FP3級実技(保険)解説-2021年9月・後半
会社員のAさんは、妻Bさんおよび母Cさんとの3人家族である。Aさんは、2021年中に一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金500万円を受け取っている。また、Aさんは、これまで2021年中に解約した一時払変額個人年金保険以外の生命保険に加入したことはなかったが、医療保障の必要性を感じ、2021年3月にX生命保険の終身医療保険に加入した。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(48歳)]
会社員
[妻Bさん(45歳)]
専業主婦。2021年中の収入はない。
[母Cさん(歳)]
2021年中に老齢基礎年金50万円および遺族厚生年金50万円 を受け取っている。
<Aさんの2021年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
750万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2013年3月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:500万円
正味払込保険料:400万円
保険の種類:終身医療保険(死亡保障なし)
契約年月:2021年3月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
年間正味払込保険料:100,000円
※ | 妻Bさんおよび母Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2021年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
1. | 565万円 |
2. | 590万円 |
3. | 615万円 |
一時所得=500万円-400万円-50万円=50万円であり、この2分の1相当額の25万円が総所得金額に算入されます。
よって、総所得金額=565万円+25万円=590万円となります。
ⅰ) | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、( ① )万円です」 |
ⅱ) | 「母Cさんは老人扶養親族の同居老親等に該当するため、Aさんが適用を受けることができる扶養控除の控除額は、( ② )万円です」 |
ⅲ) | 「Aさんが適用を受けることができる基礎控除の控除額は、( ③ )万円です」 |
1. | ① 26 ② 38 ③ 48 |
2. | ① 26 ② 58 ③ 38 |
3. | ① 38 ② 58 ③ 48 |
① | 合計所得金額が900万円以下の人は、38万円の配偶者控除を受けることができます。 |
② | 同居老親等に該当する老人扶養親族は、扶養控除の計算上、58万円の控除対象となります。 |
③ | 合計所得金額が2,400万円以下の人は、48万円の基礎控除を受けることができます。 |
1. | 「Aさんが加入した終身医療保険に係る保険料は、介護医療保険料控除の対象となります」 |
2. | 「Aさんが生命保険料控除として総所得金額から控除することができる金額は、100,000円です」 |
3. | 「生命保険料控除は、生命保険に加入した年分については勤務先の年末調整で適用を受けることができず、所得税の確定申告が必要となります」 |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 所得税の計算上、12年4月以降に契約した生命保険については、生命保険料控除の各区分において、最高4万円の控除を受けることができます(それぞれ、保険料を年額8万円以上支払った場合)。 よって、Aさんが受けることができる生命保険料控除の金額は、40,000円です。 |
3. | 生命保険料控除は年末調整の対象です。 適用を受けるために確定申告を要する所得控除は、寄付金控除、医療費控除、雑損控除の3つです。 |
Aさん(70歳)は、妻Bさん(66歳)との2人暮らしである。Aさん夫妻には、子がいない。Aさんは、妻Bさんに全財産を相続させたいと考えており、自筆証書遺言の作成を検討している。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額、下記の生命保険を除く)>
[現預金]
1億3,000万円
[自宅(敷地400㎡)]
5,000万円(注)
[自宅(建物)]
2,500万円
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額 |
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
死亡保険金額:1,000万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
1. | 「自筆証書遺言は、遺言者が、その遺言の全文、日付および氏名を自書し、これに押印して作成するものですが、自筆証書遺言に添付する財産目録については、パソコン等で作成することも認められています」 |
2. | 「自筆証書遺言は、所定の手続により、法務局(遺言書保管所)に保管することができます。法務局(遺言書保管所)に保管された自筆証書遺言は、相続開始後、相続人が遅滞なく、家庭裁判所に提出して、その検認の請求をしなければなりません」 |
3. | 「遺言により、Aさんの全財産を妻Bさんが取得した場合、弟Cさんの遺留分を侵害することになります」 |
1. | 正しい記述です。自筆証書遺言は財産目録以外は全て自書で行う必要がありますが、財産目録は自書以外の方法で作成することができます。 |
2. | 自筆証書遺言は、基本的には検認が必要ですが、遺言保管制度を利用したものについては、検認の必要はありません。 |
3. | 相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。 |
1. | 「妻Bさんが『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けるためには、Aさんの相続開始時において、Aさんとの婚姻期間が20年以上でなければなりません」 |
2. | 「妻Bさんが自宅の敷地を相続により取得し、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額5,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を1,000万円とすることができます」 |
3. | 「妻Bさんが受け取る一時払終身保険の死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることで、相続税の課税価格には算入されません」 |
1. | 配偶者の税額軽減の適用を受けるための婚姻期間の要件はありません。 |
2. | 特定居住用宅地等に該当する自宅の敷地は、330㎡まで80%評価減されます。 330㎡を超える部分については、評価減されませんので、本問の場合、敷地全部について評価減される訳ではありません。 |
3. | 正しい記述です。相続人が受け取った死亡退職金は、500万円×法定相続人のまで非課税(課税価格に不算入)となります。 法定相続人の数は2人ですから、500万円×2=1,000万円までであれば、非課税(課税価格に不算入)となります。 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
1. | 4,000万円 |
2. | 4,400万円 |
3. | 5,500万円 |
相続人は配偶者相続人と第三順位の血族相続の組み合わせですから、妻Bさんの法定相続分は3/4になります。
また、弟Cさんの法定相続分は、1/4となります。
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億8,000万円×3/4=1億3,500万円、弟Cさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億8,000万円×1/4=4,500万円となります。
したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、1億3,500万円×40%-1,700万円=3,700万円となり、弟Cさんの法定相続分対応する相続税額は、4,500万円×20%-200万円=700万円となります。
ゆえに、相続税の総額は、3,700万円+700万円=4,400万円となります。
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