FP2級学科解説-2023年5月・問41~50
【問41】
不動産鑑定評価基準における不動産の価格を求める鑑定評価の手法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 収益還元法は、文化財の指定を受けた建造物等の一般的に市場性を有しない不動産以外のものには 基本的にすべて適用すべきものとされている。 |
2. | 収益還元法のうち直接還元法は、対象不動産の一期間の純収益を還元利回りで還元して対象不動産の価格を求める手法である。 |
3. | 原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の価格を求める手法である。 |
4. | 取引事例比較法では、取引事例の取引時点が価格時点と異なり、その間に価格水準の変動があると認められる場合であっても、当該取引事例の価格は取引時点の価格から修正する必要はないとされている。 |
正解:4 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 取引事例比較法では、取引事例の取引時点が価格時点と異なり、その間に価格水準の変動があると認められる場合、当該取引事例の価格は取引時点の価格から修正する必要があるとされています(取引事例比較法は、多数の取引事例を収集して、適切な事例を選択し、これらの取引価格に必要に応じて事情補正および時点修正を行い、かつ、地域要因の比較および個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量して、対象不動産の価格を求める手法です)。 |
【問42】
宅地建物取引業法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、買主は宅地建物取引業者ではないものとする。
1. | 宅地建物取引業者が建物の貸借の媒介を行う場合、貸主と借主の双方から受け取ることができる報酬の合計額は、当該建物の借賃(消費税等相当額を除く)の2ヵ月分に相当する額に消費税等相当額を加算した額が上限となる。 |
2. | 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の2を超える額の手付を受領することができない。 |
3. | 宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地の売買契約の締結に際して手付を受領したときは、その手付がいかなる性質のものであっても、買主が契約の履行に着手する前であれば、当該宅地建物取引業者はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。 |
4. | 専任媒介契約の有効期間は、3ヵ月を超えることができず、これより長い期間を定めたときは、その期間は3ヵ月とされる。 |
正解:1 | |
1. | 宅地建物取引業者が建物の貸借の媒介を行う場合、貸主と借主の双方から受け取ることができる報酬の合計額の上限は、当該建物の借賃(消費税等相当額を除く)の1ヵ月分に相当する額に消費税等相当額を加算した額です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。宅地建物取引業者が、自ら売主となる宅地の売買契約の締結に際して受領した手付は、その性質を問わず解約手付とみなされます。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問43】
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
1. | 同一の不動産について二重に売買契約が締結された場合、譲受人相互間においては、所有権移転登記の先後にかかわらず、原則として、売買契約を先に締結した者が当該不動産の所有者となる。 |
2. | 売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって全壊した場合、売主の責めに帰することができない事由であるため、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことはできない。 |
3. | 不動産が共有されている場合、各共有者は、自己が有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者全員の同意を得なければならない。 |
4. | 売買契約締結後、買主の責めに帰することができない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 |
正解:4 | |
1. | 不動産の対抗要件は登記ですから、同一の不動産について二重に売買契約が締結された場合、譲受人相互間においては、売買契約の先後にかかわらず、原則として、所有権移転登記を先に行った人が当該不動産の所有者となります。 |
2. | 危険負担は、原則として、売主負担とされていますから、売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、売主・買主双方の責めに帰することができない事由で滅失した場合、買主は、売主に対する建物代金の支払いを拒むことができます。 |
3. | 共有持分の譲渡をするにあたり、他の共有者の同意は不要です(共有物に変更を加える場合は、原則として、他の共有者全員の同意が必要です)。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問44】
借地借家法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、同法第22条の借地権を一般定期借地権といい、同法第22条から第24条の定期借地権等以外の借地権を普通借地権という。
1. | 事業の用に供する建物の所有を目的とするときは、一般定期借地権を設定することができない。 |
2. | 一般定期借地権の存続期間は、50年以上としなければならない。 |
3. | 普通借地権の存続期間は30年とされており、契約でこれより長い期間を定めることはできない。 |
4. | 普通借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求し、借地権設定者に更新を拒絶する正当の事由がないときは、借地上に建物があるかどうかにかかわらず、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされる。 |
正解:2 | |
1. | 一般定期借地権は、建物の用途を問わず設定することができます。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 普通借地権は、30年以上の存続期間を定めることができます(当初の存続期間は30年以上、1回目の更新においては20年以上、2回目以降の更新においては10年以上の期間を定めることとされており、それぞれの期間よりも短い期間を定めると、最低限定めるべきとされている期間になります)。 |
4. | 普通借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求し、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるためには、借地上に建物があることが要件とされています。 |
【問45】
都市計画法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | すべての都市計画区域において、都市計画に市街化区域と市街化調整区域の区分(区域区分)を定めなければならない。 |
2. | 都市計画区域のうち、用途地域が定められている区域については、防火地域または準防火地域のいずれかを定めなければならない。 |
3. | 市街化調整区域内において、農業を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で行う開発行為は、開発許可を受ける必要はない。 |
4. | 土地区画整理事業の施行として行う開発行為は、開発許可を受けなければならない。 |
正解:3 | |
1. | すべての都市計画区域において、都市計画に市街化区域と市街化調整区域の区分(区域区分)を定めなければいけない訳ではありません(非線引き区域もあります)。 |
2. | 問題文のようなルールは存在しません。なお、都市計画区域内においては、用途地域の内外を問わず、防火地域や準防火地域を指定することができます。 |
3. | 正しい記述です。農林漁業を営む人の居住用建物の建築に係る土地の区画形質の変更は、開発許可が不要です。 |
4. | 土地区画整理事業の施行として行う開発行為は、開発許可が不要です。 |
【問46】
都市計画区域および準都市計画区域内における建築基準法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 建築基準法第42条第2項により道路境界線とみなされる線と道路との間の敷地部分(セットバック部分)は、建蔽率および容積率を算定する際の敷地面積に算入することができない。 |
2. | 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域または田園住居地域内における建築物の高さは、原則として、10mまたは12mのうち都市計画で定められた限度を超えることができない。 |
3. | 近隣商業地域、商業地域および工業地域においては、地方公共団体の条例で日影規制(日影による中高層の建築物の高さの制限)の対象区域として指定することができない。 |
4. | 建築物が防火地域および準防火地域にわたる場合においては、原則として、その全部について防火地域内の建築物に関する規定が適用される。 |
正解:3 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域または田園住居地域には、絶対高さ制限が適用され、これらの地域内における建築物の高さは、原則として、10mまたは12mのうち都市計画で定められた限度を超えることができません。 |
3. | 日影規制の適用対象外となる用途地域は、原則として、商業地域、工業地域、工業専用地域です。 |
4. | 正しい記述です。複数の防火規制が異なる地域地区にまたがる場合、それらが占める面積に関わらず、最も規制が厳しい地域に関する規定が適用されます。 |
【問47】
不動産に係る固定資産税および都市計画税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 固定資産税の納税義務者が、年の中途にその課税対象となっている家屋を取り壊した場合であっても、当該家屋に係るその年度分の固定資産税の全額を納付する義務がある。 |
2. | 住宅用地に係る固定資産税の課税標準については、住宅1戸当たり200m2以下の部分について課税標準となるべき価格の3分の1相当額とする特例がある。 |
3. | 都市計画税は、都市計画区域のうち、原則として市街化区域内に所在する土地または家屋の所有者に対して課される。 |
4. | 都市計画税の税率は各地方自治体の条例で定められるが、制限税率である0.3%を超えることはできない。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。固定資産税の納税義務は、毎年1月1日時点の状況で判定されます。 |
2. | 固定資産税の住宅用地の特例は、住宅用地に係る課税標準を、住宅1戸当たり200㎡以下の部分について課税標準となるべき価格の6分の1相当額とするものです。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問48】
個人が土地を譲渡した場合の譲渡所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 相続(限定承認に係るものを除く)により取得した土地を譲渡した場合、その土地の所有期間を判定する際の取得の日は、被相続人の取得時期が引き継がれる。 |
2. | 土地の譲渡に係る所得が長期譲渡所得に区分される場合、課税長期譲渡所得金額に対し、原則として、所得税(復興特別所得税を含む)30.63%、住民税9%の税率で課税される。 |
3. | 土地の譲渡に係る所得については、その土地を譲渡した日の属する年の1月1日における所有期間が5年以下の場合、短期譲渡所得に区分される。 |
4. | 土地を譲渡する際に支出した仲介手数料は、譲渡所得の金額の計算上、譲渡費用に含まれる。 |
正解:2 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 分離長期譲渡所得に適用される税率は、所得税(復興特別所得税を含む)15.315%、住民税5%です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問49】
不動産賃貸に係る所得税に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 不動産所得の金額の計算上、2023年中に取得した建物を同年中に貸し付けた場合の当該建物の減価償却費の計算においては、定額法または定率法の選択が可能である。 |
2. | 不動産所得の金額の計算上、当該不動産所得に係る所得税および住民税の額は必要経費に算入されない。 |
3. | 不動産所得に係る総収入金額を計算する場合において、契約により支払日が定められている賃貸料は、原則として、その定められた支払日が収入すべき時期となる。 |
4. | アパート等の貸付けが不動産所得における事業的規模であるかどうかの判定において、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であれば、特に反証がない限り、事業的規模として取り扱われる。 |
正解:1 | |
1. | 減価償却費の計算において、建物の償却方法は定額法に限ります。 |
2. | 正しい記述です。所得税や住民税は、利益の処分であり、収入を得るために要したお金ではないからです。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。不動産所得が事業的規模であるか否かを判定する際には、5棟10室基準があります。この基準により、原則として、戸建てを5棟以上、または、アパートなどの部屋を10室以上(戸建て1棟=2室と換算可能)貸している場合、事業的規模として取り扱われます。 |
【問50】
不動産の投資判断の手法等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | レバレッジ効果とは、投資に対する収益率が借入金の金利を上回っている場合に、借入金の利用により自己資金に対する利回りが上昇する効果をいう。 |
2. | DCF法は、連続する複数の期間に発生する純収益および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引いて、それぞれを合計して対象不動産の収益価格を求める手法である。 |
3. | NPV法(正味現在価値法)による投資判断においては、対象不動産から得られる収益の現在価値の合計額が投資額を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。 |
4. | IRR法(内部収益率法)による投資判断においては、対象不動産に対する投資家の期待収益率が対象不動産の内部収益率を上回っている場合、その投資は有利であると判定することができる。 |
正解:4 | |
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | IRR法(内部収益率法)による投資判断においては、内部収益率(理論的な利回り)が期待収益率を上回っている場合に、有利と判断されます。 |
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