お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2023年5月・問1~9

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(59歳)は、大学卒業後、X株式会社(以下、「X社」という)に入社し、以後、現在に至るまで同社に勤務しており、2023年12月に満60歳で定年を迎える。Aさんは、X社の継続雇用制度を利用して65歳まで働く予定である。
Aさんは、今後の資金計画を検討するにあたり、公的年金制度から支給される老齢給付や、雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金について理解を深めたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<X社の継続雇用制度の雇用条件>
1年契約の嘱託雇用で、1日8時間(週40時間)勤務
賃金月額は60歳到達時の60%(月額27万円)で賞与はなし
厚生年金保険、全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入

<Aさんとその家族に関する資料>

[Aさん(1963年12月11日生まれ・会社員)]
公的年金加入歴 下図のとおり(65歳までの見込みを含む)
20歳から大学生であった期間(28月)は国民年金に任意加入していない。
全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中

[妻Bさん(1967年10月20日生まれ・パートタイマー)]

公的年金加入歴 18歳でX社に就職してからAさんと結婚するまでの7年間(84月)、厚生年金保険に加入。結婚後は、国民年金に第3号被保険者として加入している。
全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、Aさんと生計維持関係にあるものとする。
Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
Aさんが、原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金および老齢厚生年金の年金額(2022年度価額)を計算した次の<計算の手順>の空欄①~④に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。計算にあたっては、《設例》の<Aさん夫妻に関する資料>および下記の<資料>に基づくこと。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

<計算の手順>
1.老齢基礎年金の年金額(円未満四捨五入)
( ① )円
2.老齢厚生年金の年金額
(1) 報酬比例部分の額(円未満四捨五入)
( ② )円
(2) 経過的加算額(円未満四捨五入)
( ③ )円
(3) 基本年金額(上記「(1)+(2)」の額)
□□□円
(4) 加給年金額(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5) 老齢厚生年金の年金額
( ④ )円
<資料>
<資料>
正解:732,428、1,149,765、45,652、1,584,317
老齢基礎年金の計算上、年金額に反映されるのは、20歳以上60歳未満の期間における、国民年金保険料納付期間や厚生年金保険の被保険者期間などです。
よって、年金額の計算に反映されるのは、20歳以上65歳未満の期間(540月)のうち、204月+308月-60月=452月です。
したがって、老齢基礎年金の額=777,800円×452/480=732,428.33…円≒732,428円となります。
28万円×7.125/1,000×204+44万円×5.481/1,000×308=1,149,765.12≒1,149,765円です。
1,621円に掛ける月数は、上限が480月とされています。
よって、1,621円×480-777,800円×452/480=45,651.66…≒45,652円となります。
厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あり、年下の配偶者がいるなど、加給年金の支給要件を満たしますから、1,149,765円+45,652円+388,900円=1,584,317円となります。
【問2】
Mさんは、Aさんに対して、Aさん夫妻が受給することができる公的年金制度からの老齢給付について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんは特別支給の老齢厚生年金を受給することができませんが、妻Bさんは64歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます」
「仮に、Aさんが60歳0カ月で老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰上げ支給を請求した場合の減額率は24%となります。繰上げ支給を請求した場合は、一生涯減額された年金額を受け取ることになります」
「Aさんが希望すれば、66歳以後、老齢基礎年金および老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができます。Aさんの場合、繰下げの上限年齢は70歳です」
正解:×、○、×
特別支給の老齢厚生年金が支給されるのは、男性は1961年4月1日以前生まれの人、女性は1966年4月1日以前生まれの人です。よって、Aさんと妻Bさんは、どちらも特別支給の老齢厚生年金を受給できません。
正しい記述です。老齢年金を繰上げると、1月あたり0.4%減額されますから、60歳0ヵ月から受給を開始して60月繰上げると、減額率は、0.4%/月×60月=24%となります。
1952年4月2日以降に生まれた人は、公的年金の繰下げの上限年齢が75歳とされています(これ以前に生まれた人は70歳です)。
【問3】
Mさんは、Aさんに対して、雇用保険の高年齢雇用継続基本給付金および在職老齢年金について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「AさんがX社の継続雇用制度を利用して、60歳以後も引き続きX社に勤務し、かつ、60歳以後の各月(支給対象月)に支払われた賃金額(みなし賃金を含む)が60歳到達時の賃金月額の( ① )%未満となる場合、Aさんは、所定の手続により、原則として、高年齢雇用継続基本給付金を受給することができます。
高年齢雇用継続基本給付金の額は、支給対象月ごとに、その月に支払われた賃金額の低下率に応じて、一定の方法により算定されますが、賃金額が60歳到達時の賃金月額の61%未満となる場合、原則として、当該金額は賃金額の( ② )%に相当する額になります」
「Aさんが、65歳以後も引き続き厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務し、かつ、65歳から老齢厚生年金を受給する場合、Aさんの老齢厚生年金の報酬比例部分の額に基づく基本月額と総報酬月額相当額との合計額が( ③ )(支給停止調整額、2022年度価額)以下のときは調整が行われず、老齢厚生年金は全額支給されます」
<語句群>
イ.15 ロ.20 ハ.25 
ニ.75 ホ.80 ヘ.85 
ト.40万円 チ.47万円 
リ.50万円
正解:ニ、イ、チ
高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以降の60歳到達時の賃金月額の75%未満になるなどの要件を満たした場合に支給されます。
高年齢雇用継続基本給付金の額は、最高で、賃金月額の15%相当額です。
在職老齢年金の仕組みにより年金額が減額される基準は、賃金月額と総報酬月額相当額の合計が47万円である場合です。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》

会社員のAさん(54歳)は、専業主婦である妻Bさん(55歳)および長女Cさん(22歳)との3人暮らしである。
Aさんは、長女Cさんが大学を卒業し、4月から社会人として働き始めたため、生命保険の見直しをしたいと考えている。また、保障内容の見直しに合わせて、公的介護保険制度について理解しておきたいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

<Aさんが現在加入している生命保険に関する資料>
保険の種類:定期保険特約付終身保険
契約年月日:2004年9月1日
月払保険料:21,000円(65歳払込満了)
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん

更新型の特約は、2018年8月1日に同じ保障金額で更新している。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
Mさんは、Aさんに対して、必要保障額および現在加入している定期保険特約付終身保険の保障金額について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①、②に入る最も適切な数値を解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

「生命保険の見直しをするにあたって、現時点での必要保障額を算出し、準備すべき死亡保障の額を把握しましょう。下記の<算式>および<条件>を参考にすれば、Aさんが現時点で死亡した場合の必要保障額は( ① )万円となります。
Aさんが現時点で死亡(不慮の事故や所定の感染症以外)した場合、定期保険特約付終身保険から妻Bさんに支払われる死亡保険金額は( ② )万円となります。他方、Aさんが不慮の事故で180日以内に死亡した場合の死亡保険金額は□□□万円となります」
<算式>
必要保障額=遺族に必要な生活資金等の支出の総額-遺族の収入見込金額
1. 現在の毎月の日常生活費は35万円であり、Aさん死亡後の妻Bさんの生活費は、現在の日常生活費の50%とする。
2. 現時点の妻Bさんの年齢における平均余命は、34年とする。
3. Aさんの死亡整理資金(葬儀費用等)・緊急予備資金は、500万円とする。
4. 住宅ローン(団体信用生命保険に加入)の残高は、400万円とする。
5. 死亡退職金見込額とその他金融資産の合計額は、2,500万円とする。
6. Aさん死亡後に妻Bさんが受け取る公的年金等の総額は、4,900万円とする。
7. 現在加入している生命保険の死亡保険金額は考慮しなくてよい。
正解:240、2,500
団体信用生命保険に加入している住宅ローンの返済は考慮する必要がないため、遺族に必要な生活資金等の支出の総額=35万円/月×50%×12月×34+500万円=7,640万円です。
また、遺族の収入見込金額=2,500万円+4,900万円=7,400万円です。
よって、必要保障額=7,640万円-7,400万円=240万円となります。
不慮の事故や所定の感染症以外で死亡した場合、傷害特約や災害割増特約からは保険金が支払われないため、終身保険200万円+定期保険特約2,000万円+特定疾病保障定期保険特約300万円=2,500万円となります。
【問5】
Mさんは、Aさんに対して、公的介護保険の概要について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

「公的介護保険の被保険者が、当該制度から保険給付を受けるためには、( ① )から要介護認定または要支援認定を受ける必要があります。ただし、Aさんのように40歳以上( ② )歳未満の第2号被保険者については、要介護状態または要支援状態となった原因が、末期がん、脳血管疾患などの加齢に伴う特定疾病によって生じたものでなければ保険給付は受けられません」
「要介護認定を受けた被保険者は介護給付を受けることができ、要支援認定を受けた被保険者は予防給付を受けることができます。ただし、介護給付の施設サービスのうち、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を新たに利用することができる要介護被保険者は、原則として、要介護状態区分が( ③ )以上の者に限られています」
「公的介護保険の保険給付を受ける者は、原則として、費用(食費、居住費等を除く)の( ④ )割を事業者に支払うことになります。ただし、第1号被保険者のうち、一定額以上の所得を有する者については、自己負担割合が□□□割または□□□割となります」
<語句群>
イ.1 ロ.2 ハ.3 ニ.4 
ホ.5 ヘ.65 ト.70 チ.75 
リ.市町村(特別区を含む) ヌ.都道府県 
正解:リ、ヘ、ハ、イ
公的介護保険の要介護認定や要支援認定を行っているのは、保険者である市町村(特別区を含む)です。
介護保険の被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と40歳以上65歳未満の第2号被保険者に分かれています。
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)を新たに利用することができる要介護被保険者は、原則として、要介護3以上の人に限られています。
公的介護保険の利用者負担の割合は、原則として、1割です。
【問6】
Mさんは、Aさんに対して、Aさんが現在加入している生命保険の見直しについて説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「公的介護保険の保険給付は、主に訪問介護や通所介護(デイサービス)などの現物給付による介護サービスです。現在加入している生命保険の死亡保険金額を減額し、民間の介護保険に新規加入することで、一定額の介護年金や介護一時金の保障を準備することは検討に値すると思います」
「医療保障については、保障が一生涯続く終身医療保険に見直しを行うことも検討事項の1つです。終身医療保険は、保障内容を変更しなければ、主契約の保険料は保険期間の途中で上がることはありません」
「現在加入している定期保険特約付終身保険を見直す方法として、契約転換制度の活用が考えられます。契約転換時の告知や医師の診査は不要で、健康状態にかかわらず、保障内容を見直すことができます」
正解:○、○、×
適切な記述です。
適切な記述です。
契約転換時には、告知や医師の診査が必要で、健康状態によっては、契約転換制度を利用できない場合があります。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(65歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。X社は、売上金額・利益金額ともに増加傾向にあり、業績は順調に推移している。
Aさんは、今期限りで専務取締役の長男Bさん(40歳)に社長の座を譲り、勇退することを決意している。X社は、現在、下記の<資料1>の生命保険に加入している。
また、長男Bさんは、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんから、下記の<資料2>の生命保険の提案を受け、加入を検討している。

<資料1>X社が現在加入している生命保険の契約内容
保険の種類 長期平準定期保険(特約付加なし)
契約年月日 2008年9月1日
契約者(=保険料負担者) X社
被保険者 Aさん
死亡保険金受取人 X社
保険期間・保険料払込期間 95歳満了
死亡・高度障害保険金額 1億円
年払保険料 300万円
現時点の解約返戻金額 3,500万円
現時点の払込保険料累計額 4,500万円
解約返戻金額の80%の範囲内で、契約者貸付制度を利用することができる。
保険料の払込みを中止し、払済終身保険に変更することができる。
<資料2>長男Bさんが提案を受けた生命保険の内容
保険の種類 無配当特定疾病保障定期保険(無解約返戻金型・特約付加なし)
契約年月日 2008年9月1日
契約者(=保険料負担者) X社
被保険者 長男Bさん
死亡保険金受取人 X社
保険期間・保険料払込期間 10年(自動更新タイプ)
死亡・高度障害・特定疾病保険金額 1億円
年払保険料 30万円
死亡・高度障害の場合に加え、がん(悪性新生物)と診断確定された場合、または急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態に該当した場合に保険金が支払われる。
<資料2>長男Bさんが提案を受けた生命保険の内容
保険の種類 無配当特定疾病保障定期保険(無解約返戻金型・特約付加なし)
契約年月日 2008年9月1日
契約者(=保険料負担者) X社
被保険者 長男Bさん
死亡保険金受取人 X社
保険期間・保険料払込期間 10年
(自動更新タイプ)
死亡・高度障害・特定疾病保険金額 1億円
年払保険料 30万円
死亡・高度障害の場合に加え、がん(悪性新生物)と診断確定された場合、または急性心筋梗塞・脳卒中で所定の状態に該当した場合に保険金が支払われる。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
仮に、X社がAさんに役員退職金4,000万円を支給した場合、Aさんが受け取る役員退職金について、次の①、②を求め、解答用紙に記入しなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は万円単位とすること。なお、Aさんの役員在任期間(勤続年数)を18年4カ月とし、これ以外に退職手当等の収入はなく、障害者になったことが退職の直接の原因ではないものとする。

退職所得控除額
退職所得の金額
正解:760、1,620
勤続年数が20年未満である場合、退職所得控除額は、「20万円×勤続年数」の式で計算されます。
また、退職所得控除額の計算上勤続年数の1年未満の端数は切り上げますから勤続年数は19年となります。
よって、退職所得控除額=20万円×19=760万円となります。
退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2=(4,000万円-760万円)×1/2=1,620万円となります。
【問8】
<資料1>の生命保険を現時点で解約した場合のX社の経理処理(仕訳)について、下記の<条件>を基に、空欄①~④に入る最も適切な語句または数値を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

<条件>
X社が解約時までに支払った保険料の総額は4,500万円である。
解約返戻金の金額は3,500万円である。
配当等、上記以外の条件は考慮しないものとする。
<解約返戻金受取時のX社の経理処理(仕訳)>
<語句群>
イ.1,000 ロ.1,250 ハ.1,700 
ニ.1,800 ホ.2,250 ヘ.3,500 
ト.4,500 チ.雑収入 リ.雑損失
正解:ヘ、ホ、チ、ロ
借方には、増えた現金の額を記入しますから、解約返戻金の額3,500万円を記入します。
<設例>の長期平準定期保険は、2019年7月7日以前に契約したものであり、保険料の払込み時にその2分の1相当額を資産計上しています。
現時点の払込保険料累計額は4,500万円であることから、現時点の資産計上額は4,500万円÷2=2,250万円であると推定されます。
解約返戻金の額が取り崩す資産計上額よりも多い場合、その差額を雑収入として処理します。
3,500万円-2,250万円=1,250万円です。
【問9】
Mさんは、長男Bさんに対して、<資料2>の生命保険について説明した。Mさんが説明した次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「X社が受け取る特定疾病保険金は、取引先への買掛金支払や金融機関への借入金返済など、長男Bさんが、がん等の重度の疾患で長期間不在となった場合に会社を存続するための事業資金として活用することができます」
「X社が特定疾病保険金を受け取った場合、法人税法上、当該保険金は非課税所得となりますので、益金に計上する必要はありません」
「当該生命保険の支払保険料は、その全額を損金の額に算入することができます」
正解:○、×、○
適切な記述です。
法人が受け取った保険金には、個人に適用されるような非課税措置が無いため、法人が特定疾病保険金を受け取った場合、益金に計上する必要があります。
適切な記述です。

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