FP3級実技(個人)解説-2021年9月・前半
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(56歳)は、長女Cさん(19歳)との2人暮らしである。Aさんは、長女Cさんが3歳のときに長女Cさんの父親Bさんと離婚している。
X社では、定年年齢が65歳に引き上げられており、Aさんは65歳まで勤務する予定である。Aさんは、現在、定年退職後の資金計画を検討しており、公的年金制度から支給される老齢給付について理解を深めたいと思っている。また、今年20歳になる大学生の長女Cさんの国民年金の保険料の納付について、学生納付特例制度の利用を検討している。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(56歳)は、長女Cさん(19歳)との2人暮らしである。Aさんは、長女Cさんが3歳のときに長女Cさんの父親Bさんと離婚している。
X社では、定年年齢が65歳に引き上げられており、Aさんは65歳まで勤務する予定である。Aさんは、現在、定年退職後の資金計画を検討しており、公的年金制度から支給される老齢給付について理解を深めたいと思っている。また、今年20歳になる大学生の長女Cさんの国民年金の保険料の納付について、学生納付特例制度の利用を検討している。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(1964年10月13日生まれ・56歳・会社員)]
公的年金加入歴: | 下図のとおり(65歳定年時までの見込みを含む) 20歳から大学生であった期間(30月)は国民年金に任意加入していない。大学卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。 |
健康保険(保険者:健康保険組合)、雇用保険に加入中 |
[長女Cさん(2001年12月20日生まれ・19歳・大学2年生)]
※ | 長女Cさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | 家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金の年金額は、2021年度価額に基づいて計算するものとする。
1. | 780,900円×450月/480月 |
2. | 780,900円×480月/480月 |
3. | 780,900円×510月/480月 |
正解:1(3点)
老齢基礎年金の年金額は、「老齢基礎年金の満額×保険料納付期間÷480」という式により求めます。
厚生年金保険の被保険者期間は保険料納付期間に算入されますが国民年金の未加入期間は保険料納付期間に算入されません。よって、Aさんの保険料納付期間は450月です。
厚生年金保険の被保険者期間は保険料納付期間に算入されますが国民年金の未加入期間は保険料納付期間に算入されません。よって、Aさんの保険料納付期間は450月です。
【問2】
次に、Mさんは、老齢厚生年金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「1961年4月2日以後に生まれた男性の場合、報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金の支給はありません。女性の支給開始年齢は5年遅れで引き上げられていますので、Aさんは60歳から特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます」 |
2. | 「Aさんが65歳に達すると、特別支給の老齢厚生年金の受給権は消滅し、新たに老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権が発生します。Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます」 |
3. | 「Aさんの厚生年金保険の被保険者期間は20年以上ありますので、Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金の年金額には加給年金額が加算されます」 |
正解:2(4点)
1. | 1964年4月2日~1966年4月1日生まれの女性は、64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上はある人で、一定の要件を満たす配偶者がいる場合に支給されます。独身のAさんには支給されません。 |
【問3】
最後に、Mさんは、国民年金の学生納付特例制度(以下、「本制度」という)について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「本制度は、国民年金の第1号被保険者で大学等の所定の学校に在籍する学生について、( ① )の前年所得が一定額以下の場合、被保険者等からの申請に基づき、国民年金保険料の納付を猶予する制度です。なお、本制度の適用を受けた期間は、老齢基礎年金の( ② )。
本制度の適用を受けた期間の保険料は、( ③ )年以内であれば、追納することができます。ただし、本制度の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます」
本制度の適用を受けた期間の保険料は、( ③ )年以内であれば、追納することができます。ただし、本制度の承認を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされます」
1. | ① 世帯主 ② 受給資格期間に算入されます ③ 10 |
2. | ① 学生本人 ② 年金額には反映されません ③ 10 |
3. | ① 世帯主 ② 受給資格期間に算入されません ③ 20 |
正解:2(3点)
① | 学生納付特例制度の適用を受けることができるか否かの判定は、学生本人の前年の所得によって行います(親などの所得の要件はありません)。 |
② | 学生納付特例制度の適用を受けた期間で追納をしていないものについては、受給資格期間には算入されますが、年金額には反映されません。 |
③ | 学生納付特例制度の適用を受けた期間については、最高で10年間遡って追納することができます。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(27歳)は、投資信託による資産運用を始めたいと思っているが、これまで投資経験がなく、投資信託の仕組み等について、あまり知識がない。また、少額から始められる資産運用の方法として、つみたてNISAに関心があるが、その内容等について理解していない。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、X投資信託を例に、Aさんに投資信託の説明を行うことにした。
会社員のAさん(27歳)は、投資信託による資産運用を始めたいと思っているが、これまで投資経験がなく、投資信託の仕組み等について、あまり知識がない。また、少額から始められる資産運用の方法として、つみたてNISAに関心があるが、その内容等について理解していない。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、X投資信託を例に、Aさんに投資信託の説明を行うことにした。
<X投資信託(公募追加型株式投資信託)に関する資料>
銘柄名:日経225インデックス(つみたてNISA対象銘柄)
投資対象地域/資産:国内/株式
対象インデックス:日経平均株価
信託期間:無期限
基準価額:12,100円(1万口当たり)
決算日:年1回(10月12日)
購入時手数料:なし
運用管理費用(信託報酬):0.187%(税込)
信託財産留保額:なし
解約手数料:なし
銘柄名:日経225インデックス(つみたてNISA対象銘柄)
投資対象地域/資産:国内/株式
対象インデックス:日経平均株価
信託期間:無期限
基準価額:12,100円(1万口当たり)
決算日:年1回(10月12日)
購入時手数料:なし
運用管理費用(信託報酬):0.187%(税込)
信託財産留保額:なし
解約手数料:なし
※ | 《設例》および各問において、以下の名称を使用している。 |
・ | 非課税累積投資契約に係る少額投資非課税制度=「つみたてNISA」 |
・ | NISA口座内に設定される累積投資勘定=「つみたてNISA勘定」 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
はじめに、Mさんは、X投資信託の費用について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「X投資信託を購入する際に、購入時手数料は必要ありません。一般に、購入時手数料を徴収しない投資信託は、ノーロードファンドと呼ばれています」 |
2. | 「運用管理費用(信託報酬)は、投資信託の運用および管理の対価として取引口座から毎月1回差し引かれる費用です。投資信託を保有している期間、投資家がその費用を負担します」 |
3. | 「信託財産留保額は、投資信託の組入資産を売却する際に発生する手数料等を、投資信託を換金する投資家に負担してもらうことを目的として設けられているものですが、X投資信託では、この費用はかかりません」 |
正解:2(3点)
1. | 正しい記述です。手数料のかからない投資信託をノーロード投資信託と言います。 |
2. | 信託報酬は、毎日回差し引かれます。 |
3. | 正しい記述です。 |
【問5】
次に、Mさんは、つみたてNISAについてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「つみたてNISAの年間の非課税投資枠は40万円です。毎年の非課税投資枠の未使用分を翌年以降に繰り越すことはできません」 |
2. | 「つみたてNISAを利用した買付けは、累積投資契約に基づき、対象銘柄を指定したうえで、定期かつ継続的な買付けを行う方法に限られています。1度に40万円分をまとめて買い付けることはできません」 |
3. | 「つみたてNISA勘定に受け入れることができる商品は、一定の要件を満たす国内株式を投資対象とするインデックス型の公募株式投資信託に限られています。つみたてNISAの対象商品に海外株式を投資対象とする投資信託はありません」 |
正解:3(4点)
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | つみたてNISAの対象商品には、海外株式を投資対象とする投資信託もあります。 |
【問6】
最後に、Mさんは、つみたてNISAを利用して購入した投資信託に係る課税関係についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「つみたてNISAを利用して購入した株式投資信託を、購入した年に解約した場合、当該譲渡益は非課税の対象とはならず、20.315%相当額が源泉徴収等されます」 |
2. | 「つみたてNISAを利用して購入した株式投資信託の普通分配金は、非課税となります」 |
3. | 「つみたてNISAを利用して購入した株式投資信託を解約した際に損失が生じた場合、その損失の金額は、特定口座で保有する上場株式等の譲渡益と損益通算することができます」 |
正解:2(3点)
1. | NISA口座を通して買い付けた金融商品に係る利益は、解約の時期に関わらず全て非課税となります。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | NISA口座を通して買い付けた金融商品で損失が生じた場合、損益通算や繰り越し控除など、一切の救済措置がありません。 |
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
個人事業主であるAさんは、開業後直ちに青色申告承認申請書と青色事業専従者給与に関する届出書を所轄税務署長に対して提出している青色申告者である。
Aさんは、過去に会社員をしていた期間があり、2021年6月から特別支給の老齢厚生年金を受給している。
個人事業主であるAさんは、開業後直ちに青色申告承認申請書と青色事業専従者給与に関する届出書を所轄税務署長に対して提出している青色申告者である。
Aさんは、過去に会社員をしていた期間があり、2021年6月から特別支給の老齢厚生年金を受給している。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(63歳)]
個人事業主(青色申告者)
[妻Bさん(58歳)]
Aさんの事業に専ら従事し、青色事業専従者給与(2021年分:84万円)の支払を受けている。
<Aさんの2021年分の収入等に関する資料>
[事業所得の金額]
500万円(青色申告特別控除後)
[一時払養老保険(10年満期)の満期保険金]
契約年月:2011年7月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
満期保険金受取人:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
満期保険金額:212万円
一時払保険料:200万円
[特別支給の老齢厚生年金の年金額]
50万円
※ | 妻Bさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんの年齢は、いずれも2021年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
所得税における青色申告制度に関する以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
ⅰ) | 「事業所得の金額の計算上、青色申告特別控除として最高( ① )万円を控除することができます。( ① )万円の青色申告特別控除の適用を受けるためには、事業所得に係る取引を正規の簿記の原則に従い記帳し、その記帳に基づいて作成した貸借対照表、損益計算書その他の計算明細書を添付した確定申告書を法定申告期限内に提出することに加えて、e-Taxによる申告(電子申告)または電子帳簿保存を行う必要があります。なお、確定申告書を法定申告期限後に提出した場合、青色申告特別控除額は最高( ② )万円となります」 |
ⅱ) | 「青色申告者が受けられる税務上の特典として、青色申告特別控除のほかに、青色事業専従者給与の必要経費算入、( ③ )の3年間の繰越控除、( ③ )の繰戻還付、棚卸資産の評価について低価法を選択することができることなどが挙げられます」 |
1. | ① 65 ② 55 ③ 雑損失 |
2. | ① 55 ② 10 ③ 雑損失 |
3. | ① 65 ② 10 ③ 純損失 |
正解:3(3点)
① | 事業所得の計算上控除することができる青色申告特別控除額は、最高55万円ですが、一定要件を満たした場合には65万円になります。 |
② | 期限後申告を行った場合、青色申告特別控除額は、最高10万円になります。 |
③ | 青色申告者には、純損失の3年間の繰越控除や純損失の繰戻還付などの特典が用意されています。 なお、雑損失の繰越控除は、青色申告者に限らず誰でも適用を受けることができます。 (純損失の繰越控除は事業を行った結果生じた損失についての救済措置ですから、きちんと帳簿をつけることが要求されている青色申告者しか適用を受けることができませんが、雑損失の繰越控除は資産に損害を受けた場合の救済措置ですから、誰でも適用を受けることができます。) |
【問8】
Aさんの2021年分の所得税の課税に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の控除額は、38万円です」 |
2. | 「公的年金等の収入金額の合計額が60万円以下であるため、公的年金等に係る雑所得の金額は算出されません」 |
3. | 「一時払養老保険の満期保険金に係る保険差益は、源泉分離課税の対象となります」 |
正解:2(3点)
1. | 青色事業専従者給与を受けている配偶者は、配偶者控除の対象外です。 |
2. | 正しい記述です。65歳未満の人は、最低でも60万円の公的年金等控除額の適用を受けることができますから、公的年金等の収入金額が60万円以下である場合には、公的年金等に係る雑所得の金額は0になります。 |
3. | 一時払い養老保険の満期保険金に係る保険差益は、保険期間が5年を超える場合には一時所得となります。 |
【問9】
Aさんの2021年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。
1. | 500万円 |
2. | 512万円 |
3. | 550万円 |
正解:1(4点)
事業所得の額500万円は全額総所得金額に算入されます。
一時所得の額は、212万円-200万円-12(特別控除額)=0です。
公的年金等に係る雑所得の額は、50万円<公的年金等控除額より、0です。
よって、総所得金額は、500万円となります。
一時所得の額は、212万円-200万円-12(特別控除額)=0です。
公的年金等に係る雑所得の額は、50万円<公的年金等控除額より、0です。
よって、総所得金額は、500万円となります。
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