FP3級実技(保険)解説-2023年1月・前半
【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(56歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学を卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、2023年6月に定年を迎える予定であるが、X社の継続雇用制度を利用して65歳まで働く予定である。Aさんは、定年を迎えるにあたり、60歳以後の社会保険制度について理解を深めたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(59歳)は、妻Bさん(56歳)との2人暮らしである。Aさんは、大学を卒業後、X社に入社し、現在に至るまで同社に勤務している。Aさんは、2023年6月に定年を迎える予定であるが、X社の継続雇用制度を利用して65歳まで働く予定である。Aさんは、定年を迎えるにあたり、60歳以後の社会保険制度について理解を深めたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<X社の継続雇用制度の雇用条件> | |
・ | 1年契約の嘱託雇用、1日8時間(週40時間)勤務 |
・ | 厚生年金保険、全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入 |
・ | 賃金月額は60歳到達時の60%(月額27万円)で賞与はなし |
<Aさん夫妻に関する資料>
[Aさん(1963年6月25日生まれ・会社員)] | |||
・ | 公的年金加入歴 | : | 下図のとおり(65歳までの見込みを含む) 20歳から大学生であった期間(34月)は国民年金に任意加入していない。 |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中 |
[妻Bさん(1966年10月10日生まれ・専業主婦)]
・ | 公的年金加入歴 | : | 18歳でX社に就職してからAさんと結婚するまでの11年間(132月)、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。 |
・ | Aさんが加入する全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。 |
※ | 妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問1】
はじめに、Mさんは、《設例》の<Aさん夫妻に関する資料>に基づき、Aさんが老齢基礎年金の受給を65歳から開始した場合の年金額(2022年度価額)を試算した。Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 777,800円×446月/480月 |
2. | 777,800円×480月/480月 |
3. | 777,800円×506月/480月 |
正解:1(3点)
老齢基礎年金の計算上、20歳以上60歳未満の厚生年金保険の被保険者期間は年金額に反映されますが、60歳以上の厚生年金保険の被保険者期間や国民年金未加入期間は年金額に反映されません。
よって、老齢基礎年金の額=老齢基礎年金の満額×(204+302-60)/480となります。
よって、老齢基礎年金の額=老齢基礎年金の満額×(204+302-60)/480となります。
【問2】
次に、Mさんは、Aさんが受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「1963年6月生まれのAさんは、原則として、64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます」 |
2. | 「Aさんが65歳になるまで厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務した場合、65歳から支給される老齢厚生年金は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます」 |
3. | 「Aさんが65歳から受給することができる老齢厚生年金には、妻Bさんが65歳になるまでの間、加給年金額が加算されます」 |
正解:1(3点)
1) | 男性の場合、1961年4月2日以降に生まれた人は、特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができません。 |
2) | 正しい記述です。 |
3) | 正しい記述です。加給年金は、厚生年金保険の被保険者期間が20年以上ある人に年下の配偶者がいる場合、配偶者が65歳になるまで加算されます。 |
【問3】
最後に、Mさんは、X社の継続雇用制度利用後の社会保険に関する各種取扱いについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんの60歳以後の各月に支払われる賃金額が、60歳到達時の賃金月額の75%相当額を下回った場合、Aさんは、原則として、雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を受給することができます」 |
2. | 「Aさんが雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金を受給する場合、Aさんは、当該給付金を最長で2年間受給することができます」 |
3. | 「Aさんが60歳以後も全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者となる場合、引き続き、妻BさんをAさんが加入する健康保険の被扶養者とすることができます」 |
正解:2(4点)
1) | 正しい記述です。 |
2) | 高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以降65歳まで、最長5年間支給されます。 |
3) | 正しい記述です。協会けんぽには扶養の制度があり、他の公的医療保険の被保険者とならない限り、扶養のための年齢要件はありません。 |
【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさん(33歳・厚生年金保険の被保険者)は、昨年、妻Bさん(31歳・専業主婦)と結婚した。現時点でAさん夫妻に子はいない。Aさんは、妻Bさんとの結婚を機に、死亡保障や就業不能時の保障の必要性を感じていたところ、生命保険会社の営業担当者から下記の生命保険の提案を受けた。
Aさんは、生命保険に加入するにあたり、その前提として、自分が死亡した場合や、障害状態となり働けなくなった場合に公的年金制度からどのような給付が受けられるのかについて理解を深めたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
会社員のAさん(33歳・厚生年金保険の被保険者)は、昨年、妻Bさん(31歳・専業主婦)と結婚した。現時点でAさん夫妻に子はいない。Aさんは、妻Bさんとの結婚を機に、死亡保障や就業不能時の保障の必要性を感じていたところ、生命保険会社の営業担当者から下記の生命保険の提案を受けた。
Aさんは、生命保険に加入するにあたり、その前提として、自分が死亡した場合や、障害状態となり働けなくなった場合に公的年金制度からどのような給付が受けられるのかについて理解を深めたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんが提案を受けた生命保険に関する資料>
保険の種類:5年ごと配当付特約組立型総合保険(注1)
月払保険料:8,800円
保険料払込期間(更新限度):90歳満了
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
保険の種類:5年ごと配当付特約組立型総合保険(注1)
月払保険料:8,800円
保険料払込期間(更新限度):90歳満了
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
(注1) | 複数の特約を組み合わせて加入することができる保険 |
(注2) | 入院または在宅療養が30日間継続した場合に6カ月分の給付金が支払われ、その後6カ月ごとに所定の就業不能状態が継続した場合に最大2年間(24カ月間)の就業不能給付金が支払われる(死亡保険金の支払はない)。 |
(注3) | 病気やケガで1日以上の入院をした場合に入院給付金が支払われる(死亡保険金の支払はない)。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問4】
はじめに、Mさんは、公的年金制度からの給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんが現時点で死亡した場合、妻Bさんは、遺族基礎年金を受給することはできません」 |
2. | 「Aさんが現時点で死亡した場合に妻Bさんに支給される遺族厚生年金は、その計算の基礎となる被保険者期間の月数が300月に満たない場合、300月とみなして年金額が計算されます」 |
3. | 「Aさんが病気やケガ等で障害状態となり、その障害の程度が障害等級3級と認定された場合、Aさんは障害基礎年金および障害厚生年金を受給することができます」 |
正解:3(3点)
1) | 正しい記述です。遺族基礎年金は、国民年金の被保険者であった人に生計を維持されていた、子のある配偶者または子に支給されるものですから、子のない妻Bさんには支給されません。 |
2) | 正しい記述です。厚生年金保険の被保険者が死亡した場合などに支給される遺族厚生年金は、年金額の計算上被保険者期間に最低保証があります。 |
3) | 障害基礎年金は、障害等級1級または2級と認定された場合に支給され、3級の場合は支給されません。 |
【問5】
次に、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険の保障内容等について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「先進医療特約では、療養を受けた時点において厚生労働大臣により定められている先進医療が給付の対象となります」 |
2. | 「Aさんが提案を受けた生命保険には、リビング・ニーズ特約が付加されていますので、Aさんが余命6カ月以内と判断された場合、生前給付金として最大で3,000万円を請求することができます」 |
3. | 「最近では、うつ病などの精神疾患による就業不能を保障の対象とする保険商品も販売されています。各生命保険会社が取り扱う就業不能保険の保障内容や支払基準をよく確認したうえで、加入の可否をご検討ください」 |
正解:2(3点)
1) | 正しい記述です。 |
2) | リビングニーズ特約により請求することができる金額は、保険金額の範囲内で最大で3,000万円ですが、本問では、契約している死亡保険金額が700万円ですから、700万円までしか請求することができません。 |
3) | 正しい記述です。 |
【問6】
最後に、Mさんは、Aさんが提案を受けた生命保険の課税関係について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | 「支払保険料のうち、終身保険特約および定期保険特約に係る保険料は一般の生命保険料控除の対象となり、就業不能サポート特約、入院特約および先進医療特約に係る保険料は介護医療保険料控除の対象となります」 |
2. | 「生命保険料控除は、生命保険に加入した年分については勤務先の年末調整で適用を受けることができませんので、適用を受けるためには、所得税の確定申告が必要となります」 |
3. | 「Aさんが入院給付金を請求できない特別な事情がある場合、指定代理請求人である妻BさんがAさんに代わって請求することができます。妻Bさんが受け取る当該給付金は、一時所得として総合課税の対象となります」 |
正解:1(4点)
1) | 正しい記述です。 |
2) | 生命保険料控除は年末調整で適用を受けることができません(雇用主がいくら医療費がかかったかを把握していないため)。 「寄付をしたらいざ(医雑)確定申告会場へ」という語呂合わせを使うと、年末調整により適用を受けることができない所得控除(寄付金控除、医療費控除、雑損控除)を覚えることができます。 |
3) | 入院給付金は、契約者や被保険者等が受け取った場合だけでなく、指定代理請求人が受け取った場合も非課税となります。 |
【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(65歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、今期限りで勇退し、X社の専務取締役である長男Bさん(43歳)が社長に就任する予定である。X社は、Aさんに支給する役員退職金の原資として、下記<資料>の生命保険の解約返戻金を活用することを検討している。
そこで、Aさんは、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさん(65歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、今期限りで勇退し、X社の専務取締役である長男Bさん(43歳)が社長に就任する予定である。X社は、Aさんに支給する役員退職金の原資として、下記<資料>の生命保険の解約返戻金を活用することを検討している。
そこで、Aさんは、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<資料>X社が現在加入している生命保険の契約内容
契約年月日:2003年4月1日
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:99歳満了
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:240万円
現時点の解約返戻金額:4,400万円
現時点の払込保険料累計額:4,800万円
契約年月日:2003年4月1日
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:99歳満了
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:240万円
現時点の解約返戻金額:4,400万円
現時点の払込保険料累計額:4,800万円
※ | 解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。 |
※ | 保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問7】
仮に、X社がAさんに役員退職金5,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金に係る退職所得の金額として、次のうち最も適切なものはどれか。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を35年とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。
1. | 1,575万円 |
2. | 1,850万円 |
3. | 3,150万円 |
正解:1(3点)
勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、「800万円+70万円×(勤続年数-20年)」の式で計算されます。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(35-20)=1,850万円となります。
したがって、退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(5,000万円-1,850万円)×1/2=1,575万円となります。
よって、退職所得控除額=800万円+70万円×(35-20)=1,850万円となります。
したがって、退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(5,000万円-1,850万円)×1/2=1,575万円となります。
【問8】
X社が現在加入している《設例》の長期平準定期保険を下記<条件>にて解約した場合の経理処理(仕訳)として、次のうち最も適切なものはどれか。
<条件> | |
・ | X社が解約時までに支払った保険料の累計額は、4,800万円である。 |
・ | 解約返戻金の額は、4,400万円である。 |
・ | 配当等、上記以外の条件は考慮しないものとする。 |
1. | |
2. | |
3. |
1. | |
2. | |
3. |
正解:2(4点)
2019年7月7日以前に契約した長期平準定期保険の保険料は、支払額の2分の1を資産計上しますから、X社が解約時までに支払った保険料の累計額が4,800万円であるのなら、解約時に取り崩す資産計上額(貸方に記載する前払保険料の額)は、2,400万円であると推定されます。
したがって、受け取った解約返戻金4,400万円と資産計上額との差額の2,000万円を、雑収入として処理します。
したがって、受け取った解約返戻金4,400万円と資産計上額との差額の2,000万円を、雑収入として処理します。
【問9】
Mさんは、《設例》の長期平準定期保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. | 「X社が当該生命保険を解約した場合にX社が受け取る解約返戻金は、Aさんに支給する役員退職金の原資として活用する以外に、設備投資等の事業資金としても活用することができます」 |
2. | 「現時点で当該生命保険を払済終身保険に変更する場合、契約は継続するため、経理処理は必要ありません」 |
3. | 「当該生命保険を払済終身保険に変更し、Aさんが勇退する際に、契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの相続人に名義を変更することで、当該払済終身保険を役員退職金の一部としてAさんに現物支給することができます」 |
正解:2(3点)
1) | 正しい記述です。解約返戻金の使い道は契約者であるX社が自由に決めることができます。 |
2) | 長期平準定期保険のような資産計上額がある生命保険を払済保険に変更する場合、払済保険に変更した時点の解約返戻金相当額と資産計上額との差額を、益金または損金として処理します。 |
3) | 正しい記述です。 |
スポンサーリンク
スポンサーリンク
ホーム | 進む> |