お金の寺子屋

FP2級実技(個人)解説-2021年5月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(60歳)は、3年前に父親の相続により取得したM市内(三大都市圏・既成市街地等)にある自宅(建物とその敷地である甲土地)およびアスファルト敷きの月極駐車場(乙土地)を所有している。
Aさんが居住する自宅の建物は、父親が40年前に建てたものである。Aさんは老朽化した自宅での生活に不便さを感じている。また、父親の存命中から賃貸している月極駐車場は満車の状態が続いているが、収益性は高くない。Aさんは、甲土地(自宅)・乙土地(駐車場)を売却し、駅前のタワーマンションを購入して移り住むことを考えているが、先祖代々の土地である甲土地・乙土地を売却することに、少し後ろめたさを感じている。Aさんは、先日、マンション開発業者(X社)の営業担当者から「甲土地・乙土地は、最寄駅から徒歩5分の好立地にあり、マンション用地として適地であり、需要は相当高いと考えています。Aさんが等価交換をご希望であれば、対応させていただきます」との提案を受けた。

<甲土地および乙土地の概要>

甲土地、甲土地と乙土地を一体とした土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。
指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
甲土地と乙土地を一体とした土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)。

建蔽率の上限となる建築面積
容積率の上限となる延べ面積
正解:720、2,700
準防火地域に耐火建築物を建てる場合、建蔽率の上限が10%緩和されます。
また、特定行政庁が指定する角地に建物を建てる場合も、建蔽率の上限が10%緩和されますから、建蔽率の上限は、60%+10%+10%=80%となります。
よって、建蔽率の上限となる建築面積は、(450+450)㎡×80%=720㎡となります。
前面道路の幅員によって定まる容積率の上限は、8m×4/10=3.2 (320%)です。
前面道路の幅員が12m未満である場合、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、どちらか小さい方を適用しますから、容積率の上限は、300%となります。
よって、容積率の上限となる延べ床面積は、(450+450)㎡×300%=2,700㎡となります。
【問11】
自宅(建物とその敷地である甲土地)の譲渡に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「仮に、Aさんがタワーマンションに転居し、その後、居住していない現在の自宅を譲渡した場合に、Aさんが居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用を受けるためには、家屋に自己が居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡であること等の要件を満たす必要があります」
「Aさんが老朽化した自宅の建物を取り壊し、甲土地を更地にした場合、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の適用を受けることはできません。本特例の適用を受けるためには、自宅の建物と甲土地を同時に譲渡する必要があります」
「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)の適用を受けるためには、譲渡した年の1月1日において自宅の所有期間が20年を超えていなければなりません。相続により取得した不動産は取得時期を引き継ぐため、Aさんは軽減税率の特例の適用を受けることができます」
正解:○、○、×
正しい記述です。
正しい記述です。
軽減税率の特例の適用を受けるためには、譲渡した年の1月1日において自宅の所有期間が10年を超えている必要があります。
【問12】
等価交換方式による甲土地と乙土地を一体とした土地の有効活用に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「等価交換方式とは、マンション開発業者のX社からAさんが建設資金を借り受けて、マンションを建設し、完成した区分所有建物と土地の共有持分をAさんとX社がそれぞれの出資割合に応じて取得する手法です」
「等価交換方式により取得したマンション住戸を賃貸することで、賃料収入を得ることができます。また、複数のマンション住戸を区分所有していれば、相続時の遺産分割が比較的容易になるというメリットが考えられます」
「Aさんは、等価交換方式による有効活用にあたり、譲渡益に対する課税を100%繰り延べることができる『既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換えの場合の譲渡所得の課税の特例(立体買換えの特例)』の適用を検討することができます」
正解:×、○、○
等価交換方式においては、建物の建築資金をデベロッパーが負担します。
正しい記述です。ひとつの不動産を保有しているより、複数のマンション住戸を区分所有していた方が、遺産分割はやりやすいです。
正しい記述です。立体買換えの特例の適用を受けた場合、売却価格が買換え資産の取得価格以下であれば、譲渡益に対する課税を全額繰り延べることができます。
等価交換方式では、売却価格=買換え資産の取得価格となりますから、立体買換えの特例の適用を受けることにより、譲渡益に対する課税を全額繰り延べることができます。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
非上場会社である株式会社X社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(75歳)は、自宅で妻Bさん(70歳)および長男Cさん(45歳)家族と同居している。Aさんは、妻Bさんに自宅および相応の現預金等を相続させ、X社の専務取締役である長男CさんにAさんが100%所有するX社株式およびX社本社敷地・建物を承継する予定である。
長女Dさん(42歳)は、会社員の夫、2人の子(孫Eさん14歳・孫Fさん12歳)と分譲マンション(夫所有)に住んでいる。長女Dさんからは「子どもの教育資金や住宅ローンの返済で家計に余裕がない。資金を援助してほしい」と頼まれている。Aさんは、この機会に、長女Dさんに対して生前贈与を実行しようと考えている。

<Aさんの親族関係図>

<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
[現預金等]
2億円

[X社株式]
2億円

[自宅]
敷地(330㎡):6,000万円(注)
建物:2,000万円

[X社本社]
敷地(600㎡):6,000万円(注)
建物:6,000万円

合計 6億円

(注) 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
生前贈与に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。

「Aさんが生前贈与を実行するにあたっては、暦年課税制度による贈与、相続時精算課税制度による贈与などが考えられます。仮に、長女Dさんが暦年課税(各種非課税制度の適用はない)により、2021年中にAさんから現金600万円の贈与を受けた場合、贈与税額は( ① )万円となります」
「Aさんからの贈与について、長女Dさんが暦年課税制度による贈与ではなく、相続時精算課税制度を選択した場合、累計で( ② )万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律20%の税率により贈与税が課されます。長女Dさんが相続時精算課税制度を選択した場合、その後に行われるAさんからの贈与について、暦年課税を選択することはできません」
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受ける場合、受贈者1人につき1,500万円までは贈与税が非課税となります。ただし、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については( ③ )万円が限度となります」
<贈与税の速算表>
[20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産の場合]
基礎控除後の
課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超
400万円以下
15% 10万円
400万円超
600万円以下
20% 30万円
600万円超
1,000万円以下
30% 90万円
1,000万円超
1,500万円以下
40% 190万円
1,500万円超
3,000万円以下
45% 265万円
3,000万円超
4,500万円以下
50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円
[上記以外の場合]
基礎控除後の
課税価格
税率 控除額
200万円以下 10%
200万円超
300万円以下
15% 10万円
300万円超
400万円以下
20% 25万円
400万円超
600万円以下
30% 65万円
600万円超
1,000万円以下
40% 125万円
1,000万円超
1,500万円以下
45% 175万円
1,500万円超
3,000万円以下
50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円
正解:68、2,500、500
直系尊属から贈与を受けた財産は、贈与税の計算上特例贈与財産となります。
よって、贈与税額=(600万円-110万円)×20%-30万円=68万円となります。
相続時精算課税制度の適用を受けた場合、累計で2,500万円までの贈与については贈与税が非課税となります。
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度の適用を受けた場合、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については、受贈者1人につき500万円まで非課税となります。
【問14】
現時点(2021年5月23日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は6億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)相続税の課税価格の合計額 6億円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ① )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
妻Bさん ( ② )万円
長男Cさん □□□万円
長女Dさん □□□万円
(c)相続税の総額 ( ③ )万円
<資料>相続税の速算表(一部抜粋)
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
30,000万円超
60,000万円以下
50% 4,200万円
正解:4,800、9,720、17,360
相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数=3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。
課税遺産総額は、6億円-4,800万円=5億5,200万円です。
相続人は、配偶者相続人と第一順位の血族相続の組み合わせですから、妻Bさんの法定相続分は1/2になります。
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、5億5,200万円×1/2=2億7,600万円となります。
したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、2億7,600万円×45%-2,700万円=9,720万円となります。
長男Cさんと長女Dさんの法定相続分は、それぞれ1/4です。
よって、長男Cさんと長女Dさんの法定相続分に応ずる取得金額はそれぞれ、5億5,200万円×1/4=1億3,800万円となります。
したがって、長男Cさんと長女Dさんの法定相続分対応する相続税額はそれぞれ、1億3,800万円×40%-1,700万円=3,820万円となります。
ゆえに、相続税の総額は、9,720万円+3,820万円+3,820万円=1億7,360万円となります。
【問15】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言の作成をお勧めします。法務局において、自筆証書遺言を保管する制度が始まっています。この制度を利用した場合、家庭裁判所の検認の手続は必要ありません」
「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額を6億円とした場合、長女Dさんの遺留分の額は1億5,000万円となります」
「長男CさんがX社本社敷地を相続により取得し、当該敷地について、特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、当該敷地(相続税評価額6,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を1,200万円とすることができます」
正解:○、×、×
正しい記述です。自筆証書遺言は基本的に検認が必要ですが、自筆証書遺言保管制度を利用したものについては、検認は不要です。
相続人が直系尊属のみである場合を除き、抽象的遺留分の金額は、遺留分算定の基礎となる財産の2分の1相当額で、具体的遺留分の金額は、抽象的遺留分に法定相続分をかけた金額となります。
よって、長女Dさんの遺留分の金額は、6億円×1/2×1/4=7,500万円となります。
特定同族会社事業用宅地等に係る小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の適用を受けた場合、当該敷地のうち、400㎡までに係る相続税評価額が80%減額されます。
設問の敷地は600㎡ですから、400㎡部分(4,000万円部分)について80%評価額が減額され、相続税の課税価格に算入される金額は、4,000万円×(1-80%)+ 2,000万円=2,800万円となります。

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