お金の寺子屋

FP2級実技(FP協会)解説-2024年5月・問1~10

【問1】
ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)は、ファイナンシャル・プランニング業務を行ううえで関連業法等を順守することが重要である。FPの行為に関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。

(ア) 社会保険労務士の登録を受けていないFPが、有料の年金セミナーを開催し、社会保険制度の概要と公的年金の受給額に関する一般的な説明を行った。
(イ) 弁護士の登録を受けていないFPが、自治体主催の無料相談会において債務整理に関する一般的な内容について説明をした。
(ウ) 税理士の登録を受けていないFPが、自治体主催の無料相談会において相談者の収入に基づく具体的な税額の計算を行い、税務申告書を作成した。
(エ) 弁護士または司法書士の登録を受けていないFPが、顧問契約をしている顧客に対し、不動産の所有権移転登記申請時に法務局に提出する書類を無償で作成した。
正解:○、○、×、×
(ア) 社会保険制度の一般的な説明は誰でもすることができます。
(イ) 法律の一般的な説明は誰でもすることができます。
(ウ) 税理士の登録を受けていない人が、個別具体的な税額の計算や税務署類の作成を行ってはいけません。
(エ) 弁護士または司法書士の登録を受けていない人が、法務局に提出する書類を代理で作成してはいけません。
【問2】
「個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)」および著作権法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1. 個人情報取扱事業者が個人情報を取得する場合、あらかじめ自社のホームページで個人情報の利用目的を公表しているときは、原則として、改めて本人に利用目的を通知する必要はない。
2. 個人情報取扱事業者は、不正アクセスにより個人情報が1件でも漏えいした場合、原則として、個人情報保護委員会に報告しなければならない。
3. 背景にキャラクターなどの著作物が写り込んでいる写真は、その著作物が本来の被写体との分離が困難で、軽微な構成部分となるものであれば、著作権者の利益を不当に害する場合を除き、ブログに掲載することができる。
4. 他人の著作物を家族などの限られた範囲で使用するために複製する場合であっても、原則として著作権者の許諾が必要である。
正解:
(ア) 正しい記述です。個人情報取扱事業者が個人情報を取得する場合、あらかじめ利用目的を公表している場合を除き、本人に利用目的を通知する必要があります。
本問のように、個人情報の利用目的を自社のホームページで公表している場合、原則として、改めて本人に利用目的を通知する必要はありません。
(イ) 正しい記述です。個人データの漏洩等が発生し、個人の権利利益を害するおそれがあるときは、個人情報保護委員会への報告及び本人への通知が必要となります。
具体的には、要配慮個人情報が含まれる場合、財産的被害が生じるおそれがある場合、不正アクセスにより漏洩した場合、1,000人を超える漏洩があった場合を指します。
本問のように、不正アクセスにより漏洩した場合、漏洩した件数に関わらず報告義務が生じます。
(ウ) 正しい記述です。著作権法では、いわゆる「写り込み」等については、その著作物が本来の被写体との分離が困難で、軽微な構成部分となるものであれば、著作権者の利益を不当に害する場合を除いて、著作権の侵害には当たらないこととされています。(著作権法30条の2)
(エ) 私的使用目的の複製を行おうとする場合は、著作権者の許諾は不要です。
【問3】
大下さんは、保有しているRT投資信託(追加型国内公募株式投資信託)の収益分配金を2024年4月に受け取った。RT投資信託の運用状況が下記<資料>のとおりである場合、収益分配後の個別元本として、正しいものはどれか。

<資料>
[大下さんが保有するRT投資信託の収益分配金受取時の状況]
収益分配前の個別元本:11,720円
収益分配前の基準価額:11,760円
収益分配金:200円
収益分配後の基準価額:11,560円
1. 11,560円
2. 11,600円
3. 11,680円
4. 11,720円
正解:
収益分配後の個別元本=収益分配前の個別元本-元本払戻金の額です。
資料より、普通分配金の額(支払われた分配金のうち、収益分配前の個別元本を下回る部分)の額は40円、元本払戻金(支払われた分配金のうち、収益分配前の個別元本を下回る部分)の額は160円であることが分かりますから、収益分配後の個別元本=11,720円-160円=11,560円となります。
【問4】
大津さんは、投資信託への投資を検討するに当たり、FPの細井さんから候補である3ファンドの過去3年間の運用パフォーマンスについて説明を受けた。FPの細井さんが下記<資料>に基づいて説明した内容の空欄(ア)~(ウ)にあてはまる語句および数値の組み合わせとして、最も適切なものはどれか。

<資料>
ファンド名 収益率 標準偏差
KXファンド 5.70% 6.50%
KYファンド 3.00% 2.00%
KZファンド 4.50% 10.00%
無リスク金利は0.50%とする。
<FPの細井さんの説明>
「資料の過去3年間の実績から比較すると、一番リスクが高いのは( ア )といえます。」
「シャープレシオにより投資効率を考えると、最も効率的なのは( イ )で、そのシャープレシオの値は( ウ )です。」
1. (ア)KXファンド 
(イ)KYファンド (ウ)1.50
2. (ア)KYファンド 
(イ)KZファンド (ウ)0.45
3. (ア)KZファンド 
(イ)KXファンド (ウ)0.80
4. (ア)KZファンド 
(イ)KYファンド (ウ)1.25
正解:
(ア) 標準偏差はリスクの大きさを数値化したものですから、標準偏差が一番高いKZファンドが一番リスクが高いと言えます。
(イ) シャープレシオは、「(ファンドの収益率-無リスク利子率)÷標準偏差」の算式により求めることができ、シャープレシオの値が大きいほど、効率的に運用されたと判断されます。
各ファンドのシャープレシオは、
KXファンド=(5.70-0.50)÷6.50=0.8
KYファンド=(3.00-0.50)÷2.00=1.25
KZファンド=(4.50-0.50)÷10.00=0.4
より、最も投資効率が高いと判断されるのは、KYファンドです。
(ウ) 上記の通りです。
【問5】
下記<資料>は、有馬さんが同一の特定口座内で行ったRA株式会社の株式の取引等に係る明細である。有馬さんが2024年3月4日に売却した5,000株について、譲渡所得の取得費の計算の基礎となる1株当たりの取得価額として、正しいものはどれか。なお、消費税その他記載のない事項については一切考慮しないものとする。

<資料>
1. 800円
2. 920円
3. 960円
4. 1,040円
正解:
2023年2月1日時点では、4,000円/株×1,000株+5,200円/株×2,000株=1,440万円で、3,000株を購入しています。
2023年9月30日に、1:5の株式分割が行われ、株式の数が5倍になったため、分割後の株式の数は、3,000株×5=15,000株となります。
よって、取得単価は、1,440万円÷.15,000株=960円/株となります。

【問6】
下記<資料>は、香川さんが購入を検討している個人向け国債の商品概要の一部である。個人向け国債に関する次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。なお、問題作成の都合上、一部を「***」にしてある。

<資料>
(ア) 変動10年国債は、金利がゼロ%となることがある。
(イ) 個人向け国債の購入単価(販売価格)は、最低1万円から1万円単位である。
(ウ) 個人向け国債は、発行後6ヵ月経過すれば、いつでも中途換金することができる。
(エ) 個人が募集時に購入できる日本国債は、個人向け国債のみである。
正解:×、○、×、×
(ア) 個人向け国債は、全てに0.05%の最低保証金利が設定されているため、金利がゼロになる事はありません。
(イ) 正しい記述です。
(ウ) 個人向け国債は、原則として、発行から1年経過しなければ中途換金することができません。
(エ) 個人が募集時に購入できる日本国債には、個人向け国債のほか、新窓販国債があります。
【問7】
建築基準法に従い、下記<資料>の土地に建築物を建てる場合の延べ面積(床面積の合計)の最高限度を計算しなさい。なお、記載のない事項は一切考慮しないものとする。また、解答に当たっては、解答用紙に記載されている単位に従うこと。

<資料>
正解:260(㎡)
前面道路の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、いずれか小さい方となります。
前面道路の幅員によって定まる容積率=5×4/10=2=200%ですから、容積率の上限は、200%となります。
よって、容積率の上限となる延床面積は、130㎡×200%=260㎡です。
(複数の道路に面している場合、幅員が広い方の道路)
【問8】
増田さんは、土地の有効活用をするに当たり、FPの松尾さんに、借地借家法に定める普通借地権について質問をした。下記の空欄(ア)~(エ)にあてはまる適切な語句を語群の中から選び、その番号のみを解答欄に記入しなさい。なお、同じ番号を何度選んでもよいこととする。また、「普通借地権」とは、借地借家法第22条から第24条の定期借地権等以外の借地権をいうものとする。

増田さん 「普通借地権の設定契約について教えてください。」
松尾さん 「普通借地権の設定契約で、期間の定めがない場合の存続期間は( ア )です。契約でこれより長い期間を定めることは( イ )。」
増田さん 「契約の更新について教えてください。地主から契約の更新を拒絶するに当たって、正当事由は必要でしょうか。」
松尾さん 「正当事由は( ウ )です。また、借地権設定後に最初の更新をする場合、その期間は原則として、更新の日から( エ )です。」
<語句群>
1.10年 2.20年 3.30年 
4.50年 5.できます 6.できません 
7.必要 8.不要
正解:3、5、7、2
(ア) 普通借地権の設定期間は、期間の定めがない場合、または、30年未満の期間を設定した場合、30年となります。
(イ) 普通借地権の設定期間に上限は無いため、30年以上であれば自由に設定することができます。
(ウ) 普通借地権において、賃貸人から更新を拒む場合は、正当事由が必要です。
なお、賃借人から更新を拒む場合には、正当事由は不要です。
(エ) 更新後の普通借地権の設定期間は、1回目の更新においては20年以上、2回目以降の更新においては10年以上の期間を設定しなくてはなりません。
【問9】
下記<資料>は、岡さんが購入を検討している物件の登記事項証明書の一部である。この登記事項証明書等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。

<資料>
1. 所有権以外の権利に関する事項が記載されている欄(A)は、権利部の乙区である。
2. 大久保敏夫さんが株式会社TN銀行への債務を完済した場合の当該抵当権の登記は、自動的には抹消されない。
3. 岡さんが本物件を購入し、所有権移転登記が完了した場合、原則として、岡さんに対して登記識別情報が通知される。
4. 不動産登記には公信力があり、その内容が真実であると信じて取引した場合、原則として、法的に保護される。
正解:
1. 正しい記述です。所有権以外の権利に関する事項は、権利部の乙区に記載されます。
2. 正しい記述です。当権は、自動的には抹消されません。抹消する為には、抹消登記を行う必要があります。
3. 正しい記述です。登記識別情報は、新たに登記名義人になった人に通知されます。登記識別情報は、その人が登記名義人であることを確認するためのパスワードのようなもので、将来不動産を売却して登記義務者となる場合に、提出することが求められます。
4. 登記に公信力はありません。よって、登記記録の内容が真実であると信じて取引した場合、原則として、法的には保護されません。
【問10】
安西さんは、宅地建物取引業者KR社の媒介により、売主である井上さんから中古マンションを購入した。下記<資料>は、購入時に交わした売買契約書の一部である。次の(ア)~(エ)の記述について、適切なものには○、不適切なものには×を解答欄に記入しなさい。なお、記載のない事項については一切考慮しないものとする。

<資料>
(ア) この不動産売買契約書について、契約金額にかかわらず、一律に定められた金額の印紙税を納める必要がある。
(イ) 民法の規定によれば、井上さんが、安西さんから解約手付としての手付金200万円を受領後、安西さんが契約の履行に着手するまでに手付金200万円を返還した場合、この売買契約を解約することができる。
(ウ) 2023年度分の固定資産税は、原則として、安西さんに納税義務がある。
(エ) 安西さんへの売買契約書の交付は、宅地建物取引業者KR社の宅地建物取引士が行わなければならない。
正解:×、×、×、×
(ア) 印紙税の額は、記載された契約金額により異なります。
(イ) 解約手付の授受を行った後、売り主から解除する場合、買主に対して、手付金の倍額を償還しなくてはなりません。
(ウ) 固定資産税の納税義務者は、1月1日時点の所有者です。よって、2023年の途中に不動産を購入した人には、2023年度分の固定資産税の納付義務はありません。
(エ) 契約書(37条書面)の記名・押印は宅建士が行う必要がありますが、契約書の交付は宅建士以外の人でも可能です。

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