FP2級実技(個人)解説-2023年5月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
個人事業主のAさん(50歳)は、2年前に父の相続により甲土地(600㎡)を取得している。甲土地は、父の代から月極駐車場として賃貸しているが、収益性は高くない。
Aさんが甲土地の活用方法について検討していたところ、ハウスメーカーのX社から「甲土地は、最寄駅から徒歩3分の好立地にあり、相応の需要が見込めるため、賃貸マンションの建築を検討してみませんか。Aさんが建築したマンションを弊社に一括賃貸(普通借家契約・マスターリース契約(特定賃貸借契約))していただければ、弊社が入居者の募集・建物管理等を行ったうえで、賃料を保証させていただきます」と提案を受けた。
Aさんは、自ら賃貸マンションを経営することも考慮したうえで、X社の提案について検討したいと考えている。
個人事業主のAさん(50歳)は、2年前に父の相続により甲土地(600㎡)を取得している。甲土地は、父の代から月極駐車場として賃貸しているが、収益性は高くない。
Aさんが甲土地の活用方法について検討していたところ、ハウスメーカーのX社から「甲土地は、最寄駅から徒歩3分の好立地にあり、相応の需要が見込めるため、賃貸マンションの建築を検討してみませんか。Aさんが建築したマンションを弊社に一括賃貸(普通借家契約・マスターリース契約(特定賃貸借契約))していただければ、弊社が入居者の募集・建物管理等を行ったうえで、賃料を保証させていただきます」と提案を受けた。
Aさんは、自ら賃貸マンションを経営することも考慮したうえで、X社の提案について検討したいと考えている。
<資料>
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。
① | 建蔽率の上限となる建築面積 |
② | 容積率の上限となる延べ面積 |
正解:600、2,160
① | 建蔽率が80%である防火地域に耐火建築物を建てる場合は、建ぺい率の上限が100%となります。 よって、建ぺい率の上限となる建築面積は、600㎡×100%=600㎡です。 |
② | 前面道路の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、いずれか小さい方となります。 前面道路の幅員によって定まる容積率=6×6/10=3.6=360%ですから、容積率の上限は、360%となります。 よって、容積率の上限となる延床面積は、600㎡×360%=2,160㎡です。 |
【問11】
Aさんが、甲土地上に賃貸マンションを建築する場合の留意点等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「Aさんが、所有するマンションについて自ら建物の管理や入居者の募集、入居者との賃貸借契約を行う場合には、あらかじめ宅地建物取引業の免許を取得する必要がありますが、マスターリース契約(特定賃貸借契約)に基づき、Ⅹ社に建物を一括賃貸する場合は、宅地建物取引業の免許は不要です」 |
② | 「AさんがX社と普通借家契約としてマスターリース契約(特定賃貸借契約)を締結し、当該契約において賃料が保証される場合であっても、Ⅹ社から経済事情の変動等を理由として契約期間中に賃料の減額請求を受ける可能性があります」 |
③ | 「不動産の収益性を測る指標の1つであるNOI利回り(純利回り)は、不動産投資によって得られる賃料等の年間総収入額を総投資額で除して算出されます。この指標では、簡便に不動産の収益性を把握することができますが、不動産投資に伴う諸経費は考慮されていないため、あくまで目安として利用するようにしてください」 |
正解:×、○、×
① | 自らが貸主となって所有する不動産の賃貸を行うためには、宅地建物取引業の免許を取得する必要はありません。 |
② | 正しい記述です。 |
③ | NOI利回り(純利回り)は、不動産投資によって得られる年間の純収益の額(=収入の総額-支出の総額)を総投資額で除して算出されます。 |
【問12】
Aさんが、甲土地上に賃貸マンションを建築する場合の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築し、不動産取得税および登録免許税を支払った場合、不動産所得の金額の計算上、いずれも必要経費に算入することができます」 |
② | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、相続税額の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます。甲土地の貸家建付地としての価額は、当該マンションの賃貸割合が高いほど、高く評価されます」 |
③ | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、甲土地に係る固定資産税の課税標準を、住宅1戸につき 200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の6分の1の額とする特例の適用を受けることができます」 |
正解:○、×、○
① | 正しい記述です。 |
② | 貸家建付地の相続税評価額は、「貸家建付地の相続税評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」の算式により計算されますから、賃貸割合が高いほど、評価額は低くなります。 |
③ | 正しい記述です。マンションの敷地の固定資産税評価額の計算上、小規模住宅用地の特例の適用を受けると、「200㎡×戸数」までの課税標準が6分の1になります。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんは、2023年4月26日(水)に病気により75歳で死亡した。Aさんは、自宅に自筆証書遺言を残しており、相続人等は自筆証書遺言の内容に従い、Aさんの財産を下記のとおり取得する予定である。なお、妻Bさんは、死亡保険金および死亡退職金を受け取っている。また、長女Dさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんは、2023年4月26日(水)に病気により75歳で死亡した。Aさんは、自宅に自筆証書遺言を残しており、相続人等は自筆証書遺言の内容に従い、Aさんの財産を下記のとおり取得する予定である。なお、妻Bさんは、死亡保険金および死亡退職金を受け取っている。また、長女Dさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
<Aさんの親族関係図>
<各人が取得する予定の相続財産(みなし相続財産を含む)>
[①妻Bさん(76歳)]
現金および預貯金 | : | 2,500万円 | |
自宅(敷地300㎡) | : | 7,500万円 | (「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額) |
自宅(建物) | : | 1,500万円 | (固定資産税評価額) |
死亡保険金 | : | 1,500万円 | (受取額。契約者(=保険料負担者)・被保険者はAさん、死亡保険金受取人は妻Bさん) |
死亡退職金 | : | 3,000万円 | (受取額) |
[②長男Cさん(51歳)]
現金および預貯金 | : | 5,000万円 | |
X社株式 | : | 1億円 | (相続税評価額) |
[孫Eさん(25歳) ]
現金および預貯金 | : | 2,000万円 |
[孫Fさん(23歳) ]
現金および預貯金 | : | 2,000万円 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「妻Bさんや長男Cさんが、Aさんの相続について単純承認する場合、原則として、相続の開始があったことを知った時から3カ月以内に、家庭裁判所にその旨を申述しなければなりません」 |
② | 「Aさんの2023年分の所得税について確定申告書を提出しなければならない場合に該当するとき、相続人は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に準確定申告書を提出しなければなりません」 |
③ | 「妻Bさんが受け取った死亡退職金は、みなし相続財産として相続税の課税対象となります。妻Bさんが受け取った死亡退職金3,000万円のうち、相続税の課税価格に算入される金額は1,500万円となります」 |
正解:×、○、×
① | 単純承認をする場合、家庭裁判所に申述する必要はありません。 |
② | 正しい記述です。準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。 |
③ | 死亡保険金の非課税限度額は、「500万円×法定相続人の数」の式で計算されます。 よって、課税価格に算入される死亡保険金の額は、3,000万円-(500万円×4)=1,000万円となります。 |
【問14】
Aさんの相続に係る相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、課税遺産総額(相続税の課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額)は2億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)相続税の課税価格の合計額 | □□□万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | 2億円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | □□□万円 |
孫Eさん | □□□万円 |
孫Fさん | ( ② )万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
正解:5,400、325、3,750
① | 相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算されます。 よって、3,000万円+600万円×4=5,400万円となります。 |
② | 孫Fさんの法定相続分に対応する取得金額は、2億円×1/8=2,500万円となります。 これに対応する相続税額は、2,500万円×15%-50万円=325万円です。 |
③ |
妻Bさんの法定相続分に対応する取得金額は、2億円×1/2=1億円となります。 長男Cさんの法定相続分に対応する取得金額は、2億円×1/4=5,000万円となります。 孫Eさんに対する相続税の総額の基となる税額は、孫Fさんと同じです。 したがって、相続税の総額は、2,300万円+800万円+325万円+325万円=3,750万円となります。 |
【問15】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「妻Bさんが『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受ける場合、原則として、妻Bさんが相続により取得した財産の金額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円のいずれか( ① )金額を超えない限り、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 |
Ⅱ | 「孫Eさんおよび孫Fさんは、相続税額の2割加算の対象に( ② )」 |
Ⅲ | 「Aさんに係る相続税の申告書の提出期限は、原則として、2024年( ③ )になります。申告書の提出先は、Aさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長です」 |
<語句群>
イ.多い ロ.少ない ハ.なります
ニ.なりません ホ.2月26日(月)
ヘ.3月15日(金) ト.4月26日(金)
イ.多い ロ.少ない ハ.なります
ニ.なりません ホ.2月26日(月)
ヘ.3月15日(金) ト.4月26日(金)
正解:イ、ニ、ホ
① | 配偶者に対する相続税額の軽減の適用を受けた場合に非課税となる金額は、相続や遺贈により取得した財産のうち、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額までにかかる税額です。 |
② | 子の代襲相続人は、(本来2割加算の対象とならない人の立場を引き継いでいるため)相続税額の2割加算の対象外です。 |
③ | 相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
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