FP3級実技(個人)解説-2023年5月・後半
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(53歳)は、13年前に父親の相続により取得した自宅(建物およびその敷地である甲土地)に居住している。Aさんは、自宅の設備が古くなってきたことや老後の生活のことも考え、自宅を売却し、駅前のマンションを購入して転居することを検討している。
先日、Aさんが知り合いの不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地のある駅周辺は再開発が進んでおり、居住用建物について相応の需要が見込まれる。自宅を売却するのもよいと思うが、甲土地で賃貸マンション経営をすることも検討してみてはどうか」とアドバイスを受けた。
Aさん(53歳)は、13年前に父親の相続により取得した自宅(建物およびその敷地である甲土地)に居住している。Aさんは、自宅の設備が古くなってきたことや老後の生活のことも考え、自宅を売却し、駅前のマンションを購入して転居することを検討している。
先日、Aさんが知り合いの不動産会社の社長に相談したところ、「甲土地のある駅周辺は再開発が進んでおり、居住用建物について相応の需要が見込まれる。自宅を売却するのもよいと思うが、甲土地で賃貸マンション経営をすることも検討してみてはどうか」とアドバイスを受けた。
<甲土地の概要>
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地に賃貸マンション(耐火建築物)を建築する場合の①建蔽率の上限となる建築面積と②容積率の上限となる延べ面積の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | ①360㎡ ②960㎡ |
2. | ①400㎡ ②960㎡ |
3. | ①400㎡ ②1,200㎡ |
正解:3(4点)
① | 準防火地域に準耐火建築物を建てる場合には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。 また、特定行政庁が指定する角地に建物を建てる場合には、建ぺい率の上限が10%緩和されます。 よって、建蔽率の上限は、80%+10%+10%=100%となります。 したがって、建ぺい率の上限となる建築面積は、400㎡×100%=400㎡です。 |
② | 前面道路の幅員が12m未満である場合、容積率の上限は、指定容積率と前面道路の幅員によって定まる容積率のうち、いずれか小さい方となります。 前面道路の幅員によって定まる容積率=6×6/10=3.6=360%ですから、容積率の上限は、300%となります。 よって、容積率の上限となる延床面積は、400㎡×300%=1,200㎡です。 |
【問11】
自宅(建物およびその敷地である甲土地)の譲渡に関する以下の文章の空欄①~③に入る語句の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
「Aさんが駅前のマンションに転居し、その後、居住していない現在の自宅を譲渡した場合に、Aさんが『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例』の適用を受けるためには、Aさんが居住しなくなった日から( ① )を経過する日の属する年の12月31日までに現在の自宅を譲渡すること等の要件を満たす必要があります。また、『居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例』(軽減税率の特例)の適用を受ける場合、現在の自宅の譲渡に係る課税長期譲渡所得金額のうち、( ② )以下の部分については、所得税および復興特別所得税( ③ )、住民税4%の税率で課税されます」
1. | ①3年 ②6,000万円 ③10.21% |
2. | ①3年 ②1億円 ③15.315% |
3. | ①5年 ②1億円 ③10.21% |
正解:1(3点)
① | 『居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例』の適用を受けるためには、Aさんが居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに現在の自宅を譲渡すること等の要件を満たす必要があります。 |
② | 軽減税率の特例は、譲渡所得のうち6,000万円以下の部分に対して適用されます。 |
③ | 軽減税率の特例を受けると、適用される所得税(復興特別所得税を含む)の税率が、15.315%から10.21%に軽減されます。 |
【問12】
自己建設方式による甲土地の有効活用に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 「自己建設方式は、Aさんがマンション等の建築資金の調達や建築工事の発注、建物の管理・運営を自ら行う方式です。Aさん自らが貸主となって所有するマンションの賃貸を行うためには、あらかじめ宅地建物取引業の免許を取得する必要があります」 |
2. | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、相続税の課税価格の計算上、甲土地は貸家建付地として評価されます」 |
3. | 「Aさんが甲土地に賃貸マンションを建築した場合、甲土地に係る固定資産税の課税標準を、住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の2分の1の額とする特例の適用を受けることができます」 |
正解:2(3点)
1) | 自らが貸主となって所有する不動産の賃貸を行うためには、宅地建物取引業の免許を取得する必要はありません。 |
2) | 正しい記述です。被相続人が所有する被相続人の貸家が建っている宅地は、相続税の計算上、貸家建付地として評価されます。 |
3) | 固定資産税の小規模住宅用地の特例は、居住用不動産が建っている土地の固定資産税の計算において、住宅1戸につき200㎡までの部分について課税標準を6分の1にする特例です。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
《設例》
Aさん(74歳)は、妻Bさん(70歳)、長女Cさん(45歳)との3人暮らしである。二女Dさん(40歳)は夫と子の3人で他県の持家に住んでいる。
Aさんは、所有財産のうち、妻Bさんには自宅の敷地と建物を相続させ、普段から身の回りの世話をしてくれる長女Cさんには賃貸アパートの敷地と建物を相続させたいと考えている。長女Cさんと二女Dさんの関係は悪くないものの、Aさんは自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと不安を感じている。
Aさん(74歳)は、妻Bさん(70歳)、長女Cさん(45歳)との3人暮らしである。二女Dさん(40歳)は夫と子の3人で他県の持家に住んでいる。
Aさんは、所有財産のうち、妻Bさんには自宅の敷地と建物を相続させ、普段から身の回りの世話をしてくれる長女Cさんには賃貸アパートの敷地と建物を相続させたいと考えている。長女Cさんと二女Dさんの関係は悪くないものの、Aさんは自身の相続が起こった際に遺産分割で争いが生じるのではないかと不安を感じている。
<Aさんの親族関係図>
<Aさんの推定相続人>
[妻Bさん]
Aさんおよび長女Cさんと同居している。
[長女Cさん]
会社員。Aさん夫妻と同居している。
[二女Dさん]
専業主婦。夫と子の3人で他県の持家に住んでいる。
<Aさんの主な所有財産(相続税評価額)> | ||
現預金 | : | 5,000万円 |
自宅敷地(200㎡) | : | 6,000万円(注) |
自宅建物 | : | 1,000万円 |
賃貸アパート敷地(250㎡) | : | 7,000万円(注) |
賃貸アパート建物(築10年・6室) | : | 2,000万円 |
合計 | : | 2億1,000万円 |
(注) | 「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」適用前の相続税評価額 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
遺言に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「遺産分割をめぐる争いを防ぐ手段として、遺言書の作成をお勧めします。自筆証書遺言は、遺言者が、その全文、日付および氏名を自書し、これに押印して作成するものです。財産目録については、パソコン等で作成することが認められています」 |
2. | 「自筆証書遺言は、所定の手続により、法務局(遺言書保管所)に保管することができます」 |
3. | 「公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授し、公証人がこれを筆記して作成します。その作成時、推定相続人である妻Bさんや長女Cさんを証人にすることができます」 |
正解:3(3点)
1) | 正しい記述です。 |
2) | 正しい記述です。 |
3) | 推定相続人は、公正証書遺言の証人にはなれません。 |
【問14】
仮に、Aさんの相続が現時点(2023年5月28日)で開始し、Aさんの相続に係る課税遺産総額(課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額)が1億円であった場合の相続税の総額は、次のうちどれか。
1. | 1,450万円 |
2. | 1,695万円 |
3. | 2,400万円 |
正解:1(4点)
各相続人の法定相続分は、妻Bさんが1/2、長女Cさんと二女Dさんがそれぞれ1/4です。
よって、妻Bさんの法定相続分に応ずる取得金額は、1億円×1/2=5,000万円、長女Cさんと二女Dさんの法定相続分に応ずる取得金額は、それぞれ1億円×1/4=2,500万円となります。
したがって、妻Bさんの法定相続分対応する相続税額は、5,000万円×20%-200万円=800万円となり、長女Cさんと二女Dさんの法定相続分対応する相続税額は、それぞれ2,500万円×15%-50万円=325万円となります。
ゆえに、相続税の総額は、800万円+325万円+325万円=1,450万円となります。
【問15】
現時点(2023年5月28日)において、Aさんの相続が開始した場合の相続税等に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「妻Bさんが自宅の敷地(相続税評価額6,000万円)を相続により取得し、当該敷地の全部について、『小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例』の適用を受けた場合、減額される金額は4,800万円となります」 |
2. | 「『配偶者に対する相続税額の軽減』の適用を受けた場合、妻Bさんが相続により取得した財産の金額が、配偶者の法定相続分相当額と1億6,000万円とのいずれか多い金額を超えない限り、妻Bさんが納付すべき相続税額は算出されません」 |
3. | 「遺言により妻Bさんおよび長女Cさんが相続財産の大半を取得した場合、二女Dさんの遺留分を侵害する可能性があります。仮に、遺留分を算定するための財産の価額が2億円である場合、二女Dさんの遺留分の金額は5,000万円となります」 |
正解:3(3点)
1) | 正しい記述です。特定居住用宅地等は、330㎡まで、相続税評価額が80%減額されます。 |
2) | 正しい記述です。 |
3) | 具体的遺留分は、相続人が直系尊属のみである場合を除いて、遺留分算定の基礎となる財産の価額の2分の1相当額に法定相続分を掛けた金額です。 よって、二女Dさんの具体的遺留分は、2億円×1/2×1/4=2,500万円となります。 |
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