FP3級実技(保険)解説-2022年1月・後半
会社員のAさんは、妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんとの4人家族である。また、Aさんは、2021年中に一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金550万円を受け取っている。
<Aさんとその家族に関する資料>
[Aさん(50歳)]
会社員
[妻Bさん(50歳)]
専業主婦。2021年中の収入はない。
[長女Cさん(20歳)]
大学生。2021年中の収入はない。長女Cさんが負担すべき国民年金の保険料はAさんが支払っている。
[母Dさん(79歳)]
2021年中に老齢基礎年金50万円および遺族厚生年金40万円を受け取っている。
<Aさんの2021年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
750万円
[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2013年9月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:550万円
正味払込保険料:500万円
※ | 妻Bさん、長女Cさんおよび母Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしてい る。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2021年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
ⅰ) | 「Aさんが適用を受けることができる配偶者控除の額は、( ① )万円です」 |
ⅱ) | 「長女Cさんは特定扶養親族に該当するため、Aさんが適用を受けることができる長女Cさんに係る扶養控除の額は、( ② )万円です」 |
ⅲ) | 「母Dさんは老人扶養親族の同居老親等に該当するため、Aさんが適用を受けることができる母Dさんに係る扶養控除の額は、( ③ )万円です」 |
1. | ①26 ②63 ③48 |
2. | ①38 ②63 ③58 |
3. | ①38 ②58 ③48 |
① | 合計所得金額が900万円以下の人は、38万円の配偶者控除を受けることができます。 |
② | 19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族は、特定扶養親族として63万円の控除対象となります。 |
③ | 扶養控除の計算上、同居老親等に該当する扶養親族は58万円の控除対象になります。 |
1. | 「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、源泉分離課税の対象となります」 |
2. | 「2021年中に解約した一時払変額個人年金保険の保険差益が20万円を超えるため、Aさんは所得税の確定申告をしなければなりません」 |
3. | 「Aさんが支払っている長女Cさんの国民年金の保険料は、その全額が社会保険料控除の対象となります」 |
1) | 契約から5年を越えて受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、一時所得となります。 |
2) | 一時払変額個人年金保険の解約返戻金に係る一時所得は、550万円-50万円=0円です。給与収入の額が2,000万円以下で、給与所得と退職所得以外の所得が20万円以下である場合には、基本的に、確定申告をする必要はありません。 |
3) | 正しい記述です。社会保険料控除の対象となる保険料や掛金は、生計を一にする配偶者やその他の親族のために払ったお金も、所得控除の対象となります。 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
1. | 565万円 |
2. | 590万円 |
3. | 615万円 |
一時所得=550万円-50万円=0円です。
給与所得は全額総所得金額に算入されますから、総所得金額は565万円となります。
Aさんは、2021年12月11日に病気により81歳で死亡した。Aさんの親族関係図等は、以下のとおりである。なお、Aさんは、生前に自筆証書遺言を作成し、自宅に保管していた(自筆証書遺言書保管制度は利用していない)。
妻Bさん(78歳)、長女Cさん(56歳)、二女Dさん(54歳)、孫Fさん(23歳)、孫Gさん(21歳)は、自筆証書遺言の内容に従い、相続により財産を取得する予定である。なお、長男Eさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
保険の種類:一時払終身保険
死亡保険金額:3,000万円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
ⅰ) | 「Aさんの相続に係る法定相続人の数は5人となり、孫Fさんおよび孫Gさんの法定相続分はそれぞれ( ① )です」 |
ⅱ) | 「Aさんの相続における遺産に係る基礎控除額は、( ② )万円です」 |
ⅲ) | 「相続税の申告書の提出期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ③ )カ月以内となります」 |
1. | ①8分の1 ②6,000 ③4 |
2. | ①8分の1 ②5,400 ③10 |
3. | ①12分の1 ②6,000 ③10 |
① | 相続人の組み合わせが配偶者相続人と第一順位の血族相続人の場合、配偶者相続人の法定相続分と血族相続人全体の法定相続分は、それぞれ2分の1ずつとなります。 また、代襲相続人の法定相続分は、被代襲者の本来の法定相続分と等しいです。 なお、同順位の血族相続人が複数いる場合には、各相続人の法定相続分は、血族相続人全体の法定相続分を頭数で按分したものになり、代襲相続人が複数いる場合には、各代襲相続人の法定相続分は、被代襲者の本来の法定相続分を頭数で按分したものになります。 よって、孫Fさんと孫Gさんの法定相続分は、長男Eさんの本来の法定相続分(1/2×1/3=1/6)を頭数で按分して、1/6×1/2=1/12となります。 |
② | 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×5=6,000万円となります。 |
③ | 相続税の申告期限は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
1. | 「Aさんの自宅から自筆証書遺言を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なく、その遺言書を家庭裁判所に提出し、その検認を請求しなければなりません」 |
2. | 「妻Bさんが受け取る死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となりますが、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることで、相続税の課税価格に算入される金額は500万円となります」 |
3. | 「孫Fさんおよび孫Gさんは、相続税額の2割加算の対象となります」 |
1) | 正しい記述です。自筆証書遺言保管制度を利用していない自筆証書遺言を発見した場合には、検認の請求をする必要があります。 |
2) | 相続税の計算における死亡保険金の非課税枠は、500万円×法定相続人の数ですから、500万円×5=2,500万円となります。 よって、相続税の課税価格に算入される金額は、3,000万円-2,500万円=500万円となります。 |
3) | 相続税の計算において、代襲相続人である孫は、2割加算の対象外です。 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
60,000万円超 | 55% | 7,200万円 |
1. | 6,550万円 |
2. | 8,160万円 |
3. | 1億800万円 |
各相続人の法定相続分は、妻Bさんが1/2、長女Cさんと二女Dさんがそれぞれ1/6、孫Fさんと孫Gさんがそれぞれ1/12です。
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、3億円×1/2=1億5,000万円、長女Cさんと二女Dさんの法定相続分に応ずる取得金額は、それぞれ3億円×1/6=5,000万円、孫Fさんと孫Gさんの法定相続分に応ずる取得金額は、それぞれ3億円×1/12=2,500万円となります。
したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、1億5,000万円×40%-1,700万円=4,300万円となり、長女Cさんと二女Dさんの法定相続分対応する相続税額は、それぞれ5,000万円×20%-200万円=800万円、孫Fさんと孫Gさんの法定相続分対応する相続税額は、それぞれ2,500万円×15%-50万円=325万円となります。
ゆえに、相続税の総額は、4,300万円+800万円+800万円+325万円+325万円=6,550万円となります。
スポンサーリンク
スポンサーリンク
<戻る | 一覧へ | 進む> |