数が20年を超える場合の退職所得控除額=800万円+70万円×(勤続年数-20)より、退職所得控除額=800万円+70万円×(32-20)=1,640万円となります。 |
③ | 退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2より、退職所得の金額=(5,000万円-1,640万円)×1/2=1,680万円となります。 |
掛金は、被共済者(従業員)1人につき月額5,000円から3万円までの範囲から選択し、( ① )負担します。また、中退共に新たに加入する事業主に対して、原則として、掛金月額の( ② )(被共済者1人ごとに5,000円が上限)を加入後4カ月目から( ③ )年間、国が助成する制度があります。
被共済者(従業員)が定年退職したときは、勤労者退職金共済機構から退職金が( ④ )支給されます。退職金は、退職時に一括して受け取る一時払いのほか、退職金が所定の金額以上であることなどの要件を満たした場合は、退職金の全部または一部を分割払いにすることもできます」
イ.1 ロ.2 ハ.3
ニ.2分の1 ホ.3分の2
ヘ.4分の3
ト.事業主が全額を
チ.事業主と被共済者が折半して
リ.被共済者が全額を
ヌ. 従業員に直接
ル. 事業主を経由して従業員に
① | 中退共の掛金は、全額事業主負担です。 |
② | 中退共の掛金は、国がその2分の1を助成する制度があります。 |
③ | 中退共の掛金の国による助成は、加入後4ヵ月目から1年間です。 |
④ | 中退共の退職金は、勤労者退職金共済機構から直接、被共済者に支給されます。 |
① | 「Aさんが勇退する際に、契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの相続人に名義変更することで、当該保険契約を役員退職金の一部として支給し、個人の保険として継続することができます」 |
② | 「当該生命保険の保険料は、支払保険料の全額を資産に計上します。65歳満了時に解約した場合、X社はそれまで資産計上していた保険料積立金を取り崩し、解約返戻金との差額150万円を雑損失として経理処理します」 |
③ | 「Aさんが高度障害状態となり、X社が高度障害保険金を受け取った場合、法人税法上、当該保険金については非課税所得となりますので、益金に計上する必要はありません」 |
① | 正しい記述です。 |
② | 法人が保険金受取人である終身保険の保険料は、全額資産計上しますから、当該保険に係る資産計上額は、4,500万円です。 保険を解約した際に、解約返戻金の額が資産計上額よりも多ければ、その差額を雑収入として処理します。 |
③ | 法人が受け取る保険金には、個人に適用されるような非課税措置はありません。 |
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