FP2級実技(個人)解説-2023年9月・問10~15
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(55歳)は、5年前に父親の相続(単純承認)により取得した自宅(建物とその敷地である甲土地)および月極駐車場(青空駐車場・乙土地)を所有している。父親が45年前に甲土地とともに購入した建物は老朽化が進んでおり、Aさんは自宅での生活に不便さを感じている。また、所有する月極駐車場では、その一部に空車が続いている。
Aさんは、甲土地(自宅)および乙土地(駐車場)を売却し、同じ地域にマンションを購入して移り住むことを考えているが、相続した甲土地および乙土地を売却することに少し後ろめたさを感じている。先日、Aさんは、不動産会社を通じ、ドラッグストアのⅩ社から「甲土地および乙土地に新規出店させていただけませんか。なお、甲土地および乙土地については、Aさんに建設協力金方式による有効活用をご検討いただきたいと考えています」との提案を受けた。
Aさん(55歳)は、5年前に父親の相続(単純承認)により取得した自宅(建物とその敷地である甲土地)および月極駐車場(青空駐車場・乙土地)を所有している。父親が45年前に甲土地とともに購入した建物は老朽化が進んでおり、Aさんは自宅での生活に不便さを感じている。また、所有する月極駐車場では、その一部に空車が続いている。
Aさんは、甲土地(自宅)および乙土地(駐車場)を売却し、同じ地域にマンションを購入して移り住むことを考えているが、相続した甲土地および乙土地を売却することに少し後ろめたさを感じている。先日、Aさんは、不動産会社を通じ、ドラッグストアのⅩ社から「甲土地および乙土地に新規出店させていただけませんか。なお、甲土地および乙土地については、Aさんに建設協力金方式による有効活用をご検討いただきたいと考えています」との提案を受けた。
<甲土地および乙土地の概要>
・ | 甲土地、甲土地と乙土地を一体とした土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地と乙土地を一体とした土地上に耐火建築物を建築する場合における次の①、②を求めなさい(計算過程の記載は不要)。
① | 建蔽率の上限となる建築面積 |
② | 容積率の上限となる延べ面積 |
正解:500、1,750
① | 準防火地域に耐火建築物を建てる場合には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。 また、特定行政庁が指定する角地に建物を建てる場合には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。 よって、建蔽率の上限は、60%+10%+10%=80%となります。 したがって、建ぺい率の上限となる建築面積は、(300+325)㎡×80=500㎡となります。 |
② | 前面道路(複数の道路に面している場合、幅員が広い方の道路)の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、いずれか小さい方となります。 前面道路の幅員によって定まる容積率=7×4/10=2.8=280%ですから、容積率の上限は、280%となります。 よって、容積率の上限となる延床面積は、(300+325)㎡×280%=1,750㎡となります。 |
【問11】
自宅(建物とその敷地である甲土地)の譲渡および月極駐車場(乙土地)の賃貸借契約に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「Aさんがマンションに転居し、その後、居住していない現在の自宅を譲渡する場合、Aさんが『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例』の適用を受けるためには、現在の自宅にAさんが居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しなければなりません」 |
② | 「『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率の特例)』の適用を受けるためには、譲渡した年の1月1日において居住用財産の所有期間が10年を超えていなければなりません。Aさんが現在の自宅を譲渡する場合、譲渡所得の金額の計算上、相続により取得した現在の自宅の取得時期は相続開始日とされるため、当該特例の適用を受けることはできません」 |
③ | 「乙土地に係る月極駐車場の賃貸借契約には、借地借家法が適用されるため、当該契約に中途解約に関する条項がある場合であっても、正当な事由がない場合は、貸主であるAさんから解約を申し入れることができません」 |
正解:○、×、×
① | 正しい記述です。 |
② | 相続や個人からの贈与により取得した資産を売却した場合、譲渡所得の区分の判定において、当該資産の取得日は、相続人や贈与者の取得日を引き継ぎます。 |
③ | 駐車場として利用している土地は、建物の所有を目的としていないため、借地借家法の対象外です。 |
【問12】
建設協力金方式による甲土地と乙土地を一体とした土地の有効活用に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「建設協力金方式は、AさんがⅩ社から建設資金の一部または全部を借り受けて、Ⅹ社の要望に沿った店舗を建設し、その店舗をⅩ社に賃貸する手法です。借り受けた建設資金は、元本の返済に加え、利子の支払が必要となることがありますが、不動産所得の金額の計算上、返済した元利金は必要経費に算入することができます」 |
② | 「建設協力金方式による土地の有効活用において、建設した店舗に係る固定資産税の納税義務は、Aさんが負うことになります」 |
③ | 「Aさんが建設した店舗をⅩ社に賃貸した後、その賃貸期間中にAさんの相続が開始した場合、相続税額の計算上、店舗は貸家として評価され、甲土地と乙土地を一体とした土地は貸宅地として評価されます」 |
正解:×、○、×
① | 不動産所得の計算上、返済した利子は必要経費に算入されますが、元本の額は必要経費に算入されません。 |
② | 正しい記述です。建設協力金方式において、土地と建物の名義は、どちらも土地所有者となりますから、土地建物に係る固定資産税の納付義務は、土地所有者が負います。 |
③ | 建設協力金方式において、土地と建物の名義は、どちらも土地所有者となりますから、建物の賃貸期間中に土地所有者が死亡した場合、相続税の計算上、建物は貸家として、土地は貸家建付地として評価されます。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(71歳)は、父親から相続した先祖代々の土地を活用し、不動産賃貸業(個人事業)を営んでいる。Aさんの不動産収入は年間4,000万円程度であり、所得税の負担が大きいと感じている。そのため、X社を設立したうえで、賃貸不動産をX社に売却するなど、不動産賃貸業の法人化を検討している。
Aさんは、現在、妻Bさん(67歳)および長男Cさん(38歳)と自宅で同居している。長男Cさんは、地元の中小企業に勤務する傍ら、Aさんの不動産賃貸業を手伝っている。二男Dさん(36歳)は、県外の企業に勤務しており、実家に戻る予定はない。Aさんは、不動産賃貸業を長男Cさんに引き継がせたいと思っているが、大半の財産を長男Cさんに相続させた場合、長男Cさんと二男Dさんとの間で争いが生じるのではないかと不安を感じている。
Aさん(71歳)は、父親から相続した先祖代々の土地を活用し、不動産賃貸業(個人事業)を営んでいる。Aさんの不動産収入は年間4,000万円程度であり、所得税の負担が大きいと感じている。そのため、X社を設立したうえで、賃貸不動産をX社に売却するなど、不動産賃貸業の法人化を検討している。
Aさんは、現在、妻Bさん(67歳)および長男Cさん(38歳)と自宅で同居している。長男Cさんは、地元の中小企業に勤務する傍ら、Aさんの不動産賃貸業を手伝っている。二男Dさん(36歳)は、県外の企業に勤務しており、実家に戻る予定はない。Aさんは、不動産賃貸業を長男Cさんに引き継がせたいと思っているが、大半の財産を長男Cさんに相続させた場合、長男Cさんと二男Dさんとの間で争いが生じるのではないかと不安を感じている。
<Aさんの推定相続人> | ||
妻Bさん | : | 専業主婦。Aさんと自宅で同居している。 |
長男Cさん | : | 会社員。Aさん夫妻と同居している。 |
二男Dさん | : | 会社員。妻と子と一緒にマンション(持家)に住んでいる。 |
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)> | ||
現預金 | : | 1億6,000万円 |
自宅 | ||
①敷地(200㎡) | : | 6,000万円 |
②建物 | : | 1,000万円 |
賃貸マンション甲 | ||
①敷地(300㎡) | : | 9,000万円 |
②建物(築30年) | : | 2,800万円 |
賃貸マンション乙 | ||
①敷地(400㎡) | : | 1億2,000万円 |
②建物(築25年) | : | 3,200万円 |
合計 | : | 5億円 |
※ | 自宅および賃貸マンション甲、乙の土地は「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の金額である。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
不動産賃貸業の法人化に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。
① | 「AさんからX社に移転される不動産賃貸業に係る所得には、法人税が課されることになります。X社の資本金の額が1億円以下であって一定の中小法人に該当する場合は、所得金額のうち年1,000万円以下の部分に軽減税率が適用されるなど、法人化によって不動産賃貸業に係る所得に対する税負担が軽減される可能性があります」 |
② | 「法人化に際して賃貸マンションの土地や建物をAさんからX社に譲渡する場合は、Aさんの譲渡所得に課される所得税や住民税の金額だけでなく、Ⅹ社が支払うことになる土地や建物に係る不動産取得税、登録免許税等の金額についても事前に把握し、検討しておくことをお勧めします」 |
③ | 「法人化により、Aさんだけでなく、長男CさんがX社の役員となって役員報酬を得ることで、所得の分散を図ることができます」 |
正解:×、○、○
① | 法人税の軽減税率が適用されるのは、所得金額のうち年800万円以下の部分です。 |
② | 適切な記述です。 |
③ | 正しい記述です。 |
【問14】
現時点(2023年9月10日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、課税遺産総額(相続税の課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額)は4億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
(a)相続税の課税価格の合計額 | □□□ |
(b)遺産に係る基礎控除額 | ( ① )万円 |
課税遺産総額(a-b) | 4億円 |
相続税の総額の基となる税額 | |
妻Bさん | □□□万円 |
長男Cさん | ( ② )万円 |
長女Dさん | □□□万円 |
(c)相続税の総額 | ( ③ )万円 |
<資料>相続税の速算表(一部抜粋) | ||
法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超 3,000万円以下 |
15% | 50万円 |
3,000万円超 5,000万円以下 |
20% | 200万円 |
5,000万円超 10,000万円以下 |
30% | 700万円 |
10,000万円超 20,000万円以下 |
40% | 1,700万円 |
20,000万円超 30,000万円以下 |
45% | 2,700万円 |
30,000万円超 60,000万円以下 |
50% | 4,200万円 |
正解:4,800、2,300、10,900
① | 相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算されます。 よって、3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。 |
② | 長男Cさんの法定相続分に対応する取得金額は、4億円×1/4=1億円となります。 これに対応する相続税額は、1億円×30%-700円=2,300万円です。 |
③ | 妻Bさんの法定相続分に対応する取得金額は、4億円×1/2=2億円となります。 これに対応する相続税額は、2億円×40%-1,700円=6,300万円です。 また、二男Dさんの法定相続分に対応する取得金額に対応する相続税額は、長男Cさんと同じく2,300万円ですから、相続税の総額は、6,300万円+2,300万円+2,300万円=10,900万円となります。 |
【問15】
Aさんの相続等に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。
Ⅰ | 「遺言により賃貸マンション等の相続財産の大半を長男Cさんに相続させた場合、二男Dさんの遺留分を侵害する可能性があります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額が5億円である場合、二男Dさんの遺留分の金額は( ① )万円となります」 |
Ⅱ | 「妻Bさんが自宅の敷地および建物を相続により取得し、自宅の敷地の全部について、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、当該敷地(相続税評価額:6,000万円)について、相続税の課税価格に算入すべき価額を( ② )万円とすることができます。なお、自宅の敷地について優先して本特例の適用を受けた場合、賃貸マンションの敷地のうち、貸付事業用宅地等として適用を受けることができる面積は所定の算式により調整しなければなりません」 |
Ⅲ | 「相続税の申告書は、原則として、相続の開始があったことを知った日の翌日から( ③ )カ月以内に、Aさんの死亡時の住所地を所轄する税務署長に提出しなければなりません。相続税の申告期限までに遺産分割協議が調わなかった場合、相続税の申告時において、未分割の財産に対して『配偶者に対する相続税額の軽減』や『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができないというデメリットが生じます。その場合、相続税の申告の際に『申告期限後( ④ )年以内の分割見込書』を税務署に提出し、申告期限後( ④ )年以内に遺産分割協議が成立すれば、それらの特例の適用を受けるため、分割後4カ月以内に更正の請求を行うことができます」 |
<数値群>
イ.2 ロ.3 ハ.4 ニ.6
ホ.10 ヘ.12 ト.1,200
チ.3,000 リ.4,800
ヌ.6,000
ル.6,250 ヲ.12,500
イ.2 ロ.3 ハ.4 ニ.6
ホ.10 ヘ.12 ト.1,200
チ.3,000 リ.4,800
ヌ.6,000
ル.6,250 ヲ.12,500
正解:ル、ト、ホ、ロ
① | 抽象的遺留分の割合は、相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分算定基礎財産の1/2です。 また、各相続人の具体的遺留分は、抽象的遺留分を遺留分権利者が法定相続分通り按分した割合となります。 よって、二男Dさんの具体的遺留分の割合は、1/2×1/4=1/8です。 したがって、具体的遺留分の額は、5億円×1/8=6,250万円となります。 |
② | 自宅の敷地について、小規模宅地の特例の適用を受けた場合、330㎡を限度として、評価額が80%減額されます。 よって、相続税の課税価格に算入される額は、6,000万円×(1-80%)=1,200万円となります。 |
③ | 相続税の申告期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヵ月以内です。 |
④ | 相続税の申告期限までに分割されていない財産は、相続税の申告書または更正の請求書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した上で、申告期限から3年以内に分割したときは、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」等の対象になります。 |
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