FP3級実技(個人)解説-2021年9月・後半
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(62歳)は、12年前に父親の相続により取得した自宅(建物およびその敷地である甲土地)を所有している。Aさんは自宅を売却し、駅前のタワーマンションを購入して移り住むことを検討している。
先日、Aさんが知り合いの不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅に近く、都心へのアクセスもよい。賃貸マンション経営をしてみてはどうか」とアドバイスを受けた。
Aさん(62歳)は、12年前に父親の相続により取得した自宅(建物およびその敷地である甲土地)を所有している。Aさんは自宅を売却し、駅前のタワーマンションを購入して移り住むことを検討している。
先日、Aさんが知り合いの不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地は最寄駅に近く、都心へのアクセスもよい。賃貸マンション経営をしてみてはどうか」とアドバイスを受けた。
<甲土地の概要>
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地に耐火建築物を建築する場合の①建蔽率の上限となる建築面積と②容積率の上限となる延べ面積の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | ① 360㎡ ② 1,440㎡ |
2. | ① 360㎡ ② 1,200㎡ |
3. | ① 400㎡ ② 1,200㎡ |
正解:2(4点)
① | 準防火地域に耐火建築物を建築する場合、建蔽率の上限は+10%されますから、建蔽率の上限は90%となります。 よって、建蔽率の上限となる建築面積は、400㎡×90%=360㎡となります。 |
② | 前面道路の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のどちらか小さい値となります。 前面道路の幅員によって定まる容積率=6×6/10=3.6(=360%)>指定容積率(300%)より、容積率の上限は300%となります。 よって、容積率の上限となる延べ面積は、400㎡×300%=1,200㎡となります。 |
【問11】
自宅(建物およびその敷地である甲土地)の譲渡に関する以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
ⅰ) | 「仮に、Aさんがタワーマンションに転居し、その後、居住していない現在の自宅を譲渡した場合に、Aさんが『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例』の適用を受けるためには、家屋に自己が居住しなくなった日から( ① )を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること等の要件を満たす必要があります。また、『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例』の適用を受けた場合、課税長期譲渡所得金額が( ② )以下の部分については、軽減税率が適用されます」 |
ⅱ) | 「Aさんが自宅を譲渡し、マンションを購入した場合、譲渡した年の1月1日において譲渡した居住用財産の所有期間が( ③ )を超えていること等の要件を満たせば、『特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例』の適用を受けることができます」 |
1. | ① 3年 ② 1億円 ③ 5年 |
2. | ① 5年 ② 1億円 ③ 10年 |
3. | ① 3年 ② 6,000万円 ③ 10年 |
正解:3(3点)
① | 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の適用を受けるためには、家屋に住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するなどの要件を満たす必要があります。 |
② | 軽減税率の特例は、課税長期譲渡所得金額のうち6,000万円以下の部分についての税率が、所得税10%、住民税4% 、復興特別所得税0.21%になる特例です。 |
③ | 買換え特例の適用を受けるためには、分離譲渡所得における所有期間の数え方で、所有期間が10年を超えるなどの要件を満たす必要があります。 |
【問12】
自己建設方式による甲土地の有効活用に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、相続税の課税価格の計算上、甲土地は貸宅地として評価されます」 |
2. | 「甲土地が貸付事業用宅地等に該当すれば、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます。貸付事業用宅地等は、相続税の課税価格の計算上、200㎡までの部分について50%の減額が受けられます」 |
3. | 「賃貸マンションを建築することで相続税等の軽減が期待できますが、将来の賃料収入が減少することや、借入金の返済が滞ることなどのリスクを考慮し、実行にあたっては慎重な計画が求められます」 |
正解:1(3点)
1. | 賃貸マンションが建っている敷地は、相続税の計算上、貸家建付地として評価されます。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんは、2021年7月8日に病気により70歳で死亡した。
Aさんは、自宅に自筆証書遺言を残していた。また、妻Bさんは、X社から死亡退職金6,000万円を受け取っている。
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんは、2021年7月8日に病気により70歳で死亡した。
Aさんは、自宅に自筆証書遺言を残していた。また、妻Bさんは、X社から死亡退職金6,000万円を受け取っている。
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの主な相続財産(みなし相続財産を含む)>
[現預金等]
8,000万円
[自宅(敷地300㎡)]
5,000万円(「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の相続税評価額)
[自宅(建物)]
1,000万円(固定資産税評価額)
[X社株式]
1億9,000万円(相続税評価額)
[死亡退職金]
6,000万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
Aさんの相続に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「相続人が自宅に保管されていたAさんの自筆証書遺言を発見した場合、相続人は、遅滞なく、自筆証書遺言を法務局に提出して、その検認を請求しなければなりません」 |
2. | 「Aさんが2021年分の所得税および復興特別所得税について確定申告書を提出しなければならない場合に該当するとき、相続人は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告書を提出しなければなりません」 |
3. | 「相続税の申告書は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10カ月以内に被相続人であるAさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長に提出しなければなりません」 |
正解:1(3点)
1. | 遺言の検認の請求は家庭裁判所に対して行います。 |
2. | 正しい記述です。準確定申告の期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。 |
3. | 正しい記述です。相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
【問14】
Aさんの相続に関する以下の文章の空欄①~③に入る数値の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
ⅰ) | 「Aさんの相続における遺産に係る基礎控除額は、( ① )万円です」 |
ⅱ) | 「妻Bさんが受け取った死亡退職金6,000万円のうち、相続税の課税価格に算入される金額は、( ② )万円です」 |
ⅲ) | 「妻Bさんが自宅の敷地を相続により取得し、その敷地の全部について、特定居住用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、自宅の敷地(相続税評価額5,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ③ )万円とすることができます」 |
1. | ① 4,200 ② 4,500 ③ 4,000 |
2. | ① 4,800 ② 1,500 ③ 4,000 |
3. | ① 4,800 ② 4,500 ③ 1,000 |
正解:3(3点)
① | 基礎控除額=600万円×法定相続人の数です。 法定相続人の数は3人ですから、基礎控除額=600万円×3=4,800万円となります。 |
② | 相続人が受け取った死亡退職金は、500万円×法定相続人のまで非課税(課税価格に不算入)となります。 よって、死亡退職金の課税税価格に算入される金額は、6,000万円-500万円×3=4,500万円となります。 |
③ | 特定居住用宅地等に該当する自宅の敷地は330㎡まで80%評価減されます。 よって、課税税価格に算入される金額は、5,000万円 ×(1-80%)=1,000万円となります。 |
【問15】
Aさんの相続に係る課税遺産総額(「課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額」)が2億9,000万円であった場合の相続税の総額は、次のうちどれか。
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
1. | 7,050万円 |
2. | 9,050万円 |
3. | 1億350万円 |
正解:1(4点)
相続人は配偶者相続人と第一順位の血族相続の組み合わせですから、妻Bさんの法定相続分は1/2になります。
また、長男Cさんと二男Dさんの法定相続分は、それぞれ1/4となります。
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、2億9,000万円×1/2=1億4,500万円、長男Cさんと二男Dさんの法定相続分に応ずる取得金額はそれぞれ、2億9,000万円×1/4=7,250万円となります。
したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、1億4,500万円×40%-1,700万円=4,100万円となり、長男Cさんと二男Dさんの法定相続分対応する相続税額はそれぞれ、7,250万円×30%-700万円=1,475万円となります。
ゆえに、相続税の総額は、4,100万円+1,475万円+1,475万円=7,050万円となります。
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