FP2級学科解説-2023年9月・問21~30
【問21】
景気動向指数および全国企業短期経済観測調査(日銀短観)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 景気動向指数は、生産、雇用などさまざまな経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって作成された指標であり、ディフュージョン・インデックス(DI)を中心として公表される。 |
2. | 景気動向指数に採用されている系列は、おおむね景気の1つの山もしくは谷が経過するごとに見直しが行われている。 |
3. | 日銀短観は、日本銀行が全国約1万社の企業を対象に、四半期ごとに実施する統計調査であり、全国の企業動向を的確に把握し、金融政策の適切な運営に資することを目的としている。 |
4. | 日銀短観で公表される「業況判断DI」は、回答時点の業況とその3ヵ月後の業況予測について、「良い」と回答した企業の社数構成比から「悪い」と回答した企業の社数構成比を差し引いて算出される。 |
正解:1 | |
1. | 景気動向指数には、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測ることを目的とするコンポジット・インデックス(CI)と、景気拡張の動きの各経済部門への波及度合いを測定することを主な目的するディフュージョン・インデックス(DI)があり、CIを中心に公表されます。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | 正しい記述です。 |
【問22】
わが国における上場投資信託(ETF)および上場不動産投資信託(J-REIT)の特徴に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | ETFは、非上場の投資信託と異なり、運用管理費用(信託報酬)は発生しない。 |
2. | ETFを市場で売却する際には、信託財産留保額はかからない。 |
3. | J-REITの分配金は、所得税の配当控除の対象となる。 |
4. | J-REITは、一般に、信託財産の解約ができるオープン・エンド型の投資信託として設定されている。 |
正解:2 | |
1. | ETFは投資信託ですから、信託報酬が掛かります。 |
2. | 正しい記述です。ETFを市場で売却する際には、信託財産を現金化するわけではありません(受益権が移動するだけです)から、信託財産留保額が徴収されることはありません。 |
3. | J-REITの分配金は、配当控除の対象外です(J-REITは法人税を払っておらず、二重課税の問題がないため)。 |
4. | J-REITが投資対象とする不動産は流動性が低いため、J-REITは、基準価額で解約することができるオープンエンド型ではなく、クローズドエンド型の投資信託として設定されます。 |
【問23】
表面利率が0.5%で、償還までの残存期間が8年の固定利付債券を額面100円当たり101円で購入し、購入から5年後に額面100円当たり100円で売却した場合の所有期間利回り(単利・年率)として、最も適切なものはどれか。なお、手数料、経過利子、税金等については考慮しないものとし、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入するものとする。
1. | 0.17% |
2. | 0.30% |
3. | 0.37% |
4. | 0.50% |
正解:2 | |
所有期間利回り(%)={表面利率+(売却価格-購入価格)÷保有年数}÷購入価格×100より、 {0.5+(100-101)÷5}÷101×100=0.0029702…%≒0.30%となります。 |
【問24】
東京証券取引所の市場区分等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | スタンダード市場は、「多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場」である。 |
2. | プライム市場は、「高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場」である。 |
3. | スタンダード市場の上場会社がプライム市場へ市場区分の変更をするためには、プライム市場の新規上場基準と同様の基準に基づく審査を受ける必要がある。 |
4. | 東証株価指数(TOPIX)は、プライム市場、スタンダード市場およびグロース市場の全銘柄を対象として算出されている。 |
正解:3 | |
1. | 問題文は、プライム市場の説明です。なお、スタンダード市場のコンセプトは、公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場とされています。 |
2. | 問題文は、グロース市場の説明です。 |
3. | 正しい記述です。 |
4. | TOPIXは、一定の流通株式時価総額の要件を満たした銘柄を対象として算出されています。 |
【問25】
下記<X社のデータ>に基づき算出される株式の投資指標に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
<X社のデータ> | |
株価 | 18,000円 |
当期純利益 | 3,000億円 |
純資産(自己資本) | 1兆5,000億円 |
配当金総額 | 540億円 |
発行済株式数 | 3億株 |
1. | ROEは、20.0%である。 |
2. | PERは、18倍である。 |
3. | PBRは、3.6倍である。 |
4. | 配当利回りは、1.2%である。 |
正解:4 | |
1. | ROE=当期純利益÷自己資本=3,000億円÷1兆5,000億円=0.2=20%です。 |
2. | 1株あたり当期純利益=3,000億円÷3億株=1,000円です。 よって、PER=株価÷1株当たり当期純利益=18,000円÷1,000円=18倍となります。 |
3. | 1株あたり純資産=1兆5,000億円÷3億株=5,000円です。 よって、PBR=株価÷1株当たり当期純利益=18,000円÷5,000円=3.6倍となります。 |
4. | 1株あたり配当金=540億円÷3億株=180円です。 よって、配当利回り(%)=1株当たり年間配当金÷株価×100=180円÷18,000円×100=1%となります。 |
【問26】
以下の<条件>で、円貨を米ドルに交換して米ドル建て定期預金に10,000米ドルを預け入れ、満期時に米ドルを円貨に交換して受け取る場合における円ベースでの利回り(単利・年率)として、最も適切なものはどれか。なお、税金については考慮しないものとし、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入するものとする。
<条件> | |
・ | 預入期間 1年 |
・ | 預金金利 3.00%(年率) |
・ | 為替予約なし |
・ | 為替レート(米ドル/円) |
TTS | TTB | |
預入時 | 130.00円 | 129.00円 |
満期時 | 135.00円 | 134.00円 |
1. | 3.17% |
2. | 4.79% |
3. | 6.17% |
4. | 7.79% |
正解:3 | |
円ベースの投資額=10,000米ドル×130円/米ドル=1,300,000円。 満期時の外貨ベースの元利合計額=10,000米ドル×(1+0.03)=10,300米ドル。 満期時の円ベースの受取額=10,300米ドル×134円/米ドル=1,380,200円。 よって、円ベースの利益=1,380,200円-1,300,000=80,200円となります。 利回りは、1年あたりのリターンを投資金額で割って求めますから、1年あたりのリターン=80,200円より、 円ベースの利回り80,200円÷1,300,000円=0.0616923…≒6.17%となります。 |
【問27】
金融派生商品に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | クーポンスワップは、異なる通貨間で将来の金利および元本を交換する通貨スワップである。 |
2. | 先物取引を利用したヘッジ取引には、将来の価格上昇リスク等を回避または軽減する売りヘッジと、将来の価格下落リスク等を回避または軽減する買いヘッジがある。 |
3. | オプション取引において、コール・オプションの買い手は「権利行使価格で買う権利」を放棄することができるが、プット・オプションの買い手は「権利行使価格で売る権利」を放棄することができない。 |
4. | オプション取引において、コール・オプションの売り手の最大利益とプット・オプションの売り手の最大利益は、いずれもプレミアム(オプション料)の額となる。 |
正解:4 | |
1. | クーポンスワップは、クーポン(利子)をスワップ(交換)する取引です。つまり、金利だけを交換するスワップ取引であり、元本は交換しません。 |
2. | 価格上昇リスクなどに備えるのは買いヘッジ、価格下落リスクなどに備えるのは売りヘッジです。 |
3. | コール・プットを問わず、買い手は権利を放棄でき、売り手は権利行使に応じる義務を負います。 |
4. | 正しい記述です。コール・プットを問わず、売り手の利益(買い手の損失)はプレミアムに限定されます。 |
【問28】
ポートフォリオ理論に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | ポートフォリオのリスクは、組み入れた各資産のリスクを組入比率で加重平均した値以下となる。 |
2. | ポートフォリオのリスクのうち、分散投資によって消去できないリスクをアンシステマティック・リスクという。 |
3. | ポートフォリオの期待収益率は、組み入れた各資産の期待収益率を組入比率で加重平均した値よりも大きくなる。 |
4. | 国債や社債のうち、発行時に将来の利息支払額が確定する固定利付債券は、すべて安全資産(無リスク資産)に分類される。 |
正解:1 | |
1. | 正しい記述です。ポートフォリオのリスクは、全ての資産間の相関係数が1である場合、組み入れた各資産のリスクを組入比率で加重平均した値となりますが、相関係数が1でない資産の組み合わせがある場合、ポートフォリオ効果(リスクの軽減効果)が働き、組み入れた各資産のリスクを組入比率で加重平均した値よりも小さくなります。 |
2. | ポートフォリオのリスクは、分散投資によって軽減することができないシステマティックリスク(市場リスク:市場そのものがもつリスク)と、分散投資によって軽減することができるアンシステマティックリスク(非市場リスク:投資対象がもつリスク)に分けることができます。 |
3. | ポートフォリオの期待収益率は、組み入れ銘柄の期待収益率の加重平均と等しいです。 |
4. | 社債はリスク資産です。 |
【問29】
上場株式等の譲渡および配当等(一定の大口株主等が受けるものを除く)に係る所得税の課税等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、特定口座のうち、源泉徴収がされない口座を簡易申告口座といい、源泉徴収がされる口座を源泉徴収選択口座という。
1. | 上場株式等の配当等について、総合課税を選択して確定申告をした場合、上場株式等に係る譲渡損失の金額と損益通算することができる。 |
2. | 上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算してもなお控除しきれない上場株式等に係る譲渡損失の金額は、確定申告をすることにより、翌年以後3年間にわたって繰り越すことができる。 |
3. | 簡易申告口座では、源泉徴収選択口座と異なり、その年中における口座内の取引内容が記載された「特定口座年間取引報告書」が作成されないため、投資家自身でその年中の上場株式等に係る譲渡損益および配当等の金額を計算する必要がある。 |
4. | 年末調整の対象となる給与所得者が、医療費控除の適用を受けるために確定申告をする場合、源泉徴収選択口座における上場株式等に係る譲渡所得等および配当所得等についても申告しなければならない。 |
正解:2 | |
1. | 上場株式等に係る譲渡損失の金額と損益通算することができるのは、申告分離課税を選択した配当所得や利子所得です。 |
2. | 正しい記述です。なお、複数年にわたって繰り越す場合、毎年確定申告が必要です。 |
3. | 簡易申告口座(源泉徴収なしの特定口座)も特定口座ですから、投資家が自身で損益を計算する必要はありません(特定口座年間取引報告書が発行されるので、これによって確定申告をします)。 |
4. | 医療費控除の適用を受けるなどの理由で確定申告をする場合であっても、源泉徴収選択口座(源泉徴収ありの特定口座)に係る取引について確定申告をする必要はありません。源泉徴収選択口座は、当該口座に係る取引について確定申告をしない限り、そこで生じた利益や損失が無かったものとされます。 |
【問30】
わが国における個人による金融商品取引に係るセーフティネットに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 外国銀行の在日支店に預け入れた当座預金は預金保険制度による保護の対象とならないが、日本国内に本店のある銀行の海外支店に預け入れた当座預金は預金保険制度による保護の対象となる。 |
2. | 金融機関の破綻時において、同一の預金者が当該金融機関に複数の預金口座を有している場合、普通預金や定期預金などの一般預金等については、原則として、1口座ごとに元本1,000万円までとその利息等が、預金保険制度による保護の対象となる。 |
3. | 日本国内で事業を行う生命保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構による補償の対象となる保険契約については、高予定利率契約を除き、原則として、破綻時点の責任準備金等の90%まで補償される。 |
4. | 証券会社が破綻し、分別管理が適切に行われていなかったために、一般顧客の資産の一部または全部が返還されない事態が生じた場合、日本投資者保護基金は、補償対象債権に係る顧客資産について、その金額の多寡にかかわらず、全額を補償する。 |
正解:3 | |
1. | 外国銀行の在日支店に預け入れた預金と、日本国内に本店のある銀行の海外支店に預け入れた預金は、いずれも預金保険制度による保護の対象とはなりません。 |
2. | 預金保険制度による保護の対象となる金額は、普通預金や定期預金などの一般預金等については、原則として、預金者1人あたり1,000万円までとその利息等です(複数の口座がある場合、合算されます) |
3. | 正しい記述です。生命保険契約者保護機構によって補償される金額は、高予定利率契約を除いて、原則として、破綻時点の責任準備金等の90%までとされています。 |
4. | 投資者保護基金によって補償される金額は、投資家1人あたり1,000万円までです。なお、これを超える損害額については、債権者として破綻した証券会社に対して請求することとなります。 |
スポンサーリンク
スポンサーリンク
<戻る | ホーム | 進む> |