FP3級実技(保険)解説-2023年5月・前半
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(54歳)は、妻Bさん(50歳)および長男Cさん(19歳)との3人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、X株式会社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、今後の資金計画を検討するにあたり、公的年金制度から支給される老齢給付について理解を深めたいと思っている。また、今年20歳になる長男Cさんの国民年金保険料について、学生納付特例制度の利用を検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
会社員のAさん(54歳)は、妻Bさん(50歳)および長男Cさん(19歳)との3人暮らしである。Aさんは、大学卒業後、X株式会社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、今後の資金計画を検討するにあたり、公的年金制度から支給される老齢給付について理解を深めたいと思っている。また、今年20歳になる長男Cさんの国民年金保険料について、学生納付特例制度の利用を検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(1968年11月28日生まれ・会社員)] | |||
・ | 公的年金加入歴 | : | 下図のとおり(65歳までの見込みを含む) 20歳から大学生であった期間(29月)は国民年金に任意加入していない。 |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中 |
[妻Bさん(1973年5月10日生まれ・パートタイマー)]
・ | 公的年金加入歴 | : | 18歳からAさんと結婚するまでの9年間(108月)は、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。 |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。 |
[長男Cさん(2003年8月19日生まれ・大学生)]
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。 |
※ | 妻Bさんおよび長男Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | 家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、《設例》の<Aさんとその家族に関する資料>に基づき、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額(2022年度価額)を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 777,800円×451月/480月 |
2. | 777,800円×480月/480月 |
3. | 777,800円×511月/480月 |
正解:1(3点)
老齢基礎年金の計算上、年金額に反映されるのは、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などです。
<設例>において、20歳以上65歳未満の期間(540月)のうち、60歳以上65歳未満の期間(60月)は、年金額の計算に反映されませんから、年金額の計算に反映されるのは、511月-60月=451月です。
<設例>において、20歳以上65歳未満の期間(540月)のうち、60歳以上65歳未満の期間(60月)は、年金額の計算に反映されませんから、年金額の計算に反映されるのは、511月-60月=451月です。
【問2】
次に、Mさんは、Aさんおよび妻Bさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんおよび妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金の支給はありません。原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金を受給することになります」 |
2. | 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額には、妻Bさんが65歳になるまでの間、配偶者の加給年金額が加算されます」 |
3. | 「Aさんが60歳0カ月で老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰上げ支給を請求した場合、年金の減額率は30%となります」 |
正解:3(4点)
1) | 正しい記述です。特別支給の老齢厚生年金が支給されるのは、男性は1961年4月1日以前生まれの人、女性は1966年4月1日以前生まれの人です。 |
2) | 正しい記述です。加給年金を受け取るためには、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あること、年下の配偶者がいること、等の要件を満たす必要があります。 |
3) | 老齢年金を繰上げると、1月あたり0.4%減額されますから、60歳0ヵ月から受給を開始し、60月繰上げると、減額率は、0.4%/月×60月=24%となります。 |
【問3】
最後に、Mさんは、国民年金の学生納付特例制度(以下、「本制度」という)について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「本制度は、国民年金の第1号被保険者で大学等の所定の学校に在籍する学生について、( ① )の前年所得が一定額以下の場合、所定の申請に基づき、国民年金保険料の納付を猶予する制度です。なお、本制度の適用を受けた期間は、老齢基礎年金の( ② )されます。
本制度の適用を受けた期間の保険料は、( ③ )年以内であれば、追納することができます。ただし、本制度の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます
本制度の適用を受けた期間の保険料は、( ③ )年以内であれば、追納することができます。ただし、本制度の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます
1. | ①世帯主 ②受給資格期間に算入 ③5 |
2. | ①学生本人 ②受給資格期間に算入 ③10 |
3. | ①世帯主 ②年金額に反映 ③10 |
正解:2(3点)
1) | 国民年金の学生納付特例制度は、学生本人の所得の額の要件があります。 |
2) | 学生納付特例制度は、猶予の制度の一つですから、受給資格期間に算入されますが、追納しない場合、年金額には反映されません。 |
3) | 国民年金保険料の免除や猶予を受けた場合、最大10年間遡って追納することができます。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(52歳・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者)は、妻Bさん(50歳)および長女Cさん(19歳)との3人暮らしである。先日、Aさんは、Y生命保険の営業担当者からがん保険の見直しの提案を受けた。Aさんは、30代の頃からX生命保険のがん保険に加入しており、保障内容がより充実しているものであれば、見直してもよいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
会社員のAさん(52歳・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者)は、妻Bさん(50歳)および長女Cさん(19歳)との3人暮らしである。先日、Aさんは、Y生命保険の営業担当者からがん保険の見直しの提案を受けた。Aさんは、30代の頃からX生命保険のがん保険に加入しており、保障内容がより充実しているものであれば、見直してもよいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんが提案を受けたY生命保険のがん保険に関する資料>
保険の種類:5年ごと配当付終身がん保険(終身払込)
月払保険料:7,300円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
保険の種類:5年ごと配当付終身がん保険(終身払込)
月払保険料:7,300円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
(注1) | 生まれて初めて所定のがん(悪性新生物)と診断された場合や、前回当該給付金の支払事由に該当した日から1年経過後に、新たに所定のがん(悪性新生物)と診断された場合に一時金が支払われる。 |
(注2) | がん(悪性新生物)の治療を目的とする入院、所定の手術または放射線治療をした月ごとに支払われる。 |
(注3) | がん(悪性新生物)の治療を目的とする所定の抗がん剤治療をした月ごとに支払われる。 |
<Aさんが現在加入しているX生命保険のがん保険に関する資料>
保険の種類:無配当終身がん保険(終身払込)
契約年月日:2005年10月1日
月払保険料:4,100円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
保険の種類:無配当終身がん保険(終身払込)
契約年月日:2005年10月1日
月払保険料:4,100円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
(注4) | 生まれて初めて所定のがん(悪性新生物)と診断された場合に一時金が支払われる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
はじめに、Mさんは、がんの保障の見直しについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「がんは、再発のリスクがあり、治療期間が長期にわたるケースもあります。そのため、がんの保障を準備する際には、再発時の保障の有無やその内容を確認する必要があります」 |
2. | 「AさんがX生命保険のがん保険に加入した当時と比べて、がんによる入院日数は短期化し、通院により治療が行われる場合も多くなっています。入院日数の長短にかかわらず一定額を受け取ることができる保障を準備することは検討に値します」 |
3. | 「提案を受けたがん保険の保険料払込期間を終身払込から有期払込に変更することで、毎月の保険料負担は減少し、保険料の払込総額も少なくなります」 |
正解:3(3点)
1) | 適切な記述です。 |
2) | 適切な記述です。 |
3) | 保険料払込期間を終身払込から有期払込に変更すると、毎月の保険料負担は増加します。 |
【問5】
次に、Mさんは、Aさんが提案を受けたがん保険の保障内容等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが生まれて初めて所定のがん(悪性新生物)に罹患した場合、がん診断給付金100万円を受け取ることができます。ただし、通常、がんの保障については契約日から6カ月間の免責期間があります」 |
2. | 「Aさんががん診断給付金を受け取った場合、当該給付金は非課税所得として扱われます」 |
3. | 「先進医療の治療を受けた場合、診察料、投薬料および技術料は全額自己負担になります。重粒子線治療や陽子線治療など、技術料が高額となるケースもありますので、がん先進医療特約の付加をお勧めします」 |
正解:2(3点)
1) | 通常、がんの保障については契約日から3ヵ月間の免責期間があります。 |
2) | 正しい記述です。 |
3) | 先進医療の治療を受けた場合、技術料は全額自己負担になりますが、診察料や投薬料は、公的医療保険の給付の対象となります。 |
【問6】
最後に、Mさんは、全国健康保険協会管掌健康保険の高額療養費制度について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「Aさんに係る医療費の一部負担金の割合は、原則として( ① )割となりますが、( ② )内に、医療機関等に支払った医療費の一部負担金等の合計が自己負担限度額を超えた場合、所定の手続により、自己負担限度額を超えた額が高額療養費として支給されます。この一部負担金等の合計には、差額ベッド代、入院時の食事代、先進医療に係る費用等は含まれず、70歳未満の者の場合、原則として、医療機関ごとに、入院・外来、医科・歯科別に一部負担金等が( ③ )円以上のものが計算対象となります」
1. | ①1 ②同一月 ③12,000 |
2. | ①3 ②同一月 ③21,000 |
3. | ①3 ②同一年 ③12,000 |
正解:2(4点)
1) | 70歳未満の健康保険の被保険者が療養の給付を受けた場合の自己負担割合は、原則として、3割です。 |
2) | 高額療養費の計算は、1ヵ月ごとに行います。 |
3) | 高額療養費の計算においては、70歳未満の者の場合、原則として、医療機関ごとに、入院・外来、医科・歯科別に一部負担金等が21,000円以上のものが対象となります |
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(55歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。X社は、現在、下記の<資料1>の生命保険に加入している。
また、Aさんは最近、銀行から融資を受けたことをきっかけに、新たに事業保障資金の準備を検討している。
そこで、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんは、Aさんに対して、下記の<資料2>の生命保険を提案した。
Aさん(55歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。X社は、現在、下記の<資料1>の生命保険に加入している。
また、Aさんは最近、銀行から融資を受けたことをきっかけに、新たに事業保障資金の準備を検討している。
そこで、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんは、Aさんに対して、下記の<資料2>の生命保険を提案した。
<資料1>X社が現在加入している生命保険の契約内容
保険の種類:5年ごと利差配当付長期平準定期保険(特約付加なし)
契約年月日:2008年6月1日
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:95歳満了
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:240万円
65歳時の解約返戻金額:5,500万円
65歳時の払込保険料累計額:6,000万円
保険の種類:5年ごと利差配当付長期平準定期保険(特約付加なし)
契約年月日:2008年6月1日
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:95歳満了
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:240万円
65歳時の解約返戻金額:5,500万円
65歳時の払込保険料累計額:6,000万円
※ | 解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
※ | 保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。 |
<資料2>Aさんが提案を受けた生命保険の内容
保険の種類:無配当定期保険(無解約返戻金型・特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:10年(自動更新タイプ)
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:80万円
保険の種類:無配当定期保険(無解約返戻金型・特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:10年(自動更新タイプ)
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:80万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金6,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を33年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. | 1,710万円 |
2. | 2,145万円 |
3. | 4,290万円 |
正解:2(3点)
勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算されます。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(33-20)=1,710万円となります。
したがって、退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(6,000万円-1,710万円)×1/2=2,145万円となります。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(33-20)=1,710万円となります。
したがって、退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(6,000万円-1,710万円)×1/2=2,145万円となります。
【問8】
Mさんは、<資料1>の長期平準定期保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「当該生命保険の単純返戻率(解約返戻金額÷払込保険料累計額)は、保険期間の経過に伴って徐々に上昇し、保険期間満了時にピークを迎えます」 |
2. | 「X社が当該生命保険をAさんが65歳のときに解約した場合、解約時点における払込保険料累計額と解約返戻金額との差額を雑損失として経理処理をします」 |
3. | 「契約者貸付制度を利用することにより、当該生命保険を解約することなく、資金を調達することができます。ただし、契約者貸付金には、保険会社所定の利息が発生します」 |
正解:3(4点)
1) | 長期平準定期保険の単純返戻率は、保険期間の途中でピークを迎えた後低下し、保険期間満了時には0になります(定期保険に満期保険金はありません)。 |
2) | 保険契約を解約した場合、解約時点における資産計上額と解約返戻金額との差額を、雑収入または雑損失として経理処理します。 ちなみに、<設例>の長期平準定期保険は、2019年7月7日以前に契約したものであり、65歳時の払込保険料累計額は6,000万円であることから、65歳時点の資産計上額は3,000万円であると推定されます。 よって、解約返戻金の額が資産計上額よりも多いため、解約返戻金の受取時には雑収入を計上します。 |
3) | 正しい記述です。 |
【問9】
Mさんは、<資料2>の定期保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「X社が受け取る死亡保険金は、借入金の返済や運転資金等の事業資金として活用することができ、長期平準定期保険と比べて、割安な保険料で当面の死亡保障を準備することができます」 |
2. | 「当該生命保険の払込保険料は、その全額を損金の額に算入することができます」 |
3. | 「当該生命保険を10年後に更新する場合、保障内容が同一であれば、年払保険料の額は変わりません」 |
正解:3(3点)
1) | 正しい記述です。法人が受け取る死亡保険金の用途に、特に制限はありません。また、解約返戻金の無い定期保険の保険料は、解約返戻金のある長期平準定期保険の保険料と比べて割安です。 |
2) | 正しい記述です。解約返戻金の無い定期保険の保険料は、全額損金算入する事ができます。 |
3) | 保険契約を更新した場合、更新時の保険料率や被保険者の年齢によって保険料が再計算されます。 |
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