FP2級実技(生保)解説-2022年1月・問10~15
会社員のAさんは、妻Bさんおよび長女Cさんとの3人家族である。Aさんは、2021年中に一時払養老保険(10年満期)の満期保険金320万円および一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金520万円を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(50歳)]
会社員
[妻Bさん(50歳)]
専業主婦。2021年中の収入はない。
[長女Cさん(24歳)]
大学院生。2021年中の収入はない。
<Aさんの2021年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
900万円
[一時払養老保険(10年満期)の満期保険金]
契約年月:2011年5月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金受取人:Aさん
満期保険金額:320万円
正味払込保険料:300万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2012年6月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:520万円
正味払込保険料:400万円
保険の種類:終身医療保険(死亡保障なし)
契約年月:2021年4月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
年間正味払込保険料:85,000円(全額が介護医療保険料控除の対象)
※ | 妻Bさんおよび長女Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2021年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
① | 「一時払養老保険は金融類似商品に該当するため、Aさんが受け取った満期保険金に係る保険差益は源泉分離課税の対象となります」 |
② | 「Aさんの場合、総所得金額に算入される一時所得の金額が20万円を超えるため、所得税の確定申告をしなければなりません」 |
③ | 「Aさんは、給与収入の金額が850万円を超え、かつ、扶養親族を有しているため、総所得金額の計算上、所得金額調整控除として、給与収入の金額から850万円を控除した金額の10%相当額を給与所得の金額から控除します」 |
① | 保険期間が5年を超える一時払養老保険の満期満期保険金に係る保険差益は、一時所得となります。 |
② | 正しい記述です。一時所得の額=(320万円+520万円)-(300万円+400万円)-50万円=90万円です。 一時所得の額は、その2分の1相当額が総所得金額に算入されますから、総所得金額に算入される一時所得の額は、45万円です。 |
③ | 所得金額調整控除を受けるためには、23歳未満の扶養親族を有しているなどの要件を満たす必要があります。 |
Ⅰ | 「Aさんの合計所得金額は( ① )万円以下であるため、Aさんは38万円の配偶者控除の適用を受けることができます。仮に、Aさんの合計所得金額が( ① )万円を超えると、配偶者控除の額は段階的に縮小し、合計所得金額が( ② )万円を超えると、適用を受けることができなくなります」 |
Ⅱ | 「Aさんが適用を受けることができる扶養控除の額は、( ③ )万円です」 |
イ.38 ロ.58 ハ.63 ニ.800
ホ.850 へ.900 ト.1,000
チ.1,200 リ.2,000
① | 38万円の配偶者控除を受けることができるのは、合計所得金額が900万円以下の人です。 |
② | 合計所得金額が1,000万円を超えると、配偶者控除を受けることができなくなります。 |
③ | 扶養控除の計算上、24歳の控除対象扶養親族は、一般の控除対象扶養親族として、38万円の控除対象になります。 |
給与所得の金額 | 7,050,000円 |
総所得金額に算入される一時所得の金額 | □□□円 |
(a)総所得金額 | ( ① )円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | ( ② )円 |
配偶者控除 | □□□円 |
扶養控除 | □□□円 |
基礎控除 | ( ③ )円 |
(b)所得控除の額の合計額 | 2,800,000円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | □□□円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | ( ④ )円 |
<資料>所得税の速算表 | ||
課税される 所得金額 |
税率 | 控除額 |
195万円未満 | 5% | - |
195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
① | 問10②で解説している通り、総所得金額に算入される一時所得の金額は45万円ですから、総所得金額=705万円+45万円=750万円となります。 |
② | 2012年1月以降に契約した保険契約に係る保険料は、生命保険料控除の計算上、各区分とも、年間の消費払込保険料が8万円以上である場合、4万円となります。 |
③ | 合計所得金額が2,400万円以下である人は、48万円の基礎控除を受けることができます。 |
④ | 課税総所得金額=750万円-280万円=470万円より、算出税額=470万円×20%-427,500円=512,500円となります。 |
非上場会社であるX株式会社(以下、「X社」という)の社長であるAさん(73歳)の推定相続人は、妻Bさん(72歳)、長男Cさん(48歳)および長女Dさん(45歳)の3人である。Aさんは、X社の専務取締役である長男Cさんに事業を承継させるため、その所有するX社株式を長男Cさんに贈与し、勇退することを決意している。
<X社の概要>
[業種]
非鉄金属製造業
[資本金等の額]
5,000万円
(発行済株式総数1,000,000株、すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)
[株主構成]
Aさん :800,000株
妻Bさん :100,000株
長男Cさん:100,000株
[株式の譲渡制限]
あり
※ | X社は、相続その他の一般承継によりX社株式を取得した者に対し、当該株式をX社に売り渡すことを請求することができる旨を定款で定めている。 |
[会社の規模]
年商30億円
経常利益9,000万円
従業員数90人
※ | X社株式の相続税評価額の計算上の規模区分は「大会社」であり、特定の評価会社には該当しない。 |
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金等]
5,000万円(役員退職金は考慮していない)
[X社株式]
2億円
[自宅]
敷地(330㎡):1,000万円(注)
建物:1,000万円
[X社本社]
敷地(600㎡):3,000万円(注)
建物:3,000万円
合計 3億3,000万円
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の金額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
Ⅰ | 「X社株式の相続税評価額は、原則として類似業種比準方式により評価されます。類似業種比準価額は、類似業種の株価ならびに1株当たりの配当金額、1株当たりの( ① )、1株当たりの純資産価額の3つの比準要素を基に計算されます」 |
Ⅱ | 「長男CさんにX社株式を移転する方法として、相続時精算課税制度の活用が考えられます。相続時精算課税は、2,500万円を超える金額について( ② )%の税率で贈与税が課されますが、その後、X社株式の評価額が上昇しても、相続財産に加算されるX社株式の価額は贈与時の価額とされるなどのメリットがあります」 |
Ⅲ | 「長男CさんにX社株式を移転する方法として、『非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例(事業承継税制の特例)』の活用が考えられます。本特例の適用を受けた場合、贈与者の死亡時まで本特例の対象となる非上場株式等の贈与に係る贈与税額の( ③ )の納税が猶予されます」 |
イ.10 ロ.15 ハ.20
ニ.売上金額 ホ.利益金額
へ.資本金等の額
ト.3分の2
チ.5分の4 リ.全額
① | 類似業種比準価額方式における比準要素は、配当金の額、利益の額、純資産価額の3つです。 |
② | 相続時精算課税制度の適用を受けた場合、贈与税の計算上適用される税率は、一律20%となります。 |
③ | 事業承継税制の特例の適用を受けた場合、贈与者の死亡時まで、本特例の対象となる非上場株式等の贈与に係る贈与税額の全額が、納税猶予されます。 |
① | 「円滑な遺産分割のための手段として遺言の作成を検討してください。自筆証書遺言については、法務局における保管制度がありますが、当該制度を利用するためには証人2人以上の立会いが必要です」 |
② | 「納税資金の確保を目的として、契約者(=保険料負担者)および被保険者をAさん、死亡保険金受取人を長男Cさんとする終身保険に加入することも検討事項の1つです。長男Cさんが受け取る死亡保険金は、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることで最大1,500万円が非課税となります」 |
③ | 「長男CさんがX社本社敷地を相続により取得し、特定同族会社事業用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、X社本社敷地は400㎡までを限度面積として、評価額の80%相当額を減額した金額を、相続税の課税価格に算入すべき価額とすることができます」 |
① | 自筆証書遺言を作成するにあたっては、証人は必要ありません。 |
② | 相続税の計算上、相続税の課税対象となる死亡保険金は、相続人が受け取る場合、500万円×法定相続人の数まで非課税になります。よって、500万円×3=1,500万円まで非課税になります。 |
③ | 正しい記述です。特定同族会社事業用宅地等に該当する土地について、小規模宅地等の評価減の特例の適用を受けた場合、敷地面積のうち400㎡までにかかる部分について、相続税評価額が80%減額されます。 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | 1億5,000万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | ( ② )万円 |
長男Cさん | ( ③ )万円 |
長女Dさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ④ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
① | 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。 |
② | 課税遺産総額は、3億3,000万円-4,800万円=2億8,200万円です。 妻Bさんの法定相続分は、1/2ですから、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億8,200万円×1/2=1億4,100万円となります。 したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、1億4,100万円×40%-1,700万円=3,940万円となります。 |
③ | 長女Dさんの法定相続分は、1/4ですから、長女Dさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億8,200万円×1/4=7,050万円となります。 したがって、長女Dさんの法定相続分対応する相続税額は、7,050万円×30%-700万円=1,415万円となります。 |
④ | 長女Dさんの法定相続分対応する相続税額と長男Cさんの法定相続分対応する相続税額は等しいですから、相続税の総額は、3,940万円+1,415万円+1,415万円=6,770万円となります。 |
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