FP3級実技(個人)解説-2020年9月・後半
【問10】~【問12】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
Aさん(61歳)は、3年前に父親の相続によりM市内にある甲土地を取得している。甲土地は父親の存命中から月極駐車場として賃貸しているが、その収益率は低い。
Aさんは、先日、友人でもある地元の不動産会社の社長から「甲土地は最寄駅から近いため、大手ドラッグストアのX社が新規店舗の出店を考えている。X社は建設協力金方式を望んでいるが、契約形態は事業用定期借地権方式でもよいと言っている」との提案を受けた。Aさんは、甲土地の有効活用について、前向きに検討したいと思っている。
Aさん(61歳)は、3年前に父親の相続によりM市内にある甲土地を取得している。甲土地は父親の存命中から月極駐車場として賃貸しているが、その収益率は低い。
Aさんは、先日、友人でもある地元の不動産会社の社長から「甲土地は最寄駅から近いため、大手ドラッグストアのX社が新規店舗の出店を考えている。X社は建設協力金方式を望んでいるが、契約形態は事業用定期借地権方式でもよいと言っている」との提案を受けた。Aさんは、甲土地の有効活用について、前向きに検討したいと思っている。
<甲土地の概要>
・ | 甲土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地である。 |
・ | 指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。 |
・ | 特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。 |
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問10】
甲土地に耐火建築物を建築する場合の①建蔽率の上限となる建築面積と②容積率の上限となる延べ面積の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。
1. | ①280㎡ ②1,280㎡ |
2. | ①280㎡ ②1,200㎡ |
3. | ①320㎡ ②1,200㎡ |
正解:3(4点)
① | 準防火地域に耐火建築物を建てる場合、建蔽率の上限が10%緩和されます。また、特定行政庁が指定する角地に建築物を建てる場合にも、建蔽率が10%緩和されます。 よって、建蔽率の上限=60%+10%+10%=80%となり、建蔽率の上限となる建築面積は、400㎡×80%=320㎡となります。 |
② | 前面道路の幅員によって定まる容積率の上限=8×4/10=3.2=320%>指定容積率300%より、容積率の上限は300%になります。 よって、容積率の上限となる延べ面積は、400㎡×300%=1,200㎡となります。 |
【問11】
建設協力金方式に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「建設協力金方式とは、AさんがX社から建設資金を借り受けて、X社の要望に沿った店舗を建設し、その建物をX社に賃貸する手法です。借主であるX社のノウハウを利用して計画を実行できる点はメリットですが、X社が撤退するリスクなどを考えておく必要があります」 |
2. | 「建設協力金方式により、Aさんが店舗をX社に賃貸した後にAさんの相続が開始した場合、相続税の課税価格の計算上、店舗は貸家として評価され、甲土地は貸家建付地として評価されます」 |
3. | 「建設協力金方式により建設した店舗の賃貸借契約は、契約の更新がありません。賃貸借契約では、借主であるX社が賃貸借契約満了後に店舗を撤去し、貸主であるAさんに甲土地を更地で返還することが保証されています」 |
正解:3(3点)
1. | 正しい記述です。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 建設協力金方式により建設した店舗の賃貸借契約は、契約の更新がないとは限りません。 |
【問12】
事業用定期借地権方式に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「事業用定期借地権方式とは、X社が甲土地を契約で一定期間賃借し、X社が建物を建設する手法です。土地を手放さずに安定した地代収入を得ることができること、期間満了後は土地が更地となって返還される点などがメリットとして挙げられます」 |
2. | 「事業用定期借地権方式により、Aさんが甲土地をX社に賃貸した後にAさんの相続が開始した場合、相続税の課税価格の計算上、甲土地は自用地として評価されますので、相続税額の軽減効果はありません」 |
3. | 「事業用定期借地権等は、存続期間が10年以上30年未満の事業用借地権と30年以上50年未満の事業用定期借地権に区別されます。設定契約は、公正証書により作成しなければなりません」 |
正解:2(3点)
1. | 正しい記述です。 |
2. | 事業用定期借地権が設定された土地の地主が死亡した場合、相続税の計算上、当該土地は、貸宅地として評価されます。 |
3. | 正しい記述です。 |
【問13】~【問15】は、以下の資料を元に解答してください。
<設例>
個人で不動産賃貸業を営むAさん(70歳)は、K市内の自宅で妻Bさん(68歳)との2人暮らしである。
Aさんには、2人の子がいる。民間企業に勤務する長男Cさん(42歳)は、妻、孫Eさん(10歳)および孫Fさん(8歳)の4人で勤務先の社宅に住んでいる。長男Cさんは、住宅の購入を検討しており、Aさんに資金援助を求めている。長女Dさん(40歳)は、K市内の夫名義の持家に住んでいるが、住宅ローンの返済等で家計に余裕はなく、孫Gさん(15歳)および孫Hさん(12歳)の学費を援助してほしいと期待しているようである。Aさんは、現金の贈与を検討している。
個人で不動産賃貸業を営むAさん(70歳)は、K市内の自宅で妻Bさん(68歳)との2人暮らしである。
Aさんには、2人の子がいる。民間企業に勤務する長男Cさん(42歳)は、妻、孫Eさん(10歳)および孫Fさん(8歳)の4人で勤務先の社宅に住んでいる。長男Cさんは、住宅の購入を検討しており、Aさんに資金援助を求めている。長女Dさん(40歳)は、K市内の夫名義の持家に住んでいるが、住宅ローンの返済等で家計に余裕はなく、孫Gさん(15歳)および孫Hさん(12歳)の学費を援助してほしいと期待しているようである。Aさんは、現金の贈与を検討している。
<Aさんの親族関係図>
※ | 上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。 |
【問13】
「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1. | 「Aさんからの資金援助について、長男Cさんが本特例の適用を受けた場合、2,500万円までの贈与について贈与税は課されませんが、その額を超える部分については、一律20%の税率により贈与税が課されます」 |
2. | 「本特例の適用を受けるためには、長男Cさんの贈与を受けた年分の合計所得金額が2,000万円以下であること、取得する住宅用家屋の床面積が50㎡以上240㎡以下であることなど、所定の要件を満たす必要があります」 |
3. | 「本特例の適用を受けるためには、原則として、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間に、本特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書に所定の書類を添付して、納税地の所轄税務署長に提出する必要があります」 |
正解:1(3点)
1. | 問題文は、相続時精算課税制度の説明になっています。 2020年4月~2021年3月までに、直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受けると、一定要件を満たした良質な住宅については1,500万円、それ以外の住宅については1,000万円まで贈与税が非課税になります。 |
2. | 正しい記述です。 |
3. | 正しい記述です。 |
【問14】
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」(以下、「本制度」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1. | 「本制度の適用を受けた場合、受贈者1人につき1,500万円までは贈与税が非課税となります。ただし、学習塾などの学校等以外の者に対して直接支払われる金銭については500万円が限度となります」 |
2. | 「受贈者であるAさんのお孫さんが22歳到達年度の末日に達すると、教育資金管理契約は終了します。そのときに、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、当該残額は受贈者のその年分の贈与税の課税価格に算入されます」 |
3. | 「贈与者であるAさんが死亡した場合、教育資金管理契約は終了します。そのときに、非課税拠出額から教育資金支出額を控除した残額があるときは、当該残額は受贈者のその年分の贈与税の課税価格に算入されます」 |
正解:1(3点)
1. | 正しい記述です。 |
2. | 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受けた場合、原則として、受贈者が満30歳に達した時点でに未使用となっている残高に対して、贈与税が課税されます。 |
3. | 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例の適用を受けた後、贈与者が死亡した場合、課税関係は生じません(生前贈与加算の対象にもなりません)。 |
【問15】
仮に、長男Cさんが暦年課税(各種非課税制度の適用はない)により、2020年中にAさんから現金800万円の贈与を受けた場合の贈与税額は、次のうちどれか。
<資料>贈与税の速算表(一部抜粋) | ||
[特例贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 400万円以下 |
15% | 10万円 |
400万円超 600万円以下 |
20% | 30万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
30% | 900万円 |
[一般贈与財産] | ||
基礎控除後の 課税価格 |
税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | - |
200万円超 300万円以下 |
15% | 10万円 |
300万円超 400万円以下 |
20% | 25万円 |
400万円超 600万円以下 |
30% | 65万円 |
600万円超 1,000万円以下 |
40% | 125万円 |
1. | 117万円 |
2. | 150万円 |
3. | 151万円 |
正解:1(4点)
贈与税の計算上、20歳以上の者が直系尊属から贈与を受けた財産は、特例贈与財産に該当します。
よって、(800万円-110万円)×30%-90万円=117万円となります。
よって、(800万円-110万円)×30%-90万円=117万円となります。
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