FP3級実技(個人)解説-2024年1月・後半
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(65歳)は、12年前に父親の相続により取得した自宅(建物およびその敷地である甲土地)を所有している。Aさんが居住する自宅の建物は、父親が40年前に建てたものであり、Aさんは老朽化した自宅での生活に不便さを感じている。Aさんは自宅を売却し、駅前のマンションを購入して移り住むことを検討している。
先日、Aさんが知り合いの不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅に近く、都心へのアクセスもよい。賃貸マンションの経営を含め、有効活用を検討してみてはどうか」とアドバイスを受けた。
Aさん(65歳)は、12年前に父親の相続により取得した自宅(建物およびその敷地である甲土地)を所有している。Aさんが居住する自宅の建物は、父親が40年前に建てたものであり、Aさんは老朽化した自宅での生活に不便さを感じている。Aさんは自宅を売却し、駅前のマンションを購入して移り住むことを検討している。
先日、Aさんが知り合いの不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅に近く、都心へのアクセスもよい。賃貸マンションの経営を含め、有効活用を検討してみてはどうか」とアドバイスを受けた。
〈甲土地の概要〉
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地に耐火建築物を建築する場合の①建蔽率の上限となる建築面積と②容積率の上限となる延べ面積の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | ①210㎡ ②720㎡ |
2. | ①210㎡ ②900㎡ |
3. | ①240㎡ ②720㎡ |
正解:3(4点)
① | 準防火地域に耐火建築物を建てる場合には、建蔽率の上限が10%緩和されます。 また、特定行政庁が指定する角地に建物を建てる場合には、建蔽率の上限が10%緩和されます。 よって、建蔽率の上限は、60%+10%+10%=80%となります。 したがって、建ぺい率の上限となる建築面積は、300㎡×80%=240㎡です。 |
② | 前面道路(複数の道路に面している場合、幅員が広い方の道路)の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、いずれか小さい方となります。 前面道路の幅員によって定まる容積率=6×4/10=2.4=240%ですから、容積率の上限は、240%となります。 よって、容積率の上限となる延床面積は、300㎡×240%=720㎡です。 |
【問11】
自宅(建物およびその敷地である甲土地)の譲渡に関する以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
ⅰ) | 「Aさんが駅前のマンションに転居し、その後、居住していない現在の自宅を譲渡する場合に、『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例』の適用を受けるためには、Aさんが居住しなくなった日から( ① )を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること等の要件を満たす必要があります」 |
ⅱ) | 「Aさんが『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例』の適用を受ける場合、課税長期譲渡所得金額が6,000万円以下の部分について軽減税率が適用されます。本特例の適用を受けるためには、譲渡した年の1月1日において譲渡した居住用財産の所有期間が( ② )を超えていなければなりません。なお、本特例と『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例』は併用して適用を受けることが( ③ )」 |
1. | ①3年 ②10年 ③できます |
2. | ①5年 ②10年 ③できません |
3. | ①5年 ②20年 ③できます |
正解:1(3点)
① | 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(3,000万円特別控除の特例)の適用を受けるためには、居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡する等の要件を満たす必要があります。 |
② | 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)の適用を受けるためには、譲渡した年の1月1日において譲渡した居住用財産の所有期間が10年を超えていなければなりません。 |
③ | 3,000万円特別控除の特例と軽減税率の特例は、併せて適用を受けることができます。 |
【問12】
甲土地の有効活用に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、相続税の課税価格の計算上、甲土地は貸宅地として評価されます」 |
2. | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、甲土地に係る固定資産税の課税標準を、住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の6分の1の額とする特例の適用を受けることができます」 |
3. | 「Aさんが金融機関から融資を受けて、甲土地に賃貸マンションを建築した場合、Aさんの相続における相続税額の計算上、当該借入金の残高は、原則として、債務控除の対象となります」 |
正解:1(3点)
1) | 相続税の計算上、被相続人名義の土地に被相続人名義の貸家が建っている場合、当該土地は貸家建付地として評価されます。 |
2) | 正しい記述です。 |
3) | 正しい記述です。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさんは、妻Bさんとの2人暮らしである。長男Cさんは、妻と高校生の長女Dさんとの3人で隣県にある賃貸マンションに住んでいる。Aさんは、長男Cさん家族の生活資金や孫Dさんの学費について面倒を見てやりたいと思っており、現金の贈与を検討している。
Aさんは、妻Bさんとの2人暮らしである。長男Cさんは、妻と高校生の長女Dさんとの3人で隣県にある賃貸マンションに住んでいる。Aさんは、長男Cさん家族の生活資金や孫Dさんの学費について面倒を見てやりたいと思っており、現金の贈与を検討している。
〈Aさんの親族関係図〉
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)> | ||
現預金 | : | 6,000万円 |
上場株式 | : | 1,500万円 |
自宅(敷地300㎡) | : | 7,000万円(注) |
自宅(建物) | : | 300万円 |
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下、「本制度」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 「本制度の適用を受けた場合、受贈者1人につき1,500万円までは贈与税が非課税となります。ただし、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については500万円が限度となります」 |
2. | 「Aさんからの資金援助について、孫Dさんが本制度の適用を受けるためには、教育資金の贈与を受けた年の前年分の長男Cさんの所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下でなければなりません」 |
3. | 「受贈者である孫Dさんが22歳到達年度の末日に達すると、教育資金管理契約は終了します。そのときに、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、当該残額は受贈者のその年分の贈与税の課税価格に算入されます」 |
正解:1(3点)
1) | 正しい記述です。 |
2) | 正しい記述です。 |
3) | 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例では、受贈者が30歳に達するなどの事由に該当した場合に、教育資金管理契約は終了します。 |
【問14】
仮に、長男Cさんが暦年課税(各種非課税制度の適用はない)により、2024年中にAさんから現金600万円の贈与を受けた場合の贈与税額は、次のうちどれか。
〈資料〉贈与税の速算表(一部抜粋) | ||
[特例贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 400万円以下 |
15% | 10万円 |
400万円超 600万円以下 |
20% | 30万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
30% | 90万円 |
[一般贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 |
15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 |
20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 |
30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
40% | 125万円 |
1. | 68万円 |
2. | 82万円 |
3. | 90万円 |
正解:1(4点)
18歳以上の受贈者が直系尊属から贈与を受けた場合、特例贈与財産として特例税率で贈与税額が計算されます。
よって、贈与税額=(600万円-110万円)×20-30万円=68万円となります。
よって、贈与税額=(600万円-110万円)×20-30万円=68万円となります。
【問15】
現時点(2024年1月28日)において、Aさんの相続が開始した場合に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「妻Bさんが『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額を超えない限り、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 |
2. | 「妻Bさんが自宅の敷地と建物を相続し、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額7,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額は、1,400万円となります」 |
3. | 「相続税の申告書は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に被相続人であるAさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長に提出しなければなりません」 |
正解:3(3点)
1) | 正しい記述です。 |
2) | 正しい記述です。相続税の計算上、自宅の敷地について、小規模宅地の特例の適用を受けた場合、330㎡を限度に相続税評価額が80%減額されます(相続税評価額の20%のみを課税価格に算入します)。<設例>より、自宅の敷地は300㎡であることから、敷地の全体について特例の適用を受けることができると分かりますから、自宅の敷地について、相続税の課税価格に算入すべき価額は、7,000万円×(1-80%)=1,400万円となります。 |
3) | 相続税の申告期限は、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
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