FP2級実技(保険)解説-2018年1月・問1~9
X株式会社に勤務するAさん(59歳)は、平成30年5月に満60歳を迎える。Aさんは、親の介護に専念するため、60歳で定年退職し、再就職をする予定もない。妻Bさん(51歳)が会社員として働いているため、家計がすぐに苦しくなることはないものの、60歳以後の公的年金の支給や健康保険などがどうなるか、不安を感じている。
そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさん夫婦に関する資料は、以下のとおりである。
[Aさん] | |
・ | 昭和33年5月21日生まれ |
・ | 59歳、会社員 |
・ | 公的年金加入歴:下図のとおり(60歳定年時までの見込みを含む)、大学生であった期間(35月)は任意加入していない。 |
・ | 全国健康保険協会管掌健康保険、雇用保険に加入中 |
[妻Bさん] | |
・ | 昭和41年5月10日生まれ |
・ | 51歳、会社員 |
・ | 公的年金加入歴:18歳から現在に至るまでの間(393月)、厚生年金保険に加入している。 |
・ | 健康保険(保険者:健康保険組合)、雇用保険に加入中。 |
※ | 現在および将来においても、Aさんと妻Bさんは同居し、生計維持関係にあるものとする。 |
※ | Aさんおよび妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
昭和33年5月生まれのAさんは、原則として、( ② )歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受給することができます。Aさんが( ② )歳から受給することができる特別支給の老齢厚生年金の額は、下記<資料>の計算式により、年額( ③ )円となります」
① | 特別支給の老齢厚生年金は、老齢厚生年金の受給資格期間が10年以上あり、厚生年金保険の被保険者期間が1年以上あること等が支給要件となっています。 |
② | 特別支給の老齢厚生年金は、男性なら昭和36年4月1日以前生まれの人に支給されます。 この事から、昭和34年4月2日~昭和36年4月1日生まれの人は64歳から報酬比例部分の年金が支給されると考える事が出来れば、昭和32年4月2日~昭和34年4月1日生まれの人は63歳から報酬比例部分の年金が支給されると考える事ができます。 |
③ | a=32万円×7.125/1,000×264=601,920円、 b=48万円×5.481/1,000×181=476,189.28円より、 報酬比例部分の年金額=601,920円+476,189円=1,078,109円です。 |
1. | 「Aさんが65歳に達すると、特別支給の老齢厚生年金の受給権は消滅し、新たに老齢基礎年金および老齢厚生年金の受給権が発生します。Aさんが65歳から受給することができる老齢基礎年金の額は、779,300円(平成29年度価額)となります」 |
2. | 「妻Bさんの厚生年金保険の被保険者期間が20年以上あるため、Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金の額には、加給年金額は加算されません」 |
3. | 「定年退職後、Aさんは老齢厚生年金の繰上げ支給を請求することができますが、その場合、老齢厚生年金の繰上げ支給の請求と同時に老齢基礎年金の繰上げ支給の請求を行わなければなりません」 |
1. | 老齢基礎年金の金額は、基本的に、779,300円×(国民年金保険料納付月数+厚生年金保険の被保険者期間の月数)/480ヵ月で、779,300円を上限とします。 Aさんは、国民年金の未加入期間がありますから、老齢基礎年金を満額受給する事はできません。 |
2. | 加給年金が支給停止される条件の一つに、「配偶者(妻)が厚生年金保険(共済年金)の加入期間が20年以上あり、老齢厚生年金(共済年金)を受け取るとき」とあります。 本問では、妻の生年月日が昭和41年4月2日以降であり、妻は特別支給の老齢厚生年金を受給していませんから、Aさんが65歳から受給する老齢厚生年金の額には、(妻が老齢厚生年金の受給を開始するまで)加給年金額が加算されます。 |
3. | 老齢年金を繰り上げる場合、基礎年金と厚生年金の両方を同時に繰り上げなくてはいけません。ちなみに、繰下げは、別々にすることができます。 |
・ | 「Aさんが定年退職により健康保険の被保険者資格を喪失した場合、退職後の公的医療保険については、『国民健康保険に加入する』『退職時の健康保険に任意継続被保険者として加入する』『妻Bさんが加入する健康保険の被扶養者となる』等の方法があります。退職時の健康保険に任意継続被保険者として加入する場合、その手続は、原則として退職日の翌日から20日以内に行う必要があり、任意継続被保険者として健康保険に加入できる期間は最長( ① )年間です。また、妻Bさんが加入する健康保険の被扶養者となるためには、一定の要件を満たす必要があります」 |
・ | 「介護保険の被保険者は、( ② )歳以上の第1号被保険者と40歳以上( ② )歳未満の医療保険加入者である第2号被保険者に分けられます。第2号被保険者に係る介護保険料は、各医療保険者がそれぞれの医療保険各法に基づいて、賦課・徴収します。また、第1号被保険者に係る介護保険料は、当該被保険者が公的年金制度から年額( ③ )万円以上の年金を受給している場合には、原則として公的年金から特別徴収されます」 |
イ.1 ロ.2 ハ.5
ニ.12 ホ.15 ヘ.18
ト.65 チ.70 リ.75
① | 健康保険の任意加入被保険者となれるのは、最大で2年間です。 |
② | 介護保険の被保険者は、65歳以上の第1号被保険者と、40歳以上65歳未満の第2号被保険者に分けられます。 |
③ | 公的年金制度から年額18万円以上の年金を受給している第1号被保険者に係る介護保険料は、原則として公的年金から特別徴収されます。 |
Aさんは、これまで上場株式や投資信託等の運用経験はあるが、外貨建て商品の購入や一時払終身保険に加入したことはない。そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
<Aさんが提案を受けた一時払終身保険に関する資料>
保険の種類:5年ごと利差配当付利率変動型終身保険(指定通貨建)
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
【特徴】 | |
・ | 指定通貨は、「米ドル」または「豪ドル」から選択 |
・ | 予定利率(適用期間10年)は、米ドル2.5%、豪ドル3.5% |
・ | 死亡保険金は、基本保険金額が指定通貨建で最低保証され、第2保険期間から増加する。 |
・ | 保険料を円で払い込む場合は、保険会社指定の為替手数料を負担する。 |
・ | 解約返戻金の円換算額が目標に到達した場合、円建ての終身保険に移行する。 |
・ | 解約返戻金および死亡保険金は、指定通貨または円で受け取ることができる。 |
・ | 解約返戻金は、「市場価格調整(MVA)」が行われたうえで支払われる。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
保有する金融資産の( ③ )を考えた場合、一部を外貨建て商品で運用することは検討事項の1つとなります。( ③ )とは、運用資産を株式、債券、短期金融商品など、どの資産分類にどの程度の割合で資産を配分するかに関する決定を行うことです。外貨建て終身保険は、予定利率等が高く、運用商品の1つとなりますが、預貯金と異なり、外貨建ての積立金が一定期間、基本保険金額を下回ります。また、諸費用の内容を十分に確認する必要もあります。他の金融商品とは異なる生命保険の仕組み・特徴を理解し、加入にあたっては、長期的な視点で検討することが大切です。
なお、AさんがX銀行の窓口において外貨建て一時払終身保険に加入する場合、当該契約は生命保険契約者保護機構による保護の対象と( ④ )」
イ.円安 ロ.円高 ハ.多く
ニ.少なく ホ.シャープレシオ
へ.アセットアロケーション
ト.デュレーション
チ.なりません リ.なります
① | 外貨建て投資を行う際には、換金時の為替レートが円高になると、為替差損が生じます。 |
② | 市場価格調整(MVA)とは、解約返戻金の額が解約時の市場金利に応じて増減する仕組みの事です。 保険会社は、集めた保険料を債券で運用していますから、市場金利が上がれば債券価格は下落し、市場金利が下がると債券価格は上昇します。そこで、解約時の市場金利が契約時より上昇している場合には解約返戻金が減少し、逆に下落している場合には解約返戻金が増加する商品があります。 |
③ | どの資産分類にどの程度の割合で資産を配分するかに関する決定を行う事を、アセットアロケーションと言います。 シャープレシオは運用の巧拙を判断する指標で、デュレーションは債券の金利変動リスクの大きさです。 |
④ | 銀行窓口で契約した生命保険契約は、生命保険契約者保護機構による保護の対象となります。 |
1. | 「外貨建て終身保険の死亡保険金は、相続税の計算において、死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができます。円建ての終身保険を含め、死亡保険金の非課税金額の規定を最大限に活用されることをお勧めします」 |
2. | 「解約返戻金を指定通貨(米ドル・豪ドル)で受け取った場合、一時所得の金額は、外貨を円貨に換算したうえで計算を行います」 |
3. | 「契約から5年以内に解約した場合の解約返戻金は、源泉分離課税の対象となるため、確定申告を行う必要はありません」 |
1. | 適切な記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 一時払い終身保険の解約返戻金は、5年以内に解約しても源泉分離課税とはならず、一時所得として総合課税の対象になります。 金融類似商品とされる条件の一つに、「死亡保険金額が満期保険金額の一定倍率以下」というものがあり、終身保険は満期が無いため、金融類似商品に該当しません。 |
1. | 「死亡保険金は、受取人固有の財産であり、原則として遺産分割協議の対象とならないため、資産を渡したい相手を死亡保険金受取人に指定することで遺産分割対策に活用することができます」 |
2. | 「相続財産が多額で相続税の税負担率が高い場合、死亡保険金が相続税の課税対象となる契約形態で加入するのではなく、所得税の課税対象となる契約形態で加入したほうが相続人の税負担の観点から有利となるケースがあります。その場合、相続人が負担する保険料をAさんが暦年課税で贈与するプランも検討できると思います」 |
3. | 「死亡保険金は、特段の事情がない限り、遺留分算定の基礎となる財産に含まれます。他の相続人の遺留分を侵害しないように、加入する保険金額について十分に検討する必要があります」 |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 適切な記述です。 |
3. | 死亡保険金は、受取人固有の財産であり、原則として遺留分算定の基礎となる財産には含まれません。 |
Aさん(70歳)は、X株式会社(以下、「X社」という)の社長である。Aさんは、後継者である長男Bさん(40歳)への事業承継に目途がついたこともあり、今期限りで勇退することを決意している。X社は、Aさんに支給する役員退職金の原資として、下記<資料1>の生命保険の解約返戻金を活用する予定である。
先日、<資料1>の生命保険の解約に関する相談を生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんにしたところ、長男Bさんを被保険者とする下記<資料2>の生命保険の提案を受けた。
<資料1>X社が現在加入している生命保険の契約内容
保険の種類:終身保険(特約付加なし、予定利率:5.5%)
契約年月日:昭和61年7月1日
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:X社
死亡保険金額:4,000万円
保険期間:終身
保険料払込期間:65歳(保険料の払込は満了している)
年払保険料:72万円
払込保険料累計額:1,800万円(25年間の累計額)
現時点の解約返戻金額:1,980万円
75歳時の解約返戻金額:2,300万円
<資料2>X社がMさんから提案を受けた生命保険の内容
保険の種類:無配当定期保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:長男Bさん
死亡保険金受取人:X社
死亡保険金額:1億円
保険期間・保険料払込期間:99歳満了
年払保険料:204万円
65歳時の解約返戻金額:4,750万円
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
<退職所得控除額>
( ① )万円+70万円×(□□□年-20年)=( ② )万円
<退職所得の金額>
(7,000万円-( ② )万円)×△△△=( ③ )万円
① | 勤続年数が20年を超える場合、退職所得控除額は、800万円+70万円×(勤続年数-20年)です。 |
② | 退職所得控除額の計算上、勤続年数の端数は切り上げますから、退職所得控除額=800万円+70万円×(34-20)=1,780万円です。 |
③ | 退職所得=(収入金額-退職所得控除額)×1/2より、退職所得=(7,000万円-1,780万円)×1/2=2,610万円です。 |
1. | 「現時点で当該生命保険を解約した場合、配当金等を考慮しなければ、X社はそれまで資産計上していた保険料積立金1,800万円を取り崩して、解約返戻金1,980万円との差額180万円を雑損失として経理処理します」 |
2. | 「勇退時に契約者をAさん、死亡保険金受取人をAさんの相続人に名義変更することで、当該生命保険を役員退職金の一部として支給することができます。現在加入している終身保険は、予定利率が高く、保険料の払込が終わっており、今後も解約返戻金額が増加することを考えると、個人の保険として保障を継続することも選択肢の1つです」 |
3. | 「契約者をAさん、死亡保険金受取人を長男Bさんに名義変更した場合、Aさんの相続開始後に長男Bさんが受け取る死亡保険金は、『500万円×法定相続人の数』を限度として死亡保険金の非課税金額の規定の適用を受けることができます」 |
1. | 法人を死亡保険の受取人とする終身保険の保険料は、全額資産計上されますから、これまで資産計上していた保険料積立金=払込保険料累計額=1,800万円となります。 したがって、解約返戻金1,980万円との差額180万円は、雑収入として経理処理します。 |
2. | 適切な記述です。 |
3. | 正しい記述です。相続人(放棄している者を除く)が受け取る、相続税の課税対象となる死亡保険金は、500万円×法定相続人の数まで非課税となります。 |
のイ~ルのなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
「当該定期保険の場合、保険期間開始時から当該保険期間の( ① )割に相当する期間においては、支払保険料の( ② )を前払保険料として資産計上し、残りの支払保険料については、一般の定期保険の支払保険料の取扱い同様、期間の経過に応じて損金の額に算入します。なお、( ① )割に相当する期間を経過した後の期間においては、支払保険料の全額を損金の額に算入するとともに、それまでに資産に計上した前払保険料の累積額をその期間の経過に応じ取り崩して損金の額に算入します。
当該定期保険の単純返戻率(解約返戻金÷払込保険料累計額)は、契約の当初から上昇し、65歳から70歳前後にピークを迎えます。その解約返戻金は、役員退職金の原資や設備投資等の事業資金として活用することができます。仮に、65歳時において当該定期保険を解約した場合(X社が解約時までに支払った保険料の総額は5,100万円とする)のX社の経理処理は、以下のようになります」
イ.4 ロ.5 ハ.6
ニ.1,700 ホ.2,550 ヘ.3,400
ト.2分の1 チ.3分の1
リ.3分の2 ヌ.雑損失 ル.雑収入
① | 長期平準定期保険の保険料の経理処理は、保険期間の前半6割の期間と後半4割の期間とで異なります。 |
② | 長期平準定期保険の保険料を支払った場合、保険期間の前半6割の期間においては、半額を損金算入し、半額を資産計上します。 |
③ | 保険の解約時に取り崩す前払保険料の金額は、これまで資産計上してきた金額の累計です。 解約時までに支払った保険料の総額は5,100万円とありますから、前払保険料は2,550万円です。 |
④ | ③より、前払保険料2,550万円と解約返戻金4,750万円の差額1,800万円が、雑収入となります。 |
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