お金の寺子屋

FP2級実技(FP協会)解説-2021年5月・問35~40

【問35】~【問40】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
国内の上場企業に勤務する藤原隆行さんは、今後の生活のことなどに関して、FPで税理士でもある三上さんに相談をした。なお、下記のデータは2021年4月1日現在のものである。


【問35】
FPの三上さんは、まず現時点(2021年4月1日)における藤原家(隆行さんと真理さん)のバランスシート分析を行うこととした。下表の空欄(ア)に入る数値を計算しなさい。

正解:7,865

<資産>
預貯金等:2,000万円
株式・債権・投資信託等:2,660万円
生命保険:870万円
土地:2,060万円
建物:715万円
その他:220万円
より、計8,525万円です。

<負債>
住宅ローン:580万円
自動車ローン:80万円
より、計660万円です。

したがって、純資産=8,525万円-660万円=7,865万円となります。

【問36】
下記<資料>は、隆行さんの2020年(令和2年)分の「給与所得の源泉徴収票」(一部省略)である。<資料>の空欄( ア )にあてはまる所得控除の額の合計額を計算しなさい。なお、真理さんおよび亮介さんの合計所得金額はそれぞれ48万円以下である。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。

<資料>
正解:2,500,000

隆行さんの合計所得金額は2,400万円以下ですから、基礎控除の額は48万円になります。
また、真理さんの給与所得の額は、85万円-55万円=30万円より、合計所得金額は48万円以下ですから、真理さんは配偶者控除の対象となります。
配偶者控除の額は、納税者の合計所得金額が900万円以下である場合、38万円です。
そして、奈美さんは会社員で合計所得金額が48万円を超えますから扶養控除の対象とはならず、亮介さんは16歳以上23歳未満の控除対象扶養親族ですから38万円の扶養控除の対象となります。

よって、隆行さんの所得控除の額の合計額は、基礎控除48万円+配偶者控除38万円+扶養控除38万円+社会保険料控除120万円+生命保険料控除4万円+地震保険料控除2万円=250万円となります。

【問37】
隆行さんは、副業として2020年から専門誌への寄稿を行っており、受け取った原稿料(下記<資料>参照)については、雑所得として申告している。隆行さんの2020年分の所得の合計額(給与所得と雑所得の合計額)を計算しなさい。なお、隆行さんには2020年において給与所得およびこの副業に係る雑所得以外に申告すべき所得はないものとする(<設例>の「Ⅱ.収入金額」参照)。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。

<資料:副業による収入等の明細>
原稿料収入:500,000円
必要経費として申告した金額:50,000円
源泉徴収された所得税額:50,000円
<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円 
(最低55万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円超
850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円
正解:691

給与所得の額=収入金額-給与所得控除額=840万円-(840万円×10%+110万円)=646万円です。
また、雑所得の額=収入金額-必要経費=50万円-5万円=45万円です。
よって、所得の合計額は、646万円+45万円=691万円となります。

ちなみに、源泉徴収された所得税額は、税金の仮払いであり、費用(=収入を得るために必要な支出)ではありません。


【問38】
隆行さんの従兄である会社員の山田さんの2020年分の所得等が下記<資料>のとおりである場合、山田さんが2020年分の所得税の確定申告をする際に、給与所得と損益通算できる損失に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、▲が付された所得の金額は、その所得に損失が発生していることを意味するものとする。

<資料>
1. 不動産所得の計算上生じた損失▲30万円と損益通算できる。
2. 上場株式の譲渡損失▲120万円と損益通算できる。
3. 不動産所得の計算上生じた損失▲30万円および上場株式の譲渡損失▲120万円と損益通算できる。
4. 損益通算できる損失はない。
正解:
不動産所得の計算上生じた損失は損益通算の対象となりますが、これに含まれる土地取得のための借入金の利子は損益通算の対象とはなりませんから、土地取得のための借入金の利子の額が不動産所得の計算上生じた損失の額を上回る場合、当該不動産所得の赤字は損益通算の対象とはなりません。
また、上場株式の譲渡損失は、上場株式等の譲渡益、および、申告分離課税を選択した配当所得・利子所得以外と損益通算することはできません。
【問39】
隆行さんは、自分の老齢年金の受取り方について考えており、FPの三上さんに質問をした。老齢年金の繰上げおよび繰下げ受給に関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。

(ア) 老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰上げ請求は、異なる時期に別々に行うことができる。
(イ) 老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰下げ申出は、異なる時期に別々に行うことができる。
(ウ) 老齢基礎年金または老齢厚生年金の支給の繰下げによる年金額の増額率は、最大で30%となる。
(エ) 老齢基礎年金と併せて付加年金が受給できる場合であっても、付加年金については繰上げ受給により減額されることはなく、繰下げ受給により増額されることもない。
正解:×、○、×、×
(ア) 老齢基礎年金と老齢厚生年金は、同時に繰上げなくてはいけません。
(イ) 正しい記述です。
(ウ) 公的年金の繰り下げによる年金の増額率は、1ヵ月あたり0.7%で、最高で5年間(60ヵ月)繰り下げることができますから、増額率は最大で42%となります。
(エ) 付加年金は、老齢基礎年金と同時に繰上げ/繰下げされ、老齢基礎年金と同じルールで、年金額が増減額されます。
【問40】
真理さんは、病気療養のため2021年3月、KA病院に10日間入院し、退院後の同月内に同病院に5日間通院した。真理さんの2021年3月の1ヵ月間における保険診療分の医療費(窓口での自己負担額)が24万円、入院時の食事代が2万円、差額ベッド代が10万円であった場合、下記<資料>に基づく高額療養費として支給される額として、正しいものはどれか。なお、隆行さんは全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)の被保険者であって標準報酬月額は47万円であり、真理さんは隆行さんの被扶養者であるものとする。また、KA病院に「健康保険限度額適用認定証」の提示はしておらず、世帯合算および多数該当は考慮しないものとする。

<資料>
1. 153,370円
2. 154,570円
3. 270,570円
4. 274,570円
正解:
高額療養費制度の適用を受ける前の医療費の自己負担額が24万円という事は、医療費は24万円÷0.3=80万円であると推定できます。
また、入院時の食事代や差額ベッド代は、高額療養費制度の対象とはなりません。
よって、自己負担限度額=80,100円+(800,000円-267,000円)×1%=85,430円となります。
したがって、高額療養費制度により払戻しを受けることができる金額は、高額療養費制度の適用を受ける前の自己負担額と自己負担限度額の差額ですから、24万円-85,430円=154,570円となります。

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