FP2級実技(保険)解説-2018年5月・問10~15
Aさんは、妻Bさんおよび母Cさんの3人家族である。Aさんは、現在、個人でデザイン事務所を営んでいるが、過去に会社員をしていた期間があり、平成29年8月から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給している。
Aさんとその家族に関する資料および平成29年分の収入等に関する資料は、以下のとおりである。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(62歳)]
個人事業主
[妻Bさん(60歳)]
パートタイマーとして近所のスーパーマーケットで働いている。平成29年中に給与収入100万円を得ている。
[母Cさん(83歳))]
無職。平成29年中に老齢基礎年金60万円および遺族厚生年金50万円を受け取っている。
<Aさんの平成29年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
300万円(青色申告特別控除後)
[報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の年金額]
25万円
[確定拠出年金の老齢給付金の年金額]
40万円
[生命保険契約に基づく年金収入]
100万円(必要経費は60万円)
[一時払終身保険の解約返戻金]
契約年月:平成15年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:1,100万円
一時払保険料:1,000万円
[ 一時払養老保険(10年満期)の満期保険金]
契約年月:平成19年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:550万円
一時払保険料:500万円
※ | 妻Bさんおよび母Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも平成29年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
・ | 「事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することにより、事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができます。なお、青色申告者が備え付けるべき決算関係書類などの帳簿書類は、原則として( ② )年間保存しなければなりません」(注)制度改正あり |
・ | 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、純損失の( ③ )年間の繰越控除、純損失の繰戻還付、棚卸資産の評価について低価法を選択できることなどが挙げられます」 |
イ.2 ロ.3 ハ.7
ニ.9 ホ.10 ヘ.11
ト.38 チ.55 リ.65
① | 事業所得の計算上控除する事が出来る青色申告特別控除額は、最大で65万円です(青色申告特別控除額は、基本的に最高55万円ですが、電子申告要件等を満たした場合、最高65万円になります)。 |
② | 青色申告者は、原則として、帳簿書類を7年間保存しなくてはいけない事とされています。 |
③ | 青色申告者は、純損失を最大3年間繰越控除する事ができます。 |
1. | 「Aさんの場合、公的年金等の収入金額の合計額が70万円以下であるため、公的年金等に係る雑所得の金額は算出されません」(注)制度改正あり |
2. | 「一時払養老保険の満期保険金に係る保険差益は、源泉分離課税の対象となりますので、確定申告をする必要はありません」 |
3. | 「母Cさんの合計所得金額は38万円以下となりますので、Aさんは母Cさんに係る扶養控除の適用を受けることができます。母Cさんに係る扶養控除の額は48万円となります」 |
1. |
正しい記述です。65歳未満の人の公的年金等控除額は、70万円です。
|
||
2. | 一時払養老保険の満期保険金に係る保険差益は、満期までの期間が5年以下である場合は源泉分離課税の対象となりますが、5年を超える場合は一時所得となります。 | ||
3. |
母親の合計所得金額は、遺族厚生年金は非課税で、65歳以上の人に対する公的年金等控除額の最低額が120万円である事より、0円になります。 <参考> |
事業所得の金額 | □□□万円 |
総所得金額に算入される一時所得の金額 | ( ① )円 |
雑所得の金額 | ( ② )円 |
(a)総所得金額 | □□□円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | 50,000円 |
地震保険料控除 | 20,000円 |
配偶者控除 | ( ③ )円 |
扶養控除 | □□□円 |
基礎控除 | 380,000円 |
(b)所得控除の額の合計額 | 2,100,000円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | □□□円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ④ )円 |
<資料>所得税の速算表 | ||
課税総所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | - |
195万円超 330万円以下 |
10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 |
20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 |
23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
90,000
① | 一時所得の対象となる収入金額は、1,100万円+550万円=1,650万円です。また、この収入を得るための必要経費は、1,000万円+500万円=1,500万円ですから、一時所得の金額=1,650万円-1,500万円-50万円=100万円です。 一時所得は、その半額が総所得金額に算入されますから、総所得金額に算入される一時所得の金額は、100万円×1/2=50万円です。 |
||
② |
公的年金等に係る雑所得の収入金額は、特別支給の老齢厚生年金と確定拠出年金の計65万円であり、公的年金等控除額(70万円)を下回りますから、所得の金額は0となります。
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③ |
妻Bさんは、給与収入が100万円ですから、給与所得=100万円-65万円=35万円となり、合計所得金額が38万円以下となりますから、配偶者控除の対象となります。配偶者控除の金額は、38万円です。 <参考> |
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④ |
①、②より、総所得金額=390万円ですから、課税総所得金額=390万円-210万円=180万円となります。
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Aさん(65歳)は、妻と長女の3人で首都圏にあるK市に住んでいる。平成30年4月4日、故郷であるX市内の実家で1人暮らしをしていた母Cさんが死亡し、同日中に相続人全員がその相続開始の事実を知った。
母Cさんの相続に係る相続人は、Aさんおよび妹Bさん(61歳)の2人である。母Cさんは、遺言書を作成しておらず、Aさんは妹Bさんと相談して、遺産分割を行う予定であるが、遺産分割の方法や相続税の申告等、わからないことが多い。
なお、Aさんおよび妹Bさんは、それぞれが所有する自宅に居住しており、X市内の実家に戻る予定がないため、実家(敷地および建物)については、相続手続の終了後、売却したいと思っている。また、賃貸アパート(敷地および建物)については、Aさんが相続により取得し、貸付事業を承継する予定である。
<母Cさんの相続財産(相続税評価額)>
[預貯金]
1,700万円
[自宅(実家)]
敷地(360㎡):5,500万円
建物(昭和54年築):300万円
[賃貸アパート(全室、賃貸中)]
敷地(300㎡):3,000万円(貸家建付地としての相続税評価額)
建物:2,500万円
[死亡保険金]
1,200万円
契約者(=保険料負担者):母Cさん
被保険者:母Cさん
死亡保険金受取人:Aさん
※ | 賃貸アパートの敷地は、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額である。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
・ | 「母Cさんの相続における遺産に係る基礎控除額は、( ① )万円です。課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額を上回りますので、相続税の申告が必要となります。相続税の申告書の提出期限は、相続の開始のあったことを知った日の翌日から( ② )カ月以内となります」 |
・ | 「仮に、課税価格の合計額を1億3,000万円として計算した場合の相続税の総額は、( ③ )万円となります。相続により取得する預貯金および死亡保険金の額が相続税の総額を超えていますので、Aさんおよび妹Bさんがご自身の預貯金等から納税資金を捻出する必要はないと思われます」 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
① | 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数で、法定相続人の数は2人ですから、基礎控除額=3,000万円+600万円×2、=4,200万円となります。 |
② | 相続税の申告期限は、相続の開始のあったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
③ | 課税価格の合計額が1億3,000万円であった場合、①より、課税遺産総額は、1億3,000万円-4,200万円=8,800万円となります。 相続税の総額の基となる税額を計算する際には、課税遺産総額を法定相続分に応じて按分したと仮定して計算しますから、AさんとBさんの法定相続分に応ずる取得金額はそれぞれ、8,800万円×1/2=4,400万円となります。 よって、AさんとBさんの相続税の総額の基となる税額はそれぞれ、4,400万円×20%-200万円=680万円です。 したがって、相続税の総額は、680万円×2=1,360万円となります。 |
・ | 「賃貸アパートを経営していた母Cさんが平成30年分の所得税および復興特別所得税について確定申告書を提出しなければならない場合に該当するとき、相続人は、原則として、相続の開始のあったことを知った日の翌日から( ① )カ月以内に準確定申告書を提出しなければなりません」 |
・ | 「Aさんが母Cさんの貸付事業を相続税の申告期限までに承継する等の所定の要件を満たせば、賃貸アパートの敷地は、貸付事業用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます。Aさんが当該敷地について本特例の適用を受けた場合に減額される金額は、( ② )万円となります」 |
・ | 「Aさんが受け取る死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。Aさんが受け取った死亡保険金のうち、相続税の課税価格に算入される金額は、( ③ )万円となります」 |
① | 準確定申告の申告期限は、相続の開始のあったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。 |
② | 貸付事業用宅地等として、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、200㎡までの部分について50%減額評価されます。 ゆえに、減額される金額は、3,000万円×200/300×50%=1,000万円です。 |
③ | 相続税の課税対象となる死亡保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税になりますから、500万円×2=1,000万円まで非課税となり、1,200万円-1,000万円=200万円が、相続税の課税価格に算入されます。 |
1. | 「実家の敷地および建物をAさんと妹Bさんが共有名義で取得し、本特例の適用を受けた場合、各人がそれぞれ最高3,000万円(2人で最高6,000万円)の特別控除の適用を受けることができます」 |
2. | 「Aさんが老朽化した実家の建物を解体して更地で譲渡した場合には、本特例の適用を受けることができません。本特例の適用を受けるためには、そのほかの要件もありますので、税理士等の専門職業家に相談することをお勧めします」 |
3. | 「本特例の適用を受けるためには、確定申告書に被相続人居住用家屋等確認書を添付する必要があります。当該確認書は実家が所在するX市に申請し、交付を受けてください」 |
1. | 適切な記述です。空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例は、複数の相続人が共有で相続した特例の適用対象財産を譲渡した場合には、相続人それぞれが別々に適用を受けることが可能です。 |
2. | 空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除の特例は、一定要件を満たす家屋または家屋と敷地を売却したり、一定要件を満たす家屋の全部の取り壊しをした後の敷地(更地)を売却した場合に、適用を受ける事ができます。 |
3. | 適切な記述です。 |
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