FP2級学科解説-2024年5月・問41~50
【問41】
不動産鑑定評価基準における不動産の価格を求める鑑定評価の手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 収益還元法のうち直接還元法は、連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する手法である。 |
2. | 収益還元法は、対象不動産が自用の不動産であっても、賃貸を想定することにより適用することができる手法である。 |
3. | 原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の価格を求める手法である。 |
4. | 取引事例比較法は、市場において発生した取引事例を価格判定の基礎とする手法であり、その適用に当たっては多数の取引事例を収集する必要がある。 |
正解:1 | |
1. | 直接還元法は、一定期間の純収益を還元利回りで割り戻して計算する手法です。なお、問題文は、DCF法の説明です。 |
2. | 正しい記述です。収益還元法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには、基本的に全て適用すべきものとされています。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問42】
不動産売買の契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
1. | 売買契約の締結後、買主の責めに帰すことのできない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 |
2. | 売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、売主が引渡しの時にその不適合を知っていたとしても、買主は、その不適合を理由として契約の解除をすることができない。 |
3. | 売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、地震により全壊した場合、買主は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことができる。 |
4. | 買主が売主に解約手付を交付した場合、売主は、買主が契約の履行に着手する前であれば、受領した手付の倍額を買主に対して現実に提供することにより、契約の解除をすることができる。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。取引相手が履行不能や、不完全履行で追完が不可能となった場合、相当の期間を定めて催告する意味がありませんから、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができます。 なお、履行遅滞や、不完全履行で追完が可能である場合は、相当の期間を定めて催告をしてからでなければ、契約の解除をすることができません。 |
2. | 売主が不適合を知っていたら、1年以内に通知しなくても契約不適合責任を追及することができます。 |
3. | 正しい記述です。危険負担の問題は、原則として、売主負担とされています。 |
4. | 正しい記述です。手付金相当額の賠償をすることで一方的に契約の解除ができるのは、相手が契約の履行に着手するまでです。解除の方法は、買主は手付の放棄、売主は手付の倍額相当額の償還です。 |
【問43】
借地借家法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、同法第22条の借地権を一般定期借地権といい、第22条から第24条の定期借地権等以外の借地権を普通借地権という。また、記載のない特約については考慮しないものとする。
1. | 普通借地権の存続期間は30年とされており、契約でこれより長い期間を定めることはできない。 |
2. | 普通借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べなかったときは、借地上に建物があるかどうかにかかわらず、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。 |
3. | 事業の用に供する建物の所有を目的として、一般定期借地権を設定することはできない。 |
4. | 一般定期借地権において、契約の更新および建物の築造による存続期間の延長がなく、建物等の買取りの請求をしないこととする旨を定める特約は、公正証書による等書面(電磁的記録による場合を含む)によってしなければならない。 |
正解:4 | |
1. | 普通借地権の設定時の存続期間は、最低30年とされていますが、上限についての定めはありません。 |
2. | 普通借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求し、借地権設定者が遅滞なく異議を述べなかったときに、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるのは、借地上に建物がある場合に限ります。 |
3. | 一般定期借地権は、借地上の建物の用途に関わらず設定できます。なお、事業用定期借地権は、居住用の建物の所有を目的として設定する事はできません。 |
4. | 正しい記述です。一般定期借地権の設定は、必ずしも公正証書による必要はありませんが、書面(電磁的記録による場合を含む)で行う必要があります。 |
【問44】
借地借家法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、借地借家法第38条における定期建物賃貸借契約を定期借家契約といい、それ以外の建物賃貸借契約を普通借家契約という。また、特約については考慮しないものとする。
1. | 普通借家契約において、存続期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなされる。 |
2. | 普通借家契約において、建物の賃貸人による建物の賃貸借の解約の申入れは、賃貸人および賃借人が建物の使用を必要とする事情や建物の利用状況などを考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない。 |
3. | 定期借家契約は、建物の賃借人が建物の全部または一部を事業の用に供することを目的とする場合、公正証書によってしなければならない。 |
4. | 定期借家契約は、契約の更新がなく、期間の満了により建物の賃貸借が終了するが、契約の当事者間における合意があれば、定期借家契約を再契約することができる。 |
正解:3 | |
1. | 正しい記述です。定期借家契約では1年未満の期間を有効に設定する事ができますが、普通借家契約では1年未満の期間を設定すると期間の定めのない契約とみなされます。 |
2. | 正しい記述です。賃借人からの解約の申し入れは、正当事由は不要ですが、賃貸人からの解約の申し入れは、正当事由が必要です。 |
3. | 定期借家契約は、公正証書による等書面(電磁的記録による場合を含む)によって行う必要がありますが、必ずしも公正証書でなくても構いません。 |
4. | 正しい記述です。定期借家契約は、更新はありませんが、再契約は可能です。 |
【問45】
都市計画区域および準都市計画区域内における建築基準法の規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 敷地の前面道路の幅員が12m未満である建築物の容積率は、原則として、「都市計画で定められた容積率」と「前面道路の幅員に一定の数値を乗じて得たもの」とのいずれか高い方が上限となる。 |
2. | 建築基準法第42条第2項により道路境界線とみなされる線と道路との間の敷地部分(セットバック部分)は、建蔽率を算定する際の敷地面積に算入することはできないが、容積率を算定する際の敷地面積に算入することはできる。 |
3. | 建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅の用途に供する部分の床面積は、原則として、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の5分の1を限度として、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されない。 |
4. | 共同住宅の共用の廊下または階段の用に供する部分の床面積は、原則として、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されない。 |
正解:4 | |
1. | 敷地の前面道路の幅員が12m未満である建築物の容積率は、原則として、指定容積率と前面道路の幅員よって定まる容積率とのいずれか低い方が上限となります。 |
2. | セットバック部分は、法律上は道路とみなされる部分ですから、建蔽率の計算上も容積率の計算上も、敷地面積には算入されません。 |
3. | 建築物の地階でその天井が地盤面からの高さ1m以下にあるものの住宅の用途に供する部分の床面積は、原則として、当該建築物の住宅の用途に供する部分の床面積の合計の3分の1を限度として、建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積に算入されません。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問46】
建物の区分所有等に関する法律に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 区分所有者が建物および建物の所在する土地と一体として管理または使用する庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。 |
2. | 区分所有者は、敷地利用権が数人で有する所有権である場合、規約に別段の定めがない限り、敷地利用権を専有部分と分離して処分することができる。 |
3. | 区分所有建物ならびにその敷地および附属施設の管理を行うための区分所有者の団体(管理組合)は、区分所有者全員で構成される。 |
4. | 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り、集会の決議によって管理者を選任し、または解任することができる。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 専有部分と敷地利用権の分離処分は、原則として、禁止されています。 |
3. | 正しい記述です。区分所有者は、強制的に管理組合の構成員となります。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問47】
不動産に係る固定資産税および都市計画税に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 住宅用地に係る固定資産税の課税標準については、小規模住宅用地(住宅1戸当たり200㎡以下の部分)について、課税標準となるべき価格の3分の1相当額とする特例がある。 |
2. | 固定資産税の課税対象となる土地に借地権が設定されている場合、借地権者は当該土地の借地権割合に応じて固定資産税の納税義務を負う。 |
3. | 都市計画税の税率は、制限税率である0.3%を超えることができない。 |
4. | 都市計画税は、都市計画区域のうち、原則として、市街化調整区域内に所在する土地または家屋の所有者に対して課される。 |
正解:3 | |
1. | 固定資産税の計算上、小規模住宅用地については、課税標準となるべき価格の6分の1相当額とする特例があります。 |
2. | 固定資産税の納税義務者は、1月1日時点の土地の所有者ですから、借地権者は固定資産税の納税義務を負いません。 |
3. | 正しい記述です。固定資産税は、標準税率の1.4%を超えて設定することができますが、都市計画税は、制限税率の0.3%を超えて設定することができません。 |
4. | 都市計画税は、都市計画区域のうち、原則として、市街化区域内に所在する土地または家屋の所有者に対して課されます。 |
【問48】
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除(以下「3,000万円特別控除」という)および居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(以下「軽減税率の特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
1. | 3,000万円特別控除は、居住用財産を配偶者に譲渡した場合には適用を受けることができない。 |
2. | 3,000万円特別控除は、居住用財産を居住の用に供さなくなった日から6ヵ月を経過する日までに譲渡しなければ、適用を受けることができない。 |
3. | 軽減税率の特例は、譲渡した居住用財産の所有期間が、譲渡した日の属する年の1月1日において10年を超えていなければ、適用を受けることができない。 |
4. | 3,000万円特別控除と軽減税率の特例は、重複して適用を受けることができる。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。3,000万円特別控除は、売手と買手が、親子や夫婦など特別な関係である場合には、適用を受けることができません。 |
2. | 3,000万円特別控除の適用を受けるための居住用財産の売却期限は、居住の用に供さなくなった日から3年を経過する日が属する年の12月31日までです。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問49】
不動産の有効活用の手法の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 等価交換方式では、等価交換の対象とされるのは土地の所有権に限られ、借地権は対象とならない。 |
2. | 建設協力金方式は、土地所有者が、建設する建物を貸し付ける予定のテナントから、建設費相当額の全部または一部を借り受けて建物を建設する方式である。 |
3. | 定期借地権方式では、土地所有者は土地を一定期間貸し付けることにより地代収入を得ることができ、当該土地上に建設される建物の建設資金を負担する必要はない。 |
4. | 事業受託方式は、土地の有効活用の企画、建設会社の選定や当該土地上に建設された建物の管理・運営等をデベロッパーに任せ、建設資金の調達や返済は土地所有者が行う方式である。 |
正解:1 | |
1. | 借地権や底地も、等価交換方式における等価交換の対象対象となります。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問50】
不動産の投資判断手法等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | NOI利回り(純利回り)は、対象不動産から得られる年間の純収益を総投資額で除して算出される利回りであり、不動産の収益性を測る指標である。 |
2. | NPV法(正味現在価値法)による投資判断においては、対象不動産から得られる収益の現在価値の合計額が投資額を下回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。 |
3. | DSCR(借入金償還余裕率)は、対象不動産から得られる収益による借入金の返済余裕度を評価する指標であり、対象不動産に係る当該指標の数値が1.0を下回っている場合は、対象不動産から得られる収益だけで借入金を返済することができる。 |
4. | DCF法は、対象不動産の一期間の純収益を還元利回りで還元して対象不動産の価格を求める手法である。 |
正解:1 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | NPV法による投資判断において、対象不動産から得られる収益の現在価値(不動産の理論価値)が投資額(その不動産が売られている価格)を下回っている、その投資は不利であると判断されます。 |
3. | DSCRは、対象不動産から得られる収益による借入金の返済余裕度を評価する指標で、対象不動産から得られる年間のキャッシュフロー(または純収益)を元利返済額で割って計算します。 よって、1.0を上回る場合に、対象不動産から得られる収益だけで借入金を返済することができると判断されます。 |
4. | DCF法は、将来の純収益と復帰価格をその発生時期に応じて現在価値に割り引いて評価する方法です。なお、問題文は、直接還元法の説明です。 |
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