お金の寺子屋

FP2級学科解説-2024年9月・問1~10

【問1】
ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)の顧客に対する行為に関する次の記述のうち、職業倫理に照らし、最も適切なものはどれか。
1. 顧客から金融資産の安定した投資先を教えてほしいとの依頼を受けたFPのAさんは、自身の勤務先である銀行が新たに取扱いを始めたリスクの高い金融商品を提案し、契約することを強く勧めた。
2. 顧客から配偶者が要介護認定を受けたことを聞いたFPのBさんは、住宅リフォーム工事を請け負う会社を経営する知人に対して、顧客の同意を得ないでその情報を伝えた。
3. 顧客から保険商品について相談を受けたFPのCさんは、自身の専門性を強調するため、顧客の理解度は考慮せず、専門用語を多用して保険商品の説明を行った。
4. 顧客から資産運用に関するセミナーの講師を依頼されたFPのDさんは、官公庁が作成した転載を禁止する旨の表示がない広報資料をインターネットで入手し、当該官公庁の許諾を得ることなく、セミナーのレジュメで出典を明記して使用した。
正解:
1. 金融資産の安定した投資先を教えてほしいという顧客にリスクの高い金融商品を提案する行為は、ニーズに一致しておらず、顧客の利益を最優先させなければならないという倫理原則に反しています。
2. 本人の同意なく個人情報を第三者に提供する行為は、個人情報保護法に違反しています。
3. FPは、顧客が適切な情報に基づいて意思決定ができるように、顧客の知識レベル等に応じた説明をする必要があります。
4. 官公庁が作成した資料には著作権が無いため、許諾を得ることなく引用することができます。
【問2】
ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)の顧客に対する行為に関する次の記述のうち、関連法規に照らし、最も不適切なものはどれか。
1. 生命保険募集人の登録を受けていないFPのAさんは、ライフプランについて相談に来た顧客に対して、生命保険の一般的な商品内容や目的別の活用方法を有償で説明した。
2. 社会保険労務士の登録を受けていないFPのBさんは、顧客から老齢厚生年金の繰下げ支給について相談を受け、有償で老齢厚生年金の支給繰下げ請求書を作成し、請求手続きを代行した。
3. 司法書士の登録を受けていないFPのCさんは、顧客から将来判断能力が不十分になった場合の財産の管理を依頼され、有償で当該顧客の任意後見受任者となった。
4. 弁護士の登録を受けていないFPのDさんは、顧客から公正証書遺言の作成時の証人になることを要請され、証人としての欠格事由に該当しないことを確認したうえで、有償で証人になった。
正解:
1. 一般的な説明は、有償・無償に関わらず、誰でもすることができます。
2. 社会保険関係の書類の作成や手続きの代行は、社会保険労務士の登録を受けていない人が行ってはいけません。
3. 任意後見受任者となるために有しておかなくてはならない資格はありません。
4. 公正証書遺言の証人になるために有しておかなくてはならない資格はありません。
【問3】
公的医療保険に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 退職により健康保険の被保険者資格を喪失した者が、その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている場合、資格喪失日の前日まで継続して2ヵ月以上の被保険者期間があれば、傷病手当金の支給期間を限度として、退職後も引き続きその支給を受けることができる。
2. 健康保険の任意継続被保険者に係る保険料は、その全額を任意継続被保険者が負担する。
3. 健康保険や国民健康保険の被保険者が70歳に達すると、原則として、その被保険者資格を喪失し、後期高齢者医療制度の被保険者となる。
4. 後期高齢者医療制度の被保険者が保険医療機関等の窓口で支払う一部負担金(自己負担額)の割合は、当該被保険者の所得金額の多寡にかかわらず、1割とされている。
正解:
1. 退職により健康保険の被保険者資格を喪失した者が、その資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けている場合、傷病手当金の支給期間を限度として、退職後も引き続きその支給を受けることができますが、そのためには、資格喪失日の前日まで継続して1年以上の被保険者期間があることが要件とされます。
2. 正しい記述です。任意継続被保険者に係る保険料は、その全額を任意継続被保険者が負担します。
3. 後期高齢者医療制度の被保険者となるのは、原則として、75歳以上の人です。
4. 後期高齢者医療制度の被保険者が保険医療機関等の窓口で支払う一部負担金(自己負担額)の割合は、所得の額に応じて1~3割とされています。
【問4】
労働者災害補償保険に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 派遣労働者が派遣先で業務上負傷した場合、派遣元事業が労働者災害補償保険の適用事業とされる。
2. 労働者が業務上の負傷または疾病による療養のため労働することができず賃金を受けられない場合、賃金を受けられない日の第4日目から休業補償給付が支給される。
3. 労働者が業務上死亡した場合、葬祭を行う者に葬祭料が支給される。
4. 労働者が業務上の負傷または疾病が治癒したときに障害が残り、その障害の程度が所定の障害等級に該当するときは、障害補償年金または障害補償一時金のいずれかを選択して受給することができる。
正解:
1. 正しい記述です。派遣労働者は、派遣元の事業者との契約に基づいて労働しているため、派遣先で労災事故に遭った 場合、派遣元の労災保険を使用して補償を受けることになります。
ちなみに、労働基準監督署に死傷病報告書の提出義務は、派遣元と派遣先の双方が負います。
2. 正しい記述です。休業補償給付は、傷病手当金の労災保険版のような給付で、業務上の病気やケガのため労働することができず賃金を受けられない場合、賃金を受けられない日の第4日目から支給されます。
3. 正しい記述です。健康保険の被保険者が業務上の事由により死亡した場合、健康保険からの給付はありませんが、労災保険から給付があります。
4. 障害補償年金または障害補償一時金は、障害の程度によって支給額等が決まるため、労災保険の被保険者が選択するものではありません。
ちなみに、労災保険の障害等級は、最も重い1級から14級まであり、1級~7級の場合は障害補償年金が、8級~14級の場合は障害補償一時金が支給されます。
【問5】
雇用保険法に基づく育児休業給付および介護休業給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載されたもの以外の要件はすべて満たしているものとする。
1. 育児休業給付金の額は、育児休業期間中に事業主から賃金が支払われなかった場合、育児休業開始日から通算して休業日数が180日に達する日を超えた日以降については、休業開始時賃金日額に支給日数を乗じた額の100分の50に相当する額となる。
2. 育児休業給付の対象となる出生時育児休業は、子の出生後8週間以内に4週間まで取得することが可能だが、分割して取得することはできない。
3. 介護休業給付金の支給に当たって、介護の対象となる家族には、被保険者の父母だけでなく、被保険者の配偶者の父母も含まれる。
4. 一般被保険者や高年齢被保険者が、要介護状態にある家族を介護するために休業する場合、同一の対象家族について、通算3回かつ93日の介護休業を限度として、介護休業給付金が支給される。
正解:
1. 正しい記述です。育児休業給付金の額は、休業日数が180日に達するまでは、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%相当額」ですが、181日経過後は、「休業開始時賃金日額×支給日数×50%相当額」となります。
2. 育児休業給付は、原則として、最大2回まで分割取得することができます。
3. 正しい記述です。介護休業給付金の支給に当たって、介護の対象となる人は、事実婚や養子縁組を含めて考えて、2親等以内の血族と、1親等以内の姻族です。よって、被保険者の父母(1親等の血族)と被保険者の配偶者の父母(1親等の姻族)は、どちらも対象となります。
4. 正しい記述です。介護休業給付金は、「休業開始時賃金日額×支給日数×67%相当額」が、同一の対象家族について、通算3回かつ93日の介護休業を限度として支給されます。

【問6】
公的年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 老齢厚生年金の繰上げ支給を請求する場合、老齢基礎年金の繰上げ支給の請求も同時に行わなければならない。
2. 国民年金の付加保険料納付済期間を有する者が、老齢基礎年金の繰下げ支給の申出をした場合、付加年金は、老齢基礎年金と同じ増額率によって増額される。
3. 障害等級1級または2級に該当する程度の障害の状態にある障害厚生年金の受給権者が、18歳未満の子を有する場合、その受給権者には子の加算額が加算された障害厚生年金が支給される。
4. 厚生年金保険の被保険者である夫が死亡し、子のない30歳未満の妻が遺族厚生年金の受給権を取得した場合、その妻に対する遺族厚生年金の支給期間は、最長で5年間である。
正解:
1. 正しい記述です。公的年金を繰下げる場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰下げる(片方だけ繰下げる場合を含む)ことができますが、繰上げる場合は、同時に繰上げなくてはなりません。
2. 正しい記述です。老齢基礎年金を繰上げたり繰下げたりした場合、付加年金も同時に繰上げまたは繰下げられ、老齢基礎年金と同じ割合で増減額されます。
3. 厚生年金保険の給付に子の加算はありません(子の加算は、障害基礎年金や遺族基礎年金の加算で、厚生年金保険の給付には加給年金が加算されます)。
4. 正しい記述です。子のない30歳未満の妻が遺族厚生年金の受給権を取得した場合、その妻に対する遺族厚生年金は、最長で5年間の有期年金となります。
【問7】
確定拠出年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. 企業型年金を実施している会社に厚生年金保険の被保険者として新たに入社した60歳以上70歳未満の者は、他社で加入した企業型年金の老齢給付金の受給者であっても、新たに入社した会社の企業型年金に加入することができる。
2. 企業型年金の加入者掛金(マッチング拠出により加入者が拠出する掛金)は、加入者に係る事業主掛金と同額以下、かつ、事業主掛金との合算で拠出限度額までである。
3. 企業型年金において、企業型年金のマッチング拠出を利用していない加入者は、所定の要件を満たせば、個人型年金に加入することができる。
4. 企業型年金や確定給付企業年金等を実施していない一定規模以下の中小企業の事業主は、所定の要件を満たせば、従業員が加入している個人型年金の加入者掛金に事業主掛金を上乗せして納付することができる。
正解:
1. 企業型年金の老齢給付金の受給権を有する者等は、企業型年金加入者になることができません。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。
4. 正しい記述です。企業年金を実施していない従業員(厚生年金保険の被保険者)が300人以下の中小企業の事業主が、iDeCoに加入している従業員の掛金に上乗せして、掛金を拠出できる「iDeCo+」という制度があります。
【問8】
国民年金基金、小規模企業共済および中小企業退職金共済に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. 国民年金基金の掛金月額は、選択した給付の型および加入口数に応じて決まり、加入時の年齢や性別による差異はない。
2. 小規模企業共済の掛金は、確定拠出年金の個人型年金の掛金との合計で、月額68,000円が限度とされている。
3. 小規模企業共済では、共済契約の解約時における掛金納付月数が12ヵ月未満である場合、解約事由にかかわらず、解約手当金は支給されない。
4. 中小企業退職金共済の掛金は、事業主と従業員の合意に基づき、事業主と従業員が折半して負担することができる。
正解:
1. 国民年金基金の給付は、給付の型ごとに、加入した時期に関わらず、1口当たり一定額の年金が有期または終身で支給されます。よって、掛金月額は、給付の型、加入口数、年齢、性別によって決まります。
2. 小規模企業共済の掛金は、確定拠出年金の掛金の額に関わらず、月額70,000円が上限です。なお、問題文は、国民年金基金の掛金についての説明です。
3. 正しい記述です。小規模企業共済の解約手当金は、掛金納付月数が12ヶ月未満の場合は0で、掛金の納付月数に応じて、納付した掛金の80%から120%に相当する額(240~245ヵ月納付すると100%)となります。
4. 中小企業退職金共済(中退共)の掛金は、従業員が拠出することができません。
【問9】
変動金利型の住宅ローンを返済しているAさんの返済方法の見直し等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. Aさんが全期間固定金利型の住宅ローンに借り換えた場合、仮に返済期間中に市中金利が上昇しても、金利の上昇分に相当する額の返済負担が増加するリスクは避けられる。
2. Aさんが別の金融機関の住宅ローンに借り換える場合、元金均等返済を選択する方が、他の条件が同じ元利均等返済と比べて、総返済額は少なくなる。
3. Aさんが別の金融機関の住宅ローンに借り換える場合、一般に、抵当権の抹消および借換先の金融機関の抵当権の設定が必要となり、登録免許税等の諸費用の負担が発生する。
4. Aさんが住宅ローンの一部繰上げ返済をする場合、毎月の返済額を変更せずに返済期間を短縮する期間短縮型よりも、返済期間を変更せずに毎月の返済額を減らす返済額軽減型の方が、利息軽減効果が高くなる。
正解:
1. 正しい記述です。全期間固定金利型の住宅ローンは、市中金利に関わらず返済額が変わらないため、金利変動に伴い返済額が増減するリスクがありません。
2. 正しい記述です。他の条件を同じとして元金均等返済と元利均等返済を比較した場合、総返済額が少ないのは、元金の減少速度が速い元金均等返済です。
3. 正しい記述です。
4. 他の条件を同じとして期間短縮型と返済額軽減型を比較した場合、期間短縮型の方が利息の軽減効果が大きいです。
【問10】
キャッシュレス決済の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. クレジットカードは、原則として、カード会社が設定した利用枠(利用限度額)内で、商品やサービスを受け取った後に支払請求がされる後払いの決済手段である。
2. デビットカードは、商品やサービスの購入時に使用すると代金が原則として翌月に銀行口座から引き落とされ、残高不足になってもあらかじめ設定された一定額までは使用することができる後払いの決済手段である。
3. 交通系や流通系の電子マネーやプリペイドカードは、カードやスマートフォンに事前にチャージしておき、商品やサービスの購入時にチャージ額から支払う決済手段である。
4. スマートフォン決済のうち、二次元コードやバーコードを利用するコード決済は、支払いアプリをスマートフォンにインストールして銀行口座やクレジットカード等の情報を登録したうえで、店舗または自身のスマートフォン上の二次元コードやバーコードを読み取って支払う決済手段である。
正解:
1. 正しい記述です。
2. デビットカードは、商品やサービスの購入時に使用すると、即時にその代金が銀行口座から引き落とされる決済方法です。
3. 正しい記述です。
4. 正しい記述です。

スポンサーリンク




スポンサーリンク



ホーム 進む>
LINEで送る
Pocket

コメントは受け付けていません。