FP2級学科解説-2023年9月・問31~40
【問31】
所得税の基本的な仕組みに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 所得税では、原則として、納税者本人の申告により納付すべき税額が確定し、この確定した税額を納付する申告納税制度が採用されている。 |
2. | 所得税の納税義務を負うのは居住者のみであり、非居住者が所得税の納税義務を負うことはない。 |
3. | 所得税では、課税対象となる所得を10種類に区分し、それぞれの所得の種類ごとに定められた計算方法により所得の金額を計算する。 |
4. | 所得税額の計算において課税総所得金額に乗じる税率は、課税総所得金額が大きくなるにつれて段階的に税率が高くなる超過累進税率が採用されている。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。所得税は、国税、申告納税方式、直接税に分類される税金です。なお、課税主体が納めるべき金額を計算して納税者に通知する方式を、賦課課税方式と言います。 |
2. | 非居住者(居住者以外の個人)にも所得税の納税義務があります。個人の所得税の納税義務者は、居住者(非永住者以外)、居住者(非永住者)、非居住者に分けられます。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。所得税の計算上、課税総所得金額と課税退職所得金額には、5%~45%の7段階に分けられた超過累進税率が適用されます。 |
【問32】
所得税における所得の種類に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 不動産の貸付けを事業的規模で行ったことにより生じた賃料収入に係る所得は、不動産所得となる。 |
2. | 会社の役員が役員退職金を受け取ったことによる所得は、給与所得となる。 |
3. | 個人年金保険の契約者(=保険料負担者)である個人が、その保険契約に基づき、年金受給開始後に将来の年金給付の総額に代えて受け取った一時金に係る所得は、退職所得となる。 |
4. | 会社員が勤務先から無利息で金銭を借り入れたことにより生じた経済的利益は、雑所得となる。 |
正解:1 | |
1. | 正しい記述です。不動産の貸付けによる所得は、その規模を問わず不動産所得となります。 |
2. | 会社の役員が役員退職金を受け取ったことによる所得は、一時金で受け取るものは退職所得となり、分割で受け取るものは雑所得となります。 |
3. | 個人年金保険の契約者(=保険料負担者)である個人が、その保険契約に基づき、年金受給開始後に将来の年金給付の総額に代えて受け取った一時金に係る所得は、一時所得です。 |
4. | 会社員が勤務先から無利息で金銭を借り入れたことにより生じた経済的利益は、給与所得となります。 |
【問33】
所得税の損益通算に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 終身保険の解約返戻金を受け取ったことによる一時所得の金額の計算上生じた損失の金額は、給与所得の金額と損益通算することができる。 |
2. | 先物取引に係る雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、上場株式等に係る譲渡所得の金額と損益通算することができる。 |
3. | 不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地の取得に要した負債の利子の額に相当する部分の金額は、事業所得の金額と損益通算することができる。 |
4. | 業務用車両を売却したことによる譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、事業所得の金額と損益通算することができる。 |
正解:4 | |
1. | 損失が生じた時に損益通算の対象となる所得は、不動産所得、事業所得、山林所得、譲渡所得のうち、一定のものです。一時所得の金額の計算上生じた損失の金額は、損益通算の対象外です。 |
2. | 先物取引に係る雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、先物取引に係る事業所得と先物取引に係る譲渡所得以外の金額と損益通算することはできません。 |
3. | 不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地の取得に要した負債の利子の額に相当する部分の金額は、損益通算の対象外です。 なお、建物を取得するための借入金の利子は、損益通算の対象です。 |
4. | 正しい記述です。総合課税される譲渡所得の計算上生じた損失は、生活に通常必要とされない資産に係るものを除いて、損益通算することができます。 |
【問34】
所得税における所得控除に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 納税者が支払った生命保険の保険料は、その金額の多寡にかかわらず、支払った全額を生命保険料控除として総所得金額等から控除することができる。 |
2. | 納税者が支払った地震保険の保険料は、その金額の多寡にかかわらず、支払った全額を地震保険料控除として総所得金額等から控除することができる。 |
3. | 控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の者は、特定扶養親族に該当する。 |
4. | 控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が65歳以上の者は、老人扶養親族に該当する。 |
正解:3 | |
1. | 所得税の計算上、生命保険料控除の額は、12万円までとされています。 |
2. | 所得税の計算上、地震保険料控除の額は、支払った金額の全額で、最高5万円までとされています。 |
3. | 正しい記述です。「大学に行く(19)お兄さん(23)はむさ(63)苦しい」という語呂合わせで覚えてください。 |
4. | 老人扶養親族は、控除対象扶養親族のうち、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人です。 「なんと(70)も怖(58)い嫁姑」、「なんと(70)ビックリシワ(48)が増えてる」という語呂合わせで覚えてください。 |
【問35】
所得税の申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 青色申告者は、仕訳帳、総勘定元帳その他一定の帳簿を原則として10年間保存しなければならない。 |
2. | 青色申告者が申告期限後に確定申告書を提出した場合、適用を受けることができる青色申告特別控除額は最大55万円となる。 |
3. | 青色申告者の配偶者で青色事業専従者として給与の支払いを受ける者は、その者の合計所得金額の多寡にかかわらず、控除対象配偶者には該当しない。 |
4. | 青色申告者に損益通算してもなお控除しきれない損失の金額(純損失の金額)が生じた場合、その損失の金額を翌年以後最長で7年繰り越して、各年分の所得金額から控除することができる。 |
正解:3 | |
1. | 青色申告者は、仕訳帳、総勘定元帳その他一定の帳簿を、原則として、7年間保存しなければなりません。 「富士山(不事山)は青いなあ(7)」という語呂合わせで覚えてください。 |
2. | 期限後申告をした場合、青色申告特別控除の額は、最高10万円となります。 |
3. | 正しい記述です。青色事業専従者給与を受け取っている人は、合計所得金額が48万円以下であったとしても、配偶者控除や扶養控除などの対象外となります。 |
4. | 純損失の繰越控除は、最大で3年間認められています。 |
【問36】
法人税の仕組みに関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 法人税の各事業年度の所得の金額は、その事業年度の益金の額から損金の額を控除した金額である。 |
2. | 新設法人が設立事業年度から青色申告の適用を受けようとする場合は、設立の日から2ヵ月以内に、「青色申告の承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出し、その承認を受けなければならない。 |
3. | 期末資本金の額等が1億円以下の一定の中小法人に対する法人税の税率は、所得金額のうち年800万円以下の部分については軽減税率が適用される。 |
4. | 過去に行った法人税の確定申告について、計算に誤りがあったことにより、納付した税額が過大であったことが判明した場合、原則として、法定申告期限から5年以内に限り、更正の請求をすることができる。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 新設法人が設立事業年度から青色申告の適用を受けようとする場合の「青色申告の承認申請書」の提出期限は、法人の設立日から3ヵ月以内とされています。 なお、所得税においては、その年の1月16日以後新たに事業所得を生ずべき業務を開始した納税者が、その年分から所得税の青色申告の承認を受けようとする場合、原則として、その業務を開始した日から「2ヵ月以内」に、青色申告承認申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。 |
3. | 期末資本金の額等が1億円以下の一定の中小法人に対する法人税の税率は、所得金額のうち年800万円以下の部分については軽減税率が適用され、本則税率の19%から15%に下げられています(800万円を超える部分については23.2%) |
4. | 正しい記述です。所得税や法人税の更正の請求期間は、原則として、法定申告期限から5年以内とされています。 |
【問37】
法人税の損金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 法人が従業員の業務遂行中の交通違反に係る反則金を負担した場合、その負担金は、損金の額に算入することができる。 |
2. | 法人が減価償却資産として損金経理した金額のうち、償却限度額に達するまでの金額は、その全額を損金の額に算入することができる。 |
3. | 損金の額に算入される租税公課のうち、事業税については、原則として、その事業税に係る納税申告書を提出した日の属する事業年度の損金の額に算入することができる。 |
4. | 法人が国または地方公共団体に対して支払った寄附金は、原則として、その全額を損金の額に算入することができる。 |
正解:1 | |
1. | 交通違反に係る反則金は、それが業務の遂行中のものであっても、損金算入することができません。 |
2. | 正しい記述です。会計のルールでは、法人の減価償却は任意償却とされていますが、税法上、損金算入することができる金額には上限があります。 |
3. | 正しい記述です。事業税は、公共インフラの利用料のような性質を持つ税金ですから、損金算入することができます。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問38】
消費税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 消費税の課税期間に係る基準期間は、個人事業者についてはその年の前年である。 |
2. | 消費税の課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円を超える法人は、その課税期間は消費税の課税事業者となる。 |
3. | 簡易課税制度の適用を受けることができる事業者は、消費税の課税期間に係る基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者である。 |
4. | 簡易課税制度を選択した事業者は、事業を廃止した場合等を除き、原則として、2年間は簡易課税制度の適用を継続しなければならない。 |
正解:1 | |
1. | 消費税の課税期間に係る基準期間は、個人事業者については、その年の前々年です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。課税事業者を選択した場合や、簡易課税制度を選択した場合は、原則として、2年間は継続しなくてはなりません。 |
【問39】
会社と役員間の取引に係る所得税・法人税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 会社が役員に対して無利息で金銭の貸付けを行った場合、原則として、通常収受すべき利息に相当する金額が、その会社の所得金額の計算上、益金の額に算入される。 |
2. | 会社が役員からの借入金について債務免除を受けた場合、その債務免除を受けた金額が、その会社の所得金額の計算上、益金の額に算入される。 |
3. | 役員が所有する土地を適正な時価の2分の1未満の価額で会社に譲渡した場合、その役員は、適正な時価の2分の1に相当する金額により当該土地を譲渡したものとして譲渡所得の計算を行う。 |
4. | 役員が会社の所有する社宅に無償で居住している場合、原則として、通常の賃貸料相当額が、その役員の給与所得の収入金額に算入される。 |
正解:3 | |
1. | 正しい記述です。法人が無償で役務の提供をした場合は、益金を計上する必要があります。 |
2. | 正しい記述です。法人が債務免除を受けた場合、経済的利益が発生していますから、その額を益金に計上しなくてはなりません。 |
3. | 役員が所有する土地を適正な時価の2分の1未満の価額で会社に譲渡した場合、役員の譲渡所得の計算上、収入金額は適正な時価相当額となります。なお、2分の1の価額で譲渡した場合は、その譲渡の対価を収入金額とします。 |
4. | 正しい記述です。役員が会社の所有する社宅に無償で居住している場合、原則として、その経済的利益は定期同額給与とみなされます。 |
【問40】
決算書の見方に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 損益計算書の営業利益の額は、売上総利益の額から販売費及び一般管理費の額を差し引いた額である。 |
2. | 損益計算書の税引前当期純利益の額は、経常利益の額に営業外損益の額を加算・減算した額である。 |
3. | 流動比率(%)は、「流動資産÷流動負債×100」の算式で計算される。 |
4. | 自己資本比率(%)は、「自己資本÷総資産×100」の算式で計算される。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失です。 |
3. | 正しい記述です。流動比率は、短期的な資金繰りの安全性を判断する指標で、1年以内に返済しなければならない負債(流動負債)、1年以内に現金化できると考えられる資産(流動資産)がどの程度あるのかを測るもので、この値が大きいほど支払い能力に余裕があると判断されます。 |
4. | 正しい記述です。自己資本比率は、総資産に占める自己資本の割合を表す指標で、このこの値が大きいほど、財務の健全性が高いと判断されます。 |
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