お金の寺子屋

FP2級学科解説-2023年9月・問1~10

【問1】
ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)の顧客に対する行為に関する次の記述のうち、関連法規に照らし、最も不適切なものはどれか。
1. 金融商品取引業の登録を受けていないFPのAさんは、顧客と資産運用に関する投資顧問契約を締結したうえで、値上がりが期待できる株式の個別銘柄の購入を勧めた。
2. 弁護士の登録を受けていないFPのBさんは、財産管理の相談に来た顧客の求めに応じ、有償で、当該顧客を委任者とする任意後見契約の受任者となった。
3. 税理士の登録を受けていないFPのCさんは、顧客から配偶者控除と配偶者特別控除の適用要件を聞かれ、所得税法の条文等を示しつつ、それぞれの適用要件の違いを説明した。
4. 生命保険募集人の登録を受けていないFPのDさんは、顧客からライフプランの相談を受け、老後資金を準備するための生命保険の一般的な活用方法を説明した。
正解:
1. 投資顧問契約を締結し、個別具体的な銘柄を推奨するためには、金融商品取引業(投資助言・代理業)の登録を受けなくてはなりません。
2. 任意後見契約を締結するために保有しておかなくてはならない資格はありませんから、任意後見契約は、原則として、有償無償を問わず誰でも締結することができます。
3. 法律の解説などの一般的な説明は、有償無償を問わず誰でもすることができます。
4. 生命保険の一般的な活用方法のような一般的な説明は、有償無償を問わず誰でもすることができます。
【問2】
ライフプランの作成の際に活用される各種係数に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 一定の利率で複利運用しながら一定期間経過後の元利合計額を試算する際、現在保有する資金の額に乗じる係数は、終価係数である。
2. 一定の利率で複利運用しながら一定期間、毎年一定金額を積み立てた場合の一定期間経過後の元利合計額を試算する際、毎年の積立額に乗じる係数は、年金終価係数である。
3. 一定の利率で複利運用しながら一定期間、毎年一定金額を受け取るために必要な元本を試算する際、毎年受け取りたい金額に乗じる係数は、資本回収係数である。
4. 一定の利率で複利運用しながら一定期間経過後に目標とする額を得るために必要な毎年の積立額を試算する際、目標とする額に乗じる係数は、減債基金係数である。
正解:
1. 正しい記述です。一括型運用の将来の金額を求める係数は、4文字、「げん」の音がある、「年金」の文字がつかない、という条件を満たす終価係数です。
2. 正しい記述です。積立型運用の将来の金額を求める係数は、6文字、「げん」の音がない、「年金」の文字がつく、という条件を満たす年金終価係数です。
3. 取崩型運用の現在の金額を求める係数は、6文字、「げん」の音がある、「年金」の文字がつく、という条件を満たす年金現価係数です。
4. 正しい記述です。積立型運用の現在の金額を求める係数は、6文字、「げん」の音がある、「年金」の文字がつかない、という条件を満たす減債基金係数です。
【問3】
公的医療保険に関する次の記述の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる語句の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

健康保険の適用事業所に常時使用される( ア )未満の者は、原則として、健康保険の被保険者となる。
健康保険の傷病手当金の額は、原則として、1日につき、支給開始日の属する月以前の直近の継続した( イ )間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2に相当する金額である。
個人事業主や農林漁業者などが被保険者となる国民健康保険は、( ウ )もしくは国民健康保険組合が保険者として運営している。
1. (ア)70歳 (イ)6ヵ月 (ウ)都道府県および市町村(特別区を含む)
2. (ア)70歳 (イ)12ヵ月 (ウ)国
3. (ア)75歳 (イ)6ヵ月 (ウ)国
4. (ア)75歳 (イ)12ヵ月 (ウ)都道府県および市町村(特別区を含む)
正解:
(ア) 健康保険の被保険者は、原則として、健康保険の適用事業所に常時使用される75歳未満の人です(75歳以上の人は後期高齢者医療制度の被保険者となります)。
(イ) 傷病手当金の計算上、標準報酬月額は、原則として、支給開始日の属する月以前の直近の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均して計算します。
(ウ) 国民健康保険の保険者は、都道府県および市町村(特別区を含む)です。
【問4】
雇用保険の失業等給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 雇用保険の一般被保険者が失業した場合、基本手当を受給するためには、原則として、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12ヵ月以上あること等の要件を満たす必要がある。
2. 正当な理由がなく自己都合により退職し、基本手当の受給を申請した場合、7日間の待期期間経過後、4ヵ月間は給付制限期間として基本手当を受給することができない。
3. 基本手当の受給期間内に、出産、疾病等の理由で引き続き30日以上職業に就くことができない場合、所定の申出により、受給期間を離職日の翌日から最長4年まで延長することができる。
4. 雇用保険の高年齢被保険者が失業した場合、高年齢求職者給付金を受給するためには、原則として、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上あること等の要件を満たす必要がある。
正解:
1. 正しい記述です。雇用保険の一般被保険者(65歳未満の被保険者)が失業した場合、基本手当が支給されます。基本手当を受給するためには、原則として、離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12ヵ月以上(倒産・解雇・雇止めの場合は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上)あること等の要件を満たす必要があります。
2. 給付制限期間は、1~3ヵ月で、基本的に2ヵ月です。
3. 正しい記述です。基本手当の受給期間は、原則として、離職日の翌日から1年間ですが、3年間延長する(離職日の翌日から4年間とする)ことができます。
4. 正しい記述です。雇用保険の高年齢被保険者(65歳以上の被保険者)が失業した場合、基本手当は支給されず、高年齢求職者給付金が支給されます。高年齢求職者給付金を受給するためには、原則として、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヵ月以上あること等の要件を満たす必要があります。
【問5】
公的年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 国民年金の保険料納付済期間が10年以上あり、厚生年金保険の被保険者期間を有する者は、原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金を受給することができる。
2. 学生納付特例の承認を受けた期間に係る国民年金保険料のうち、追納することができる保険料は、追納に係る厚生労働大臣の承認を受けた日の属する月前10年以内の期間に係るものに限られる。
3. 老齢厚生年金の繰上げ支給を請求する場合、老齢基礎年金の繰上げ支給の請求も同時に行わなければならない。
4. 加給年金額が加算される老齢厚生年金について繰下げ支給の申出をする場合、加給年金額についても繰下げ支給による増額の対象となる。
正解:
1. 正しい記述です。老齢基礎年金と老齢厚生年金は、原則として、65歳から支給されます。
なお、老齢給付金を受給するためには、受給資格期間が10年以上なくてはならず、老齢厚生年金を受給するためには、老齢基礎年金を受け取ることができ、かつ、厚生年金保険の被保険者期間が1ヵ月以上あることが要件とされます。
2. 正しい記述です。国民年金保険料の免除や猶予を受けた期間については、最大で10年間遡って追納を受けることができます。
3. 正しい記述です。老齢厚生年金の繰上げ支給を請求する場合、老齢基礎年金の繰上げ支給の請求も同時に行わなければなりません。なお、繰下げる場合は、別々に申し出ることができます。
4. 加給年金は、老齢厚生年金の繰下げにより増額されることはありません(老齢厚生年金を繰下げた場合、支給停止されます)。
なお、付加年金は、老齢基礎年金と同時に繰上げ/繰下げられます。

【問6】
厚生年金保険における離婚時の年金分割制度に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、「離婚等をした場合における特例」による標準報酬の改定を合意分割といい、「被扶養配偶者である期間についての特例」による標準報酬の改定を3号分割という。
1. 合意分割および3号分割の請求期限は、原則として、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内である。
2. 合意分割は、離婚等をした当事者間において、標準報酬の改定または決定の請求をすることおよび請求すべき按分割合についての合意が得られない限り、請求することができない。
3. 3号分割の対象となるのは、2008年4月1日以降の国民年金の第3号被保険者であった期間における、当該第3号被保険者の配偶者に係る厚生年金保険の保険料納付記録(標準報酬月額・標準
賞与額)である。
4. 老齢厚生年金を受給している者について、3号分割により標準報酬の改定または決定が行われた場合、3号分割の請求をした日の属する月の翌月から年金額が改定される。
正解:
1. 正しい記述です。年金分割の手続きは、原則として、離婚をした日の翌日から2年を経過すると請求できなくなります。
2. 合意分割は、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)があり、当事者双方の合意または裁判手続により按分割合を定めた場合に請求することができます。
合意がまとまらない場合は、当事者の一方の求めにより、裁判所が按分割合を定めることができますから、合意が得られない限り請求することができないという訳ではありません。
3. 正しい記述です。「話し合いにせんわ(2008)」という語呂合わせで覚えることができます。
4. 正しい記述です。
【問7】
確定拠出年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 国民年金の任意加入被保険者のうち、所定の要件を満たす者は、個人型年金に加入することができる。
2. 企業型年金において、加入者が掛金を拠出することができることを規約で定める場合、加入者掛金の額は、その加入者に係る事業主掛金の額を超える額とすることができない。
3. 企業型年金加入者であった者が退職し、国民年金の第3号被保険者となった場合、所定の手続きにより、企業型年金の個人別管理資産を個人型年金に移換し、個人型年金加入者または個人型年金運用指図者となることができる。
4. 企業型年金および個人型年金の老齢給付金は、70歳に達する日の属する月までに受給を開始しなければならない。
正解:
1. 正しい記述です。国民年金の第1号被保険者に準じた扱いを受ける国民年金の任意加入被保険者は、所定の要件を満たせば、確定拠出型年金の個人型年金(iDeCo)に加入することができます。
2. 正しい記述です。マッチング拠出をする場合、加入者掛金の額は、事業主掛金と合わせて限度額まで、かつ、事業主掛金の額以下とされています。
3. 正しい記述です。確定拠出年金の年金原資は持ち運びができるため、企業型DCの加入者が国民年金の第3号被保険者となった場合、個人型年金に年金原資を移管し、個人型年金加入者(引き続き掛金を拠出するパターン)または個人型年金運用指図者(掛金の拠出は行わないパターン)となることができます。
4. 確定拠出年金の老齢給付金は、最も早くて60歳(通算加入者等期間が10年以上ある場合)、最も遅くて75歳から受給することができます。
ちなみに、このの年齢は、公的年金を最大限繰上げたり繰下げたりした場合と一致します。
【問8】
公的年金等に係る税金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 障害基礎年金および遺族基礎年金は、所得税の課税対象とならない。
2. 小規模企業共済の加入者が事業を廃止した際に受け取る共済金は、一括受取りを選択した場合、退職所得として所得税の課税対象となる。
3. 国民年金基金の掛金は、所得税の社会保険料控除の対象となる。
4. 年末調整の対象となる給与所得者が学生納付特例の承認を受けた期間に係る国民年金保険料を追納する場合、当該保険料に係る社会保険料控除の適用を受けるためには所得税の確定申告をしなければならず、年末調整によってその適用を受けることはできない。
正解:
1. 正しい記述です。障害年金や遺族年金は非課税です。
2. 正しい記述です。小規模企業共済の加入者が事業を廃止した際に受け取る共済金(共済金A)は、一括受取を選択した場合には退職所得となり、分割受取を選択した場合には公的年金等の雑所得となります。
3. 正しい記述です。国民年金基金の掛金は、所得税の社会保険料控除の対象となりますから、確定拠出年金の掛金(小規模企業共済等掛金控除の対象)とは異なり、生計を一にする親族のために払った金額も控除の対象となります。
4. 追納分の国民年金保険料も、年末調整の対象です。勤務先から提出を求められる保険料控除申告書に記入して提出すれば、確定申告をせずに控除を受けることができます。
【問9】
リタイアメントプランニング等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 金融機関のリバースモーゲージには、一般に、利用者が死亡し、担保物件の売却代金により借入金を返済した後も債務が残った場合に、利用者の相続人がその返済義務を負う「リコース型」と、返済義務を負わない「ノンリコース型」がある。
2. 高齢者の居住の安定確保に関する法律に定める「サービス付き高齢者向け住宅」に入居した者は、「状況把握サービス」や「生活相談サービス」を受けることができる。
3. 将来、本人の判断能力が不十分になった場合に備えて、あらかじめ本人が選任した者と締結する任意後見契約は、公正証書によらない場合であっても有効である。
4. 確定拠出年金の加入者が、老齢給付金を60歳から受給するためには、通算加入者等期間が10年以上なければならない。
正解:
1. 正しい記述です。「リコース」とは、「遡及する」という意味です。
2. 正しい記述です。サービス付き高齢者向け住宅に登録されるためには、一定の基準(施設設備、見守りサービス、契約に関する基準)を満たす必要があります。このうち、見守りサービスについては、安否確認サービスと生活相談サービスが必須とされています
3. 任意後見契約は、必ず公正証書によって締結しなくてはなりません。
4. 正しい記述です。通算加入者等期間が10年未満である場合、その年数により、最も早くから受け取ることができる年齢が、61歳~65歳となります。
【問10】
中小企業の資金調達の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 日本政策金融公庫の中小企業事業における融資では、事業用資金だけでなく、投資を目的とする有価証券等の資産の取得資金についても融資対象となる。
2. 信用保証協会保証付融資(マル保融資)は、中小企業者が金融機関から融資を受ける際に信用保証協会が保証するものであり、利用するためには、業種に応じて定められた資本金の額(出資の総額)または常時使用する従業員数の要件を満たす必要がある。
3. ABL(動産・債権担保融資)は、企業が保有する売掛債権や在庫・機械設備等の資産を担保として資金を調達する方法である。
4. クラウドファンディングは、インターネット等を介して不特定多数の者に資金の提供を呼びかけて資金を調達する方法であり、「購入型」「寄付型」等に分類される。
正解:
1. 日本政策金融公庫の中小企業事業における融資は、事業用資金のみが対象とされています。投資用の有価証券や不動産は対象外です。
2. 正しい記述です。マル保融資を利用するためには、企業規模(業種ごとに定められた資本金の額と従業員数)、業種(農林漁業などは対象外)、区域・業歴の基準を満たす必要があります
3. 正しい記述です。ABLは、Asset Based Lendingの略で、直訳すると、資産を裏付けとする融資(動産担保融資)となります。
4. 正しい記述です。

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