お金の寺子屋

FP3級実技(個人)解説-2023年5月・前半

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(45歳)は、妻Bさん(42歳)との2人暮らしである。X社では、定年年齢が65歳とされており、Aさんは65歳まで勤務しようと考えている。Aさんは老後の生活を見据え、公的年金制度から支給される老齢給付について理解を深め、老後の生活資金等の準備をしておきたいと考えるようになった。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんとその家族に関する資料>

[Aさん(1977年6月10日生まれ・45歳・会社員)]
公的年金加入歴 下図のとおり(65歳までの見込みを含む)
大学卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入している。
X社が実施する確定給付企業年金の加入者である。
なお、X社が実施する企業年金は、確定給付企業年金のみである。

[妻Bさん(1980年10月15日生まれ・42歳・専業主婦)]

公的年金加入歴 18歳からAさんと結婚するまでの11年間(132月)は厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、老齢基礎年金の年金額は、2022年度価額に基づいて計算するものとする。
1. 777,800円×446月/480月
2. 777,800円×480月/480月
3. 777,800円×506月/480月
正解:(3点)
老齢基礎年金の計算上、年金額に反映されるのは、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などです。
<設例>において、20歳以上65歳未満の期間(540月)のうち、60歳以上65歳未満の期間(60月)は、年金額の計算に反映されませんから、年金額の計算に反映されるのは、506月-60月=446月です。
【問2】
次に、Mさんは、老齢厚生年金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんおよび妻Bさんには、特別支給の老齢厚生年金は支給されません。原則として、65歳から老齢厚生年金を受給することになります」
2. 「妻Bさんは厚生年金保険の被保険者期間が10年以上ありますので、Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金の額には、配偶者の加給年金額は加算されません」
3. 「Aさんが70歳0カ月で老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をする場合、当該年金額の増額率は42%になります」
正解:(4点)
1) 正しい記述です。特別支給の老齢厚生年金が支給されるのは、男性は1961年4月1日以前生まれの人、女性は1966年4月1日以前生まれの人です。
2) 加給年金を受け取るための配偶者の要件には、配偶者自身が厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある老齢厚生年金を受給していないこと、配偶者が65歳未満の場合、20年以上加入した老齢厚生年金の受給資格がないこと、等の要件がありますが、本問では該当しません。
3) 老齢年金を繰下げると、1月あたり0.7%増額されますから、70歳0ヵ月まで、60月下げると、増額率は、0.7%/月×60月=42%となります。
【問3】
最後に、Mさんは、老後の年金収入を増やす方法として確定拠出年金の個人型年金について説明した。Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。

「Aさんのような確定給付企業年金の加入者で65歳未満の厚生年金保険の被保険者は、個人型年金に加入することができます。個人型年金は、拠出した掛金を、加入者自身が選んだ商品で運用し、資産を形成する年金制度です。Aさんの場合、拠出できる掛金の限度額は年額( ① )円であり、拠出した掛金は、その全額を所得税の( ② )として総所得金額等から控除することができます。なお、60歳到達時に老齢給付金を受給するためには、通算加入者等期間が( ③ )年以上必要となります」
1. ①144,000 ②小規模企業共済等掛金控除 ③10
2. ①144,000 ②社会保険料控除      ③5
3. ①276,000 ②小規模企業共済等掛金控除 ③5
正解:(3点)
確定給付企業年金がある会社に勤めている第2号被保険者の確定拠出年金の掛金の拠出限度額は、年額144,000円です。
個人が拠出した確定拠出年金の掛金は、全額、小規模企業共済等掛金控除の対象となります。
確定拠出年金の老齢給付金を60歳から受け取るためには、通算加入者等期間が10年以上ある必要があります。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさん(30歳)は、将来に向けた資産形成のため、株式による運用を考えている。Aさんは、これまで投資経験がなく、株式の銘柄を選ぶ際の判断材料や購入する際の留意点について知りたいと思っている。
また、投資経験のある友人から勧められた上場不動産投資信託(J-REIT)にも興味を持っている。そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Mさんは、Aさんに対して、X社株式(東京証券取引所プライム市場上場銘柄)を例に、説明を行うことにした。

<X社に関する資料>
総資産 1兆6,000億円
自己資本(純資産) 9,500億円
当期純利益 750億円
年間配当金総額 120億円
発行済株式数 3億株
株価 2,500円
決算期:2023年6月30日(金)(配当の権利が確定する決算期末)
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、X社株式の投資指標について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「株価の相対的な割高・割安を判断する指標として、PERがあります。<X社に関する資料>から算出されるX社株式のPERは、10倍です」
2. 「株価に対する1株当たりの年間配当金の割合を示す指標を配当利回りといいます。<X社に関する資料>から算出されるX社株式の配当利回りは、1.6%です」
3. 「PERとPBRは、一般に、どちらも数値が高いほど株価は割安と判断されますが、何倍程度が妥当であるかを検討する際は、同業他社の数値や業界平均値と比較して、相対的な数値として捉えることが重要です」
正解:(4点)
1) PER=株価÷1株当たり当期純利益です。
1株当たり当期純利益=750億円÷3億株=250円より、PER=2,500円÷250円=10倍となります。
2) 配当利回り(%)=1株当たり年間配当金÷株価×100です。
1株当たり年間配当金=120億円÷3億株=40円より、配当利回り(%)=40円÷2,500円×100=1.6%となります。
3) PERとPBRは、どちらも数値が高いほど株価は割高と判断されます。
【問5】
次に、Mさんは、X社株式の購入等についてアドバイスした。MさんのAさんに対するアドバイスとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「上場株式を証券取引所の普通取引で売買したときの受渡しは、原則として、約定日(売買成立日)から起算して4営業日目に行われます」
2. 「Aさんは、権利付き最終日である2023年6月30日(金)までにX社株式を買付約定すれば、X社株式の次回の期末配当を受け取ることができます」
3. 「Aさんが特定口座(源泉徴収あり)でX社株式を株価2,500円で100株購入し、同年中に株価3,000円で全株売却した場合、その他の取引や手数料等を考慮しなければ、譲渡益5万円に対して20.315%相当額が源泉徴収等されます」
正解:(3点)
1) 上場株式の受渡日は、約定日から起算して3営業日後です。
2) X社株式の次回の期末配当を受け取るためには、権利付き最終日に株式の受渡が行われていなくてはならないため、権利付き最終日から起算して3営業日前までに約定する必要があります。
3) 正しい記述です。
譲渡益=(3,000円-2,500円)/株×100株=50,000円であり、源泉徴収ありの特定口座内で生じた株式に係る譲渡所得に対しては、20.315%の所得税・住民税・復興特別所得税が源泉徴収されます。
【問6】
最後に、Mさんは、上場不動産投資信託(J-REIT)について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「上場不動産投資信託(J-REIT)は、投資家から集めた資金を不動産投資法人が不動産等に投資し、その賃貸収入や売買益を投資家に分配する投資信託です」
2. 「上場不動産投資信託(J-REIT)の分配金は、配当所得となり、確定申告をすることで配当控除の適用を受けることができます」
3. 「上場不動産投資信託(J-REIT)は、上場株式と同様に指値注文や成行注文により売買することができます」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。
2) J-REITの分配金は、配当所得となりますが、J-REITには二重課税の問題がない(J-REITは法人税を負担していない)ため、配当控除の適用を受けることはできません。
3) 正しい記述です。J-REITは、上場株式と同様に取引することができます。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんとの4人家族である。Aさんは、2022年中に「ふるさと納税」の制度を初めて利用し、10の地方自治体に計8万円の寄附を行っている。

<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(48歳)]
会社員

[妻Bさん(45歳)]
2022年中に、パートタイマーとして給与収入90万円を受け取っている。

[長女Cさん(17歳)]
高校生。2022年中の収入はない。

[二女Dさん(13歳)]
中学生。2022年中の収入はない。

<Aさんの2022年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
780万円

[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2014年4月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:330万円
正味払込保険料:300万円

[上場株式の譲渡損失の金額(証券会社を通じて譲渡したもの)]
10万円

妻Bさん、長女Cさんおよび二女Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2022年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
Aさんの2022年分の所得税における総所得金額は、次のうちどれか。
1. 592万円
2. 612万円
3. 622万円
正解:(4点)
給与所得=780万円-(780万円×10%+110万円)=592万円で、全額総所得金額に算入されます。
一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金は、一時所得となりますが、総収入金額から収入を得るために要した金額を控除した額が特別控除額(50万円)以下ですから、所得の額は0円です。
また、上場株式の譲渡損失は、総所得金額の計算において、損益通算の対象外です。
よって、総所得金額は、592万円となります。
【問8】
Aさんの2022年分の所得税における所得控除に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です」
2. 「Aさんが適用を受けることができる扶養控除の額は、76万円です」
3. 「Aさんが適用を受けることができる基礎控除の額は、48万円です」
正解:(3点)
1) 正しい記述です。収入が給与収入90万円のみである場合、合計所得金額は48万円以下となります。また、納税者の合計所得金額が900万円以下であることから、配偶者控除の額は38万円となります。
2) 長女Cさんは、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除対象となり、15歳未満である二女Dさんは扶養控除の対象外です。よって、扶養控除の額は38万円です。
3) 対象外です。合計所得金額が2,400万円以下の人は、48万円の基礎控除の適用を受けることができます。
【問9】
Aさんの2022年分の所得税の確定申告に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 「Aさんは、所得税の確定申告をすることで、上場株式の譲渡損失の金額を前年に繰り戻し、前年分の所得に対する所得税額の還付を受けることができます」
2. 「Aさんは、総所得金額に算入される一時所得の金額が20万円を超えるため、所得税の確定申告をしなければなりません」
3. 「Aさんは、ふるさと納税に係る寄附金控除について、年末調整では適用を受けることができませんので、所得税の確定申告が必要となります」
正解:(3点)
1) 上場株式の譲渡損失の金額は、繰戻すことができません。
2) 一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金は、一時所得となりますが、総収入金額から収入を得るために要した金額を控除した額が特別控除額(50万円)以下ですから、所得の額は0円です。
3) 正しい記述です。ふるさと納税のワンストップ特例の適用を受けるためには、寄付先の団体の数が5団体以下でなくてはなりません(寄付額の要件はありません)。

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