FP2級実技(生保)解説-2024年9月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんとの4人家族である。Aさんは、2024年中に妻Bさんの入院・手術に係る医療費を支払ったため、医療費控除の適用を受けたいと思っている。
また、Aさんは、2024年中に一時払養老保険(10年満期)の満期保険金および一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金を受け取っている。
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんとの4人家族である。Aさんは、2024年中に妻Bさんの入院・手術に係る医療費を支払ったため、医療費控除の適用を受けたいと思っている。
また、Aさんは、2024年中に一時払養老保険(10年満期)の満期保険金および一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
Aさん | (53歳) | : | 会社員 |
妻Bさん | (50歳) | : | 専業主婦。2024年中の収入はない。 |
長女Cさん | (24歳) | : | アルバイト。2024年中に給与収入150万円を得ている。 |
長男Dさん | (19歳) | : | 大学生。2024年中の収入はない。 |
<Aさんの2024年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
830万円
[一時払養老保険(10年満期)の満期保険金]
契約年月 | : | 2014年6月 |
契約者(=保険料負担者) | : | Aさん |
被保険者 | : | Aさん |
死亡保険金受取人 | : | 妻Bさん |
満期保険金額 | : | 320万円 |
正味払込保険料 | : | 300万円 |
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月 | : | 2015年6月 |
契約者(=保険料負担者) | : | Aさん |
被保険者 | : | Aさん |
死亡保険金受取人 | : | 妻Bさん |
解約返戻金額 | : | 600万円 |
正味払込保険料 | : | 500万円 |
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび長男Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2024年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
所得税における医療費控除に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
「通常の医療費控除は、その年分の総所得金額等の合計額が200万円以上である納税者の場合、その年中に支払った医療費の総額(保険金等により補填される金額を除く)が( ① )円を超えるときは、その超える部分の金額(最高200万円)を総所得金額
等から控除することができます。
また、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)では、定期健康診断や予防接種などの一定の取組みを行っている納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者等のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合、その額(保険金等により補填される金額を除く)が( ② )円を超えるときは、その超える部分の金額(最高( ③ )円)を総所得金額等から控除することができます」
等から控除することができます。
また、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)では、定期健康診断や予防接種などの一定の取組みを行っている納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者等のために特定一般用医薬品等購入費を支払った場合、その額(保険金等により補填される金額を除く)が( ② )円を超えるときは、その超える部分の金額(最高( ③ )円)を総所得金額等から控除することができます」
<数値群>
イ.12,000 ロ.24,000 ハ.36,000
ニ.68,000 ヘ.100,000 ト.120,000
チ.150,000 リ.200,000
イ.12,000 ロ.24,000 ハ.36,000
ニ.68,000 ヘ.100,000 ト.120,000
チ.150,000 リ.200,000
正解:ヘ、イ、ホ(各1点であると思われる)
① | 総所得金額等の合計額が200万円以上である場合、通常の医療費控除の額は、「(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-10万円」の算式により計算されます。 |
② | セルフメディケーション税制の適用を受けた場合の医療費控除の額は、「(その年中の特定一般用医薬品等購入費の合計額-保険金などで補てんされる金額)-12,000円」の算式により計算されます。 |
③ | セルフメディケーション税制の適用を受けた場合の医療費控除の額は、最高で88,000円となります。 |
【問11】
Aさんの2024年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「一時払養老保険は金融類似商品に該当するため、Aさんが受け取った満期保険金に係る保険差益は源泉分離課税の対象となります」 |
② | 「 Aさんが通常の医療費控除の適用を受けた場合、セルフメディケーション税制(特定一般用医薬品等購入費を支払った場合の医療費控除の特例)の適用を受けることはできません」 |
③ | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、38万円です」 |
正解:×、○、○(各1点であると思われる)
① | 一時払養老保険や一時払変額個人年金保険(確定年金タイプ)の満期保険金や解約返戻金は、契約から5年以内に受け取った場合は、金融類似商品に該当し、源泉分離課税の対象になりますが、契約から5年を超えて受け取った場合は、一時所得として総合課税の対象になります。 |
② | 正しい記述です。通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は、選択適用ですから、いずれか一方を選択して適用を受けます(併せて適用を受けることはできません)。 |
③ | 配偶者が70歳未満である場合、合計所得金額が900万円以下の人が適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です。 Aさんの合計所得金額については、総所得金額と等しくなるため、問12①の解説をご覧ください。 |
【問12】
Aさんの2024年分の所得税の算出税額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)総所得金額 | ( ① )円 |
医療費控除 | □□□円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | □□□円 |
地震保険料控除 | □□□円 |
配偶者控除 | □□□円 |
扶養控除 | ( ② )円 |
基礎控除 | ( ③ )円 |
(b)所得控除の額の合計額 | □□□円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | 3,900,000円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ④ ) |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
<資料>所得税の速算表表 | ||
課税される 所得金額 |
税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | - |
195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
正解:6,720,000(円)、630,000(円)、480,000(円)、352,500(円)(各1点であると思われる)
① | 給与所得の額=830万円-(830万円×10%+110万円)=637万円であり、給与所得の額は全額総所得金額に算入されます。 一時所得の額=(320万円+600万円)-(300万円+500万円)-50万円=70万円であり、一時所得の額は2分の1相当額が総所得金額に算入されます。 したがって、総所得金額=637万円+70万円×1/2=672万円となります。 |
② | 長女Cさんの給与所得の額=150万円-55万円=95万円より、合計所得金額が48万円を超えるため、長女は扶養控除の対象外です。 長男Dさんは、19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族ですから、特定扶養親族として、63万円の扶養控除を受けることができます。 よって、扶養控除の額は、63万円となります。 |
③ | 合計所得金額が2,400万円以下の人が適用を受けることができる基礎控除の額は、48万円です。 |
④ | 3,900,000円×20%-427,500円=352,500円です。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長のAさんは、2024年8月5日(月)に病気により80歳で死亡した。
Aさんが保有していたX社株式(発行済株式数の全部)は、後継者である長男Cさんが相続により取得する予定である。なお、二男Dさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長のAさんは、2024年8月5日(月)に病気により80歳で死亡した。
Aさんが保有していたX社株式(発行済株式数の全部)は、後継者である長男Cさんが相続により取得する予定である。なお、二男Dさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
<Aさんの親族関係図>
<各人が取得する予定の相続財産(みなし相続財産を含む)>
[妻Bさん(77歳)]
現預金 | : | 2,000万円(相続税評価額) |
自宅(敷地300㎡) | : | 2,000万円(「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の金額) |
自宅(建物) | : | 1,000万円(固定資産税評価額) |
死亡保険金 | : | 2,000万円(契約者(=保険料負担者)・被保険者はAさん、死亡保険金受取人は妻Bさん) |
死亡退職金 | : | 5,000万円(X社から支給された金額) |
[長男Cさん(50歳)]
現預金 | : | 7,000万円(相続税評価額) |
X社株式 | : | 1億8,000万円(相続税評価額) |
※ | 相続税におけるX社株式の評価上の規模区分は「大会社」であり、特定の評価会社には該当しない。 |
[孫Eさん(21歳)]
現預金:□□□万円(相続税評価額)
[孫Fさん(20歳)]
現預金:□□□万円(相続税評価額)
※ | 問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
各相続人は《設例》の記載のとおり、Aさんの財産を取得した。Aさんの相続に係る相続税の総額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
妻Bさんに係る課税価格 | ( ① )万円 |
長男Cさんに係る課税価格 | 2億5,000万円 |
孫Eさんに係る課税価格 | □□□万円 |
孫Fさんに係る課税価格 | □□□万円 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | 4億円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ② )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | ( ③ )万円 |
長男Cさん | □□□万円 |
孫Eさん | □□□万円 |
孫Fさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ④ )万円 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
60,000万円超 | 55% | 7,200万円 |
正解:8,000(万円)、5,400(万円)、5,220(万円)、8,445(万円)(各1点であると思われる)
① | 相続人が受け取った死亡退職金と死亡保険金は、それぞれ500万円×法定相続人の数まで非課税になります。 本問においては、妻Bさん以外に死亡退職金と死亡保険金を受け取った人はいませんから、非課税枠500万円×4=2,000万円は全額妻Bさんが適用を受けることができます。 よって、妻Bさんに係る課税価格は、2,000万円+2,000万円+1,000万円+(2,000万円-2,000万円)+(5,000万円-2,000万円)=8,000万円となります。 |
② | 相続税の基礎控額除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算されます。 よって、3,000万円+600万円×4=5,400万円となります。 |
③ | 課税遺産総額=4億円-5,400万円=3億4,600万円です。 よって、妻Bさんの法定相続分に対応する取得金額は、3億4,600万円×1/2=1億7,300万円となります。 これに対応する相続税額は、1億7,300万円×40%-1,700万円=5,220万円です。 |
④ |
長男Cさんの法定相続分に対応する取得金額は、3億4,600万円×1/4=8,650万円となります。 孫Eさんと孫Fさんの法定相続分に対応する取得金額は、それぞれ、3億4,600万円×1/8=4,325万円となります。 したがって、相続税の総額は、5,220万円+1,895万円+665万円+665万円=8,445万円となります。 |
【問14】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「妻Bさんが相続により取得した自宅の敷地を相続税の申告期限までに売却しても、当該敷地は特定居住用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます」 |
② | 「相続税の総額は、各相続人の実際の取得割合によって計算されることから、分割内容により異なる額が算出されます」 |
③ | 「孫Eさんおよび孫Fさんは、Aさんの孫にあたりますので、相続税額の2割加算の対象となります」 |
正解:○、×、×(各1点であると思われる)
① | 配偶者は、無条件で、小規模宅地の評価減の特例の適用を受けることができます。 |
② | 相続税の総額は、各相続人の法定相続分によって計算されますから、基本的に、分割内容により金額が変わることはありません。 |
③ | 代襲相続人である被相続人の孫は、2割加算の対象でない被代襲者の立場を引き継ぎますから、2割加算の対象外です。 ちなみに、代襲相続人でない被相続人の孫は、養子縁組をした人を含めて、2割加算の対象となります。 |
【問15】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「Aさんが2024年分の所得税について確定申告書を提出しなければならない者に該当するとき、相続人は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ① )カ月以内に準確定申告書を提出しなければなりません」 |
Ⅱ | 「X社株式の相続税評価額は、原則として、類似業種比準方式により評価されます。類似業種比準価額は、類似業種の株価ならびに比準要素である1株当たりの配当金額、( ② )および簿価純資産価額を基として計算します。配当金額、( ② )および簿価純資産価額が高い会社は、株式の評価額が高くなります」 |
Ⅲ | 「『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の価額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか( ③ )金額までであれば、原則として、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 |
<語句群>
イ.2 ロ.4 ハ.6
ニ.資本金等の額 ホ.利益金額
ヘ.売上金額 ト.多い
チ.少ない
イ.2 ロ.4 ハ.6
ニ.資本金等の額 ホ.利益金額
ヘ.売上金額 ト.多い
チ.少ない
正解:ロ、ホ、ト(各1点であると思われる)
① | 準確定申告の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。 |
② | 類似業種比準方式における比準要素は、利益、配当、純資産です。 |
③ | 配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けると、配偶者が相続または遺贈により取得した金額のうち、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額までに係る相続税額が0となります。 |
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