お金の寺子屋

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節税を考える

節税という魔法の言葉

 「税金が安くなる」という言葉を聞く機会は、意外と多いと思います。

・住宅ローンを組むと税金が安くなる
・ふるさと納税で税金が安くなる
・イデコやNISAで税金が安くなる
・医療費を確定申告すると税金が安くなる
・孫を養子にすると税金が安くなる

 などなど。

 「節税」と聞くと、何だかやらなきゃ損みたいな気持ちになってしまいますが、今回のコラムは、「節税という魔法の言葉に気をつけましょう」というお話です。
 というのも、節税をやってみたら、思ったほど安くならなかったり、無駄なお金を払ってしまって結局損をしたり、デメリットを知らなくて損をしたり・・・という人は少なくないんです。

 ですから、節税と聞いたら、「どれだけお得になるのかな?」「他に係るお金はないかな?」「どんな事に気をつけなくてはいけないんだろう?」と、疑う気持ちを持ってほしいんです。

 
減税は3種類、節税は2種類

 さて、個人の税金が安くなるというと、一番身近な税金は所得税でしょう。
 ですので、まずは所得税の概要をざっくりと説明したいと思います。

 所得税は、個人の利益に係る税金で、基本的には、税金をかける基準となる金額(利益)に税率をかけて税額を出すという仕組みになっています。
 つまり、利益×税率=所得税額という事です。

 例えば、利益が300万円で税率が10%なら、所得税の額は30万円という事になります。

 ですので、ニュースなんかで「減税」という言葉が出てきたら、これはもう3種類しかなくて、「利益の金額を低くする」「税率を低くする」「税額を直接減らす」のどれかです。
 個人が節税をしようとすると、税率を変えるのはなかなか難しいので、基本的には「利益の金額を低くする」か「税額を直接減らす」かのどちらかになります。

 これは大きな違いで、例えば「10万円節税できる」と言った時、元々の利益が300万円、税率が10%だと、

利益の金額が10万円低くなるなら、
税額=(300万円-10万円)×10%=29万円となり、払う税金は1万円しか安くなりません。

一方、税額を直接減らすなら、
税額=300万円×10%=30万円、ここから10万円を引いて20万円。払う税金は10万円安くなります。

 
軽減額を見積もるのが大事

 気をつけて頂きたいケースの典型が、保険の営業マンに「税金が安くなるので保険に入りましょう」と言われた場合かもしれません。

 例えば、終身保険のような死亡保険に入ると、最高で68,000円安くなります。個人年金保険に入っても最高で68,000円、医療保険に入っても最高で68,000円安くなります。
なので、保険に入ると最高で20万4千円安くなります。

 ただ、残念ながらこれは「税額を直接減らす」話ではなく、「利益の金額を低くする」話です。
 住民税の話も含めているので、計算式は省略しますが、高額所得者の方が税率が高いため節税メリットが大きく、生命保険料控除を最大限まで受けた場合、所得税の税率が10%の人は20,400円、20%の人は32,400円、30%の人は44,400円実際に支払う税金が安くなります。

 ですから、20万4千円という金額の意味を正確に理解しなくてはいけません。

 
総合的な検討が大事

 さて、保険に加入して利益を6万8千円減らすためには、年間の保険料が最低8万円かかります。
 つまり、20万4千円の控除を受けるためには、3種類の保険に入って、年間で保険料を24万円以上払わなくてはいけないという事です。

 僕は、中立的なFPとして様々な方の保険の相談に乗ってきましたが、個人年金保険の保険料が年8万以上、医療保険の保険料が年8万以上というのは、はっきり言って無駄である可能性が非常に高いです。
 個人年金保険と医療保険なんて、入る必要が殆どない保険だと思っていますので。
 あと、死亡保険等の生命保険も、年8万円以上払っている場合、企業の節税でもない限りマズい保険の加入の仕方をしている可能性が高いです。

 数万円の節税をしようと思って、無駄な保険料を十万やら二十万払うのは、どう考えても避けるべきです。
 また、仕事を辞めると控除する利益が無くなりますし、収入が低下すると税率が下がります。
 そんな節税メリットが損なわれるリスクも頭に入れておく必要があります。

 企業の節税も同じで、赤字に転落すると、節税メリットは0です。

 
節税に踊らされない

 節税は、勿論するべきだと思います。
 ただ、保険の節税に関して言えば、節税目的で保険に加入するのは慎重になる必要があります。
 特に個人の場合は、保険での節税など考えずに、合理的な保険の加入をしていたら自然と税金が安くなるというスタンスの方が良いと思います。

 2018年1月時点で、個人向けに節税目的でオススメできる保険商品は、明治安田生命が出している個人年金保険だけです。
 払込期間が5年なので税制適格特約を付ける事はできませんが、一般の生命保険料控除の枠が余っていれば、加入すべきでしょう。
 現在のような予定利率が低い環境では、個人年金保険料控除は、10年以上動かす可能性が低い余裕のお金がある場合に初めて検討に値するものだと思います。

 
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