FP2級実技(生保)解説-2023年1月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
会社員のAさんは、妻Bさんおよび長男Cさんとの3人家族である。Aさんは、2022年6月に取得価額5,000万円で新築マンションを取得(契約締結)し、同月中に入居した。住宅購入の頭金には、自己資金2,200万円と2022年5月にAさんの父親から住宅取得資金として贈与を受けた800万円を充当し、残りの2,000万円は銀行の住宅ローンを利用した。
会社員のAさんは、妻Bさんおよび長男Cさんとの3人家族である。Aさんは、2022年6月に取得価額5,000万円で新築マンションを取得(契約締結)し、同月中に入居した。住宅購入の頭金には、自己資金2,200万円と2022年5月にAさんの父親から住宅取得資金として贈与を受けた800万円を充当し、残りの2,000万円は銀行の住宅ローンを利用した。
<Aさんとその家族に関する資料> | ||
Aさん(45歳) | : | 会社員 |
妻Bさん(43歳) | : | 2022年中に、パートタイマーとして給与収入90万円を得ている。 |
長男Cさん(20歳) | : | 大学生。2022年中の収入はない。 |
<Aさんの2022年分の収入に関する資料> | ||
給与収入の金額 | : | 820万円 |
<Aさんが取得した新築マンションに関する資料> | ||
取得価額 | : | 会社員 |
土地 | : | 5,000万円 |
建物 | : | 45㎡(敷地利用権の割合相当の面積) |
資金調達方法 | : | 自己資金2,200万円、 父親からの資金援助の額800万円 銀行からの借入金2,000万円 (2022年12月末の借入金残高1,920万円、返済期間20年) |
留意点 | : | 当該マンションは、認定長期優良住宅および省エネ等住宅に該当する。また、住宅借入金等特別控除の適用要件は、すべて満たしている。 |
※ | 妻Bさんおよび長男Cさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。 |
※ | Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。 |
※ | Aさんとその家族の年齢は、いずれも2022年12月31日現在のものである。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
住宅借入金等特別控除(以下、「本控除」という)に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
「住宅ローンを利用して新築住宅を取得等し、2022年中に居住した場合、所定の要件を満たせば、居住の用に供した年分以後、最大で( ① )年間、本控除の適用を受けることができます。控除額の計算上、住宅ローンの年末残高には、限度額が設けられています。Aさんのように認定長期優良住宅に該当する新築住宅を取得し、2022年中に居住した場合の年末残高の限度額は( ② )万円です。
Aさんの場合、住宅ローンの年末残高は( ② )万円よりも少ないため、住宅ローンの年末残高に控除率を乗じて得た金額を、所得税額から控除することができます。また、仮に、当該控除額がその年分の所得税額から控除しきれない場合は、その控除しきれない残額は、一定額を限度として、翌年度分の住民税額から控除されます。なお、本控除の適用を受けるための要件には、『住宅ローンの返済期間が( ③ )年以上であること』などがあります」
Aさんの場合、住宅ローンの年末残高は( ② )万円よりも少ないため、住宅ローンの年末残高に控除率を乗じて得た金額を、所得税額から控除することができます。また、仮に、当該控除額がその年分の所得税額から控除しきれない場合は、その控除しきれない残額は、一定額を限度として、翌年度分の住民税額から控除されます。なお、本控除の適用を受けるための要件には、『住宅ローンの返済期間が( ③ )年以上であること』などがあります」
<数値群>
イ.5 ロ.10 ハ.13
ニ.15 ホ.20 ヘ.2,000
ト.3,000 チ.5,000
イ.5 ロ.10 ハ.13
ニ.15 ホ.20 ヘ.2,000
ト.3,000 チ.5,000
正解:ハ、チ、ロ
① | 住宅を新築し、住宅ローン控除の適用を受ける場合、控除期間は最大13年間となります。 |
② | 住宅ローン控除の控除額の計算上、認定長期優良住宅に該当する新築住宅を取得し、2022年中に居住した場合の年末残高の限度額は、5,000万円です。 |
③ | 住宅ローン控除の適用を受けるためには、住宅ローンの返済期間が10年以上であるなどの要件を満たす必要があります。 |
【問11】
Aさんの新築マンションの購入に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「父親からの資金援助について、『直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税』の適用を受けた場合、贈与を受けた金額が非課税限度額を下回りますので、贈与税は課されません」 |
② | 「Aさんが2022年分の所得税において住宅借入金等特別控除の適用を受けるためには、一定の書類を添付して、所轄税務署長に確定申告書を提出する必要がありますが、2023年分以後の所得税については、年末調整においてその適用を受けることができます」 |
③ | 「転勤等のやむを得ない事由によりAさんが単身赴任で転居した場合、妻Bさんや長男Cさんが引き続きマンションに居住していたとしても、単身赴任後は住宅借入金等特別控除の適用を受けることができません」 |
正解:○、○、×
① | 正しい記述です。直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税の適用を受けた場合、省エネ等住宅の場合には1,000万円まで(それ以外の住宅の場合には500万円まで)の住宅取得等資金の贈与が非課税となります。よって、父親からの資金援助の額800万円は全額非課税になります。 |
② | 正しい記述です。住宅ローン控除を受けるためには、最初の年は必ず確定申告をする必要がありますが、2年目以降は年末調整により適用を受けることができます。 |
③ | 転勤等のやむを得ない事由により単身赴任で転居した場合、生計を一にする親族がその後も引き続き居住していれば、一定要件を満たすと、引き続き住宅ローン控除の適用を受けることができます。 |
【問12】
Aさんの2022年分の所得税額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)総所得金額 | ( ① )円 |
社会保険料控除 | □□□円 |
生命保険料控除 | □□□円 |
地震保険料控除 | □□□円 |
配偶者控除 | ( ② )円 |
扶養控除 | ( ③ )円 |
基礎控除 | □□□円 |
(b)所得控除の額の合計額 | 2,700,000円 |
(c)課税総所得金額((a)-(b)) | □□□円 |
(d)算出税額((c)に対する所得税額) | □□□円 |
(e)税額控除(住宅借入金等特別控除) | ( ④ )円 |
(f)差引所得税額 | □□□円 |
(g)復興特別所得税額 | □□□円 |
(h)所得税および復興特別所得税の額 | □□□円 |
<資料>給与所得控除額 | |
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
180万円以下 | 収入金額×40%-10万円 (最低55万円) |
180万円超 360万円以下 |
収入金額×30%+8万円 |
360万円超 660万円以下 |
収入金額×20%+44万円 |
660万円超 850万円以下 |
収入金額×10%+110万円 |
850万円超 | 195万円 |
正解:6,280,000、380,000、630,000、134,400
① | 給与所得=820万円-(820万円×10%+110万円)=628万円です。 これが全額総所得金額に算入され、他に所得の額ははありませんから、総所得金額は628万円となります。 |
② | パートタイマーとして給与収入90万円(給与所得90万円-55万円=35万円)を得ている妻Bさんは、合計所得金額が48万円を下回り配偶者控除の対象となります。 なお、合計所得金額が900万円以下の人が適用を受けることができる配偶者控除の額は、38万円です。 |
③ | 扶養控除の計算において、19歳以上23歳未満の控除対象扶養親族である長男Cさんは、特定扶養親族として63万円の対象となります。 |
④ | 住宅ローン控除の額は、年末のローン残高の0.7%ですから、1,920万円×0.7%=134,400円となります。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんは、2022年12月20日(火)に病気により83歳で死亡した。
Aさんが保有していたX社株式(発行済株式数の全部)は、後継者である長男Cさんが相続により取得する予定である。なお、長女Dさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
非上場企業であるX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であったAさんは、2022年12月20日(火)に病気により83歳で死亡した。
Aさんが保有していたX社株式(発行済株式数の全部)は、後継者である長男Cさんが相続により取得する予定である。なお、長女Dさんは、Aさんの相続開始前に死亡している。
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの親族関係図>
<各人が取得する予定の相続財産(みなし相続財産を含む)> [妻Bさん(79歳)] |
|||||
現金および預貯金 | : | 1,000万円 | |||
自宅(敷地330㎡) | : | 1,000万円 | (「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の金額) | ||
自宅(建物) | : | 1,000万円 | (固定資産税評価額) | ||
死亡保険金 | : | 2,000万円 | (契約者(=保険料負担者)・被保険者はAさん、死亡保険金受取人は妻Bさん) | ||
死亡退職金 | : | 5,000万円 | |||
[長男Cさん(53歳)] | |||||
現金および預貯金 | : | 8,000万円 | |||
X社株式 | : | 2億円(相続税評価額)
|
|||
[孫Eさん(22歳)] | |||||
現金および預貯金 | : | 2,000万円 | |||
[孫Fさん(22歳)] | |||||
現金および預貯金 | : | 2,000万円 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
相続人は、《設例》の記載のとおり、Aさんの財産を取得した。Aさんの相続に係る相続税の総額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
妻Bさんに係る課税価格 | ( ① )万円 |
長男Cさんに係る課税価格 | 2億8,000万円 |
孫Eさんに係る課税価格 | 2,000万円 |
孫Fさんに係る課税価格 | 2,000万円 |
(a)相続税の課税価格の合計額 | □□□万円 |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ② )万円 |
課税遺産総額(a-b) | □□□万円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | ( ③ )万円 |
孫Eさん | □□□万円 |
孫Fさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ④ )万円 |
<資料>相続税の速算表 | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
60,000万円超 | 55% | 7,200万円 |
正解:6,000、5,400、1,745、7,795
① | 死亡保険金と死亡退職金の非課税限度額は、それぞれ、「500万円×法定相続人の数」の式で計算されます。 よって、課税価格に算入される死亡保険金の額は、2,000万円-(500万円×4)=0円となり、課税価格に算入される死亡退職金の額は、5,000万円-(500万円×4)=3,000万円となります。 よって、妻Bさんの課税価格は、現金および預貯金1,000万円+自宅(敷地)1,000万円+自宅(建物)1,000万円+3,000万円=6,000万円となります。 |
② | 相続税の基礎控除額=3,000万円+600万円×4=5,400万円です。 |
③ | 課税遺産総額=6,000万円+2億8,000円+2,000万円+2,000万円-5,400万円=3億2,600万円です。 よって、長男Cさんの法定相続分に対応する相続金額は、3億2,600万円×1/4=8,150万円となります。 これに対応する相続税額は、8,150万円×30%-700万円=1,745万円です。 |
④ | 妻Bさんの法定相続分に対応する相続金額は、3億2,600万円×1/2=1億6,300万円となり、これに対応する相続税額は、1億6,300万円×40%-1,700万円=4,820万円です。 また、孫Eさんと孫Fさんの法定相続分に対応する相続金額は、それぞれ、3億2,600万円×1/8=4,075万円となり、これに対応する相続税額は、4,075万円×20%-200万円=615万円です。 したがって、相続税の総額=4,820万円+1,745万円+615万円+615万円=7,795万円となります。 |
【問14】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な語句を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「X社株式の相続税評価額は、原則として類似業種比準方式により評価されます。類似業種比準価額は、類似業種の株価ならびに1株当たりの配当金額、( ① )および簿価純資産価額を基として計算します」 |
Ⅱ | 「『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の金額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか( ② )金額までであれば、原則として、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 |
Ⅲ | 「Aさんに係る相続税の申告書の提出期限は、原則として、2023年( ③ )になります。申告書の提出先は、Aさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長です」 |
<語句群>
イ.売上金額 ロ.資本金等の額
ハ.利益金額 ニ.多い ホ.少ない
ヘ.9月20日(水) ト.10月20日(金)
チ.11月20日(月
イ.売上金額 ロ.資本金等の額
ハ.利益金額 ニ.多い ホ.少ない
ヘ.9月20日(水) ト.10月20日(金)
チ.11月20日(月
正解:ハ、ニ、ト
① | 類似業種比準価額方式における比準要素は、利益金額、配当金額、簿価純資産価額の3つです。 類似業種比準価額方式は、会社が稼ぎ出す利益に着目する評価方法ですから、直近の利益と、これまでの利益の累積である簿価純資産価額と、利益を原資に支払われた(=簿価純資産価額に含まれなかった)配当金の3つに着目して評価するのだと思ってください。 |
② | 「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けた場合、配偶者が相続または遺贈により取得した財産の金額のうち、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額までに係る相続税額が非課税となります。 |
③ | 相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
【問15】
Aさんの相続等に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「妻Bさんが相続により取得した自宅の敷地を、相続税の申告期限までに売却した場合、当該敷地は特定居住用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができなくなります」 |
② | 「相続税の総額は、各相続人の実際の取得割合によって計算されることから、分割内容により異なる額が算出されます」 |
③ | 「孫Eさんおよび孫FさんはAさんの孫にあたりますが、長女Dさんの代襲相続人ですので、相続税額の2割加算の対象となりません」 |
正解:×、×、○
① | 被相続人の配偶者が、特定居住用宅地等に区分される宅地について小規模宅地の評価減の特例の適用を受けるためには、継続して居住し続けなくてはならない等の適用要件はありません。 |
② | 相続税の総額は、各相続人が法定相続分通りに財産を取得したと仮定して計算されるため、実際の分割内容に関わらず一定の額となります。 |
③ | 正しい記述です。代襲相続人は、2割加算の対象にならない被代襲者の立場を引き継いでいますから、2割加算の対象にはなりません。 |
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