お金の寺子屋

FP3級実技(保険)解説-2021年9月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
個人事業主のAさん(55歳)は、妻Bさん(55歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学卒業後に入社した広告代理店を退職後、40歳のときに個人事業主として独立した。Aさんは、最近、老後の資金計画を検討するにあたり、公的年金制度から支給される老齢給付について知りたいと思っている。また、Aさんは、70歳までは働きたいと考えており、老齢基礎年金の繰下げ支給についても理解を深めたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(1965年11月13日生まれ)]

公的年金加入歴: 下図のとおり(65歳定年時までの見込みを含む)
20歳から大学生であった期間(30月)は国民年金に任意加入していない。
国民健康保険に加入中

[妻Bさん(1966年8月22日生まれ)]

公的年金加入歴: 下図のとおり(60歳までの見込みを含む)
高校卒業後の18歳からAさんと結婚するまでの10年間(120月)、会社員として厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入し、Aさんの独立後は、国民年金に第1号被保険者として加入している。
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、《設例》の<Aさん夫妻に関する資料>に基づき、Aさんおよび妻Bさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額(2021年度価額)を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. ①780,900円×239月/480月 ②780,900円×376月/480月
2. ①780,900円×451月/480月 ②780,900円×480月/480月
3. ①780,900円×451月/480月 ②780,900円×496月/480月
正解:(3点)
老齢基礎年金の年金額は、「老齢基礎年金の満額×保険料納付期間÷480」という式により求めます。
厚生年金保険の被保険者期間は保険料納付期間に算入されますが国民年金の未加入期間は保険料納付期間に算入されません。また、保険料納付期間は、基本的には、20歳以上60歳未満の期間におけるものですから、480を超えることはありません。
よって、Aさんの保険料納付期間は451月、妻Bさんの保険料納付期間は480月となります。
【問2】
次に、Mさんは、老齢基礎年金の繰上げ支給および繰下げ支給について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「Aさんが( ① )歳に達する前に老齢基礎年金の請求をしなかった場合、Aさんは( ① )歳に達した日以後の希望するときから、老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をすることができます。支給開始を繰り下げた場合は、繰り下げた月数に応じて年金額が増額されます。仮に、Aさんが70歳0カ月で老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、年金の増額率は( ② )%となります。
また、老齢基礎年金の繰上げ支給の請求をすることもできますが、繰り上げた月数に応じて年金額は減額されます。仮に、Aさんが老齢基礎年金の繰上げ支給の請求をする場合、その請求と同時に老齢厚生年金の繰上げ支給の請求を( ③ )」
1. ① 65 ② 30 
③ しなければなりません
2. ① 66 ② 30 
③ するかどうか選択することができます
3. ① 66 ② 42 
③ しなければなりません
正解:(3点)
公的年金の繰下げは、66歳以降に年金の受給を始める制度です。
公的年金を繰り下げた場合、増額率は1ヵ月あたり0.7%で、最大で5年間(60ヵ月)繰り下げることができますから、増額率は最大で0.7%×60=42%となります。
老齢基礎年金と老齢厚生年金は別々に繰り下げることができますが、繰り上げる場合には同時に繰り上げなくてはいけません。
【問3】
最後に、Mさんは、Aさんおよび妻Bさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんには国民年金の未加入期間がありますが、60歳から65歳になるまでの間、その未加入期間に相当する月数について、国民年金に任意加入して保険料を納付した場合、老齢基礎年金の年金額を増額することができます」
2. 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の額には、配偶者の加給年金額が加算されます」
3. 「妻Bさんは、原則として64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます」
正解:(4点)

1. 正しい記述です。老齢基礎年金の受給額を増やす目的では、60歳以上65歳未満の期間において、任意加入被保険者として国民年金保険料を支払うことができます。
2. 加給年金を受給するためには、厚生年金保険の被保険者期間が20年(240月)以上はあるなどの要件を満たす必要があります。
本問の場合、被保険者期間が212月であるため、加給年金は支給されません。
3. 男性は1961年4月2日以降生まれ、女性は1966年4月2日以降生まれの人には、特別支給の老齢厚生年金は支給されません。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員であるAさん(40歳・独身)は、これまで生命保険に加入したことがない。Aさんは、医療保険の必要性を感じているものの、病歴があり、加入は難しいと思っていたが、先日、職場で生命保険会社の営業担当者から下記の生命保険の提案を受け、加入を検討している。
また、Aさんは、自分が病気やケガで就業できない状態になった場合に健康保険(Aさんは全国健康保険協会管掌健康保険に加入中)からどのような保険給付を受けることができるのかについて知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんが提案を受けた生命保険に関する資料>
保険の種類:無配当引受基準緩和型医療保険
月払保険料:16,800円
保険料払込期間:65歳満了
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡給付金受取人:母Bさん
指定代理請求人:母Bさん

がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中により所定の状態に該当した場合 に一時金が支払われる(当該特約において、死亡保険金の支払はない)。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、生命保険の加入等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「生命保険に加入する際には、過去の傷病歴や現在の健康状態などについて事実をありのままに正しく告知する必要があります」
2. 「生命保険は、保険業法に定める保険契約の申込みの撤回等(クーリング・オフ)の対象となり、契約の申込後、所定の期間内であれば、口頭により申込みの撤回等をすることができます」
3. 「生命保険の保障開始の時期(責任開始日)は、一般に、告知日からとなりますが、がんの保障については、通常、契約後に6カ月間の免責期間があります」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。
2. クーリングオフの手続きは、書面で行わなくてはいけません。
3. がん保険には通常、3ヵ月間の免責期間があります。
【問5】
次に、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険の保障内容等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「引受基準緩和型の医療保険は、一般に、他の契約条件が同一で、引受基準緩和型ではない通常の医療保険と比べて、保険料が高く設定されています」
2. 「先進医療特約では、契約日時点において厚生労働大臣により先進医療として定められたものであれば、療養を受けた時点において先進医療としての承認を取り消されたものであっても給付の対象となります」
3. 「Aさんが、がんに罹患し、三大疾病一時金特約から一時金を受け取った場合、当該一時金は一時所得として総合課税の対象となります」
正解:(3点)
1. 正しい記述です。 引受基準緩和型の医療保険は、引受基準緩和型でない商品に比べて、リスクの高い(=保険金を受け取る可能性が高い)人が多く含まれますから、そのぶん保険料が高くなります。
2. 先進医療特約の給付対象となるか否かは、療養を受けた時点において、先進医療に指定されているか否かで判定します。
3. 三大疾病一時金は、受取人が被保険者本人・配偶者・直系血族・生計同一の親族である場合には、非課税となります。
【問6】
最後に、Mさんは、健康保険の傷病手当金について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「仮に、Aさんが業務外の事由による負傷または疾病の療養のために労務に服することができず、連続して一定期間休業し、かつ、( ① )日目以降の休業した日について事業主から賃金の支払がない場合、所定の手続により、( ① )日目以降の休業した日について、傷病手当金が支給されます。
傷病手当金の支給額は、休業1日につき、原則として、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した12カ月間の各月の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の( ② )に相当する額となり、その支給を開始した日から( ③ )を限度として支給されます」
1. ① 3 ② 3分の1 ③ 1年6カ月
2. ① 4 ② 3分の2 ③ 1年6カ月
3. ① 4 ② 3分の2 ③ 2年
正解:(4点)
傷病手当金は、病気や怪我により連続して3日以上休業した場合に、休業4日目以降の休業日について支払われます。
傷病手当金は、1日当たり、標準報酬日額の3分の2相当額の収入を保証する制度です。
傷病手当金は、最長1年6ヵ月間支給されます。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(45歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、事業保障資金の確保の方法や自身の退職金準備の方法について検討しており、まずは、事業保障資金の確保を目的とした生命保険に加入しようと考えている。
そこで、Aさんは、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談したところ、下記の<資料>の生命保険の提案を受けた。

<資料>Aさんが提案を受けた生命保険の内容
保険の種類:無配当定期保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡・高度障害保険金受取人:X社
死亡・高度障害保険金額:1億円
保険期間・保険料払込期間:70歳満了
年払保険料:90万円
最高解約返戻率:48%

保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。
所定の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金3,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を36年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1.  540万円
2. 1,080万円
3. 1,920万円
正解:(3点)
退職所得控除額=800万円×70万円×(36-20)= 1,920万円です。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2より、退職所得=(3,000万円-1,920万円)×1/2=540万円となります。
【問8】
《設例》の定期保険の第1回保険料払込時の経理処理(仕訳)として、次のうち最も適切なものはどれか。
1.
2.
3.
1.
2.
3.
正解:(4点)
最高解約返戻率が50%以下の定期保険に係る保険料は、全額損金算入(費用の科目を使って経理処理)します。
*保険料積立金は、資産の科目です。
【問9】
Mさんは《設例》の定期保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「契約者貸付制度を利用する場合、当該制度により借り入れることができる金額は、利用時点での既払込保険料相当額が限度となります」
2. 「Aさんが死亡した場合にX社が受け取る死亡保険金は、借入金の返済等の事業資金として活用することができます」
3. 「当該定期保険を払済終身保険に変更する場合、商品内容が変更されるため、Aさんは改めて健康状態等についての告知をする必要があります」
正解:(3点)
1. 契約者貸付制度は、解約返戻金の一定の範囲内でお金を借りることができる制度です。
2. 正しい記述です。死亡保険金の使い道に制限はありません。
3. 現在加入している保険を払済保険や延長保険にする場合、告知や診査は不要です。

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