FP2級実技(個人)解説-2022年9月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(51歳)は、上場企業に勤務する会社員である。2022年3月、X市内の実家(甲土地および建物)で1人暮らしをしていた母親が死亡した。法定相続人は、長女のAさんのみであり、相続に係る申告・納税等の手続は完了している。
Aさんは、Y市内の自宅に夫Bさん(53歳)および長男Cさん(18歳)と一緒に暮らしているため、相続後に空き家となっている実家(建物は築47年で老朽化)の売却を検討している。しかし、先日、不動産会社を通じて、食品スーパーのZ社から、「甲土地は、 駅に近く、 商業性の高い場所なので、新規出店をさせてほしい。Aさんには、建設協力金方式での有効活用を検討してもらえないだろうか」との提案があったことで、甲土地の有効活用にも興味を持ち始めている。
Aさん(51歳)は、上場企業に勤務する会社員である。2022年3月、X市内の実家(甲土地および建物)で1人暮らしをしていた母親が死亡した。法定相続人は、長女のAさんのみであり、相続に係る申告・納税等の手続は完了している。
Aさんは、Y市内の自宅に夫Bさん(53歳)および長男Cさん(18歳)と一緒に暮らしているため、相続後に空き家となっている実家(建物は築47年で老朽化)の売却を検討している。しかし、先日、不動産会社を通じて、食品スーパーのZ社から、「甲土地は、 駅に近く、 商業性の高い場所なので、新規出店をさせてほしい。Aさんには、建設協力金方式での有効活用を検討してもらえないだろうか」との提案があったことで、甲土地の有効活用にも興味を持ち始めている。
<甲土地の概要>
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、「本特例」という)に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
「本特例の適用を受けるためには、相続した家屋について、( ① )年5月31日以前に建築されたこと、相続開始直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったことなどの要件を満たす必要があり、マンションなどの区分所有建物登記がされている建物( ② )。
本特例の適用を受けるためには、家屋を取り壊して更地で譲渡するか、または、家屋を一定の耐震基準を満たすようにリフォームしてから、その家屋のみを譲渡するか、もしくはその家屋とともに敷地を譲渡する必要があります。ただし、いずれの場合であっても、その譲渡の対価の額が( ③ )以下でなければなりません」
本特例の適用を受けるためには、家屋を取り壊して更地で譲渡するか、または、家屋を一定の耐震基準を満たすようにリフォームしてから、その家屋のみを譲渡するか、もしくはその家屋とともに敷地を譲渡する必要があります。ただし、いずれの場合であっても、その譲渡の対価の額が( ③ )以下でなければなりません」
<語句群>
イ.1978 ロ.1981 ハ.1985
ニ.は対象となりません
ホ.も対象となります
ヘ.3,000万円 ト.5,000万円 チ.1億円
イ.1978 ロ.1981 ハ.1985
ニ.は対象となりません
ホ.も対象となります
ヘ.3,000万円 ト.5,000万円 チ.1億円
正解:ロ、ニ、チ
① | 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた建物は、旧耐震基準によって建てられていますから、特例の趣旨(耐震基準を満たして欲しい・取り壊してほしい)より、これを満たす建物が制度の適用対象とされています。 |
② | 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」は、マンションなどの区分所有建物登記がされている建物は対象となりません。 |
③ | 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」の適用を受けるための譲渡対価の要件は、1億円以下であることとされています。 |
【問11】
建設協力金方式の一般的な特徴等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「建設協力金方式とは、AさんがZ社から建設資金を借り受けて、Z社の要望に沿った店舗を建設し、その店舗をZ社に賃貸する手法です。借り受けた建設資金は、通常、賃料の一部で返済していくことになります」 |
② | 「建設協力金方式により、Aさんが店舗をZ社に賃貸した後、その賃貸期間中にAさんの相続が開始した場合、相続税額の計算上、店舗は貸家として評価され、甲土地は貸家建付地として評価されます」 |
③ | 「建設協力金方式により、Aさんが店舗をZ社に賃貸した後、その賃貸期間中にAさんの相続が開始した場合、所定の要件を満たせば、甲土地は、貸付事業用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます」 |
正解:○、○、○
① | 正しい記述です。建設協力金方式は、予めテナントを見つけてから、当該テナントから建築資金の一部または全部の提供を受け、テナントの意向に沿った賃貸用の建物を建てるスキームです。 |
② | 正しい記述です。建設協力金方式においては、土地と建物(貸家)の名義は地主ですから、賃貸期間中に地主が死亡した場合、建物は貸家として評価され、土地は貸家建付地として評価されます。 |
③ | 正しい記述です。建設協力金方式においては、土地と建物(貸家)の名義は地主ですから、当該敷地の相続税評価額の計算においては、所定の要件を満たせば、貸付事業用宅地等として小規模宅地の特例の適用を受ける事ができます。 |
【問12】
甲土地上に準耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)。
① | 建蔽率の上限となる建築面積 |
② | 容積率の上限となる延べ面積 |
正解:480㎡、1,440㎡
① | 特定行政庁が指定する角地は建蔽率が10%緩和されます。 また、準防火地域に準耐火建築物を建てる場合にも建蔽率が10%緩和されます。 よって、甲土地の建蔽率の上限は、80%+10%+10%=100%となりますから、建蔽率の上限となる建築面積は、480㎡×100%=480㎡となります。 |
② | 前面道路(複数の道路に面している土地については幅員が広い方の道路)の幅員によって定まる容積率の上限は、7m×6/10=4.2(420%)です。 前面道路の幅員が12m未満である場合、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、どちらか小さい方を適用しますから、容積率の上限は、300%となります。 よって、容積率の上限となる延べ床面積は、480㎡×300%=1,440㎡となります。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
X株式会社(非上場会社・製造業、以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(67歳)は、自宅で妻Bさん(66歳)および長男Cさん(42歳)夫婦と同居している。Aさんは、3年後をめどに、X社の専務取締役である長男Cさんに事業を承継する予定である。また、将来、妻Bさんには自宅および相応の現預金等を相続させ、長男CさんにはX社に有償で貸し付けているX社本社敷地・建物を相続させるつもりでいる。
長女Dさん(41歳)は、1年前に夫と死別し、地元企業に勤務しながら、1人で孫Eさん(19歳)を育てている。Aさんは、長女Dさん親子のために、教育資金等の援助をしたいと思っている。
X株式会社(非上場会社・製造業、以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(67歳)は、自宅で妻Bさん(66歳)および長男Cさん(42歳)夫婦と同居している。Aさんは、3年後をめどに、X社の専務取締役である長男Cさんに事業を承継する予定である。また、将来、妻Bさんには自宅および相応の現預金等を相続させ、長男CさんにはX社に有償で貸し付けているX社本社敷地・建物を相続させるつもりでいる。
長女Dさん(41歳)は、1年前に夫と死別し、地元企業に勤務しながら、1人で孫Eさん(19歳)を育てている。Aさんは、長女Dさん親子のために、教育資金等の援助をしたいと思っている。
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)> | |||
現預金等 | : | 2億円 | |
X社株式 | : | 4億円 | |
自宅敷地(330㎡) | : | 6,000万円 | (注) |
自宅建物 | : | 2,500万円 | |
X社本社敷地(400㎡) | : | 7,000万円 | (注) |
X社本社建物 | : | 4,500万円 | |
合計 | 8億円 |
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
Aさんの相続・事業承継等に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「遺言により、自宅および現預金等を妻Bさん、X社関連の資産を長男Cさんに相続させた場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額が8億円の場合、長女Dさんの遺留分の金額は、( ① )となります」 |
Ⅱ | 「長男CさんがX社本社敷地を相続により取得し、当該敷地について、特定同族会社事業用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、当該敷地(相続税評価額7,000万円)について、課税価格に算入すべき価額は( ② )となります。なお、自宅敷地とX社本社敷地について、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』 の適用を受けようとする場合、( ③ )」 |
Ⅲ | 「長男Cさん夫婦には子がいないので、将来の後継者確保のため、養子縁組をすることを検討してみてはいかがでしょうか。長男Cさん夫婦が孫Eさん(長女Dさんの子)と養子縁組(特別養子縁組でない縁組)をする場合、孫Eさんと長女Dさんとの法律上の親子関係は( ④ )」 |
<語句群>
イ.1,400万円 ロ.2,380万円 ハ.5,000万円
ニ.5,250万円
ホ.1億円 ヘ.2億円
ト.終了しません チ.終了します
リ.適用対象面積は所定の算式により調整され、完全併用はできません
ヌ.それぞれの宅地の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます
イ.1,400万円 ロ.2,380万円 ハ.5,000万円
ニ.5,250万円
ホ.1億円 ヘ.2億円
ト.終了しません チ.終了します
リ.適用対象面積は所定の算式により調整され、完全併用はできません
ヌ.それぞれの宅地の適用対象の限度面積まで適用を受けることができます
正解:ホ、イ、ヌ、ト
① | 抽象的遺留分の割合は、遺留分算定基礎財産の1/2ですから、長女の具体的遺留分の割合は、1/2×1/4=1/8です。 よって、具体的遺留分の額は、8億円×1/8=1億円となります。 |
② | 特定同族会社事業用宅地等として小規模宅地の特例の適用を受けた敷地は、400㎡まで相続税評価額が80%減額されます。 よって、7,000万円×(1-80%)=1,400万円となります。 |
③ | 特定居住用宅地等に該当する敷地と特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等に該当する敷地がある場合、調整計算をすることなく、それぞれ限度面積の上限まで小規模宅地の特例の適用を受ける事ができます(最大330㎡;400㎡=730㎡について特例の適用を受ける事ができます)。 |
④ | 特別養子縁組でない縁組をした場合、養子と実の親との親族関係は継続します。 |
【問14】
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「孫Eさんが本特例の適用を受けるためには、孫Eさんが教育資金の贈与を受けた年の前年分の長女Dさんの所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下でなければなりません」 |
② | 「孫EさんがAさんから教育資金の贈与を受ける場合、所定の要件を満たせば、本特例と併せて相続時精算課税制度の適用を受けることができます」 |
③ | 「教育資金管理契約期間中にAさんが死亡した場合、教育資金管理契約に係る非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額(管理残額)は、その死亡の日に孫Eさんが23歳未満である等の一定の場合を除き、相続税の課税対象となります」 |
正解:×、○、○
① | 「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」の適用を受けるための、受贈者の親の合計所得金額の要件はありません。 なお、受贈者の合計所得金額の要件は、1,000万円以下であることとされています。 |
② | 正しい記述です。「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例」と相続時精算課税制度は、併せて適用を受けることができます。 |
③ | 正しい記述です。 |
【問15】
現時点(2022年9月11日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は8億円とし、 問題の性質上、 明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)相続税の課税価格の合計額 | 8億円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | ( ② )万円 |
長女Dさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
正解:4,800、5,820、26,240
① | 基礎控除の額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×3=4,800万円です。 |
② | 課税遺産総額=8億円-4,800万円=7億5,200万円です。 よって、長男Cさんの法定相続分に対応する相続金額は、7億5,200万円×1/4=1億8,800万円となります。 これに対応する相続税額は、1億8,800万円×40%-1,700万円=5,820万円です。 |
③ | 妻Bさんの法定相続分に対応する相続金額は、7億5,200万円×1/2=3億7,600万円です。 これに対応する相続税額は、3億7,600万円×50%-4,200万円=1億4,600万円です。 また、長女Dさんの法定相続分に対応する相続税額は、長男Cさんと同じですから、相続税の総額は、1億4,600万円+5,820万円+5,820万円=2億6,240万円となります。 |
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