FP3級実技(保険)解説-2021年5月・前半
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(40歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)を2021年6月末日に退職し、個人事業主として独立する予定である。Aさんは、X社を退職するにあたって、公的年金制度の取扱いや65歳以後の支給額について知りたいと思っている。また、Aさんは、現在、確定拠出年金の個人型年金(以下、「個人型年金」という)に加入しており月額23,000円を拠出しているが、当該制度以外にも将来の年金額を増やすことができる方法について詳しく知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさん(40歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)を2021年6月末日に退職し、個人事業主として独立する予定である。Aさんは、X社を退職するにあたって、公的年金制度の取扱いや65歳以後の支給額について知りたいと思っている。また、Aさんは、現在、確定拠出年金の個人型年金(以下、「個人型年金」という)に加入しており月額23,000円を拠出しているが、当該制度以外にも将来の年金額を増やすことができる方法について詳しく知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(40歳)]
1981年5月12日生まれ
公的年金加入歴:下図のとおり(60歳までの見込みを含む)
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中
[妻Bさん(40歳/専業主婦)]
1980年8月21日生まれ
公的年金加入歴:18歳からAさんと結婚するまでの10年間(120月)、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、《設例》の<Aさん夫妻に関する資料>に基づき、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額(2020年度価額)を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 781,700円×238月/480月 |
2. | 781,700円×445月/480月 |
3. | 781,700円×(445月+35月×1/2)/480月 |
正解:2
老齢基礎年金の年金額は、「老齢基礎年金の満額×保険料納付期間÷480」という式により求めます。
国民年金保険料納付期間の他に、厚生年金保険の被保険者期間も保険料納付期間に算入されますが学生納付特例期間(追納をしていない期間)は保険料納付期間に算入されません。よって、Aさんの保険料納付期間は207月+238月=245月です。
国民年金保険料納付期間の他に、厚生年金保険の被保険者期間も保険料納付期間に算入されますが学生納付特例期間(追納をしていない期間)は保険料納付期間に算入されません。よって、Aさんの保険料納付期間は207月+238月=245月です。
【問2】
次に、Mさんは、X社退職後におけるAさん夫妻の公的年金制度の取扱いについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんは国民年金の第1号被保険者へ種別変更の届出を行う必要がありますが、妻Bさんは引き続き国民年金の第3号被保険者となります」 |
2. | 「Aさんは国民年金の保険料を納付することになります。国民年金の保険料の納付方法には、納付書による現金納付のほか、口座振替やクレジットカードによる納付があります」 |
3. | 「Aさんは国民年金の保険料を納付することになりますが、将来の一定期間の保険料を前納することもできます。国民年金の保険料を前納する場合、前納期間や納付方法に応じて保険料の割引があります」 |
正解:1
1. | 国民年金の第3号被保険者は、国民年金の第2号被保険者に生計を維持されている配偶者ですから、生計を維持していた第2号被保険者が第1号被保険者となった場合、第3号被保険者の第1号被保険者となります。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
【問3】
最後に、Mさんは、X社退職後、老後の年金収入を増やすことができる方法や各種制度について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「Aさんには学生納付特例期間がありますが、その期間に係る保険料を追納することで、老齢基礎年金の年金額を増額することができます」 |
2. | 「Aさんは、国民年金の定額保険料に加えて付加保険料を納付することができます。仮に、Aさんが付加保険料を180月納付し、65歳から老齢基礎年金を受け取る場合、老齢基礎年金の額に付加年金として年額72,000円が上乗せされます」 |
3. | 「Aさんは、国民年金基金に加入することができます。国民年金基金の掛金の上限は、原則として、個人型年金の掛金と合わせて月額68,000円となります」 |
正解:3
1. | 学生納付特例期間に係る保険料を追納することができるのは、10年以内に限られます。 資料より、Aさんは 40歳で、学生納付特例期間は20歳から22歳の間ですから、追納することはできません。 |
2. | 付加年金の年金額=200円×付加保険料納付月数ですから、付加年金の額=200×180=36,000円です。 |
3. | 正しい記述です。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
独身である会社員のAさん(40歳・男性)は、先日、生命保険会社の営業担当者から、介護に対する保障の準備として<資料1>の生命保険、資産形成の方法として<資料2>の生命保険の提案を受け、加入を検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
独身である会社員のAさん(40歳・男性)は、先日、生命保険会社の営業担当者から、介護に対する保障の準備として<資料1>の生命保険、資産形成の方法として<資料2>の生命保険の提案を受け、加入を検討している。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
保険の種類:無配当終身介護保障保険(終身払込)
月払保険料:8,700円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
指定代理請求人:母Bさん
月払保険料:8,700円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
受取人:Aさん
指定代理請求人:母Bさん
(注) | 公的介護保険制度の要介護2以上と認定された場合、または保険会社所定の要介護状態になった場合に支払われる(死亡保険金の支払はない)。 |
<資料2>
保険の種類:5年ごと利差配当付個人年金保険
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
年金受取人:Aさん
死亡保険金受取人:母Bさん
保険料払込満了年齢:65歳
年金開始年齢:65歳
月払保険料:15,000円
払込保険料累計額(①):450万円(25年間)
年金の種類:10年確定年金
年金開始時の一括受取額:約456万円
基本年金年額:46.4万円
年金受取累計額(②):464万円
年金受取率(②÷①):103.1%(小数点第2位以下切捨て)
特約:個人年金保険料税制適格特約付加
※ | 所定の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
はじめに、Mさんは、公的介護保険(以下、「介護保険」という)について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「介護保険の被保険者が介護給付を受けるためには、市町村(特別区を含む)から要介護認定を受ける必要があります。また、介護保険の第2号被保険者は、( ① )要介護状態となった場合に介護給付を受けることができます。
介護保険の第2号被保険者が介護給付を受けた場合、実際にかかった費用(食費、居住費等を除く)の( ② )割を自己負担する必要がありますが、同一月内の介護サービス利用者負担額が、一定の上限額を超えた場合、所定の手続により、( ③ )の支給を受けることができます」
介護保険の第2号被保険者が介護給付を受けた場合、実際にかかった費用(食費、居住費等を除く)の( ② )割を自己負担する必要がありますが、同一月内の介護サービス利用者負担額が、一定の上限額を超えた場合、所定の手続により、( ③ )の支給を受けることができます」
1. | ① 原因を問わず ② 1 ③ 高額療養費 |
2. | ① 特定疾病が原因で ② 1 ③ 高額介護サービス費 |
3. | ① 特定疾病が原因で ② 3 ③ 高額療養費 |
正解:2
① | 公的介護保険の第2号被保険者は、16種類の特定疾病により要介護状態または要支援状態になった場合に、介護保険から給付を受けることができます。 |
② | 公的介護保険の第2号被保険者の利用者負担割合は、1割です。 |
③ | 同一月内の介護サービス利用者負担額が、一定の上限額を超えた場合、所定の手続により、 高額介護サービス費の支給を受けることができます。 |
【問5】
次に、Mさんは、《設例》の<資料1>および<資料2>の生命保険の保障内容等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが要介護状態となり働けなくなった場合、Aさんの収入の減少が想定されます。介護費用がかさみ、支出が収入を上回る可能性もありますので、生命保険により、介護年金や介護一時金を準備することは検討に値します」 |
2. | 「厚生労働省の令和元年簡易生命表によると、男性の平均寿命は87.45歳(年)、女性の平均寿命は81.41歳(年)であり、男性のほうが平均寿命が長く、老後の生活資金の準備は、女性よりも男性のほうがその必要性が高いと思われます」 |
3. | 「提案を受けている個人年金保険に加入後、年金受取開始前にAさんが亡くなった場合、死亡保険金受取人は、契約時に定めた年金受取総額を死亡保険金として受け取ることができます」 |
正解:1
1. | 正しい記述です。 |
2. | 平均寿命は男性よりも女性の方が長いです。 |
3. | 個人年金保険に加入後、年金受取開始前に被保険者が亡くなった 場合、死亡保険金受取人は、一般的に、既払込保険料相当額を死亡保険金として受け取ることができます。 |
【問6】
最後に、Mさんは、《設例》の<資料1>および<資料2>の生命保険の課税関係について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「支払保険料のうち、<資料1>の生命保険に係る保険料は介護医療保険料控除の対象となり、<資料2>の生命保険に係る保険料は個人年金保険料控除の対象となります。それぞれの控除の適用限度額は、所得税で50,000円、住民税で35,000円です」 |
2. | 「Aさんが個人年金保険から確定年金として年金を受け取った場合、当該年金は雑所得の収入金額として総合課税の対象となります」 |
3. | 「Aさんが所定の要介護状態となり、介護一時金特約から一時金を受け取った場合、当該一時金は一時所得の収入金額として総合課税の対象となります」 |
正解:2
1. | 2012年以降に契約した生命保険契約の保険料に係る生命保険料控除は、各区分とも、所得税で40,000円まで、住民税で28,000までです。 |
2. | 正しい記述です。個人年金保険の年金は雑所得となります。 |
3. | 入院・手術・通院・診断等の、身体の傷害に基因して支払われる給付金は、受取人が、被保険者本人・配偶者・直系血族・生計同一の親族のいずれかであれば非課税です。 |
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(43歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者から、自身の退職金準備を目的とした下記の<資料>の生命保険の提案を受けた。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさん(43歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者から、自身の退職金準備を目的とした下記の<資料>の生命保険の提案を受けた。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<資料>Aさんが提案を受けた生命保険の内容
保険の種類:無配当低解約返戻金型終身保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡・高度障害保険金受取人:X社
死亡・高度障害保険金額:5,000万円
保険料払込期間:65歳満了
年払保険料:200万円
65歳までの払込保険料累計額(①):4,400万円
65歳時の解約返戻金額(②):4,600万円(低解約返戻金期間満了直後)
受取率(②÷①):104.5%(小数点第2位以下切捨て)
保険の種類:無配当低解約返戻金型終身保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡・高度障害保険金受取人:X社
死亡・高度障害保険金額:5,000万円
保険料払込期間:65歳満了
年払保険料:200万円
65歳までの払込保険料累計額(①):4,400万円
65歳時の解約返戻金額(②):4,600万円(低解約返戻金期間満了直後)
受取率(②÷①):104.5%(小数点第2位以下切捨て)
※ | 解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金5,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を40年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. | 1,400万円 |
2. | 2,200万円 |
3. | 2,800万円 |
正解:1
退職所得控除額=800万円×70万円×(40-20)= 2,200万円です。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2より、退職所得=(5,000万円-2,200万円)×1/2=1,400万円となります。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2より、退職所得=(5,000万円-2,200万円)×1/2=1,400万円となります。
【問8】
《設例》の終身保険の第1回保険料払込時の経理処理(仕訳)として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | |
2. | |
3. |
1. | |
2. | |
3. |
正解:1
法人が、終身保険の保険料を支払った際には、保険料の全額資産計上します。
【問9】
Mさんは《設例》の終身保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが所定の高度障害状態になった場合、高度障害保険金5,000万円がX社に支払われます。さらに、その後Aさんが死亡した場合には、死亡保険金5,000万円がX社に支払われます」 |
2. | 「急な資金需要の発生により、X社が契約者貸付制度を利用した場合、当該終身保険契約は継続しているため、経理処理は必要ありません」 |
3. | 「Aさんの勇退時に、役員退職金の一部として当該終身保険の契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの相続人に名義変更し、当該終身保険をAさんの個人の保険として継続することが可能です」 |
正解:3
1. | 終身保険の高度障害保険金が支払われた場合、契約は終了します。 |
2. | 法人は、財務諸表の5要素(資産・負債・純資産・収益・費用)のうちいずれかが増減した場合、経理処理を行う必要があります。法人が契約者貸付制度を利用した場合には、現金の増加と負債の増加が発生するため、経理処理を行う必要があります。 |
3. | 正しい記述です。 |
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