お金の寺子屋

FP3級実技(保険)解説-2018年5月・問1~9

【問1】~【問3】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
 X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(53歳)は、妻Bさん(50歳)および長男Cさん(19歳)との3人暮らしである。
 Aさんは、昨年4月に長男Cさんが大学に入学し、教育資金に目途がついてきたことを機に、Aさんおよび妻Bさんの老後の年金収入の準備について検討を始めたいと考えるようになった。Aさんは、その前提として、公的年金制度からの老齢給付の金額等を理解しておきたいと思っている。
 そこで、Aさんは、懇意にしているファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。Aさんの家族構成等は、以下のとおりである。

<Aさんの家族構成>

[Aさん]
昭和39年10月9日生まれ
会社員(厚生年金保険・全国健康保険協会管掌健康保険に加入中)
X社が実施している確定給付企業年金の加入者である。

[妻Bさん]
昭和42年12月11日生まれ
Aさんの加入する全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。

[長男Cさん]
平成10年6月21日生まれ

<公的年金加入歴(60歳までの見込み期間を含む)>
妻Bさんは、現在および将来においても、Aさんと同居し、生計維持関係にあるものとする。また、就業の予定はないものとする。
家族全員、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問1】
はじめに、Mさんは、Aさんおよび妻Bさんが原則として65歳から受給することができる老齢基礎年金の年金額を試算した。<設例>の公的年金加入歴に基づいて、Mさんが試算した老齢基礎年金の年金額の計算式の組合せとして、次のうち最も適切なものはどれか。なお、年金額は平成29年度価額に基づいて計算するものとする。
1. Aさん:779,300円×450月/480月 
Bさん:779,300円×392月/480月
2. Aさん:779,300円×450月/480月 
Bさん:779,300円×480月/480月
3. Aさん:779,300円×480月/480月 
Bさん:779,300円×500月/480月
正解: (3点)
老齢基礎年金の金額は、基本的に、779,300円×(国民年金保険料納付月数+厚生年金保険の被保険者期間の月数)/480ヵ月で、779,300円を上限とします(つまり、分数の分子は480ヵ月が上限です)。
【問2】
次に、Mさんは、Aさんに支給される老齢厚生年金について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「老齢厚生年金の支給開始年齢は原則として65歳ですが、昭和39年10月生まれのAさんは、60歳から報酬比例部分のみの特別支給の老齢厚生年金を受け取ることができます」
2. 「仮に、Aさんが65歳になるまで厚生年金保険の被保険者としてX社に勤務した場合、65歳から支給される老齢厚生年金は、65歳到達時における厚生年金保険の被保険者記録を基に計算されます」
3. 「Aさんが65歳以後に受給する老齢厚生年金には、妻Bさんが65歳に達するまでの間、配偶者の加給年金額が加算されます」
正解: (4点)
1. 特別支給の老齢厚生年金は、男性の場合、昭和36年4月1日以前生まれの人に支給されます。
2. 正しい記述です。
3. 正しい記述です。加給年金の主な受給要件は、厚生年金保険の加入期間が20年以上ある事や、配偶者の厚生年金保険の被保険者期間が20年未満である事などです。
この要件を満たした場合、配偶者が65歳になるまで、老齢厚生年金に加給年金が上乗せされます。
【問3】
最後に、Mさんは、老後の年金収入を増やす方法の1つとして、確定拠出年金の個人型年金(以下、「個人型年金」という)について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「Aさんのような確定給付企業年金の加入者で60歳未満の厚生年金保険の被保険者や妻Bさんのような国民年金の第3号被保険者は、個人型年金に加入することができますが、拠出することができる掛金の限度額は加入者の区分に応じて異なります」
2. 「個人型年金の掛金は、その全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となる等、税制上の優遇措置があります」
3. 「個人型年金は、将来の年金受取額が加入者の指図に基づく運用実績により左右される年金制度ですが、年金受取総額は最低保証されています」
正解: (3点)
1. 正しい記述です。個人型の確定拠出年金(iDeCo)は、ほぼ全ての60歳未満の国民が加入する事ができます。
2. 正しい記述です。
3. 確定拠出年金の将来の年金額に最低保証はありません。

【問4】~【問6】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
 会社員のAさん(41歳)は、専業主婦の妻Bさん(36歳)および長男Cさん(6歳)の3人家族である。Aさんは、先日、生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんから生命保険の見直しを勧められた。
 Mさんが提案した生命保険に関する資料等は、以下のとおりである。

<Mさんが提案した生命保険に関する資料>

保険の種類:5年ごと配当付終身保険(65歳払込満了)
月払保険料(集団扱い):20,450円
契約者(=保険料負担者):Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
そのほかに、リビング・ニーズ特約、指定代理請求特約を付加している。
最低支払保証期間は5年(最低5回保証)

<Mさんが提案した生命保険に関する資料>

保険の種類:定期保険特約付終身保険(60歳払込満了)
契約年月日:平成13年6月1日
月払保険料(集団扱い):21,200円
契約者(=保険料負担者)被保険者:Aさん
被保険者:Aさん
死亡保険金受取人:妻Bさん
平成23年6月1日、特約を更新している。
上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問4】
はじめに、Mさんは、公的年金制度からの給付について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「現時点において、Aさんが死亡した場合、妻Bさんに対して遺族基礎年金が支給されます。妻Bさんが受け取る遺族基礎年金の額は、子が1人のため、779,300円に224,300円を加えた額(平成29年度価額)となります」
2. 「現時点において、Aさんが死亡した場合、妻Bさんに対して、遺族厚生年金が支給されます。遺族厚生年金の額は、原則として、Aさんの厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の3分の2相当額になります」
3. 「現時点において、Aさんが死亡した場合、妻Bさんに支給される遺族厚生年金の額には、長男Cさんが18歳に達するまでの間、中高齢寡婦加算額が加算されます」
正解: (3点)
1. 正しい記述です。遺族基礎年金の額=老齢基礎年金の満額+子の加算です。
年金で言う「子」とは、原則として18歳到達年度の末日を経過していない子を指しますので、長男Cさんは子の加算の対象になります。
子の加算額は、2人までは1人当たり224,300円で、3人目以降は1人当たり74,800円です。
2. 遺族厚生年金の額は、原則として、死亡した被保険者の厚生年金保険の被保険者記録を基礎として計算した老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3相当額です。
3. 中高齢寡婦加算は、基本的に、夫の死亡当時40歳以上65歳未満の配偶者が、65歳になるまで受け取る事が出来る給付です。
【問5】
次に、Mさんは、Aさんに対して、生命保険の見直しについて説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「保障の見直しをする前に、現時点でAさんが死亡した場合の必要保障額を算出しましょう。必要保障額を算出し、過不足のない適正額の死亡保障を準備することをお勧めします」
2. 「Aさんのような公的介護保険の第2号被保険者が公的介護保険の介護サービスを利用した場合、実際にかかった費用の3割を自己負担する必要があります。また、住宅の増改築費用等の多額の出費に備えるためにも、一時金支払タイプの介護保障を準備することを検討してください」
3. 「先進医療の治療を受けた場合、診察料、投薬料などは公的医療保険が適用されますが、先進医療の技術料は全額自己負担になります。一部の先進医療については技術料が高額となるケースもありますので、先進医療特約の付加をお勧めします」
正解: (3点)
1. 適切な記述です。
2. 介護保険の利用者負担は、原則として1割です。
3. 先進医療の治療に備えたいという前提であれば、間違った事は述べていません。
【問6】
最後に、Mさんは、Aさんに対して、Mさんが提案した生命保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「収入保障特約は、被保険者が死亡した場合、所定の期間、死亡保険金が年金形式で支払われるタイプの生命保険です。仮に、Aさんが45歳(支払対象期間20年)で死亡した場合、妻Bさんが受け取る年金受取総額は1,200万円となります」
2. 「Aさんが死亡した場合、妻Bさんが収入保障特約から毎年受け取る年金は、雑所得として課税の対象となります。具体的には、課税部分と非課税部分に振り分けたうえで、課税部分の所得金額についてのみ課税されます」
3. 「生命保険料控除の適用については、終身保険、定期保険特約、収入保障特約が一般の生命保険料控除の対象となり、特定疾病保障定期保険特約、介護保障定期保険特約、総合医療特約、先進医療特約は介護医療保険料控除の対象となります」
正解: (4点)
1. 正しい記述です。受取総額=年額60万円×20年=1,200万円です。
2. 正しい記述です。収入保障特約の課税部分は、雑所得の対象となります。
3. 特定疾病保障定期保険特約と介護保障定期保険特約は、介護医療保険料控除の対象となる契約の要件(「死亡保障と介護・医療保障を兼ねた組込型保険について、死亡保険金または死亡給付金の額ががんに罹患したことまたは常時の介護を要する身体の状態になったことに基因して支払われる保険金または給付金の額の5分の1に相当する額を限度とする場合」など)を満たしませんので、一般生命保険料控除の対象です。

【問7】~【問9】は、以下の資料を元に解答してください。

<設例>
 X株式会社(以下、「X社」という)は、Aさん(40歳)が13年前に設立した会社である。近年は順調に業績を伸ばし、従業員も定着するようになった。Aさんは、現在、退職金規程の整備や自身および従業員の退職金準備の方法について検討している。そこで、Aさんは生命保険会社の営業担当者であるファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
 Mさんが提案した生命保険の内容は、以下のとおりである。

<Mさんの提案内容>

Aさんの退職金準備を目的とする<資料1>の長期平準定期保険を提案した。
従業員の退職金準備を目的とする<資料2>の養老保険(福利厚生プラン)を提案した。

<資料1>

保険の種類:長期平準定期保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:Aさん(契約時年齢は40歳)
死亡保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:100歳満了
死亡・高度障害保険金額:1億円
年払保険料:220万円

<資料2>

保険の種類:養老保険(特約付加なし)
契約者(=保険料負担者):X社
被保険者:全従業員(30名)
死亡保険金受取人:被保険者の遺族
満期保険金受取人:X社
保険期間・保険料払込期間:60歳満了
保険金額(1人当たり):500万円
年払保険料:530万円530万円(30名の合計)

上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
【問7】
Mさんは、《設例》の<資料1>の長期平準定期保険について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も不適切なものはどれか。
1. 「X社が受け取る解約返戻金は、Aさんに支給する役員退職金の原資として活用するほか、借入金の返済や設備投資等の事業資金としても活用することができます」
2. 「保険期間開始時から当該保険期間の6割に相当する期間においては、支払保険料の2分の1を前払保険料として資産に計上し、残りの支払保険料については、期間の経過に応じて損金の額に算入します」
3. 「当該生命保険の単純返戻率(解約返戻金額÷払込保険料累計額)は、65~70歳前後にピーク時期を迎え、その後は低下しますが、保険期間満了時には満期保険金が支払われます」
正解: (3点)
1. 正しい記述です。
2. 正しい記述です。
3. 長期平準定期保険は、定期保険ですから、満期保険金はありません。
【問8】
X社(Aさん)は、<設例>の<資料1>の長期平準定期保険への加入を検討している。<資料1>の長期平準定期保険を下記<条件>にて解約した場合の経理処理(仕訳)として、次のうち最も適切なものはどれか。

<条件>

Aさんが65歳時に解約することとし、解約返戻金の額は5,100万円である。
X社が解約時までに支払った保険料の総額は5,500万円である。
配当等、上記以外の条件は考慮しないものとする。
1.
2.
3.
正解: (4点)
解約返戻金を5,100万円受け取ると、資産(現金・預金)が増加しますから、これを借方に記入します。
また、解約時までに支払った長期平準定期保険の保険料の総額が5,500万円という事は、保険料の支払時に、その半額の2,750万円が前払保険料として資産計上されているという事です。保険を解約すると、当該保険契約に係る資産計上額を取り崩す(資産を減少させる)必要がありますから、前払保険料2,750万円を貸方に記入します。
したがって、受け取った金額(資産の増加額)と取り崩した金額(資産の減少額)との差額が利益の増加と認識されますから、雑収入5,100万円-2,750万円=2,350万円を貸方に記入します。
【問9】
Mさんは、<設例>の<資料2>の養老保険(福利厚生プラン)について説明した。MさんのAさんに対する説明として、次のうち最も適切なものはどれか。
1. 「<資料2>の契約形態で加入した場合、支払保険料の2分の1を資産に計上し、残りの支払保険料については、福利厚生費として損金の額に算入します」
2. 「<資料2>の契約形態で加入した場合において、被保険者である従業員が中途退職(生存退職)したときは、解約返戻金が退職する従業員本人に直接支払われます」
3. 「仮に、被保険者を全従業員ではなく、一部の従業員に限定した場合は、支払保険料の全額を資産に計上することになります」
正解: (3点)
1. 正しい記述です。
2. 養老保険(福利厚生プラン)の被保険者である従業員が退職した場合、解約返戻金は法人に支払われます。
3. 普遍的加入でない場合、支払った保険料は、給料となりますから、資産計上はしません。費用として処理され、基本的には損金算入されます。

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