お金の寺子屋

FP2級実技(生保)解説-2023年5月・問10~15

【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
会社員のAさんは、妻Bさん、長男Cさんおよび長女Dさんとの4人家族である。Aさんは、数年前から個人で不動産賃貸業を営んでおり、白色申告により確定申告を行っている。また、下記の<Aさんの2022年分の収入等に関する資料>において、不動産所得の金額の前の「▲」は赤字であることを表している。

<Aさんとその家族に関する資料>
Aさん(55歳) 会社員
妻Bさん(51歳) 専業主婦。2022年中の収入はない。
長男Cさん(24歳) 大学院生。2022年中の収入はない。
長女Dさん(20歳) 大学生。2022年中に、アルバイトとして給与収入80万円を得ている。

<Aさんの2022年分の収入等に関する資料>
[給与収入の金額]
800万円

[不動産所得の金額]
▲40万円(白色申告)

損失の金額40万円のうち、当該不動産所得を生ずべき土地の取得に係る負債の利子20万円を含む。

[一時払変額個人年金保険(10年確定年金)の解約返戻金]
契約年月:2013年8月
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
解約返戻金額:600万円
正味払込保険料:500万円

<Aさんが2022年中に支払った生命保険の保険料に関する資料>
保険の種類 終身介護保険(死亡保障なし)
契約年月 2022年5月
契約者(=保険料負担者) Aさん
被保険者 Aさん
年間正味払込保険料 93,000円(全額が介護医療保険料控除の対象)
妻Bさん、長男Cさんおよび長女Dさんは、Aさんと同居し、生計を一にしている。
Aさんとその家族は、いずれも障害者および特別障害者には該当しない。
Aさんとその家族の年齢は、いずれも2022年12月31日現在のものである。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問10】
Aさんの2022年分の所得税の課税に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、当該不動産所得を生ずべき土地の取得に係る負債の利子20万円に相当する部分の金額は、他の所得の金額と損益通算することはできません」
「Aさんが受け取った一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、一時所得の収入金額として総合課税の対象になります」
「Aさんが2022年分の所得税の確定申告をするときに、納税地の所轄税務署長に青色申告承認申請書を提出すれば、2022年分の総所得金額から、青色申告特別控除額を控除することができます」
正解:○、○、×
正しい記述です。
正しい記述です。一時払変額個人年金保険の解約返戻金は、契約から5年を超えて解約した場合、一時所得となります。
青色申告承認申請書の提出期限は、原則として、青色申告書による申告をしようとする年の3月15日までですから、2022年分の所得税の確定申告をする時に青色申告承認申請書を提出すれば、2023年分の総所得金額から、青色申告特別控除額を控除することができます。
【問11】
Aさんの2022年分の所得税における所得控除に関する以下の文章の空欄①~③に入る最も適切な数値を、下記の〈数値群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「Aさんの合計所得金額は( ① )万円以下であるため、Aさんは38万円の配偶者控除の適用を受けることができます。仮に、Aさんの合計所得金額が( ① )万円を超えると、配偶者控除の額は段階的に縮小し、合計所得金額が( ② )万円を超えると、適用を受けることができません」
「Aさんが適用を受けることができる扶養控除の額は、( ③ )万円です」
<数値群>
イ.38 ロ.63 ハ.76 
ニ.101 ホ.900 へ.950 
ト.1,000 チ.1,500 リ.2,000
正解:ホ、ト、ニ
最大額の配偶者控除(一般の控除対象配偶者の場合38万円)の適用を受けるための納税者の合計所得金額の要件は、1,000万円以下であることです。
配偶者控除の適用を受けるための納税者の合計所得金額の要件は、1,000万円以下であることです。
長男Cさんと長女Dさんは、ともに合計所得金額が48万円以下である16歳以上の扶養親族なので、扶養控除の対象となります。
23歳以上70歳未満の長男Cさんは、一般の控除対象扶養親族として38万円の控除対象となり、19歳以上23歳未満の長女Dさんは、特定扶養親族として63万円の控除対象となります。
よって、扶養控除の額は、38万円+63万円=101万円となります。
【問12】
Aさんの2022年分の所得税の算出税額を計算した下記の表の空欄①~④に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)総所得金額 ( ① )円
社会保険料控除 □□□円
生命保険料控除 ( ② )円
地震保険料控除 □□□円
配偶者控除 □□□円
扶養控除 □□□円
基礎控除 ( ③ )円
(b)所得控除の額の合計額 □□□円
(c)課税総所得金額((a)-(b)) 3,350,000円
(d)算出税額((c)に対する所得税額) ( ④ )円
<資料>給与所得控除額
給与収入金額 給与所得控除額
180万円以下 収入金額×40%-10万円 
(最低55万円)
180万円超
360万円以下
収入金額×30%+8万円
360万円超
660万円以下
収入金額×20%+44万円
660万円超
850万円以下
収入金額×10%+110万円
850万円超 195万円
<資料>所得税の速算表
課税される
所得金額
税率 控除額
195万円未満 5%
195万円以上
330万円未満
10% 97,500円
330万円以上
695万円未満
20% 427,500円
695万円以上
900万円未満
23% 636,000円
900万円以上
1,800万円未満
33% 1,536,000円
1,800万円以上
4,000万円未満
40% 2,796,000円
4,000万円以上 45% 4,796,000円
課税される所得金額の1,000円未満の端数は切捨て
正解:6,150,000、40,000、480,000、242,500
給与所得=800万円-(800万円×10%+110万円)=610万円で、全額総所得金額に算入されます。
不動産所得の金額▲40万円のうち、土地の取得のための借入金の利子(20万円)を除いた▲20万円が損益通算の対象となり、一時所得よりも先に事業所得と通算します。
一時所得の額は、600万円-500万円-50万円=50万円で、2分の1相当額を総所得金額に算入します。
したがって、総所得金額は、610万円-20万円+50万円×1/2=615万円となります。
介護医療保険料控除の額は、年間の支払保険料が8万円以上である場合、4万円となります。
合計所得金額が2,400万円以下の人は、48万円の基礎控除を受けることができます。
3,350,000円×20%-427,500円=242,500円です。

【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。

《設例》
Aさん(68歳)は、非上場企業のX株式会社(以下、「X社」という)の創業社長である。Aさんは、創業30周年を迎える2年後をめどに、X社の専務取締役である長男Cさん(40歳)に社長の座を譲りたいと思っている。Aさんは、X社株式の移転方法として、『非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例』の活用を検討している。
Aさんの推定相続人は、妻Bさん(68歳)、長男Cさんおよび長女Dさん(36歳)の3人である。長女Dさんは、結婚しており、他県で生活している。

<X社の概要>
[業種]
電気機械器具製造業

[資本金等の額]
9,000万円
(発行済株式総数180,000株、すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)

[株主構成]
Aさん:150,000株
妻Bさん:15,000株
長男Cさん:15,000株

[株式の譲渡制限]
あり

[その他]
年商14億円/経常利益7,000万円/従業員数90人

X社の財産評価基本通達上の規模区分は「大会社」であり、特定の評価会社には該当しない。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)>
現預金 7,000万円(役員退職金は考慮していない)
X社株式 3億3,000万円
自宅敷地(360㎡) 3,000万円(注)
自宅建物 1,000万円
X社本社敷地(400㎡) 3,000万円(注)
X社本社建物 3,000万円
合計 5億円
(注) 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用後の相続税評価額
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問13】
現時点(2023年5月28日)において、Aさんの相続が開始した場合における相続税の総額を試算した下記の表の空欄①~③に入る最も適切な数値を求めなさい。なお、相続税の課税価格の合計額は5億円とし、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。

(a)相続税の課税価格の合計額 5億円
(b)遺産に係る基礎控除額 ( ① )万円
課税遺産総額(a-b) □□□万円
相続税の総額の基となる税額
妻Bさん ( ② )万円
長男Cさん □□□万円
長女Dさん □□□万円
(c)相続税の総額 ( ③ )万円
<資料>相続税の速算表
法定相続分に
応ずる取得金額
税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超
3,000万円以下
15% 50万円
3,000万円超
5,000万円以下
20% 200万円
5,000万円超
10,000万円以下
30% 700万円
10,000万円超
20,000万円以下
40% 1,700万円
20,000万円超
30,000万円以下
45% 2,700万円
30,000万円超
60,000万円以下
50% 4,200万円
60,000万円超 55% 7,200万円
正解:4,800、7,470、13,110
相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の式で計算されます。
よって、3,000万円+600万円×3=4,800万円となります。
課税遺産総額=5億円-4,800万円=4億5,200万円です。
よって、妻Bさんの法定相続分に対応する取得金額は、4億5,200万円×1/2=2億2,600万円となります。
これに対応する相続税額は、2億2,600万円×45%-2,700万円=7,470万円です。
長男Cさんと長女Dさんの法定相続分に対応する取得金額は、それぞれ、4億5,200万円×1/4=1億1,300万円となります。
これに対応する相続税額は、1億1,300万円×40%-1,700万円=2,820万円です。
したがって、相続税の総額は、7,470万円+2,820万円+2,820万円=1億3,110万円となります。
【問14】
X社株式に関する以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な語句を、下記の〈語句群〉のなかから選び、その記号を解答用紙に記入しなさい。

「X社株式の価額の1つである類似業種比準価額は、類似業種の株価ならびに1株当たりの配当金額、1株当たりの( ① )、1株当たりの純資産価額の3つの比準要素を基に計算されます。Aさんへの役員退職金の支給は、1株当たりの( ① )および純資産価額を引き下げるため、X社の株価は下がります」
「『非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例』の適用を受けるためには、特例承継計画を策定して2024年3月31日までに( ② )に提出し、その確認を受ける必要があります。長男CさんがAさんからX社株式の贈与を受け、本特例の適用を受けた場合、原則として、Aさんの死亡時まで本特例の対象となるX社株式の贈与に係る贈与税額の( ③ )の納税が猶予されます。Aさんが死亡した場合、本特例の適用を受けたX社株式は、( ④ )の価額により相続税の課税価格に算入されますが、所定の要件を満たせば、『非上場株式等の特例贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予及び免除の特例』の適用を受けることができます」
<語句群>
イ.売上金額 ロ.資本金等の額 ハ.利益金額 
ニ.内閣総理大臣 ホ.都道府県知事 

ヘ.所轄税務署長 ト.50%相当額 
チ.80%相当額 リ.全額 ヌ.贈与時 ル.相続時
正解:ハ、ホ、リ、ヌ
類似業種比準価額の比準要素は、配当・利益・純資産の3つです。
特例承継計画の提出先は、都道府県知事です。
非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例の適用を受けた場合、贈与税額の100%の納税が猶予されます。
非上場株式等についての贈与税の納税猶予及び免除の特例の適用を受けて贈与された株式は、相続税の計算時に、贈与時の価額で相続税の課税価格に算入されます。
【問15】
Aさんの相続に関する次の記述①~③について、適切なものには○印を、不適切なものには×印を解答用紙に記入しなさい。

「円滑な遺産分割のための手段として遺言の作成を検討してください。公正証書遺言を作成する場合、後継者の長男Cさんが証人になることが望ましいでしょう」
「遺言により、相続財産の大半を妻Bさんおよび長男Cさんが相続した場合、長女Dさんの遺留分を侵害するおそれがあります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額を7億円とした場合、長女Dさんの遺留分の額は1億7,500万円となります」
「妻Bさんが自宅の敷地および建物を相続により取得した場合、相続税の申告期限までに自宅の敷地を売却しても、自宅の敷地は特定居住用宅地等として『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けることができます」
正解:×、×、○
推定相続人は、公正証書遺言の証人になることができません。
相続人が直系尊属のみである場合を除いて、具体的遺留分の額は、「遺留分算定の基礎となる財産の額×1/2×法定相続分」の算式により計算されます。
よって、長女Dさんの遺留分の額は、7億円×1/2×1/4=8,750万円となります。
正しい記述です。被相続人の配偶者が、被相続人の自宅の敷地について小規模宅地の特例の適用を受けるにあたり、継続保有や継続居住などの要件はありません。

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