お金の寺子屋

FP3級実技(保険)解説-2020年1月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員のAさん(57歳)は、妻Bさん(58歳)との2人暮らしである。Aさんは、満60歳で定年を迎えることから、将来、公的年金制度から自分の年金がどのくらい支給されるのか、知りたいと思うようになった。また、最近体調を崩すことが多くなったこともあり、公的医療保険の概要について理解を深めたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(1962年5月12日生まれ)]
会社員
公的年金の加入歴:下図のとおり(60歳までの見込みを含む)
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中

[妻Bさん(1961年12月16日生まれ)]
専業主婦br>
公的年金の加入歴:下図のとおり(60歳までの見込みを含む)高校卒業後の18歳からAさんと結婚するまでの11年間、会社員として厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。

妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、<設例>の<Aさん夫妻に関する資料>に基づき、Aさんおよび妻Bさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額(2019年度価額)を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. Aさん:780,100円×445月/480月 
妻Bさん:780,100円×368月/480月
2. Aさん:780,100円×445月/480月 
妻Bさん:780,100円×480月/480月
3. Aさん:780,100円×480月/480月 
妻Bさん:780,100円×500月/480月
正解:
厚生年金保険の被保険者期間は、老齢基礎年金の受給額の計算期間に含まれますから、Aさんの受給額の計算期間は445月、妻Bさんの受給額の計算期間は480月です。
【問2】
次に、Mさんは、Aさんおよび妻Bさんに支給される老齢厚生年金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんおよび妻Bさんは、1961年4月2日以後の生まれですので、いずれも特別支給の老齢厚生年金の支給はなく、原則として、65歳から老齢基礎年金および老齢厚生年金が支給されます」
2. 「妻Bさんの厚生年金保険の被保険者期間が20年未満であるため、Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金の額には、配偶者の加給年金額が加算されます」
3. 「仮に、Aさんが現在の勤務先において、60歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者として65歳になるまで勤務した場合、65歳から支給される老齢厚生年金は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます」
正解:
1. 男性は、1961年(昭和36年)4月1日以降生まれの場合、特別支給の老齢厚生年金は支給されませんが、女性は5年遅れであるため、1966年(昭和41年)4月1日以前生まれであれば特別支給の老齢厚生年金が支給されます。
2. 加給年金は、年下の配偶者がいる場合に支給されますので、年上の配偶者がいる場合には支給されません。
3. 正しい記述です。
【問3】
最後に、Mさんは、公的医療保険の概要について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句または数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「Aさんに係る医療費の一部負担金の割合は、原則( ① )割となりますが、( ② )内に、医療機関等に支払った医療費の一部負担金等の額が自己負担限度額を超えた場合、所定の手続により、自己負担限度額を超えた額が高額療養費とし て支給されます。
Aさんが病気やケガによる療養のために、連続して4日以上、業務に就くことができず、当該期間について事業主から報酬が支払われない場合は、所定の手続により、傷病手当金が支給されます。傷病手当金の支給期間は、その支給を始めた日から起算して( ③ )が限度となります」
1. ①1 ②同一月 ③3年
2. ①1 ②同一年 ③1年6カ月
3. ①3 ②同一月 ③1年6カ月
正解:
医療費の一部負担金の割合は、原則として3割です。
高額療養費は、一ヵ月単位で計算します。
傷病手当金の支給期間は最長1年6ヵ月です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
会社員であるAさん(25歳)は、先日、職場で生命保険会社の営業担当者から生命保険の提案を受けた。Aさんは独身であることから、生命保険は必要ないと考えていたが、提案を受けたことを機に、病気や就業不能時の保障の必要性を感じ、加入するかどうか迷っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんが提案を受けた生命保険に関する資料>
保険の種類:定期保険特約付終身保険(60歳払込満了)
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:母Bさん
指定代理請求人:母Bさん
月払保険料(集団扱い):6,240円

(注) 入院または在宅療養が30日間継続した場合に6カ月分の給付金が支払われ、その後6カ月ごとに所定の就業不能状態が継続した場合に最大24カ月分の就業不能給付金が支払われる(死亡保険金の支払はない)。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「厚生労働省の患者調査等の各種データでは、入院日数が年々長期化しており、退院後の通院時の療養に係る費用負担も大きくなっていますので、医療保障を検討する場合は、退院後の通院に対する保障を充実させることも大切です」
2. 「先進医療の治療を受けた場合、診察料および投薬料に係る費用は公的医療保険の対象となりますが、技術料に係る費用は全額自己負担となりますので、先進医療特約の付加をお勧めします」
3. 「指定代理請求特約は、給付金や保険金などについて、Aさんが請求できない所定の事情がある場合に、あらかじめ指定された代理人がAさんに代わって請求することができる特約です」
正解:
1. 入院日数は、短期化の傾向にあります。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。
【問5】
次に、Mさんは、生命保険の加入等についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「生命保険を契約する際には、Aさんの傷病歴や現在の健康状態などについて、事実をありのままに正しく告知する必要があります。なお、告知受領権は生命保険募集人が有していますので、当該募集人に対して、口頭で告知してください」
2. 「提案を受けている生命保険に加入後、ライフステージの変化により、必要保障額は増減します。結婚や子の誕生といったライフイベントに合わせて、保障内容を定期的に見直すことをお勧めします」
3. 「提案を受けている生命保険は、加入後も特約の中途付加や契約転換制度を利用することで保障内容の見直しが可能です。なお、契約転換制度利用時には、告知や医師の診査等が不要のため、健康状態にかかわらず、保障内容を見直すことができます」
正解:
1. 告知受領権は生命保険会社および生命保険会社が指定した医師だけが有しています(募集人には告知受領権はありません)から、告知書面への記入が必要です。
2. 正しい記述です。
3. 契約転換制度を利用する場合、告知や審査が必要です。
【問6】
最後に、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険の課税関係について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「支払保険料のうち、終身保険および定期保険特約に係る保険料は一般の生命保険料控除の対象となり、就業不能サポート特約、総合医療特約および先進医療特約に係る保険料は介護医療保険料控除の対象となります」
2. 「生命保険料控除は、加入した年については勤務先の年末調整で適用を受けることができませんので、適用を受けるためには、所得税の確定申告が必要となります」
3. 「Aさんが就業不能サポート特約から就業不能給付金を受け取る場合、当該給付金は雑所得として総合課税の対象となります」
正解:
1. 正しい記述です。
2. 生命保険料控除は、年末調整の対象です。給与を受け取っている人は、年末に1年間に支払った保険料を事業主に申告して、事業主はそれを元に生命保険料控除を計算する仕組みですから、加入した年分の保険料も年末調整の対象になります。
3. 就業不能保険の就業不能給付金は、非課税です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
Aさん(45歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者から、自身の退職金の準備および事業保障資金の確保を目的とした下記の生命保険の提案を受けた。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<資料>Aさんが提案を受けた生命保険の内容

保険の種類:低解約返戻金型終身保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険料払込期間:65歳満了
死亡・高度障害保険金額:5,000万円
年払保険料:220万円

解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。
保険料払込期間を「低解約返戻金期間」とし、その期間は解約返戻金額を低解約返戻金型ではない終身保険の70%程度に抑えている。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
仮に、将来X社がAさんに役員退職金4,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を30年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. 1,200万円
2. 1,250万円
3. 2,500万円
正解:
退職所得の金額=(収入金額-退職所得控除額)×1/2です。
勤続期間が20年を超える場合の退職所得控除額は、800万円+70万円×(勤続年数-20)=800万円+70万円×(30-20)=1,500万円ですから、
退職所得=(4,000万円-1,500万円)×1/2=1,250万円となります。
【問8】
Mさんは、<設例>の<資料>の終身保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「当該終身保険は、保険料払込期間における解約返戻金額を抑えることで、低解約返戻金型ではない終身保険と比較して保険料が割安となっています」
2. 「Aさんの退任時に、役員退職金の一部として当該終身保険の契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの相続人に名義変更することで、当該終身保険を個人の保険として継続することが可能です」
3. 「保険期間中に急な資金需要が発生した際、契約者貸付制度を利用することにより、当該終身保険契約を解約することなく、資金を調達することができます。なお、契約者貸付金は、雑収入として益金の額に算入します」
正解:
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。
3. 契約者貸付金を受け取った場合、貸借対照表上、資産(現金)と負債が増えます(益金には計上されません)。
【問9】
<設例>の<資料>の終身保険を下記<条件>で解約した場合の経理処理(仕訳)として、次のうち最も適切なものはどれか。

<条件>
低解約返戻金期間経過後に解約し、受け取った解約返戻金額は4,600万円である。
X社が解約時までに支払った保険料の総額は4,400万円である。
上記以外の条件は考慮しないものとする。
1.
2.
3.
1.
2.
3.
正解:
死亡保険金が法人である終身保険の保険料は全額資産計上されますから、資産計上額(保険料積立金)は4,400万円であると推定されます。
よって、受け取った解約返戻金(現金)4,600万円を資産計上して、4,400万円の保険料積立金を資産から取り崩し、差額の200万円を雑収入とします。

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